松本清張への召集令状 (文春新書 624)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166606245

感想・レビュー・書評

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    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    松本清張という人物を通し、戦前の召集令状の仕組みが明らかになっていく様子が書かれている。それは自分が考えているよりもひどい仕組みだったということが分かる内容だった。
    この本に書かれている内容は松本清張が体験したことのみでまっとうに運用されている地域もあったのだろうが、このように特定個人の恣意的な考えが含まれる余地がある時点でこの仕組みには欠陥があったのだと強く感じた。

  • 面白すぎる、これから松本清張を集中的に読もうかな

  • 清張の兵隊へのとられ方は、大岡昇平のそれとよく似ている。30歳代、妻子持ち。恣意的であることをうかがわせる人選。生きて還ることが期待できず、遺された家族の苦痛や苦労がまじまじと想起される状況。絶望の大きさは計り知れない。
    ひとの欲にまみれた描写の多い社会派作品を今に読むとき、清張の軍隊経験やサラリーマン体験がそれら作品のバックグランドにチラ見えする。清張をとりまく世界にとって、個々人において悪意は確かに存在し、世間において陰謀は確かに存在している。

  •  清張という人の本や映画を同時代で読んだり見たりした人間と、かつての有名な作家として読む人の差は、司馬遼太郎等々他の人気作家の作品以上に落差が大きいように思う。
     同時代に生きた読者にとっての清張の本の不気味さは主人公そっくりな人間が気が付いたら読者の身の回りのあちこちにいたというところにあり、また映画やテレビ番組になった映像にしてもその時代を生き抜いたアクの強い役者がいくらでもいたところから、息を呑むような絵作りができたというところにあったのであろう。この絵空事で終わらせない点が他の追随を許さない清張の作品の迫力となっていると思われるのだが、本書は長年身近で清張の制作現場に立ち会っていた編集者が書いたものだけに、その間の呼吸がよく伝わってくる。

  • 理不尽で不正にまみれる当時の国家権力が、この反骨の作家を作り上げたのだと得心させられる。故に現在の私らは、この大作家による膨大な著作を楽しめるというわけだ。
    偉いなあ、大日本帝国。

    「遠い接近」という作品は未読だったので、探してみるのですが、どうやら廃刊となっているよう。古書店をあたってみるか。
    古代史学会との確執に関する言及も併せて、たいへん面白うございました。
    (2008年記)

  • [ 内容 ]
    一家七人を支える中年版下職人に、意外な赤紙が届いた。
    その裏事情とは?
    後の作品に託した叫びとは?
    担当編集者時代の私的メモをまじえ、戦争が残した深い傷に迫る究極の作家論。

    [ 目次 ]
    第1章 松本清張への召集令状
    第2章 最初の軍隊生活
    第3章 ある日の松本清張
    第4章 孤高の作家
    第5章 召集令状とは何だったか
    第6章 松本衛生兵の真実

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 兵事係による恣意的な徴兵の話は、先日読んだ浅田次郎の『終わらざる夏』とつながって、興味深かった。
    文章自体はちょっと素人っぽいと感じてしまった。著者自身の松本清張との思い出と経験に基づいて書かれているのだが、推測による部分が多く、同じ事が繰り返し書かれていて、読みにくかった。

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著者プロフィール

1941年、大阪市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。専攻・国際関係論。日本文藝家協会会員。
主な著書として、『敷島隊の五人(上下)』『零戦の誕生』『暁の珊瑚海』(以上、文春文庫)、『ミッドウェー海戦(第一部・第二部)』(新潮選書)、『勇者の海』『空母瑞鶴の南太平洋海戦』(以上、潮書房光人社)、評論として『特攻とは何か』『松本清張への召集令状』(以上、文春新書)、『作家と戦争――城山三郎と吉村昭』(新潮選書)がある。

「2020年 『ラバウル航空撃滅戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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