亡命者が語る政治弾圧 中国を追われたウイグル人 (文春新書 599)
- 文藝春秋 (2007年10月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166605996
作品紹介・あらすじ
血も凍る拷問と虐殺の数々。核実験場にされるウイグル自治区。国内外で荒れくるう中国の少数民族弾圧のすさまじい実態を、命がけで亡命した者たちから聞き出した、戦慄の記録。ノーベル平和賞有力候補ラビア・カーディル女史たちが中国を告発する。
感想・レビュー・書評
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私たちは知らないことが多すぎる.でもこれを世界に発信するためにどれだけたくさんの人たちが犠牲になったかを思うと,暗澹たる気持ちになる.
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いじめはいじめる者のストレス解消のために行われるものだという説がある。だとすれば、中国共産党のストレスはなかなかのものなんだろう。最近では香港も弾圧し、さらには台湾もという動きがある。
いじめる者が中国共産党のように核ミサイルまで持つようなとてつもない暴力を備えているから、ウイグル人いじめの暴力性は人類の行いうる極限に達している。とんでもない!
人類学の本なんか読んでると必ず差別がある。誰かを貶めることで自らを保つという意識の運用は人間感情の深い部分に根ざしているようだ。理性で抑えられるものではないのかもしれない。
いやはや、人間性の暗部を突きつけられる本ではある。しかし、それを見据えた上で日々生き延びなきゃなぁ...
Mahalo -
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新疆ウイグル自治区.での中国政府によるウイグル人の迫害.他国に亡命した人にインタビューする形で弾圧の実態を記していく.拷問や暗殺など中国公安の恐ろしさも知ることができる.
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中華人民共和国、すなわち中国共産党による少数民族弾圧問題といえばたいていの日本人はチベットの事が頭に浮かぶだろう。チベット問題も深刻ではあるが、それと同じもしくはそれ以上に新疆問題も深刻な状況に置かれている事はあまり日本では知られていない。少なくとも欧米諸国に比べて新疆問題に対する認識は非常に薄く、したがって問題への対応努力は殆どなされていなのが実情だろう。
本書は著者のフィールドワークや、新疆関係者への地道なインタビューに沿ってまとめられた新疆問題の俯瞰地図である。少しでも新疆問題に関心はあるが、あまり学術的ではなくとっつきやすい問題の解説本を求めているのであれば本書はかなりオススメの一冊である。
前述のようにそもそも日本では新疆問題に関する情報が少なく、こういった書籍を地道に当たっていく以外に問題の内実を知るすべがない。こういった問題を解決に導くには問題に対する認識が広く普及する事が欠かせないので本書のような本が増える事を願うばかりである。
本書を読んで共産党の民族問題に対する対処は益々よろしくないと思うばかりである。9.11テロの後、イスラム過激派が主導したということを共産党は「わざと」誤解して々イスラム教徒であるウイグル人をテロリスト呼ばわりしてきた。テロ当時、日本のメディアもこぞってイスラム過激派が全てテロリストであるかのように報道し、共産党よろしくイスラム社会への悪影響を担う一端となっていた事が記憶に新しい。そもそもウイグル問題もまともに扱えない日本のメディアがイスラム社会への論評を展開する事は馬鹿げているようにしか思えない。
イスラム教徒自体は全世界で10億人を超えていると推定されており、決してマイノリティとは言えない。しかしながらイスラム圏に属する民族はキリスト教系民族と異なり、文化や国家背景が異なる少数民族に分担されてしまっている経緯もあるせいで結果として「イスラム少数民族」というカテゴリが発生しやすいのだと思う。
少数民族問題(特に中国共産党の)やイスラム問題に興味のある人は是非一読を進めたい書籍である。 -
[ 内容 ]
血も凍る拷問と虐殺の数々。
核実験場にされるウイグル自治区。
国内外で荒れくるう中国の少数民族弾圧のすさまじい実態を、命がけで亡命した者たちから聞き出した、戦慄の記録。
ノーベル平和賞有力候補ラビア・カーディル女史たちが中国を告発する。
[ 目次 ]
第1章 ラビア・カーディル―大富豪から投獄、亡命を経て東トルキスタン独立運動の女性リーダーへ
第2章 ドルクン・エイサ―「世界ウイグル会議」秘書長
第3章 イリ事件を語る―アブドゥサラム・ハビブッラ、アブリミット・トゥルスン
第4章 シルクロードに撒布された「死の灰」―核実験の後遺症を告発した医師アニワル・トフティ
第5章 グアンタナモ基地に囚われたウイグル人たち
第6章 政治犯として獄中にある東大院生―トフティ・テュニヤズ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
中国におけるチベット人への迫害に比べて、国際社会の注目度が低く、特に日本においてはその存在さへあまり知られていない中国におけるウイグル人への迫害。
チベットへの迫害と同様の拷問・迫害に加えて、核実験の実験場となったり、911テロに乗じてまるでテロ組織のように扱われたりと、その苦難はチベット人と同等またはそれをしのぐほどと言っても過言ではありません。
本書は、著者が実際に迫害をうけたウイグル人に会い直接の取材を行ってまとめられた、中国におけるウイグル人迫害の実態を知る貴重な一冊です。
本書の冒頭「序にかえて」で著者は次のように語っています。
「(前略)彼らの「語り」は、傍証となる資料を探すことがほぼ不可能で、客観的検証が非常に難しい。執筆時は常に、証言者の「語り」が本当に信頼に足るものなのか、自分自身が記している内容が正しいのかどうか、自問し続けている状態だった。だが、たとえ亡命者たちの「語り」の中に「語りたくない部分」があったとしても、それでもなお彼らの語れる部分に耳を傾け、彼らと痛みを分かち、それらを活字に残しておきたいと思った。(後略)」
日本は自らの隣国で行われているこの事象を知らずにすませることはできないと思います。
知るべき事象のひとつの側面を鮮やかに照らしてくれるとても貴重な一冊です。 -
中国脅威論を熱く訴えるような感情的な本とは
少し違う。
事実としてかなり複雑で目を背けたくなるようなことが書かれている。
しかし、著者は結局それによって読者の感情を煽ろうと言うのではなく、
冷静に民族の現実を書いている。
読むのには勇気が必要。
『コーカサスの金色の雲』で読んだソ連での民族を思い出し、
旅行に行ったときのウイグル族ガイドの顔と、
上海で私の財布をすろうとして失敗したウイグル族の少年の暗く光った瞳を思い出した。 -
いわれなき迫害、帰りたくても故郷へ帰れぬ人たち。
日本人はあまりにも知らない。
それが現代社会で起きていることに……。