- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166605330
感想・レビュー・書評
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(01)
三角の著作における虚構の理由(*02)を本書では虚言癖にのみ求めているようにも読める.果たしてそれだけであったのか,あるいは,虚言癖による著作行為と三文小説や戯作とはどのような関係にあるかという観点について,本書の著者がどのように考えるのかを質してみたいような感じも受けた.
三角を擁護する必要も特に感じないが,サンカと差別の問題を紛らわすためにも,年月日や場所の改変がもたらされた可能性についても検討してもよいように思う.また,三角の捏造の中に彼の創造性を読み込むことで,時代の無意識や社会構造にまで目が届き,三角の特異が浮き彫りになるのかもしれない.
(02)
犯罪実録などに現われる猟奇的な興味のみが三角を衝き動かしているのではなく,サンカの漂泊や剥き出しの生に共感するところがあったのではないか.のぞきたい欲望だけでなく,のぞかれたい欲望が三角には同居している.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
必要あり再読。最初の総合的な三角寛批判。しかし三角寛ごとき色物など批判してどうなるという疑念は最後までつきまとう。
最初に読んだとき知って納得できたことは、戦前の猟奇事件の代表といえる「岩の坂養子殺害事件」をスクープしたのが朝日新聞記者時代の三角寛であったこと、それゆえこの事件は捏造か、少なくとも許容範囲以上の誇張がなされていた可能性があることである。(188頁)
サンカ「研究」全体に関しては次の意見を心に留めるべきである。
学問として未成立か、あるいは成熟度がいちじるしく低い分野には、好事家が群れやすい。ろくに知識がなくても、ああだ、こうだと勝手なことが言えるからである。誰もが、どんぐりの背比べ状態なら、専門家も素人もないことになり、僻説、愚論が一人前の顔をして、まかりとおることにもなる。それでも、一知半解の徒が思いつきを語るくらいなら、まだよい。「本当のことなど、どうせだれにも、わかりはしない」と、たかをくくってのことか、まるきり作り話を体験談と称して報告する手合いさえ現れるのである。(234頁)
これは日本のインド映画の状況にまったく当てはまる。十年前のオカルティズム研究もこの状態だった。 -
三角氏のサンカ研究がどこまで真実だったかどうかは素人の私にはわからないが、これだけの写真がよく残っていたものだ。昭和戦後直後の彼らの生活の画像があるだけで、すごい。
非定住の箕作り集団の呼称としては、東日本ではミナオシ(箕直し)がもっとも広く通用していいた。
サンカは西日本の一部で使われていた。
サンカの語源は坂ノ者。中世における河原ノ者、非人とならんで代表的な蔑視呼称。 -
タイトルを見たときに気づくべきだったのかもしれないけど、「サンカの真実」ではなく「三角寛の虚構」のほうがメインテーマだったらしい。あの時三角が言ったこれはウソだ、あそこで三角が撮ったといっているこの写真はニセモノだ、みたいな話のオンパレード。ええ、もうそれはわかりましたから、どうかサンカのことを教えてください。
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うむ・ちっとは謎が解けた〜三角寛(みすみ・ひろし,本名:三浦守)が博士号を貰った論文『サンカ社会の研究』は虚構の産物である。経歴を詐称して朝日新聞の警察廻りの記者となり,警察官の話からヒントを得て,サンカ社会を創造した。無論,箕作・箕直しの職能集団とは面識があったことは間違いがないが,無籍で文盲の人々から聞き出してまとめたものとは判断しがたい。サンカという被差別集団が存在したの確かだが,これから研究しても成果を揚げることは難しいだろう。しかし,三角の呪縛から開放されなくてはならない。〜なるほどねえ・・・博士号は金が買ったと本人が口走っていたなら間違いないや。箕作で生計を立てていた人たちが藤を植えて育てている地域に行ったけど,そういう訳があったのかぁ。奧が深い。そして,その集団に属していない地区の人は,これを語ろうとしないのだね。
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分類=民俗・サンカ。06年10月。三角寛の研究批判が中心。