金正日と金正恩の正体 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2011年2月18日発売)
3.54
  • (4)
  • (9)
  • (10)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 79
感想 : 13
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784166607976

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 金氏三代について知りたくて読書。

    金氏三代を通じて北朝鮮の現代史を知ることができる。非常にバランスよく分かりやすく紹介されている。

    本書発売後に金正日総書記が死去し、2013年末には張成沢国防副委員長が粛清と、北朝鮮は大きく動いた。張成沢が権力奪取を測ったものであるならば、本書で指摘された通りだった。

    金正日政権時代と変わらぬ元老体制は続いているようだ。パルチザン派や朝鮮戦争の英雄たちである元老はあと10、20年で世代交代すると思われる。その時、北朝鮮がどうなるかに注目したい。逆に言うとそこまで崩壊することはないと思われる。

    李氏朝鮮を現代へ蘇らせた金氏朝鮮と表現する専門家がいる。本書の結論として、今後、北朝鮮は王政国家、王国を目指すのではないかと結んでいる。もし、そうだとしたら、知る限り20世紀以降でブータンを除き、王国が誕生した国はないはずなので、新しい国家の形をなそうとしているのかもしれない。

    世界の王には若年で即位する例もあるとして明治天皇が14歳で即位したと紹介しているが、その例は不適切。明治憲法の元でも天皇に絶対王政のような権力はなかったのだから。北朝鮮が目指しているとしたら朝鮮版絶対王政なのかもしれない。

    訳者名がないので著者が日本語で書いたものと思われる。中国の朝鮮族出身の知日派の学者が、朝鮮半島、中国、日本を冷静に分析して日本人へ伝えてくれることは日本にとっても非常に有益だと思う。

    読書時間:約1時間25分

  • 金日成、金正日、金正恩と続く北朝鮮のトップ。金正男も含め、生い立ちが批判でもなく持ち上げるでもなく書かれているので、そのロイヤルファミリーがどのような人物たちであるのかを知るには良い一冊だと思う。

    ただ、この本の初版が去年。金正恩が世襲を終えた今読むとちょっと興ざめしてしまうような内容になってしまったことも否めない。

    著者があとがきに書いている夢、東京から新幹線に乗り、下関から海底トンネルで釜山へ、ソウルを経由し平壌へ。その後北京へ。
    そんな世の中が来るとすれば、いいんだろうなぁ。
    国家間の政治的、軍事的なイザコザが無くなっても、そういう構想が出たらきっとどの国の新幹線技術を使うかでモメるんだろうなぁ…

  • 金父子のそれぞれの生い立ちから指導者としての立場・環境の違いなどを周辺人物なども含め過不足なくまとめている。新書とはいえ、独裁国家を知るのに重要な独裁者研究の本としてしっかりまとまっている。11年初頭に出版された。
    一時、正恩の兄の正哲が正日の後継者に内定したとの観測が韓国政府高官を始め日本や海外の専門誌などでも広がっていたが、それについては根拠となる朝鮮労働党系の文書が偽物だった可能性もある一方(韓国の元統一部長官でも文書の真偽を確定できなかった)、北朝鮮内部での後継者選びがかなり錯綜していたと指摘しており、北朝鮮の重要な動きを見通すことの難しさを示している。
    また著者は、今後の正恩政権の国内的な安定は、周辺のパワーエリートをどのようにうまく采配するかにかかっているとするが、ただ、正日と違って生まれた時からプリンスとして育てられてきた正恩が人心掌握の能力があるかどうかについては疑問を示している。本書が出版された段階では正日があと数年は持ちこたえるとみられていたようだが、昨年末の「急死」を受け、正恩は後継者としての実績作りに相当急いでいるのではないかと思われた。ただ、外交面では利害関係国が引き続き北朝鮮には何もできない(しない)状況が続きそうだ。

    http://hon.bunshun.jp/articles/-/35

  •  本書は、2011年(平成23年)2月の発行だが、2011年12月17日の金正日死亡後の北朝鮮の後継体制などを的確に予想しており、現在の北朝鮮情勢を先取りした本であると思った。
     本書では、北朝鮮における金一族のロイヤルファミリーの内実を詳細に描いている。その内容は真偽不明の内容も多く、確認するすべもないものではあるが、「金氏王朝」の詳細な描写は迫力があるとしか言いようがない。
     本書の北朝鮮における「絶え間ない粛清」や「恐怖政治」には、それが事実であるならば、戦慄を覚えるものである。数百年前ならばいざ知らず、現在において体制を維持する手段として「処刑」や「収容所」などが通用する国家が存在することには嫌悪感しか感じ得ない。それが、現実に日本の近くにあるとは・・・。
     本書では、後継体制についても詳細に触れているが「金正恩パワーグループの新しい顔ぶれをみると張成澤(金正日の義弟)の息のかかった人物が多いこと、軍人事に大物が布陣していること・・・当中央政治局のメンバー11人の政治局の平均年齢は79.8歳・・・この年齢構成ではこの先数年も保てないかもしれない」と考察している。しかし、北朝鮮国内には既に粛清によって反対派は存在しないだろうし、経済的には中国が支えるだろうから、そう簡単には体制崩壊とはならないだろう。
     本書では「北朝鮮の経済規模はトヨタ自動車の10分の1しかない。トヨタの2007年3月期決算における売上は約24兆円にたいし、北朝鮮のGDPは2兆5000億円しかない。その半分以上を軍隊の維持、通常兵器の生産、核開発、ミサイル実験などにつぎ込んでいる」と分析している。明らかに異常で、通常ならばとっくに国家破産してもおかしくないのだが、「中国が国家運営に最低限必要な食料と原油を提供している」から、かろうじて生きながらえているという。中国にしてみれば、自国の経済発展が国家にとって至上命題であるから、東北アジアの混乱は避けなければならないし、隣に米軍基地がある統一韓国ができることは避けたいのだろうが、飢餓にあえぐ北朝鮮国民のことを考えると、国家の非情さには慄然とする想いがした。
     金正日は、軍事優先の「先軍政治」を標榜した。現代においてなんとも違和感のある政治体制だが、歴史を見ると軍事クーデターで軍人が政権を握る例はいくらでもあるし、国王が軍事の統帥権を掌握するのは当たり前と言えるのかもしれない。北朝鮮の場合、「社会主義」とか「労働党」とかを標榜しているから「三代世襲」にも違和感を覚えるが、本書のいうように「金王朝」の国王独裁国家と見れば違和感はなくなるのではないかと思った。本書によると、北朝鮮は2009年4月に憲法を改正し、前文にあった「共産主義」「社会主義」という表現を削除したという。今後北朝鮮は、カンボジアやタイのような王制国家に変身するのだろうか。
     北朝鮮の実情を広く知る上でも、良い本であると思った。

  •  今年2011年でもっとも危険な場所は、イランでも、イラクでもアフリカでもない、北朝鮮だ。という事を某Podcastで聞き、また例えば、田村耕太郎氏 (@kotarotamura)も述べている。 http://kotarotamura.net/ で、そのPodcastで上の旨を述べたゲストであるが、この本の著者である。
     簡単に内容を要約してみると、

    ■金正日は、自身の神的政治センスのおかげで、金日成から円満に権力を継承。また粛清と実に細やかな心遣いで、自身を敬愛、恐怖させることによって、金正日体制を作り上げた。
    ■そんな中、自身の体調不良から真剣に後継者問題に取り掛かる。そのために、国内整備を始め、新後継者を迎える準備は制度的にはできた。
    ■後継者は、一応金正恩になったが、金正哲や金正男を全くもって無視できない。特に、金正日の妹である金敬姫、その夫の張成澤がどう動くかでだいぶ揺れる可能性がある。彼らは、金正日の代わりができる位に大きな力を持っているため。
    ■現在の北朝鮮の側近プロフィールを見たとき、金正日―金正恩―…ラインにいる軍人は、対韓過激派が多い。彼らは、金正恩にとって、頼もしくもあり、また恐怖でもある諸刃の剣。
    ■現在の最高権力グループの平均年齢が80歳近く、下部を抑えるグループが数年でおじゃんになりかねない。
    ■金正日がここまで成功したのは、天性の能力だけでなく、経験(平民として育った事・パルチザンに参加していた事・綿密に時間をかけて権力を形成した事)があったからこそで、王子として育った若干27歳の金正恩がこのまますんなりと父親の地位を継げるのか怪しい。
    ■携帯の普及(2010年6月の段階で、18万4531人←ほぼ正確)など、今まで以上に、市民に北朝鮮の現状が伝わる可能性が高い。
    ■現時点でも軍備の増強が進んでおり、相当の軍事力を持つ。また、250~500tもの生物兵器、5~8個の核兵器保有可能性がある。さらには、多くのステルス素材をすでに導入している。
    ■中国・韓国・アメリカともに北朝鮮を止めることは全くできない(中国は、北朝鮮人の流入が恐ろしいし、また中国内の朝鮮民族の蜂起で、中国内の民族問題が過熱しかねない。韓国は、国防白書に明確に「北の政権と軍部は敵」と規定している。アメリカは、イラン・イラク問題の方が重要。)

     つまり、応仁の乱のような事が中国・韓国・を巻き込んで起こる可能性も否定できない、ということ。しかも、それは、中国・韓国・日本に相当の影響があると言う事。本当に暴走して、無差別核兵器発射もあり得るという事。本当に、拉致被害者を取るか、現在日本にいる国民全てを取るか、という選択肢を政治家が直面する可能性があると言う事である。

  • かなり良くまとめてある。正男が暗殺され、気になり借りて読んだ。2009年にも暗殺未遂があったとか。北朝鮮が存在できる理由をもっと深掘りして欲しかった。

  • どちらかというと、淡々と、「建国」から第一書記までを綴っている。
    裏がそうあるわけでもないし、総書記存命中の本ということもあって、すでに情報が古い感じがする。
    今の状況が判るかといえばそうではないし。

  • 北朝鮮マニア必読。金日成 金正日 金正恩 を取り巻く親族の情報満載。

  • 北朝鮮の新体制がいかに不安定なものか良くわかりました。一般教養としてためになりました。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

1959年、中国黒竜江省生まれ。龍谷大学教授。専門は東アジアの近代史・メディア史。中国紙記者をへて87年に来日。上智大学大学院博士課程修了(新聞学博士)。中国の旧満洲・日本統治時代の朝鮮半島の新聞史や、現代の韓国・北朝鮮情勢を分析した論文や著書が多い。著書に『朴槿恵〈パク・クネ〉の挑戦 ムクゲの花が咲くとき』(中央公論新社)、『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』(産経新聞出版)など多数。日本国籍。

「2019年 『「反日・親北」の韓国 はや制裁対象!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

李相哲の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×