拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166603763

作品紹介・あらすじ

建築基準法の改正や半世紀ぶりの商法大改正、公正取引委員会の規制強化、弁護士業の自由化や様々な司法改革…。これらはすべてアメリカ政府が彼らの国益のために日本政府に要求して実現させたもので、アメリカの公文書には実に率直にそう明記されている。近年の日米関係のこの不可解なメカニズムのルーツを探り、様々な分野で日本がアメリカに都合のいい社会に変えられて来た経緯を、アメリカの公文書に則して明快平易に描く。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカ政府とその背後にいる経済界が日本に対して執拗に要求している社会構造変革の強欲な意図を、公開されているオープン情報だけを頼りに嫌というほど見せてくれるのは非常にありがたいし、意義深いことである。しかし不満な点が1つある。それは何故日本政府がこうも唯々諾々とアメリカの要求を吞み続けているのか、その理由を語らない事だ。単に日本の官僚や政治家がお人好しでバカだから、であればどんなに良かっただろう。わざわざアメリカの意図が国民に伝わらないよう訳語を慎重に選んでいることから明らかなように、彼らは極めて正確に米側の意図やビジョンを見抜いている。
    考えられる動機は一つしかない。それは日本社会をアメリカ化することで利益(必ずしも金銭的なものに限らない)を得られる売国層が日本を支配しているからである。著者にもそれはわかっているはずである。ぜひともここに切り込んで欲しい。

  • アメリカは、国家目標として、大っぴらに日本の隷属化を謳ってる訳やね。お偉いさん方は、会談の席に着く前に、そういう前提を理解してはるんやろか?裁判員制度も、アメリカの司法が日本に介入するための端緒づくりとは… 知らん間にどんどん進むアメリカ従属国化。台頭目覚ましい中国との差も開くばかりで、日本ピンチ!

  • 1

  • ー 年次改革要望書 ー
    内政干渉により日本のシステムを破壊し、アメリカのビジネスチャンスを拡大するための戦略的な指導書である。2009年に廃止されたが、その思想はTTPに受け継がれていると言えるだろう。
    日本がアメリカの核の傘の下にいる限り、属国のような扱いを受けるのは、致し方の無いことかもしれない。
    完全な独立国としての尊厳を守るためには、防衛的、外交的な独立が必要であると思う。
    民主党時代、東アジア共同体構想というものが提言されていた。当時は、狂言な事を、と思っていたが、アメリカの内政干渉を脱し、EUに匹敵する政治・経済ブロックの構築を目指していたとすれば、あながち荒唐無稽な思想では無かったかも知れない。日本はその中で、現在のEUにおけるドイツのような役割を果たしていたことだろう。ただその思想には、東アジア共同体政府(≒中国?)への主権委譲も含まれており、到底肯んじられる内容ではなかったことも事実である。

  • 従属国家論の系譜に連なる本。従属国家であることを認めて物事を考えていかないと、多くのことが的外れに終わってしまいそう。メディアの責任は大きいな。

  • 年次改革要望書は、数年後の日本を知るための重要文献。アングロサクソンの楽園とは上手く言ったもんだ。201407

  • 10年前の本だがまったく古くなっていない。というよりはTPP締結を控えた今こそ本書が広く読まれるべきだ。関岡は基本的に取材を行わない。オフィシャルな情報だけを手掛かりにして、アメリカの内政干渉と日本政府の欺瞞を暴く。個人的には「保守の質を変えた」一書であると考える。日本人であれば心痛を覚えない人はいるまい。「敗戦」の意味を思い知らされる。半世紀という時を経ても尚、日本はアメリカ各地の州以下の扱いを受けており、文字通りの属国である。この国は独立することを阻まれているのだ。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/05/blog-post_3521.html

  • 建築出身の人

  •  非常に面白い本だった。アメリカが「年次改革要望書」や「外国貿易障壁報告書」などの公式文書を使って、日本にどれほどの経済的な圧力をかけてきたのか、理解できた。なかでも興味深かったのは、裁判の簡素化の要望書のくだり。要望書を送った理由は、アメリカの土建会社が日本企業の談合システムによって入札に参加できないことに腹を立て、送ったらしい。そういった不正を裁判で明確化することが狙いだ。裁判を簡素化した理由は、日本の土建会社との訴訟をできるだけで手早くすませ、コストを抑えるためだ。ぼくは疑問に思っていたことだが、なぜ民事裁判より重要な刑事裁判だけが裁判員裁判を導入するのか?その理由がこの本を読んで分かった。その理由は、民事裁判を裁判員制度にしてしまうと、日本人が裁判員を務めることになり、アメリカの企業に対して不利な判決が下るから。アメリカ本国で自国の企業に有利な裁決が下っていた理由が裁判員制度にあることを理解していたアメリカ政府が、断固反対をしたらしい。アメリカは日本の法律を徹底的に研究して、自国の利益になることを、日本人にも理解できない観点から改正の要望を送ってくるそうだ。

     この本を読んで怒りを感じたのが、今回の消費増税のこと。今度の消費増税で福祉と借金返済に回す民主党案が否決され、公共事業に重点をおく自民党案が通った。でもそれは結局、増税の恩恵を受けるのはアメリカの土建会社だ。アメリカ企業のCEOなどは1億円近い報酬を受け取る。そういった国では、必然的に労働者たちの賃金は安い。アメリカの土建会社が受け持つと、日本国民の生活は豊かにならない。

     消費税とは日本国民の老後を豊かにするための増税ではなかったのか。今回の増税は資本家だけを肥やすためのものだったら、自民党こそ日本から消滅してほしい。というか自民党と野田を中心とした民主党が政権を握ったら、この国は更なる不幸な方向に進むだろう。

  • 日本がいかに米国の言うとおりの国に変えさせられていっているのか。最近の商法(会社法)の改正がそうだというし、実は阪神大震災後の建築基準法の50年ぶりの改正もそうだったという。プラザ合意も日本を破綻へ導いた元凶でしたし、あのころは日本苛めのスーパー301条なんていうのも間違いなくありました。過激な考えのようでありながら、保険の自由化もそうであったし、著者の主張は納得できるものがあります。レーガンが米国史上でワシントン、リンカーンを上回る最高の大統領だったとして人気が高いのも、ソ連の軍事的脅威、日本の経済的脅威を打破して文字通りの超大国に君臨させることになったという主張も肯かざるを得ないように思います。日本企業がコロンビア映画、ロックフェラー・センターを買ったということも今では懐かしい思い出ですが、それだけ米国人の神経を逆撫でしたのだろうと思います。米国の「自由」が日本のそれと異なり、「競争」と結びついているというのも納得がいきます。フリードマンの「選択の自由」の意味する深いところもやっと理解できたように思います。

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著者プロフィール

評論家・ノンフィクション作家。1961年東京都生まれ。2001年、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、著述活動に入る。刊行後10年で23刷のロングセラーとなった『拒否できない日本』(文春新書)、第2回国際理解促進優良図書優秀賞を受賞した『帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」』(祥伝社)をはじめ、著書多数。

「2014年 『日本は「戦後」を脱却できるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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