外交官が見た「中国人の対日観」 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2010年8月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784166607679

みんなの感想まとめ

異文化理解と日中関係の重要性をテーマにした本書は、現役外交官が中国での経験を通じて、中国人の日本への見方を描いています。著者は、北京での駐在中に得た知見を基に、中国の中学生や大学生との交流を通じて、日...

感想・レビュー・書評

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  • 先に読んだ元外交官の宮本雄二氏の熱い外交論に痺れたので、次の外交官中国もの積読本を開巻。経歴を見ると元々韓国の専門の方の模様。そのせいか、ちょっとマニアには物足りない内容でもあったが、第5章の未来について(とはいえ、本が出たのは2010年だが)の項目内には、どちらかというと日本人向けの叱咤激励が書かれていて、やはり色々と思うところがあるのだなと感じる。

    内容は特に日本に対して今ほど強硬ではなかったころということもあり、比較的自由になってきている、問題を抱えていることは中国人も理解している、強大になりつつある自国に自信を持ち出す一方で自制の精神も忘れないといったトーンで占められている。結局、今はその頃からまた逆の方に触れてしまっている感が強いが、政治のさじ加減一つでどちらにでも触れてしまう状況と、そこに人々がどこまで疑問を持っているのかがやはりわからない。個人的に中国に触れる機会が多かったが、その時はより強大になっていっている中国に自信が強まっている人が多かった印象だ。

    P.P.120
    二〇〇八年九月のリーマン・ショック以降、アメリカの金融市場と経済は大打撃を受け、ヨーロッパ各国と日本も深刻な後退期に入った。中国も沿岸部の輸出産業に影響はあったが、他国に比べればそのパフォーマンスの良さは際立っており、全体として高度成長が順調に続いている。オリンピックの成功も国民の高揚感に弾みをつけるのに一役買った。(中略)「2008年:中国だけが資本主義を救える」というフレーズにその高揚感が表れている。
    ところが、新聞の論調は、自重、自制を繰り返しうながしている。(中略)人民元の切り上げ問題や地球環境問題など、国際場裡で中国の負担が増えることを回避しようとする政治的思惑が中核にあることは間違いない。

    P.191
    中には中国が日本から輸入したものもある。例えば「民主」、「人民」、「革命」、「代表」、「思想」、「幹部」などの政治用語、「肯定、否定」、「主観、客観」、「具体、抽象」など思考の基本を律する抽象概念、さらに「手続」、「広場」など。これは中国の研究者がきちんと調べた結果です。

    P.207
    はたして中国人の愛国心は強いのか、弱いのか。私の答えは「弱いように見えても、強い」だ。悲憤慷慨する壮士というより洗練されたビジネスマン風だが、合理的・功利的な愛国者が非常に多い。
    中国人は、国家や組織というものに根本的には信を置かず、自力で切り拓いていくしかないと考えている。だが同時に、自分の生活もビジネスも、国の政策や外国との関係によって左右されることをよく理解している。(中略)国の制度に百パーセント身をゆだねるようなリスキーなことはしないが、これに背を向け、自分の可能性をつぶすようなことはもっとしない。

  • 誰からも文句の出ない態度は外交官僚としては立派なものかもしれないが、新書の執筆者としてはこれほどつまらないものはない。
    著者はかつて中国公使を務めていたそうだが、もうとっくに退任しているのだからもう少し鋭いとんがった考えを開陳してほしいと思えた。

    2017年5月読了。

  • 刊行は北京五輪後の2010年。著者は在中国日本大使館公使。顕著な経済成長を遂げる中国につき、知日派中国人との対話等から、長短混在の中国の現状を解読。自慢と自制が同居しつつも、実利優先の中国人像と、単純なナショナリストではない知日派かつ高学歴中国人の考え方を描く。本書で看取すべきは、偏狭なナショナリズムでは、相手のプラグマティズムに到底太刀打ちできないということだろう。怜悧な対日観の一方、無知も露呈する。周恩来の日本留学歴を知らないとは。また、留学生は10倍するくらいの荒療治をすれば対日観も変わってくるか?
    ちなみに、学生は猛勉強するが、知識の詰め込みだけでなく、表現・プレゼンも獲得可能な技能とみる。

  • 北京大使館に公使として二年間駐在した、外交官が見た中国を描いた著。2010年の出版でやや古い。また、赴任時期(2007年~2009年)がたまたま日中関係良好な時期だったこともあり、希望的、楽観的な論調になっているのが気になる。文化交流を担当していたということなので、敢えて明るい面を強調したのだろうか。中国に学べ、というのはその通りだと思うのだが。著者も「私が北京で勤務していた時期は、両国首脳のはっきりした日中関係重視の姿勢もあって、両国の関係が改善した。中国メディアも赴任する前に私が想像したより、好意的であった(…)。」と書いているが…。

  • 読みやすく、わかりやすい内容だった。

  • もしまだ中国を日本で報道されるようなイメージでしかとらえてない人がいればぜひこの本を読んでほしい。確かに中国は反日デモを行ったり環境汚染が改善されてなかったりと日本より劣っている部分はあるがそれは中国の一部分にしかすぎない。本当に賢い、理解ある中国人は日中のことも冷静に考えることができるし、また彼らの目は日本を通り越して欧米へ常にむいている。むしろ私たち日本人の方が80年代の中国イメージを引きずったままで、愚かしいのではないかとさえ思ってしまう。やはり文章ではなくじかに見たいので、来年の北京留学をぜひとも成し遂げたい。

  • 中国人の日本人に対する考え方がよくわかる。良い点の評価と、歴史に対する評価。メディアで報道される排日運動が必ずしも大勢ではなく、政治やビジネスの世界で成功している人々は、冷静に状況を見て振舞っていることがわかった。

    帯にも書いてあるが、中国人は日本人より韓国人のほうが嫌いというのは印象に残った。近い国同士は、過去に関係が悪くなっていたり、領土や歴史の問題(両国の場合、渤海の位置づけ)など、様々な問題を抱えている。そのなかでも、一番近くの国として友好的な関係を築くために各国の政治家や外交官が努力されている様子がわかった。

  • 読みやすかった。中国の優れた一面、意外な一面を知ることができてよかった。

  • 我々日本人も世界を舞台に(相手に)主体的に行動しなければ、いつのまにか中国だけでなく他の国にも遅れをとってしまうと思った。
    私たちは、中国の食品問題やマナーの悪さ、感情的な反日デモなどを見て、まだまだ未熟な国だと思っている。経済では大国になっても、極端な貧富の差を抱え、世界のリーダーにはなれないと思って安心している。
    しかし、中国には、冷静に世界の中で進歩していく戦略を練っている人や自国の未熟な点を認識し、外国から美点を学ぶ姿勢を持った人、猛勉強をして自分を高め、祖国のために働こうと考えている人がいることを知った。
    我々は中国の悪い点ばかり見て安心するのではなく、激動する世界でどう生きていくか考えて行動していかなければならないと感じた。
    励まされた気がした。

  • 外交官としての応対・姿勢・技術が勉強になる。中国赴任中の人々とのやり取りで、相手の感情を害することなく自らの公式な立場を明らかにし間違いを正す論旨をはっきり述べる。登場するのは、理性的で寛容な人々。とはいえ、冷静な視点は過熱しやすい時期だけに参考になる。

  • 取り立てて新しい知見があるわけではないですが、著者が公使という肩書きであるため、やはりかなり知的エリートとのふれあいが多かったようです。そのため、中国のエリートたちの本音が垣間見えます。

  • 道上さんはもと韓国の大使館にもいた人で、同じ中公新書で『日本外交官、奮闘記』を書いている。ぼくはその時から注目してきた。道上さんは、外務省の韓国畑の出身で、韓国に対して、堂々と論陣を張った人である。その道上さんがそのあと少しおいて今度は中国に赴任していた。本書はその時の体験を踏まえたものだが、全体は中国の親日派の意見を広く集約したという感じがする。中国の良識層の意見の紹介である。道上さんは同時に、本書で日本のよさをたくさん書いてくれている。その核心は「人に迷惑をかけない」という精神だ。お金儲けや一番になることよりもいい仕事をするということに日本人は価値を置いているともいう。そうだと思う。民度も高い。中国がいくら経済大国になっても民度が上がらなければ、ほんとの大国とはいえない。韓国と中国との違いについて、氏は韓国との場合は違いを強調し戦ったが、中国はむしろ同じ人間だから大丈夫、でも違いもあることも忘れないでと言うそうだ。中国では相手に反撃するだけでなく、一度相手のレベルに立って言ってあげた方がいいとも言う。これはまさに中国人のメンツの尊重だ。中国人がなぜ韓国人に悪感情をもつのか、その理由も本書には書かれている。

  • 2009年7月まで北京の日本大使館勤務を二年強していた元駐中国公使が書いた本。

    現在の生の中国や中国人は、思っていたより冷静で日中の今後に希望が持てました。むしろなぜこういう内容が新聞やTVで発信されないのか?とあらためて日本のマスコミの罪を感じる。

    反日教育を受けた高校生が日本に修学旅行に来た後書いた感想文読むと、その反応に喜んだり、気を引き締めたり。


    中国メディアについての記載では、メディア統制されてる国であるが、急激に変化しており、世論誘導もあるようだが、意外に議論も活発だそうで、海外リサーチしながらうまく発信し知的議論する分厚い知的エリート層が各地にいるなど、考えていたのとはちょっと違う中国が浮んで来た。

    これを読みながら、日本のメディアのほうがレベル低いのではないかと感じてしまった。

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著者プロフィール

1958年大阪生れ。東京大学法学部卒。ソウル大学研修後ハーバード大学修士。韓国で5回計12年勤務し、外務省きっての韓国通。在中国大使館公使、在韓国大使館総括公使、在ドバイ総領事、在釜山総領事、日中韓協力事務局長の後、現在駐ミクロネシア連邦大使。『日本外交官、韓国奮闘記』『外交官が見た、中国人の対日観』(共に文春新書)など日本で3冊、韓国で2冊の著書あり。中韓両国で公使を務めた外交官第一号。新聞・雑誌寄稿、大学講演等、対外発信に努力。

「2022年 『韓国の変化 日本の選択』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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