謎とき平清盛 (文春新書 835)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608355

作品紹介・あらすじ

「平家にあらずんば人に非ず」と栄華を誇り、武士の時代の先駆者となった平清盛。ずば抜けた武力を持ちながら、朝廷貴族たちの顔を立てつつ、武家・公家両面での栄達を遂げたのはなぜか。大河ドラマの時代考証を担当する第一人者が、その実像に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • NHK大河ドラマ『平清盛』時代考証担当者による歴史書。大河ドラマ『平清盛』で清盛を演じた松山ケンイチさんは『どうする家康』で本多正信を演じた。「奢る平家」と呼ばれるが、平清盛を自制心の強い人と描く。平清盛は治承三年(一一七九年)に治承三年の政変を起こし、後白河院政を停止した。これを鎌倉幕府の先駆けとして福原幕府と位置付ける。幕府の本質は征夷大将軍任命ではない。武士の政権とする。

  • 大河ドラマ平清盛の時代考証その2を担当して~平清盛は白河上皇の落胤であったというのは,上杉謙信は女性であったというのと同じで,云ったもん勝ち。可能性は0でないから,なるほどね。平清盛は武家なのか公家なのかというと,武家だろう。権門態勢を打ち破って出世し,公家でなければ上れない地位に達した。それを見て学んだ源頼朝が完成させた幕府体制だが,幕府という概念自体は江戸中期に成り立つのであって,貴族支配を打ち破った武士のパイオニアは平清盛だった。では平家幕府はいつ成立したかというと,六波羅ではなく福原だろう。福原遷都以降,平家一門の実効支配を王家も公家も追認せざるを得なかったからだ~面白い人だ。「たてまえ」か「なかみ」か,というと「なかみ」だろうと。ドラマで上皇の息子であったとされると常識として定着する可能性がある。時代考証その1は高橋昌明で1960年生まれの本郷氏からすると15歳も上の人。セカンドオピニオンとして採用された新感覚を買われたのだろう。主流に成り得ていないのが痛々しい

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99361690

  • <p>今年の大河ドラマは視る気が微塵も起きなかったけど、来年の『平清盛』は今のところ視てみようかなという気になってます。<br />その予習も兼ねて、ということで手に取りました。<br />著者の本郷氏は、来年の大河の時代考証を務めている学者さんです。<br />『平清盛』の時代考証は2名が務めているそうで、本郷氏はセカンダリ。<br />プライマリ時代考証役の高橋昌明氏とは見解を異にする部分もあるらしく、そのあたりの裏話も本著の中で少し紹介されたりもします。<br />そのへんも含めて、系統だった歴史書というよりもエッセイっぽく書かれている感じです。<br /><br />著者は、歴史を叙述する際の手順を以下の4つの位相で考えているとのこと。<br /> 1.史実(歴史事実)<br /> 2.史像(歴史像)<br /> 3.史論(歴史理論)<br /> 4.史観(歴史観)<br />このへんはなるほどなーと思わされました(十分に消化はできてないけど)。<br /><br />大河ドラマの中でも大きなクライマックスになるであろう保元・平治の乱。<br />大学入試で日本史を学んで以来、すっかり忘れてしまってましたが、記憶が甦りました。<br />皇室・貴族・武士が二手に分かれ、血族同士が争い滅ぼし合った大内乱。<br />本著では、次のように評されます(第6章)。</p>
    <p style="padding-left: 30px;"><span style="color: #000080;">保元の乱を語る際、「AとBが対立している、CとDが手を組んだ、Eがいつ、こんな行動に出て、Fはこれに対抗してこう動いた」と説明がされる。それは歴史を実証的に認識するために大切なことです。けれども、そうした小さな史実を漠然と積み重ねるだけで、史像が自然と形成されるわけではない。<br /><br />ここで何に注目すべきかと言えば、それまでは陰謀とか暗躍とか、外の人間にはまるで分からぬ所謂「コップの中の嵐」として行われていた宮中の権力抗争が、「武力を駆使しての戦闘」という、誰の目にも明確なかたちで解決された、ということ。軍事力が政治をドラスティックに変革する時代が到来したのだ、ということです。これこそが平安時代末、朝廷の政治における史像になり得るのです。</span></p>
    <p>ここで書かれていることこそが、この本が示唆している最大のポイントだと思います。<br />この後、七百年にわたり続くことになる「武士の時代」の端緒となるエポックメイカーとしての平清盛。<br />大河ドラマが楽しみになってきました。</p>

  • #信西
    時代が生んだ化け物なのか?「超絶学力・実務も万能」
    同じく碩学の人藤原頼長が出家する信西に手紙を出し
    「才能が大きすぎて、今の世には収まりきれない」
    この二人の実力は再検討してもいいのかな?

    2018.6.23読了 本郷先生が最近楽しい
    テレビで見るキャラよりもまじめに研究しているみたいですね
    大河ドラマの時代考証だったみたいです

  • 清盛個人、と言うよりは大河ドラマ「平清盛」の舞台裏の話という感じでしょうか。史実と史像についての考え方や解釈、ドラマを作る上で史実とフィクションをどう生かさねばならないか、そういったお話が多めです。もちろんその上で清盛の説明や色んな学説の紹介、当時の時代背景や考え方などの説明もあり、これを読んだ上で大河を見ればきっと面白さが増すと思いました(早く大河借りて見ないと…)。自分の中で「清盛は誰の子供なのか」と言うモヤモヤは常にあった気がしたのですが、この本を読んで「それ程気にすることでもないかもしれない」とモヤモヤが晴れた気がしました、そんな角度からも説明をしてくれるので有り難いです。コレを読んで思ったのは…清盛云々よりも、ひとつの歴史を知ると言うことはとても大変な作業なのだということでした。古い資料の難しい字と言葉を読み、解釈し、その為に知っておかねばならない予備知識、今とは違う常識や価値観、自分の主観、想像、それと事実。例えば教科書に当たり前のように載っていることでも、この「当たり前」が出来るまでに大変時間がかかり、またそれは必ずしも「事実」ではなく「流動する」「変化する」ものなのだなぁと思いました。学者さんによって解釈や考え方も違いますし、なかなかに大変なお仕事なのね…とも。歴史そのものを「そのまま知る」と言うことは、難しすぎることなんですね… と、清盛の発見以上にそういった面での収穫が大きかった一冊でした。この方の授業を是非聞いてみたい!

  • 官職や人物関係が時おり難しかったが、勉強になった。
    歴史の「たてまえとなかみ」か〜。源平の覇権争いとは、各地の武士が自立を目指した内乱だと。
    なるほどね〜。

  •  大河ドラマ「平清盛」の時代考証担当による、院政期から中世に至る歴史像を提示した評論エッセイ。
     清盛の人物評伝に留まらず、怒涛の過渡期の真髄とダイナミズムを感じさせつつ、気軽に読める歴史読本。
     故実に固執し限られた枠内での出世競争に明け暮れる廟堂を、巧みに泳ぎながら武士による新たな統治形態を切り開いた、先駆者たる清盛の凄さを改めて感じさせる。
     もう一人の考証担当・高橋昌明氏との見解の相違は、アカデミズムにおける真摯な議論として興味深く、“平家幕府”の検証も懇切で面白い。
     何より、巷に流布する“源平の戦い”なるものは単なる二氏族間の覇権争いではなく、地方の在地領主=武士たちが己の権益を守る術を学んだ上で、朝廷の統治機構に仕掛けた独立戦争であるということはもっと強調されて良い。
     テレビドラマにおける時代考証の役割と限界も、業界裏話として新鮮に聞ける。

  •  大河ドラマ「平清盛」の時代考証をした学者が語る平清盛とは。

     平家は武士であり、天皇や貴族から武士へ政治の中心を移行する先駆けとなったという大河「平清盛」での平清盛観が改めて語られている。大河ドラマファンにとっては清盛を再体験できる一冊。

  • 一般向けで読み易い。
    2012年の大河ドラマの制作過程の裏話、もう一方の時代考証である高橋氏との論の違い等を、分かりやすく書いています。

    基本的に
    (1)清盛はあくまで"武士"である。
    (2)治承・天慶の乱:武士の武力が一目置かれる画期。
    「福原幕府」:武士が武力を用いて朝廷を制圧。「自立」。
    (3)従来の朝廷のシステムをそのまま用いた政権運営を、清盛は行う。

    この3つが主張のポイントだと読み取れました。

    著者が「史像」を描き直そうとした一冊。

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。1983年、東京大学文学部卒業。1988年、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同年、東京大学史料編纂所に入所、『大日本史料』第5編の編纂にあたる。東京大学大学院情報学環准教授を経て、東京大学史料編纂所教授。専門は中世政治史。著書に『東大教授がおしえる やばい日本史』『新・中世王権論』『壬申の乱と関ヶ原の戦い』『上皇の日本史』『承久の乱』『世襲の日本史』『権力の日本史』『空白の日本史』など。

「2020年 『日本史でたどるニッポン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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