地球温暖化後の社会 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2009年2月20日発売)
3.31
  • (1)
  • (4)
  • (7)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 44
感想 : 6
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784166606832

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • このまま温暖化が進むとどうなるのか、こうなるからだから温暖化をストップさせようという論理につながる本です。途中、最近の野菜は洗わなくても良いなんて書かれていて、ホントかよと思ってしまう部分もあります。そういう部分があるので、他の温暖化についての部分にも勘繰りを入れたくなります。

    地球温暖化についての本は、ここ2年くらいに二冊読んでいて、
    どちらも恐怖や不安を煽るような印象がありました。

    ・『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』 田中優

    ・『私たちの地球は耐えられるのか?』 ジル・イェーガー 手塚千史訳 松本聰解説

    それが今作では、読者に余計な心配をさせないという心遣いが感じられました。
    そして、環境問題に対しての慎重な姿勢も感じられます。
    また、巻末に書かれていますが、温暖化の問題について、
    これからの科学技術のありかたについて、疑問と不安をもったのが
    この本を書くきっかけだったそうです。
    本書でも、温暖化による気候変動によって、
    異常気象だとか伝染病の流行だとかが起こりうることとしてあげられています。
    だけど、読み進めるとわかりますが、それで不安を煽るような書き方は
    されていないんですね。
    だからそれに対処していこうという静かな気概を伝えてくれて、
    方策の現状や案件などを教えてくれます。
    人間らしい、「希望を持つ」ということを
    捨てないでいてくれているのが読んでいて嬉しいところ。
    前に読んだ二冊だと、「きみら、もう終りなんだよ、わはは」
    と言われているような気がしないでもなかった。
    パニック映画が大好きですっていう人が書いたような
    読み物にも読めなくもなかったんです。
    たとえば、前に読んだ2冊には、メタンハイドレートという物質が登場しました。
    化石燃料に代わるエネルギー源として注目されているとともに、
    これが多く蓄積されているシベリアの氷河の下などで、
    もしも氷河が溶けだしてメタンハイドレートが空気に触れて溶けだしたら、
    二酸化炭素の比ではない温室効果ガスとして
    地球温暖化を急速に進めていくことを危ぶんでいました。
    そこまでいったら、取り返しがつかないという境界線を見せられているようで、
    読んでいて怖い思いがしました。
    今作ではそこには触れていません。
    なにか発見があって、業界内で興味の薄れていっているトピックなのか、
    それとも、話がややこしくなるから書かなかったのか。
    この瀧澤さんという著者の、この件に関する考え方も、
    知りたかったといえば知りたかったですかねぇ。

    また、他にこの本の面白かったところは、
    今の農薬は改良されていてほとんど残留しないようになっている、だとか、
    ゴミの分別はエコのためかと思われているけれど、
    実は各自治体のゴミ処理能力に合わせて設定されている、だとかです。
    それ以外にも、バイオ燃料の、全然エコじゃない面や
    食糧不足を生む面だとかの紹介などなど、
    ぽこぽこと面白い情報が盛られていました。
    そうそう、レジ袋は買い物で使う一次使用のほかに、
    家庭でのゴミの始末などの二次使用で衛生管理に一役かっているから、
    一概に「エコの敵」とはみなせない、なんてところは痛快でした。

    僕自身のエコに対する取り組みっていえば、
    なんだろうなって考えるんですが、あんまりありませんね。
    電気をこまめに消すっていうのをやりますが、
    それだって大した効果はないようなんですよねぇ。
    あとはドライヴを控えていることですかね。
    地方に住んでいるので、ちょっと買い物に行くのにも
    都市部だとかまでやっぱり自動車で行くことになるんです。
    そういうのは仕方がないとして、気晴らしのドライヴには行かなくなったなぁ。
    そういうのも楽しかったんだけれども。

    さて、2010年の幕開け、そして10年代の幕開け。
    本格的に地球温暖化と格闘しなければならない時代に入ってきました。
    ちょっと遅いのかもしれませんが、
    こういう本を読んでおくことは悪いことではないと思います。
    さっきも書きましたが、この本は世界的調査機関IPCCの調査報告に
    対しても慎重な姿勢で書かれています。
    そのあたり、読んでいて好感が持てるかと思います。
    少々、つっこみ不足な感もあるといえばあるのですが、
    日本人らしいバランス感覚でのまとまりかたをしている本ではないでしょうか。
    ちなみに、この本が発行されたのは、2009年2月20日ですので、
    まだそれほど古くはありませんことをお伝えしておきます。

  • 2009年刊行。

     タイトルは若干それに沿う叙述もあるが、誤導気味である。

    ① いわゆる再生可能エネルギーにおいても、設備投資と準備が温室効果ガスの増加を招き、再生可能エネルギー採用による温室効果ガス削減は、これら総体で考えなければならないこと。
    ② 刊行時では補助電力源としての太陽光発電の意義と蓄電池開発の急務。
    ③ フクシマ前ながら、原子力発電の限界に言及する点。
    ④ 温室効果ガスの削減しか、人為的に温暖化現象を抑止する方法がない点。
    ⑤ 電力使用量の抑制と化石燃料利用の移動器機使用の抑制ほど、温室効果ガス削減に効果的なことは少ない。
    といったあたりが目に付いた。

     ただ、あくまでも本書は取っ掛かりでしかないなぁとは思う。良くも悪くも総花的で、各々の深みには乏しい。

  • IPCCの報告書に基づいて、地球温暖化している原因、現状、問題点などを一人一人の個人の目線に立って書いている本です。地球温暖化に関する疑問点を上げ、それについての意見も書いてくれているので、今わかっていることと、わからないことが読者である私の頭の中ですっきりまとまったって感じがします。

    この本の中で一番重要なことは次の3つ。
    「地球科学に関して完全に理解できていない現段階でも、対策を講じる必要がある事」
    「対策には社会全体の変化が必要だという事」
    「それでも科学技術が世界を救うという事」
    温暖化の原因がCO2だと決まってないけど、その可能性は現段階で非常に高い。また、民政家庭部門のCO2排出量は1990年比で2009年は26.9%増加している。もちろん全体でみると一番多くを占めている産業部門に比べれば、家庭部門は少ない量だけど、そこを減らすことが重要。だから、一人一人のCO2削減に関する考え方を植え付けることって必要だということが書かれています。私自身、今仕事柄CO2の削減に取り組んでいるから、やっぱり人の意識って大事なんだなって再認識させられました。気になった単語としては、カーボンオフセットとカーボンフットプリント。特にカーボンフットプリントは初めて聞きました。
    ちなみに、今の日本では、1人あたり年間2100kgのCO2を排出しているようで、1日だと1人当たり約6kgCO2の排出量らしい。具体的な量って初めて聞いた☆★☆

  • ただ単に,地球温暖化の原因を二酸化炭素と断言せずに,いろいろな可能性について言及しつつ,現実的な対策を提案しているところに好感が持てる本.

  • 地球温暖化についてIPCCの報告書をもとに概要が説明されています。比較的わかりやすい説明がされているのがいいです。

  • 地球温暖化問題(資源問題)について、ある程度全体像をとらえている。
    また、事実と主観を区別して書いてある点、あらゆる可能性を想定した上での論評という点などで評価できる。


    所々、説明が完全ではない点や視点の欠如は見られるものの、本の分量を考えると仕方ないということと、著者の論旨に影響を与えるほどではないのでそれほど問題ではないと考えられる。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

◆科学ジャーナリスト。
社会の未来と関係の深いさまざまな科学について、著作活動等を行なう。
2005 年4 月、有人潜水調査船「しんかい6500」に乗船。
◆著作に『深海の科学』(ベレ出版)、『日本の深海』(講談社ブルーバックス)、『地球温暖化後の社会』(文春新書)、『アストロバイオロジーとは何か』(ソフトバンク)、『身近な疑問がスッキリわかる理系の知識』(青春出版社)など。
◆内閣府審議会委員。文部科学省科学技術学術審議会臨時委員。慶應義塾大学大学院非常勤講師。日本科学技術ジャーナリスト会議副会長。

「2019年 『150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀧澤美奈子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×