- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166604067
感想・レビュー・書評
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これ個人的にはすごく面白かったのですが、知人に薦めてもなかなか
関心をもってもらえないことが多い本のひとつです^^;
計量文献学は文章の数量的な分析から、著者を割り出すのに画期的な成果をあげています。
ネット上に膨大な文字が氾濫している昨今、こういう分析技術は今後どんどん発展していく分野だと思う。
さて、この本ではシェークスピアは誰か?静かなドンは盗作か?源氏物語の計量分析
など文学ネタが多いですが、
なかにはグリコ・森永事件のかい人21面相の脅迫文の文体分析なんかも取り上げられています。
文体分析すると書き手は2人?の線が浮かんでくるようですが、面白いことに
作家の内田康夫氏や新聞記者も勘で「著者は2人」と感じていたとか。
人間の持つ直感、と科学分析した結果が一致していたのがすごく興味深くて興奮しました^^詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
★図書館だよりNo.78 「読書への羅針盤」
紀ノ定保礼先生(情報デザイン学科)紹介図書
➣記事を読む https://www.sist.ac.jp/about/facility/lib/letter.html#078
【所在・貸出状況を見る】https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/57297 -
<目次>
はじめに
1 かい人21面相の脅迫状と文体分析
2 筆跡鑑定にかわる「文章の指紋」
3 文学作品と哲学書の著書を推定する
Ⅰ シェークスピアは誰か?
Ⅱ プラトンの『第七書簡』は贋作か?
Ⅲ マーク・トウェインの戦争経験談?
Ⅳ 『静かなるドン』をめぐる疑惑
Ⅴ 『紅楼夢』は一人の作家が書いたものか
4 聖書と宗教書の著者を推定する
Ⅰ 『キリストにならいて』は誰が書いたか
Ⅱ 『旧約聖書』の中の「イザヤ書」の著者
Ⅲ 『新約聖書』の「パウロの書簡」
5 政治は犯罪の文献をめぐって
Ⅰ 英国内閣を攻撃した投書『ジュニアス・レター』
Ⅱ 『連邦主義者』の著者の推定
Ⅲ パトリシア・ハースト誘拐事件
Ⅳ 東京の保険金殺人事件
6 日本古典の謎をめぐって
Ⅰ 『源氏物語』の計量分析
Ⅱ 日蓮遺文の著者の推定
7 文体の変化とこころの変化
Ⅰ 川端康成の文体の変化
Ⅱ 日蓮の文体の変化
8 日本語の計量分析の課題と限界
おわりに
参考文献
<引用>
「物を数える」ことは、人間を人間たらしめた重要な行為ということになる。(中略)
「物を数える」という行為は(中略)自然科学や工学を始めとする多くの学問分野においては、最も基本的な行為となっている。しかし、今もって「物を数える」ということから縁遠い学問分野がある。それは、文学の分野である。数学が嫌いだから大学は文学部に進学したという話をよく耳にするように、世の中では文学のような心の内面にふれる学問と数学や統計学のような数を扱う学問とは犬猿の仲のように思われている。(p11) -
文献の定量分析という世界。これって結構面白い。
大のつく長編で、どこで書き手が変わったかや、贋作かどうかの判定もできるという、奥の深い話が読める。
グリコ・森永事件の、脅迫状の書き手が複数らしいというのも面白い。 -
非常におもしろい分野。
計量文献学という学問を知らなかったので良い勉強になった。
しかし、恣意的というか、そもそも何を基準とするかに、個別的、手作業的な判断が用いられる点はどういう扱いなんだろう。
いまだ発展段階だからこれからそこが変わっていくのか、それともやはりその点はいかんともしがたいのであくまで道具としての使い方となるのか。
でも、ま、統計学自体そーゆーもんっちゃそーゆーもんか。
ただ、こーゆーアプローチは非常におもしろいと思う。
感覚的な感想が学問としてまかり通る文学なんかは特に。 -
計量文献学の紹介。計量文献学とは文章を統計処理して、抽出したその特徴から、著者の推定や反証に利用していく試み。シェイクスピアや源氏物語という文芸作品の研究だけではなく、脅迫文や犯行声明のような犯罪捜査などにも応用されているようだ。著者の特徴が文章に現れてくるのは当然だろうし、この手法の意図も明確なのだか、現在の成果では、完全な証明に至れる例が無いのが残念。
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本を統計的に読む方法。 著作の真偽を解明する方法のひとつとして、計量文献学という分野があることは以前から知っていましたが、その内容を簡単に紹介したのがこの本です。
統計的な手法を使って文献の著者を割り出す方法で、要は単語の出現頻度や長さ、使われ方、文体の特徴を捉え、未知の文献などが誰のものかを特定したり、真偽の鑑定に使います。事例として、文学作品や哲学書の著者の推定、聖書や宗教書の著者の推定、政治や犯罪の文献、日本の古典の謎などの実例を示して判りやすく紹介しています。
本の中身を数字で把握するという試みですが、やっぱり本は数字で把握するより、内容で把握したいですね。
誰が書いたとしても、内容が良いものは良いです。 -
考え方も題材も面白く、著者もこの分野の不完全さをわかった上で謙虚な姿勢を通しているので、個々の研究には違和感を感じながらも楽しく読める。
統計的手法、誤差検定も行っているのにどうしてしっくりこないのか。
後書きで「円柱の切り口」に例えているが、そういった意味で、誤差というよりは感度分析のようなものが不足しているのだろう。
鳥と豚の写真を比較して「違う」とは言えるが、ハトとカラスでは「同じ」と言ってしまったり、ハトの前からの写真と後ろからの写真で「違う」と言ってしまったり、そんな感じか。
個々の研究で手法が違うのも、技術的な問題なのだろうが、欲しい結論を得たいがために「火星に運河が見えてしまった」心理のようにも思える。
もう少し研究が進んで、統一的な手法が出来ると説得力が増すかもしれない。 -
計量文献学とはどのようなものかを、初心者にもわかりやすく解説した一書。ただ、多くの事例の概略だけを紹介しているので、今ひとつ計量文献学というものがどんなものかわかりづらいと感じました。もう少し具体的なものを出し、専門的な内容になっていてもいいんじゃないかと思いますが……
著者プロフィール
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