- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166607587
作品紹介・あらすじ
昭和十三年、ナチスに追われたユダヤ人を満州に逃がした陸軍軍人・樋口季一郎。五年後、戦局が傾く中、今度は司令官として非情の決断を迫られる-。運命に翻弄されたヒューマニストの生涯を追い、戦場における生と死のドラマを描く力作評伝。
感想・レビュー・書評
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オトポール事件のことがほとんど書いていなかった。当人はアッツ島玉砕、キスカ島撤退のことが頭にあったんだに違いない。オトポール事件か薄れていても感動は最上級した!
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アッツ島の玉砕・キスカ島の撤退時に北部軍司令官として指揮を執った樋口李一郎中将の人生を綴る本です。
樋口中将の人生には3つの大きな出来事が起こりました。上記のキスカ・アッツでの戦いに加えて、杉浦千畝よりも先にユダヤ人の命を助けたこと、ポツダム宣言受諾後にソ連軍を交戦したことです。
本著はこれら3つの出来事に対して樋口中将がいかに決断したか、中将の人生を紐解くことで、人柄の面からアプローチして理解しようとするものです。
日本の上級指揮官は当時の教育・人事もありますが、優れた戦略眼を持った人物は少なく、それが原因となって必要以上に命が失われた側面もあります。そのなかで樋口中将は人命を大切にする優れた戦略眼を持つ指揮官だということがわかります。どのような教育や経験を経て重大な決断を行うに至ったかを注目して読むことを勧めます。 -
樋口季一郎と言う名前を知らなかった。大戦は、ネガティブに扱われる事が多いが、その中に尊敬できる人がいた事をたまに知る。
国の方針、上官の立場がある中で、自分の、人としての考えを述べ、難局にあっても最大限できる事を実行する。普通、どこかで諦めてしまう事を、彼は手を抜かずやり遂げる。
これは、彼だけができる事だったのか、学び、経験すれば、他の人もできるようになる事なのか。このような素晴らしいリーダーは、どうやって生み出されるのか、とても興味を持った。
良き家庭人という対象的な姿も、好印象に感じる。 -
アッツ島の戦いで援軍が送れなくなることを部下にどんな想いで伝えたのかと思うと考えさせられた。高級軍人でありながら部下想いでそして家族想いであった樋口季一郎の人間性が伺えました。この本からの気付いたことは明治から昭和にかけて数多くの優秀な軍人たちがいるが共通することは上を見ずとも信念に従って独断できる人だなと思う。
オトポール事件はそれが象徴される例かなと。ソ連から戦犯にされそうだったがユダヤ人が守ってくれるのを知り、最後は人間性やなとも思う。
キスカ島の撤退だって陸軍や海軍と連携できたこともすごいが、まずは人命を大切にする樋口季一郎だからこそ実現できたことだなと思う。
そんな人間性から占守島の戦いも勝てたのではないかと私は感じる。自分も人の上に立つ時がくれば樋口季一郎みたいになりたい。 -
オトポール駅のユダヤ人救出劇。アッツ島玉砕命令とキスカ島奇跡の撤退。占守島攻防戦。指揮官たるものの悲哀。今も昔も、人物はいるもんだ。淡々とした筆致で迫ってくるゼネラルヒグチ奇跡の物語。
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組織人としていかに生きるかという視点で読んだ。与えられた役割の中で何をなすか。満州やアッツでの決断。戦後の占守島での決断。人間性、教養を磨くのが一番。日々の実践で人間を磨いていく。
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陸軍中将の樋口季一郎は、ソ連通の情報将校であった。ハルビン特務機関長時代にユダヤ人難民を救出。玉砕したアッツ島守備隊を所管する北部軍司令官でもあった。
その経歴をみても、永田鉄山を刺殺した相沢三郎の上司だったなど興味深いものがあるが、本書を読むと陸軍の良識派であった事がある。
著者は、樋口を讃美する事なく迫ろうとしており、そのスタンスには好感がもてるが、巻末に参考文献一覧がないのは残念である。 -
2011/10/02 23:53 面白くはなかったが、この人を知ることが出来たのは良かった。でも題名は疑問。
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戦前の陸軍のキーマン達との交流、オトポール事件(ユダヤ人救出)、アッツ島玉砕、撤退戦を潜り抜けた陸軍将軍樋口季一郎の評伝。
「栄光」も「苦しみ」も墓場まで持っていくタイプの人物であるが故に、評価されるべき人である事は絶対に間違いない。
捕虜虐待・虐殺であったり、部下を見殺して自分の保身を中心に考えた悪役達が、帝国陸軍の固定概念としてしまいがちである。本人は、烈しく苦労しているのだが、周りの人達を不快にさせない生き方には、当たり前であるが感動的である。
戦争という異常事態の中にある軍隊の中にでも、(軍隊も当然社会であるのだから一定の確率でいるはずであるが)、粛々と正々堂々と生き残った人がいる事を知る良書。
著者プロフィール
早坂隆の作品





