新脱亜論 (文春新書 634)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166606344

作品紹介・あらすじ

いま東アジアは「坂の上の雲」と同じ舞台設定に立ち戻っている。福沢諭吉の「脱亜論」をはじめ、陸奥宗光、小村寿太郎などの明治の先人たちのしたたかなリアリズムに学ぼう。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年の本になります。

    今年に入って『呆韓論』に代表される韓国分析?本が流行っていますが、
    一部で『嫌韓流』が浸透していたものの、当時はまだまだマイノリティ。

    その時代に、この刺激的な題名でよく出せたなと思いますが、
    中身は冷静かつ丁寧にまとめられていて、分かりやすいです。

    開国以降の近代日本の視座から、国際情勢を俯瞰しているとも、言えます。
    そういった意味では題名で損しているかな、とも。

    ちなみに元ネタは福沢諭吉翁の「脱亜論」という論考でしょうが、
    福沢翁自身は、心の底から朝鮮の近代化を願っていました。

    手助けしていた朝鮮人の友人への純粋な想いもありましたし、
    日本の国防上での、対ロシア戦線を考えての視点もあったでしょう。

    ちなみに、伊藤博文も同じスタンスで、その観点からも、
    最後まで朝鮮併合には反対してたんですよね、そういえば。

    そんな彼が暗殺されたが故に、併合の流れが加速されたのですが、、さて。
    この事実を、現代に生きる半島の人々はどううけとめるのでしょうか?

    ちなみに私が「脱亜」を強く実感したのは、2002年のワールドカップの時、

    韓国の“少林サッカー”自体も酷いものでしたが、、
    ポルトガル、イタリア、スペインは、本当に可哀そうでした。

    ただ、それに輪をかけて酷かったのが、日本の既存メディアの偏向振り。
    あの試合内容を見て応援しろとか、ただのキチ○イです。

    当時、さんまさんがドイツのユニフォームを着たのも、納得でした。

    それ以前から、どことなくおかしいとは感じていたものの、
    ここまで強い違和感は無かったです。

    不思議と、あれから10年が過ぎても、相変わらずに、
    あの時の韓国サッカーを褒めている人がいるのが、不思議です。

    宇都宮さんとか沢木さんとか、心の底からそう思ってますか?と、
    機会があったらぜひ一度尋ねてみたいのです。

    お二方とも通常のスポーツ系のルポについては、
    とても読み応えのあるものを残されているだけに。

    と、、閑話休題。

    なんにせよ、安倍政権になって少しは言論の自由が戻ってきたのかな、
    なんてことを実感したりもしています、通名とか廃止希望デス。

    ん、石平さんの『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』を思い出しながら徒然に。

  • 植民地経営専門学校である拓殖大学の学長らしい提言の書。東アジア共同体は今となっては夢物語だが、民主党政権時代にはそれなりに盛り上がった記憶がある。その後の中国の台頭によるパワーバランスの変化や日中韓の関係の悪化を考えると、2008年に刊行された本書は先見の明があったと言えるだろう。よって、今だからこそ読まれる価値のある書であるのかもしれない。

  • 脱亜論といえば福沢諭吉ですが、福沢が金玉均らの李氏朝鮮末期の改革派勢力を支援し、朝鮮の近代化を実現することに奮闘したという事実は一般には知られていません。
    というか、自分もよく知らなかったし、日本の近現代史教育においてもほとんどスルーされてしまっているのではないかと。
    おそらく現在の韓国においても”親日派”のレッテルを貼られて評判がよくない人物になってしまってるんだろうし、日本の教育界における史観もそういった思想に引きずられてしまっている部分もあるような気がしますが。

    三百年の鎖国から、一気に帝国主義世界の海へと船を乗り出すこととなった明治期の日本において、大陸から列強の脅威が迫る橋頭保となりうる朝鮮半島の持つ意味合いは極めて大きいものがあった。
    日清戦争も日露戦争も、そしてその後の中国大陸への進出も、朝鮮半島がロシアをはじめとする列強の手におちることをなんとしても防ぐという命題の延長線上にあった、と。
    明治初期から太平洋戦争にいたる日本外交がたどった道筋を、陸奥宗光、小村寿太郎といった政治家の、リアリズムに基づいた硬骨な外交姿勢を詳らかにしながら紐解いていきます。
    いわゆる”保守”史観に基づく論じ方になっていますが、韓国や台湾の植民地経営について積極的に評価できる側面があることについては、今の保守派政治家が言葉足らずに”失言”してしまうのと違って、数値データも紹介しながらの論理展開なので理解しやすくなっています。

    日英同盟という”海洋国家”同盟を廃棄せざるを得ない状況に陥り、中国大陸への関与を深めていってしまったことがかつての日本の過ちの本質であり、21世紀初頭の現在においても、負の歴史に学ぶことが重要であり、”海洋国家”同盟である日米同盟を堅持し、東アジア共同体などという幻想に惑わされて中国の地域覇権構想に飲み込まれるべきではない、というのが著者の主張です。
    かつての日英同盟と現在の日米同盟をアナロジーで語るあたり、やや説明不足な感は正直しますが、東アジア共同体という発想が多分に概念的で情緒的でリアリズムに欠けるものであるという感覚には共感できる気がします。

    著者自身、司馬遼太郎の影響を多大に受けていることを認めていますが、この本にはいわゆる”坂の上の雲”的”司馬史観”を見て取ることができます。
    明治の人は偉かったのに、昭和初期の軍部(陸軍)がそれを台無しにした…ってヤツです。
    確かに結果的に見ればその通りなんだけど、明治の日本人も昭和戦前の日本人も、加えて言えば戦後世代の我々も、日本人という点では同じなわけで、そうそうその気質や能力が変動するようなものでもないような気がします。
    いずれにしてもあまりにシンプル化されたレッテル貼りは、却って物事の本質を見誤ることにつながってしまうような。

    あ、ちなみに本著がそういう安易なレッテル貼りをしている、という意味ではありません。
    明治から太平洋戦争までの東アジア外交史を概観するのにもってこいの内容だし、冷静かつ情熱的に日本外交の現在と将来を憂いている心情が伝わってくる良著だと思いました。

  • 今の国是としての対米追従。近代史としては新しいことは皆無に近い。それしかないという、いつまでも続く我々の「宿命」。

  • 東アジアはその統合度を一段と高めるために、二国間、他国間でFTA・EPAを積極的に展開し、この地域を舞台に自由化のための機能的制度のネットワークを重層的に張りつめるべきであろう。しかし東アジアの統合体は、FTA・EPAという機能的制度構築を最終目標とすべてであって、それを超えてはならない。共同体という「共通の家」の中に住まう諸条件をこの地域は大きく欠いており、また共同体形成の背後に中国の地域覇権主義が存在するとみなければならない以上、東アジア共同体は日本にとってはもとより、東アジア全体にとってまことに危険な道である。-との著者の指摘は正当である。

  • なかなかおもしろい考え方だと感じた.
    アジアでEUの真似事をやってもうまくいかないだろうなあ,と漠然と考えていたことの裏付けをしてくれたような感じ.

  • [ 内容 ]
    いま東アジアは「坂の上の雲」と同じ舞台設定に立ち戻っている。
    福沢諭吉の「脱亜論」をはじめ、陸奥宗光、小村寿太郎などの明治の先人たちのしたたかなリアリズムに学ぼう。

    [ 目次 ]
    先祖返りする極東アジア地政学
    陸奥宗光の日清戦争―機略と豪気
    朝鮮近代化最後の挑戦―金玉均と福澤諭吉
    東アジア勢力確執の現実―果てしなきロシアの野望
    日露戦争と日英同盟―海洋国家同盟成立の意味
    韓国併合への道程―併合は避けられたか
    台湾割譲と近代化―日本の統治がもたらしたもの
    第一次世界大戦とワシントン体制―追い込まれる日本
    中国とはいかなる存在であったか―分裂と挑発
    海洋国家同盟か大陸国家提携か―日本の選択
    「東アジア共同体」という錯誤―中国の地域覇権主義を見据えよ
    日米海洋国家同盟を守る―自衛権とは何か

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    [ 参考となる書評 ]

  • 坂の上の雲の時代背景がよくわかる本。
    日本がどのような理由から日中・日露戦争に突入していったかが詳細に説明されている。

    教科書だけでは絶対にわからない事実が満載。

  • もう少しワクワクするような内容を期待したのですが……

  • 東アジア共同体なんて望ましくもないし、そもそも不可能だと説く。

    全編の8割方は、明治から昭和の敗戦まで、日本が大陸、特に中国、韓国との関係においていかに苦闘したかのおさらい。この辺の歴史についてしっかりした見方を持っておくことは、これからの対アジア外交においていろんなヒントを提供してくれそうだ。

    言うまでもなく、タイトルは福澤諭吉の「脱亜論」のひそみにならったもの。昨今の中韓を見ていると、「こんなヤツらとは一緒にやっていけないわ」というのは実によくわかる。100年やそこらで、民族性や国民性が変わるはずもないし。

    筆者の説く海洋国家論、日米同盟重視説は、岡崎久彦、川勝平太などと共通する。梅棹忠夫を引くところも、川勝に似ている。ともあれ、我が国の戦略としては、これ以外にはありえないだろう。

    終盤の主張部分には、「死ぬまでに、これだけは言っておきたい」と思い詰めているかのような迫力を感じる。未来の日本を守るのは、戦後に、平成に生まれた我らこれからの日本人の責務である。

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著者プロフィール

拓殖大学元総長

「2022年 『世界の中の日本が見える 私たちの歴史総合』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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