昭和史入門 (文春新書 564)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166605644

感想・レビュー・書評

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  • 心意気は伝わった。

  • 「昭和の時代に何があったか」よりも、「昭和史をどんな心構えで追うべきか」にウェイトをおいた入門書。まったく知識ゼロという人は、まず巻末の書籍案内だけでも!

  • 安心して作者読みができる人。この人の本なら間違いない、みたいな。
    昭和史関係の本は何冊か読んでるから、目新しい内容はなかったのですが…。
    この本の素晴らしさはソコジャナイ。
    とにかく、まえがきと第一章が秀逸。
    ここだけでも読む価値あり。

  • 昭和史のなので当然のことながら全編を通して、昭和天皇の動向が記述の中心になっている。著者の独断による時代区分が何やら煩わしかったり、昭和史としながらもその記述は戦前・戦後の一時期にかたよっていたりと、新書のボリュームでは食い足りない感が強い。それでも楽しめたのだけれど。

  •  本書は「昭和史入門」にふさわしい、わかりやすく、かつ複雑な昭和史を深く分析した優れた本であると高く評価したい。著者は「史実を確かめ、そこから学ぶのは資料を読みこなすことである」して膨大な資料にあたっているが、同時に「この種の資料は決して多くはない」とも語っている。当時の国家指導者が敗戦時の昭和20年(1945年)8月14日の閣議において「行政関連の記録文書は一切を焼却」と決定し、全国の行政機関で記録の焼却が実行されたからである。これを読んで、当時の国家指導者は歴史の審判を一切自覚しなかったのかとも思った。また、このような愚かな国家指導者を選任した当時の日本はどのような社会だったのかとも疑問を持った。
     本書では、昭和を「前期」「中期」「後期」と分けている。
     「昭和前期」として昭和元年(1926年)から昭和20年(1945年)の敗戦までを取り上げ、軍事主導体制がどのようにして成立し、確立し、崩壊したかが語られている。視点は徹底して当時の軍事指導者に対し批判的である。現在の視点から歴史を振り返ってみれば当時の軍事への傾斜は当然否定的にならざるを得ないのは当たり前かとは思うが、本書を読んで、「ではなぜそのような浅薄な軍事指導者が国家指導者として浮かび上がってきたのか」との疑問を持った。当時の経済的困窮の元で閉塞感を増す社会は現在ともある意味では重複する。そのような状況の下で独裁的政治運営を期待する空気が日本社会には当時もあったし、今もあるのではないかとも思った。著者はこの時代を日本の歴史の「亜種」として全否定している。しかし、著者が選択肢としてあげているようにむしろこのような独裁的指導者を渇望する空気は日本の「国民性の宿痾」ではないのだろうかとも思った。つまり日本人は閉塞期には強権を持った指導者を選ぶ国民性を持っているのではないかという疑問だ。著者はこの時代を「懇(ねんご)ろに埋葬」すべきとしているが、歴史を学び過ちを繰り返さないためには、むしろこの時代をどうとらえるかの国民的合意を目指す必要があるのではないのかとの思いを持った。
     「昭和中期」としては、昭和20年(1945年)の敗戦から昭和26年(1951年)のサンフランシスコ平和条約までを取り上げている。GHQの占領政策のいわゆる「人権指令」によって「思想・宗教・集会および言論の自由」が命令され、不敬罪や治安維持法をはじめとして言論・出版に制限を加える法律が全て停止となった。日本の「民主化」である。そして当時の軍事指導者を裁いた「東京裁判」と「新憲法」の制定である。この現在も論争が続く項目の中では、「新憲法」制定についての記載がほとんどない点でちょっと物足りない思いがした。昭和天皇については、戦後65年が過ぎた現在になって本書の視点を補強するような新たな資料が出てきており、興味深く読めた。
     「昭和後期」は、昭和26年(1951年)の吉田茂の日米安保条約調印、昭和35年(1960年)の岸信介の安保条約改定の「政治の季節」から、池田隼人の所得倍増計画、昭和47年(1972 年)の田中角栄の日本列島改造論の「経済の季節」への転換を描いている。この時代はわれわれが生きてきた時代だけに振り返ってわかりやすい。
     ただ、本書の最終章「昭和を語り継ぐ精神」で昭和天皇独白録の内容から「天皇は自らを立憲君主制の枠の中にとじこめていたが、それがまったく機能せず、天皇がほとんど統治能力を持たぬ国家になっていた」との見解はちょっと違うのではないかと思った。昭和天皇独白録は天皇退位論が一部で広がっていた昭和21年の3月~4月に作成されており、当然ある意図を持って作成されたと考えられる。その内容をそのまま鵜呑みにすることはできないのではないかとも感じた。
     しかし本書の巻末に「人は過去を無視して生きることはできない」には全面的に同感するものである。本書で昭和史を知ることは、喜びでもあるが日本人としての義務でもあると思う。本書を「昭和史入門書」として高く評価したい。

  • 昭和史については学校以外で本格的に読んだことはなかったけれど、この本は入門というタイトル通り、昭和という最も長い年号の期間を全体的に俯瞰している。昭和という時代を、その次代を生きた人たちの姿を通して、謙虚に見つめるという姿勢は、歴史に学ぶ上ではじめに築いておくべき基盤かも知れない。印象的だったのは昭和史の語り部に体験を聴く過程で著者が見出した「1:1:8の法則」。自身の体験したこと、直接に感じたことのみを誠実に語る人は全体の1割程度しかいない。大多数は誇張・美化・隠蔽・操作が加わった証言であるという。

  • やはり我々の世代は昭和を生きた実感がしない。
    多くの知識が抜けていて、うまく理解できない。

    歴史をもっと知る必要がある。

  • ジュンク堂書店梅田店

  • 昭和史を学ぼうシリーズ第二作。こちらは昭和の60年余の期間をいくつかのフェーズに分類して、それぞれの時流を読み解くという内容となっている。戦争時代はもとよりオイルショックや安保闘争など、あったことを知ってはいるけどどういうことかよくわからなかったというようなできごとの整理になった。言うまでもなく、このような時代は過去であるが現代に線でつながっているのだな、と思った。国中の反対を押し切り安保条約を強行締結した当時の首相岸信介は先の首相阿倍晋造の祖父であるというのだから、おもしろいなあ。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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