昭和の名将と愚将 (文春新書 618)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166606184

作品紹介・あらすじ

責任感、リーダーシップ、戦略の有無、知性、人望…昭和の代表的軍人二十二人を俎上に載せて、敗軍の将たちの人物にあえて評価を下す。リーダーたるには何が必要なのか。

感想・レビュー・書評

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  •  編者の2人が昭和の軍人22人を、それぞれ名将篇・愚将篇として語っています。対談形式で進んでいくので比較的読みやすくはありました。(が、些か前提となる知識がないと表面をなぞるだけになりそうな気も‥)
     名将か愚将かの評価は お2人の主観も多分に入っているような感じだし、何をもって名将とするのかも難しいものがあるかもしれませんが、やはり無謀な作戦や精神論を主張したうえ 責任も取らないのはどうなのかと思わずにはいられないような気持ちにはなってしまいます。またそういう人が軍の中で幅をきかせていたのも、何だか形は変えども現代にも通じる組織の問題のような気がしてしまいました。

  • 対談形式で読みやすい。
    出身地など個人のアイデンティティや戦争に関係ないエピソードの話も多く、居酒屋で話す会社の人事裏話のような話も多い。

    昭和の戦争の是非や負けた戦争に名将も愚将もあるのか?と言うことは置いておいて、現代にも通じるリーダー論として読んでみた。
    優れたリーダーの資質は色々あるが、愚かなリーダーの定義は非常にシンプル。

    名将:
    ①理知的、兵士から畏敬念で見られる人、論理的にものを考える、陸大の恩賜の軍刀組(腰巾着)以外、駐在武官経験者、幼年陸軍学校よりも一般中学出身
    ②自分で決断、目的を明確に伝える、情報を自ら掴む、過去の成功体験に囚われない、焦点の場所に身を置く、部下に最大限の任務遂行を求める

    愚将:
    責任ある立場で最も無責任だった将軍


    戦争に至った背景:
    明治以降の軍人が海外で戦争して賠償金や権益を獲得する構造が不幸。
    政党政治の不況や恐慌に対する無策。
    満州事変以降の国民世論、新聞やラジオが煽る。
    官僚による国体民微運動や過度な西洋文化排斥。
    玉砕、特攻は本来の日本の文化ではない。

  • 先日お亡くなりになった半藤一利氏と保阪正康氏の対談集である。
    保阪氏は「名将の条件」を、「理知的であること」「原則論に振り回されないこと」と、陸軍士官学校をはじめとする陸軍教育の弊害をあげて話す。半藤氏は、「決断を下せること」「目的を部下に明確に伝えられること」「情報を直につかむこと」「過去の成功体験にとらわれぬこと」「現場に身を置くこと」「部下に最善をつとめさせること」としている。お気づきのように、まさにリーダー論である。
    おなじ陸軍士官学校でも、アメリカは違うようだ。『ウエストポイント流 最強の指導力』では、危機に立ち向かうリーダーの三原則として、「リーダーは誰でも危機に直面する」「リーダーは誰も攻撃的でなくてはならない」「リーダーは誰でも自分の組織を勝利に導くため、全力を傾けなくてはならい」となる。半藤・保阪氏の名将論には、「勝つ」という視点がないが、ウエストポイント流ででは、「勝つ」ために強くなることを学び、「強い」ために恐怖を克服し、人格を陶冶し、組織に血を通わせ、失敗から学ぶことを知る。勝たなければ名将とはいわない。負けた武将への判官びいきがある我が国との違いかもしれない。
    ちなみに「愚将」の条件は、「責任をとらないこと」らしい。毎日ニュースで愚将たちを見ていることになる。
    あの戦争を率いていた軍事官僚たちの生死から学ぶことはおおい。

  • 第二次世界対戦における、陸軍及び海軍の将官についての評価。
    大局観、責任の取り方、人心把握が重要。

  • 名将に"マッカーサー参謀"と呼ばれた堀栄三は入ってないんだ。
    小沢治三郎は名将だと思ってた。
    名将、と挙げられた人で、どうして?、っていう人いたけど、詳しく知らないからなぁ。

    愚将に挙げられた人が揃いも揃って戦後を生きているのは腹立たしい。愚将と挙げられた人にもいろんな言い分あるんだろうけど、インパール作戦を始めた牟田口廉也はどうしようもないだろうな。

  • 名将の条件(P14):①決断を自分で下す、②部下に作戦の目的を明確に伝えられる、③情報を自分の目や耳でつかむ。
    愚将の条件(P174):責任ある立場なのに無責任。
    現代に通じる真理だと思う。もう一つ現在につながるのは、名将が必ずしも出世階段を昇り詰めていない事。上手く忖度できるものだけが残っていく。どこかで聞いた話だ。

  • 多少覚悟はしていたものの、やはり「特攻」の内実は暗澹たる気持ちにさせられる。あまりにも悲惨で、この上なく酷い。「国を護るための尊い自己犠牲」などと美談に仕上げて、思考停止してはならないと強く思った。戦前のごとく世論がどんどん右傾化している昨今、「特攻」や戦争そのものに対し、徹底的に考察されなければ、またこの愚が繰り返されないという保証はどこにも無いぞ……

  • 太平洋戦争にかかわった軍人22名の評価。

  • 対談形式なので短い時間で読了できた。半藤さんの名将の評価基準は分かりやすかった。14頁

  • 以前から気になっていた本だが軍人を名将と愚将に分けて語るというのは如何なものかという気持ちがあり、なかなか読む踏ん切りがつかず。だが、昭和陸海軍の失敗を読み、この二人の思想や話が好きで読んでみたくなったので読んでみた。名将に対しては良いエピソードにくわえ、悪いエピソードも交えて話しているので読んでいて面白い。米内光政や石原莞爾に対するエピソードは失礼な話になるがクスッとなる部分もあった。愚将に関しては自己顕示欲の塊のような部下を人を人と思わない人ばかりで読んでいて気が滅入る。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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