その政治の図像学 乾隆帝 (文春新書 567)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166605675

作品紹介・あらすじ

目標!五百年、二十五代。清朝の永続を図る中国史上、稀代の名君は、小なる満族が、大なる漢族を支配するために、絵画、建築、詩文…とイメージの総力戦を決意した。

感想・レビュー・書評

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  •  派手好き、仮装癖、詩癖、注釈魔、記録魔、旅行好き、と本書で様々な言われようの乾隆帝。評伝ではなく、残した絵画や庭園などから意味を読み取るとの本だ。
     后妃たちの肖像画に見る皇胤=子種へのこだわりという解釈も面白いが、特に関心を持ったのは多民族国家の皇帝としての部分。乾隆帝時代には相当「漢化」していたはずだが、満語も学ぶ。しかし強調されるのは漢詩文の才。満族の高位者には漢族の衣装が厳しく禁じられるが、帝自身は漢装を着た自分を好んで描かせる。さりとて「満人には見えない」と臣下に言われると漢装を止める。満族アイデンティティー確認のための避暑山荘だが、そこに江南風庭園を造らせ、「塞外」の本当の山と比べて偽物の山呼ばわりしつつも、庭園美学風の答えを出す。著者は、江南の庭園文化は帝にとって異質なものであってはならず、自らもその体現者であるべきだったと述べる。
     漢族との関係だけではない。避暑山荘のある熱河は「ドロンノールの会盟」で籠絡したモンゴル族との境界。外八廟のラマ寺院は、エキゾティシズムと共に、遠いチベットを皇帝の「手のとどく」ところに移し替えるものであり、そこのタンカの中心には乾隆帝が座す。円明園に対しては、好奇心とともに異教を封じ込めようという、アンヴィバレントなエキゾティシズムを著者は見る。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    1 皇胤と母胎の物語(易姓革命と万世一系/皇子たちと皇太子 ほか)/2 仮装する皇帝(操られる宮廷画家たち/漢族になりきる乾隆帝 ほか)/3 庭園と夷狄の物語(避暑山荘への道/避暑山荘のトポス ほか)/4 楽園のなかの皇帝(ジョホールとザナドゥー/いくさと詩と絵 ほか)

  • 中野美代子「カスティリオーネの庭」つながりで。乾隆帝の時代の概要を知りたくて手にとる。庭園や肖像画、版画に込められた政治的意図を読み取る企みは興味深い。仮装する皇帝、特に曼荼羅の真ん中に、チベット僧もかくやという姿で描かれる乾隆帝の図像は特に興味深かった。

  • [ 内容 ]
    目標!
    五百年、二十五代。
    清朝の永続を図る中国史上、稀代の名君は、小なる満族が、大なる漢族を支配するために、絵画、建築、詩文…とイメージの総力戦を決意した。

    [ 目次 ]
    1 皇胤と母胎の物語(易姓革命と万世一系 皇子たちと皇太子 ほか)
    2 仮装する皇帝(操られる宮廷画家たち 漢族になりきる乾隆帝 ほか)
    3 庭園と夷狄の物語(避暑山荘への道 避暑山荘のトポス ほか)
    4 楽園のなかの皇帝(ジョホールとザナドゥー いくさと詩と絵 ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 長年の著者の読者にとっては存分に楽しめるのかもしれないが、たまに手にとるような読者にとっては無駄な言及が多いように思う。新書という媒体として、もう少し整理されているとよかった。
    とはいえ新書ならではの、簡潔な内容や図版の多さは嬉しいところ。

  • 高校時代、この方の『西遊記の秘密―タオと煉丹術のシンボリズム』を初めとする著作に夢中になった。北大に進みたいと思ったけれど、あいにくと私の頭の出来では無理でした残念。そんな思い出とともにいつしかこの分野とは遠ざかってしまっていたのですが、久々にこの本に出会い、健在であることに嬉しくなりました。清の乾隆帝、彼が版図だけではなく文化的にも支配の意図を込めた統治を行っていたことを示す一冊。台湾の故宮博物院でなぜ彼の御物があれほどまでに多くを占めているのか疑問だったのですが、この本を読めばわかります。他の本も読み返してみたくなりました。

  • 関係ない記述多すぎ。
    私が欲した内容とは程遠い。
    完全に期待はずれ。
    ただ郎世寧ことジュゼッペ・カスティリオーネの絵画が白黒とはいえ結構な数収録されていたのは良かった。

  • 乾隆帝の周囲の、美術作品(絵画、建築、造園)を取り上げて、その人となりを描いた異色の乾隆帝伝? 詳しくは<a href="http://d.hatena.ne.jp/rockfield/">こっち</a>に書いてあります。

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著者プロフィール

1933年生まれ.
1956年,北海道大学文学部中国文学科卒業.
北海道大学文学部助教授.
主 著:
砂漠に埋もれた文字—パスパ文字のはなし (塙書房,1971)
海燕(長編小説) (潮出版社,1973)
中国人の思考様式—小説の世界から (講談社,1974)
カニバリズム論 (潮出版社,1975)
悪魔のいない文学—中国の小説と絵画 (朝日新聞社,1977)


「1979年 『辺境の風景 日本と中国の国境意識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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