はじめての部落問題 (文春新書 478)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166604784

感想・レビュー・書評

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  • 『そもそも部落とは何なのか。差別は解消したのか。同和教育の功罪は?初歩から考える』この問題は非常にデリケートなものなんですが、今でもこういう問題があるということは心にとどめておきたいものです。いろいろと考えさせられる本でした。

    僕が育った北海道では、こういう問題は存在しなかったので、いまどきこういうことで人が人を差別するのかいなと思っていたのですが彼の本を読んで、あからさまな差別こそなくなったものの、影ではまだまだそういうことが残っているという現実に愕然としました。

    特に自分が驚いたのは結婚に関する箇所で、結婚をすることになったときに、親があそこまで反対するのかと、具体的に何を言ったのかはあまりにもおぞましいのでここでは書きたくありませんが、人間の醜さを突きつけられた感がありました。この話は10年以上も前のことなのでいまはどうなのかはわかりませんし、自分が実際にここに書かれているような現実に遭遇したことがないので、なんともいえないんですが、この現実をしっかりと受け止めてこれからを生きていく、そう決意することしかできませんよね。

    作者の言う
    「世の中にはいろんな人がいる」
    「どんな理由をつけても人を殺してはいけない」
    この言葉が非常によろしかったので、ここにあげることにします。

  • 今の時代に適した部落問題の取扱説明書。古典的な疑問にも答えてますし、部落をめぐる誤解やバイアスにも、丁寧に修正をかけています。水平社の戦争加担の事実を知って、少々驚いた。「本音だけしか通用しない社会は、建前だけの社会より恐ろしい」。

  • 著者自身が部落であることに気づき、それから部落について意識するようになって本書を書いた。
    著者は部落のことを明治時代に特殊部落民と呼ばれた人々およびその子孫のことを言い、現在では現住所が部落にあるもの、生まれと育ち、または本籍が部落、または親がそれらの場合だというのだが、そもそもの明治時代の特殊部落民についての説明がない。
    加えて、筆者は部落のことを人々に知ってほしい、目を背けて欲しくないと述べているが、そもそもなぜ差別されているかの説明があまりにも希薄で、部落なんて差別は現在ないという意見の有効な反論になっていないと思われる。

    というわけで本書は素人のちょっと一般人より詳しい人間が書いた駄本だという評価を免れ得ない。

  • 本書を読んで知らないことがたくさんあることに気づいた。

  • 浄土真宗 親鸞 本願寺派

  • 部落問題ってなんとなく取っつきにくい感じがあるけど、「そのような考え方が世間一般にある」という観点から、部落問題における問題を浮き彫りにしていく。それも重々しくなく、軽快なタッチで。入門書と呼ぶにふさわしい一冊。
    本文中に<blockquote> 私は運動団体のメンバーにありがちな部落民の誇りもない。私は自分が選べないもの――たとえば日本人であること、男であること、部落に生まれ育ったこと、血液型がB型であること――に誇りを一切持っていない。男やB型であることに誇りを持っていたら変である。いてもかまわないが、あまり友達にはなりたくない。自らが選択できなかった日本人であることを誇りを持て、というのもおかしいと思うし、同じ理由で部落民としての誇りなどはない。ただ、選べなかったもの、消極的な選択であっても、それを否定することはできないのである。</blockquote>と、いうものがあるんだけど、私は作者のこういうスタンスが好きだ。この本を評価する点はこういうところにあると思う。

     筆者は人間における「他者」そのものを部落問題を通じてえぐりだしているように思う。被差別部落のこと考えることは自分と他者を考える問題に他ならないということを心底教えられる。

  • 違い幻想、血の共同体、不当な範疇化
     「人を差別するとはどういうことか」が気にかかり、部落問題に興味が出てきたため購入した。ほかのマイノリティ差別とは違って、「同質の中の差別」が部落差別であるという点に問題の根深さを感じた。7つの要素が絡んで差別は起こるが、その中でも「違い幻想」が部落差別特有のものである。
     そうした差別意識をなくすためには、血縁的系譜概念を拭う必要があると筆者は考えている。「部落民」という概念がなくなることと、部落差別がなくなることは同義であるとする。
     部落差別をしているようでは人としてだめだと思う。差別って品がないわ、というスタンスでいつもいたい。差別とか意地悪とかモラルに反することが心に浮かんだときには自分の掲げる「品格」で対処したい。

  • さすがに飽きてきた

  • 第四章以降の「”差別”論」が印象的。「世間」をベースにした同質同化のニッポンにおける排除と忌避の暴力。これらマイノリティ問題以外でも危惧される「他者と出逢うことの不足、他者への無関心、他者への無理解と想像力なき偏見」は現代的な課題なんだろうか。しかし部落問題における差別は全くもってその言い分が理解できない。家とか血筋とか、時代錯誤甚だしい。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。神戸新聞記者などを経てフリーに。著書に『被差別部落の青春』(講談社文庫)、『ホルモン奉行』(新潮文庫)、『はじめての部落問題』(文春新書)、『とことん!部落問題』(講談社)、『ふしぎな部落問題』(ちくま新書)、『ゆめいらんかね やしきたかじん伝』(小学館文庫)、共著に『百田尚樹「殉愛」の真実』(宝島社)などがある。『カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀』で第33回講談社ノンフィクション賞受賞。

「2017年 『ピストルと荊冠 〈被差別〉と〈暴力〉で大阪を背負った男・小西邦彦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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