政治の修羅場 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608645

作品紹介・あらすじ

自ら「地獄を見た」と言うほど、数々の修羅場を潜り抜けてきた鈴木宗男が、いまだから語れる秘話を満載。角栄、中川一郎、金丸から小沢、小泉、プーチンまで、手に汗にぎるエピソード、内幕を明かす。読めば、カネ、人事、権力闘争をめぐる「永田町の論理」が浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • この本の筆者である鈴木宗男さんは、昭和44年9月から中川一郎氏の秘書となり、現在、日本維新の会の国会議員として活躍している政治家です。

    筆者は言います。「秘書となってからの私には、お盆も正月もない。365日働いた」(19P)と記載があります。その頃から日本国のために粉骨砕身働いていると理解しました。また、昭和55年5月の衆議院と参議院のダブル選挙だったときの会話なのですが、筆者は、当時の大平正芳首相とは、考え方を異にする反主流派に属していたため、大平首相の批判をしていたのですが、心筋梗塞で亡くなってしまったため、中川先生に対して、演説の内容を「変えるしかないです。死者に鞭打つのは、日本人の感覚としては絶対ダメです。逆に敬意が必要ですから、ここはもう、大平さんほど偉い人はなかった。これで行きましょう。」(39P)と言った部分を読んで、私はとても柔軟性を持った政治家であると認識しました。ここで大平首相のことを少しお話させていただくと大平首相は私の地元香川が生んだ偉大なる政治家です。派手なことはせず地味な印象の方でしたが、保守本流の政治家の一人です。(大平さんのことを理解したいのであれば、「大平正芳」(服部龍二)が分かりやすいです。また「大平正芳」(福永文夫)も新書版で読みやすいです)

    平成3年1月、筆者が外務政務次官であった時に湾岸戦争が始まりました。イラクで働いていたベトナム人がカイロで足止めとなっており故国に帰れないためベトナム政府から援助要請があった際、筆者が日本航空と全日空の飛行機をチャーターし、パリ、成田を経由してハノイに送り届けたことを読んで、世界が日本に求めている国際貢献を実行したと思いました。(136P)

    筆者は、平成3年10月に第2次世界大戦中にリトアニアで外交官をしていた杉原千畝さんの名誉を回復しました。(183P)杉原さんとは当時の外務大臣の訓令に違反し、ユダヤ人に対してビザを発給し、6,000人の命を救った方です。人道的な活躍をした方の名誉を回復したこと本当に意義のある素晴らしいことだと思っています。

    筆者は、北海道の出身ということもあり、北方領土返還交渉にも長年、尽力されてきました。当時のソ連の指導者である、ゴルバチョフ、エリツィン及びプーチンとも面談して交渉を行ってきたということが挙げられます。(158P~199P)筆者は言います。「日本政府にも外務省にもいま、ロシアと太いパイプを持つ人材がいないのだ。」(197P)私も同じ思いを持っています。今の日本で北方領土返還に向けて熱く煮えたぎるような気持ちを持っている国会議員は鈴木宗男さん以外にはいないと思っています。鈴木宗男さんと以前、外交官であった佐藤優さんがタッグを組んで対ロシア外交を立て直して欲しいと切に願っています。

    最後に筆者は言います。「政治というものは、弱い人や困った人を助けるためにある」(229P)私も同感です。筆者である鈴木宗男氏には、これからも日本国を素晴らしい国とするため、いつまでも活躍していただきたく思っています。

    素晴らしい本を出版してくれた筆者と出版社に深く感謝いたします。ありがとうございました。

  • 政治家・鈴木宗男氏の40年に渡る政治家人生を語り明かす実録・回顧録。

    宗男氏の師である中川一郎をはじめ、田中角栄、福田赳夫、安倍晋太郎、金丸信、竹下登、小沢一郎、小渕恵三、田中真紀子、小泉純一郎…。さらには、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンまで。「今だから語ることのできるエピソード」がぎっしりと詰まっています。

    「今の検察は正常ではない。すぐにマスコミへ情報を流し、一参考人に過ぎない政治家に嫌疑がかかっているという世論を形成するよう誘導するようになった」、「小選挙区比例代表並立制度になり、マニフェストが重視されるようになった今、候補者が独自のセールスポイントを作らなく(作ることができなく?)なったことも手伝って、専門知識の乏しい小粒な政治家ばかりになった」、「党内基盤の弱い政治家はマスコミを誘導して求心力を持とうと、過激なことを言わざるを得なくなる。しかし過激な弾を撃ち尽くしてしまえば、あとはジリ貧になるだけで続かない」、「政治とは歴史を作ることであり、そこに権力やポストが伴う以上は命がけで闘わなければならない」などなど…。タイトルどおり、数々の修羅場を経験した宗男氏であるからこそ、言葉の重みが違ってきます。

    この本を読むと、田中角栄、中川一郎、金丸信から小沢一郎、小泉純一郎、さらにはプーチンにいたるまで、政治の世界が実に激しい権力争いであるか、垣間見ることができます。もちろん、何から何までぺらぺら話しているわけではありません。宗男氏のポリシーもあります、墓場まで持っていく話も当然あるでしょう。

    小泉政権時代、マスコミは安直に「宗男VS真紀子」の構図をおもしろおかしく報道し、政治をまさに劇場型に変えてしまいました。「日本の総理大臣にもっともふさわしい人物が田中真紀子とされた時代」があったことを思うと、本当にゾッとします。佐藤優さんの本などを読めば分かりますが、検察やマスコミがいかに偏った情報ばかりを流していたかが分かります(今でもマスコミはまったく信用するに値しませんが)。

    激しい「宗男バッシング」があった頃から10年以上が経ちました。その間に宗男氏は投獄を経験し、政権の中枢からはるか彼方にまで追いやられてしまいました。ただ、僕個人としては、宗男氏のような気骨のある政治家がもっと活躍してほしいと感じます。少なくとも、ロシアとのパイプ役として宗男氏を凌ぐ政治家は、現状、見当たらないでしょう。

    • 松村 訓明(まつむら のりあき)さん
      同感です。

      日本の政界を見回してもロシアを相手に、熱い気持ちと胆力を持って交渉することができる政治家は鈴木さんの他にはいないと思っています...
      同感です。

      日本の政界を見回してもロシアを相手に、熱い気持ちと胆力を持って交渉することができる政治家は鈴木さんの他にはいないと思っています。是非、佐藤優さんとタッグを組んで北方領土返還に向けて活躍していただきたいと思っています。ウクライナ侵攻によって、ロシア相手の交渉が怯んでいるようにも見えますが、北方領土は日本固有の領土ですから一刻も早く還していただく必要があると思っています。北方領土を返還してもらうことで満洲、樺太そして千島列島で当時のソ連軍に暴虐の限りを尽くされ、苦難と失意のうちに亡くなった方の魂が救われると思っているのです。

      ありがとうございました。
      2022/08/20
  • 鈴木宗男による回顧録。この本だけ読むと弁解じみた感じにしか受け止められないかもしれないが、佐藤優の本を読んだ上で、そして検察の現状を知るにつれ、あの頃の報道がいかに偏向的で、基礎案件が無理筋だったかがわかる。選挙区でなぜあれだけ人気があるかも今ひとつわからなかったけど、いかに地元を大事にしているかとか、人情的なものも絡んでいるんだなぁと。少なくとも悪人っぽさは作られたイメージなんだろうし、そういうイメージは簡単にばら撒かれてしまうと。

  • 政治の世界で激しい浮き沈みを経験してきた筆者が初めての師匠である中川をはじめ、田中角栄、福田赳夫、安倍晋太郎、金丸信から、小沢一郎、野中広務、田中真紀子、小泉純一郎、プーチンまで、すべてを語りつくす。

    本書は裸一貫で上京し、拓殖大学在学中に政治家・中川一郎元農林大臣の秘書となり、その後、実に40年間の長きにわたって永田町で戦い、その裏も表も知り尽くした一政治家の回想録です。自らをして「地獄を見た」と言わしめるほどの数々の修羅場を潜り抜け、自身も大事業家として潜り抜けなければならない経験としてあげられる「浪人」・「大病」・「懲役」を経て記されているので、やはり、言葉の重みが違います。

    ここにこめられているものは田中角栄、中川一郎、金丸信から小沢一郎、さらには小泉純一郎、果ては外国の国家元首以外で初めて会見することができたといわれるプーチン氏にいたるまで、政治の世界が以下に魑魅魍魎の権力争いであるということを教えてくれる一冊です。筆者自身が権力の中枢にいただけあってその「奥の院」でいったいどのような決断がなされていたのか?
    「今だから明かすことのできるエピソード」
    と本人がおっしゃるように、読みながら手に汗をにじませておりました。

    しかし、世に言う『宗男バッシング』が行われていた際、それまで外務省について筆者が知りえたことは文字通り、『墓場まで持っていく』のでしょう。そういった記述がほとんどなかったので、そんなことも感じました。最後のほうにある筆者が獄中で感じたことのひとつに『今の日本には“政治”というものがない』と『「俺が、俺がのガ」ばかりで「おかげ、おかげのゲ」がないのだ』という指摘は本当に重いものであると最近つくづく実感しております。

  • 鈴木さんの政治家人生についての自伝である。大分前に鈴木さんが逮捕されたときは涙を流してなんやかんや言っていた、としか思ってなかったが、鈴木さんなりの政治家としての努力があることを知った。
    ロシアに精通している政治家と言えば、鈴木宗男、ってことは興味がなかったが領土問題を抱えている以上、鈴木さんのような政治家が太いパイプを築こうと大変な努力をされていることを知ったことでなんだか政治に興味がわいてきた。
    いいきっかけになったなぁ。

  • 政治とはまさしく人間関係であると再認識

  • 鈴木宗男さんが自身の政治家人生をふり返りつつ、日本政治の内幕を語った本。

    故・中川一郎の秘書になり政治の世界に飛び込んだ鈴木宗男さん。長年、政治の世界を見てきた鈴木さんがご自身の半生を交えながら、政治の舞台裏や鈴木さんが考える政治家の資質などを本書に書いています。

    人間関係は大切にしなければいけません。そのためには誠実に人と接すること。そうすれば、ピンチになっても必ず手を差し伸べる人が出てきます。

  • 政治家の勉強ができる本。
    マスコミの報道とはかなり違っていました。

  • 【ノート】
    ・本屋で目にとまった。大丸の三省堂。

    ・政治家の自叙伝なので、まぁそういう内容だが、中川一郎にはじまり、田中角栄、金丸信、竹下登などに関する記述は面白い。ゴルバチョフやエリツィン、プーチンとの会談の話も興味深く読めた。ムネオハウス報道の頃は利権まみれの悪徳政治家だと思っていたが、佐藤優さんの著書の影響もあり、どうやらそうでもなさそうだと最近思い始めてる。

    ・昨年11月に帯広に行った時、別のホテルに投宿した同僚が鈴木宗男がいたと言っていた。いつか機会があれば会って話してみたい。

    ・「民主主義とは折り合いをつけていくことなのだ。(P119)」

  • 鈴木宗男が、田中角栄、中川一郎、金丸信、小沢一郎、プーチン、田中眞紀子&小泉純一郎について綴った一冊。

    自分を追い落とした田中眞紀子&小泉純一郎に厳しいのは当然だけれど、それ以外の人物に対しては的確に記しており、インサイダーしか知りえない情報も含めて非常に勉強になった。

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著者プロフィール

昭和二十三年北海道足寄町に生まれる。四十四年衆議院議員中川一郎秘書。四十五年拓殖大学政経学部卒業。五十二年農林水産大臣秘書官。五十五年科学技術庁秘書官。五十八年衆議院議員初当選。平成元年防衛政務次官(宇野内閣・海部内閣)。二年外務政務次官(海部内閣)。四年自民党副幹事長。六年衆議院議員 沖縄及び北方問題に関する特別委員会委員長。九年国務大臣 北海道・沖縄開発庁長官(橋本内閣)。十年内閣官房副長官(小渕内閣)。十一年自民党総務局長(小渕総裁・森総裁)。十四年衆議院議員運営委員会委員長。十七年新党大地結成。同代表就任。二十一年衆議院議員八期当選。衆議院外務委員長。二十二年在職二十五年永年在職議員表彰。二十三年新党大地・真民主結党。同代表就任。二十四年新党大地に改名。同代表就任。

「2014年 『「日本の分」について考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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