- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166605767
感想・レビュー・書評
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210.5-A
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近世日本の大奥の政治力と、そこに頼って何かを実現したい人々の賄賂、それによって支えられた大奥の奢侈な生活を描く。大奥の基本的な役職などがわかるのは有益。近世を通じて大奥が一貫して同じ権力を持ち続けていたかのように描かれるのはちょっと疑問。そんなに変わらない権力というものがあるのだろうか。また大奥の権力が結局何によって支えられていたのか、そのへんもよくわからない。どうしてそういうものが形成されたのか。史料的限界もあって難しいのだろうが…。
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『江戸城・大奥の秘密』安藤優一郎著(文春新書)
故あって、この本をいただきました。
この種の本…というよりも特にこの主題を扱った本は、慎重にならざるを得ません。
だって『大奥』ですから。
しかも「秘密」だし。
私は『大奥』もののテレビや映画は、かなりの偏見をもって観ません。先日も、『大奥』の本を読んでいる、というと、
「なんで火のなかを歩くのばっかりなんだろうね」との感想が。
その映像はさすがに知っています。だからこそ、よほど「本当に」「真面目に」作っているものじゃなきゃ観ません。また、読みません。
過剰なまでの演出や、明らかに作為(悪意?)ある当時の噂話を、もっともらしくまるで史実のように書いてあったりするのが嫌いなのです。
私のなかにそんな前段階がありましたが、この本は信用できる、という気持ちが致しました。とても「まじめ」な本だったので、嬉しかった。
これはよい本(というか著者)を教えてもらえたものだ、と思いました。
まず、最初がよかったです。
最初は、一大奥女官の16歳の短い生涯について書いてありました。
それこそ、大奥が炎上して炎のなかで亡くなった方のお話です。
この本は一般向け教養書なのですが、この一章は大奥炎上時に16歳で亡くなった「てや」さんの生涯の物語を丁寧に描いていました。
当時の記録や「てや」さんの兄の娘の話から、家族関係、父兄の置かれていた状況、財政状態まで細かく拾い上げて書かれており、「てや」さんが家族思いの娘さんであったこと、「てや」さんが大奥にあがったことにより生まれた関係、増えた負担。家に帰ってもおつきがいて自由に話せない「てや」さんの口に出せない苦しみ……。
「てや」さんが特別な娘さんだったというわけではないでしょう。
でも、著者の視点はなんだかとても優しいものに感じられました。
そして、大奥炎上の現実が彼女にもたらしたもの、炎のなかに飛び込んでいった彼女のことを思うと、やっぱり『火のなかを歩いているクライマックス』なんて観たくないと思うのです。
ちなみに文献にあった「てや」さんの姪の話をまとめた『名ごりの夢』という本が読んでみたくなったのですが、東洋文庫か…東洋文庫ってなかなか見つからないし、しかも高いんだよね。
読み進むうちに、だんだんと「ああ、そうかそうか」と思い出すことが度々ありました。
私の日本史の知識はほとんど独学だし、しかも私のなかに『史観』なんてものがあるとすれば、それは過大に永井路子さんの影響を受けているだろうけれど、純粋に知識を呼び起こす、または新たに識っていく、というのはとても楽しいことでした。
けど、ものすごい財政だったのですね。
皆が苦しいだけのように見える、幕府の財政。対面を保つための。
改革はしたいが、できず。
反発の大きさは、たぶん、この国の現状にも似ていませんか?
そして、瓦解する。
まあ、そんな怖いことを考えても仕方ないかもしれませんが。