彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか 昭和陸海軍の失敗 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2007年12月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784166606108

みんなの感想まとめ

組織の硬直性や既得権益の優先が、昭和の陸海軍の失敗に大きく寄与したことを掘り下げた内容は、現代の日本の組織にも通じる問題を浮き彫りにします。特に、リーダーシップの欠如や人事の慣習が、歴史を繰り返す要因...

感想・レビュー・書評

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  •  視察先への移動時間に読むために、本棚からぱっと選び出して鞄の中に放り込む。三年ほど前の本ではなかったか。再読。

     ちょっと左傾かなと思われる半藤一利や保阪正康、また、右傾かなともいわれる秦郁彦、福田和也、防衛大学関係の平間洋一、戸部良一等々、なかなかの識者。現代ではこの時代を考証する最強メンバーであろう。

     感想は陳腐なものになってしまうが、結論から言えば、この本を読んででさえも、なぜあのような戦争に突入してしまったのか、一つの理由に帰することはできない。ヒトラーに全てを帰結してしまったドイツと決定的に違うところであろう。

     石原莞爾はあまりに天才が過ぎるがために、誤解されている節もあるが、決してヒットラーではない。東条英機は、逆にあまりに小さ過ぎる。

     さて、先の大戦にまつわる本を読んでいると、ことごとく共通しているのは、服部卓四郎と辻政信の評判の悪さ。詳細は、本書はじめ歴史書に委ねるが、なぜ、こんな暴走コンビが・・・と気が重くなる。

     参謀本部作戦課長として、無謀な戦争の絵を描いた服部は、戦後、すかさずGHQにおもねり、日本の悪口を書きなぐった「大東亜戦争全史」(GHQ戦史部編纂)をまとめあげた。

     現代に繋がる、先の大戦は全て日本が悪であるという呪縛に拘泥されている人に、しかも、そのことさえ気づいていない人に、意識しようがしまいが、しっかりと覆いかぶさっているものである。

     服部は、自分でシナリオを書いた戦争を、「日本」という国の責任にしてしまうことによって、自分の責任をうやむやにしてしまおうとする。

     服部とコンビであった辻政信は、連合国からの戦犯追及を逃れるため、インドシナ半島、中国さらには日本国内にてずっと隠れていた。広田弘毅と正反対である。

     ほとぼりが冷めた頃に、表れ、その潜伏の体験を書き上げベストセラーに。

     常人ではない。

     尚、辻政信はその後、参議院全国区から出馬し、三位で当選。いやはや・・・。強靭な生命力である。

     では、なぜ、そのような人物がそんなことをできたのか。跋扈できたのか。その疑問を解いていく作業こそが、私たち日本にとって、今後、平和を守っていく一つの鍵となっていくのかもしれない。

     最尾に、辻政信についての人物評で面白い記述があった。

     戸部氏の言葉。
     「辻は、その場に応じて『正論』を巧みに使える才能があり、それで生き残ったのではないか」

     保阪氏の言葉。
     「作家の杉森久英は『辻政信』という著書の中で、「彼のする事なす事は、小学校の終身の教科書が正しいという意味で正しいので、誰も反対しようがなく。彼の主張は常に、大多数の無言の反抗を尻目にかけて通るのであった」と書いています」

     組織がおかしくなるのは、そんな人物を淘汰できなくなってきたときであろう。組織とは、外的要因よりも内的要因から崩れていくことが多いとは、まさにそのことを指すのであろうか。

     改めて、胸に刻み込む。

      ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
    (2010年7月25日)

     今朝の朝刊、地元紙を見て、思わずホウッと声をあげてしまった。
     私が昨晩書いたばかりの辻政信のことが出ていたからだ。

     記事の出だしがこうだ。

     「”作戦の神様”とあがめられる一方、無責任参謀と非難する人もいて、評価が極端に分かれる人」

     そうだろうか。私がこれまで目にしたいくつかの文献を思い起こしても、辻政信のことを、”作戦の神様”とあがめたものは一つもない。この記者さんの勉強不足もしくはリップサービスであろう。

     おそらくは、記事でわざわざ””(コーテーションマーク)で括っていることから想像するに、記者さんも、その評価については懐疑的でいくらかの皮肉を込めて記述しているのであろう。

     ただ、記事中に、「戦功を重ね」とあるように、現場のまさに戦場においては、勇猛であったことは事実のようだ。だからこそ、一般兵士の間では、評判は良かった。後に、国会議員選挙で当選を重ねたことからも、現場に出て、一般大衆の心をつかむことはうまかったのであろう。それは大いなる魅力だ。

     辻政信。歴史家や研究者の間では、大変厳しい評価しかされてはいないが、経緯はともかくとして潜伏紀行文(?)なるものをもってしてベストセラー作家となり、衆議院議員に4回も当選し、その後、参議院全国区で第三位で当選。

     戦争論、組織論、人物論等々、研究の題材としては、興味の尽きることのない人物である。

  • 「硬直した人事」、「既得権益優先の論理」、「トップのリーダーシップのなさ」等々、指摘されていることはいちいち尤もだと思うのだが、いちばん不思議なのは、そうやって指摘されていること(特に人事)が、いまもって日本の組織のあらゆるところで行われているということ。
    どうしてなんだろう?
    つまりは、そういうことがいちばん日本人の心性には合っているということなのではないか。失敗の指摘よりも、そんなことの方が気になった。

  • 昭和の陸海軍の失敗を辿る本だが、読んでいるうちに「昭和型企業組織」と重なる部分が多く、どちらの話をしているのか分からなくなる。歴史は繰り返されるものだ。
    定期人事異動や慣習の硬直化が、戦争でも企業でも致命傷になるという指摘は今なお生々しい。
    日本組織を立て直したい人に刺さる一冊。

  • 太平洋戦争開戦時の「アメリカのGDPは日本の12.7倍」(p.115)

    日本陸海軍の暴走ぶりがよくわかる!

  • 同質が陥る病理と、平常と異常の違いを認知識別できない限りはどの組織も衰えていくんだな。

  • 太平洋戦争の陸海軍の有名どころの人物像、能力がよくわかります。複数の識者が多様な角度から説明するので、偏りもあまりないように思います。

  • 陸軍海軍分けて、識者がそれぞれの軍人や組織の何が問題で昭和の戦争を日本は戦うことになり、負けたのかについて語り合う。

  • その名の通りの本。論述というよりは鼎談をまとめたもの。

  • 『失敗の本質』の裏にある人と組織の問題点がよく分かる。大局感があって先が見える人程、上から煙たがられ出世しないと言うのは現代の組織にも当てはまりそう。
    過去の失敗の教訓が全く活かせない日本の組織って何だ?

  • 本当にこの手の本は大好き。もっと熱く色々な軍事官僚について語ってほしい。

  • 駆逐艦の艦長に名将が多かったという。駆逐艦に乗るのは、士官学校とかの学校の成績が、必ずしも優秀ではなかった人たち。彼らは、ハンモックナンバー(成績順)ではなく、現実の中で鍛え上げられ、臨機応変に場にあたっていった結果、能力が磨き上げられていったのだという。

    でも一方で、やっぱり陸大その他、軍の学校で成績優秀な人たちの中にも名を残している。単純に世の中、成績じゃないとも言い切れない。

    陸軍よりも海軍の方が、評判はいい印象がある。でも、陸軍では餓死者が何万人も出た一方で、海軍ではそういうことはほぼなかったという。

    あれこれ読んで感じたのは、先の戦争は誰が悪かったというよりも、日本人全体の在り方によって突入していったのだな、ということだ。そして同じことが、現在の社会、あるいはもっと身近な自分のまわりにも連続したものとしてあると思う。

    歴史を学ぶって、面白いね。

  • 色んな人が昭和陸海軍の失敗を分析した一冊。

    当然ながら、失敗したのは有能な人物が少なかった、あるいは登用されなかったということなのだが、士官学校でエリート教育が行われている以上、当然中には優秀な軍人もいるわけで、それがうまく活用されなかったことがかえすがえすも残念。。

  • 第二次世界大戦の敗因を、議論する中で出てくる課題は、現在の日本の組織にも当てはまる課題が多い。考えさせられる事が多い。あんまり変わってないじゃん。

    ・敵は外にあるはずなのに、長州派閥、薩摩派閥、それ以外などで派閥抗争で改革を潰す。
    ・エリートからなる参謀本部、軍令部、参謀の暴走。現場を知らない机上の理論で作戦をじっこう。
    ・なあなあの人事評価。つながりが大事。信賞必罰じゃない。
    ・決戦前でも定期的な大規模な人事異動を実施する海軍。
    ・思った以上に官僚的な軍隊。今以上に官僚的じゃないか
    ・過去の成功体験を神格化し変化に対応できない。前例に縛られる。
    ・良識派は孤立する。成果を上げたものでも
    ・空気の支配
    ・実際に優秀であったのは、現場で叩き上げの指揮官。
    などなど

  • 黒野/耐
    1944(昭和19)年生まれ。元陸将補、武蔵野学院大学講師

    戸高/一成
    1948(昭和23)年生まれ。海軍史研究家、呉市海事歴史科学館館長

    戸部/良一
    1948(昭和23)年生まれ。防衛大学校教授

    秦/郁彦
    1932(昭和7)年生まれ。日本大学講師

    半藤/一利
    1930(昭和5)年生まれ。昭和史研究家、作家

  • すごく濃厚な座談会を収録している。今まで海軍しか興味がなかったので陸軍の軍人や体質をあまり知らなかったので前半の話は非常に勉強になった。海軍のメンバーに比べ、陸軍のメンバーの方が細部まで掘り下げて話すため、読者としては前半の方が面白かった。海軍の話は知ってる話が多いため、真新しさなどもあまり感じず。

  • 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」
    福田和也の引用は微妙に間違い。
    正確には山本五十六のはこれ↓。
    「やってみせ、説いて聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」

  • 半藤氏らが2度の座談会で、陸軍の日本型民主的組織、海軍のエリート集団組織の失敗を詳細な固有名詞で紹介しているもの。その意味で非常に具体的。戦争に突入していく日本がいかに人材に恵まれていなかったのか、お寒い限り。その中で陸軍の栗林忠道、今村均、本間雅晴、海軍の井上成美などの人材が出世を阻まれて、意見が取り入れられなかったなどと、魅力的な人材もいたことが嬉しい。しかし、陸軍の武藤章、杉山元、梅津美治郎や海軍の伏見宮、永野修身など批判点は自分自身を省みて何を言われるかと怖くなる!

  • ひとりひとり、その名が歴史家以外には忘れられつつある陸軍、海軍の将官、参謀がどのような人となりであったのか、彼らが何を成し、成さなかったのかを語る座談会。人間性の乏しい人は、それなりの人生を歩む。国の未来を見据えた大局観をもって責任を果たした人が、消えていったのは惜しまれる。近代日本が経験した戦争の評価は歴史家たちの手にゆだねられるものなのだろう。政治、行政の片棒を担いでいる人には身につまされる話もあると思われる。
    自分が何に対して筋を通すべきか、考えるヒントになった。

  • ▼内容紹介 凡庸なリーダーと下克上の論理、成功体験の驕りと呪縛…。エリートたちはどこで誤ったのか? 昭和の陸海軍の人事を語ることによって見えてくる、日本型組織の弱点とは。『文藝春秋』で反響を呼んだ2つの座談会を収録。

  • 読みやすく分かりやすく描かれた座談会だった。
    人の本質はそうそう変わる事はないんでしょうけど、
    いろんな経験を積まざるをえなかった日本の今の、
    活かされてなさを感じてしまうような。
    人間の生死がかかっている、それを考えてしまうと、
    戦争なんて出来ないのかもしれないし、
    それぞれ個人を責めてもしようがないけど、
    いろいろ考えてしまう。
    戦争を物語にしてしまって、
    英雄を造ってはいけないのではないのかも、
    とも思ってしまった。
    英雄は勝者にも敗者にもいないのが戦争なんだろう。

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