人間の叡智 (文春新書 869)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 93
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608690

作品紹介・あらすじ

下がる賃金、厳しい就活、ひろがる格差。あなたの仕事がつらいのは、世界がすでに「新・帝国主義」時代に入っているからだ。食うか食われるかのゲームのルールを見極め、それを打ち破る武器としての「物語」を手に入れよ。日本とあなたが生き延びる道がわかる「国家論」決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 入ってくる情報の質が下がったから、具体論からだんだん抽象論が多くなってきた。それでも過去の遺産が物を言って、まだまだ読ませる。そろそろ現場に戻してあげないと。

  • 元外交官の佐藤優のによる一冊。
    2012年初版発行。

    内容は現代日本においてどのように生きていくかというもの。
    わかりにくい個所もあったが、勉強になった。

  • 政治
    社会

  • 著者である佐藤優氏は『日本は過去20年、構造的な停滞の中にある。」とし、真・帝国主義という国際環境の中で日本が生き残る叡智を伝えようとする。
    神学の世界には「総合地に対立する博識」という格言がある。断片的な知識をいくらもっていも、それは叡智にならないということだ。
    断片的な知識をいかに物語りに紡ぐか。
    それを念頭に語り下ろしというやさしい語り口で、語られるが、中身が平易なわけではない。

    ・これまで日本の教育システムは端的に言って後進国型のシステムをとっていた。つまり、暗記したことを再現できる官僚を養成し、外国語のわかる外交官、優秀な税務署長を作り出すことが要請された。これは戦後になっていも変わっていない。(P.12)

    ・世界が、弱肉強食の帝国主義的傾向を強めているを冷静に認識しましょう。繰り返しになりますが、帝国主義国はまず相手国のことなど考えずに、一国の利益を一方的に主張しする。こうした食うか食われるかの帝国主義的外交ゲームの中で、日本が少なくとも食われないようにすることが、政治家の責務なのだ。そこにしか、日本とあなたが生き延びる道はない。(P.40)

    ・日本人の思考は実念論(*普遍は個物に先立って実在すると考える立場)的。だから憲法改正論がどれだけ騒がれても具体的な改憲の動きにはならないのに、憲法からはみ出したことも平気で行われる。目に見えないけれど、日本的、日本人的なモノが確実にある。(P.60)そこから外れなければおよそなんでも許されるが、一歩でもはみ出ればパチンとはじき出される社会。天皇の存在も実念論がわからなければ読み解けない。(P.60)

    ・2011年3月11日に国家の生き残り本能が露呈した。それは現行のシステム(チカラの要素は日米安保に全部預け、それ以外は合理主義的な計算と、生命至上主義、個人の生活が一番大事という個人主義でやっていけばいいという考え方)では日本は生き残れないということが明白になったということ。(P.131)

    ・エリートというと社会の上層と言うように勘違いするむきがあるが、エリートは各層ごとにいるし、いなければならない。エリートは多重であって、それぞれ求められる資質が違う。多様性の一致が必要。(P.157)

    ・体制とは、メカニズムではなく生物体のようなものではないか。人々は課成る阿須氏も合理的に動くわけではないので、動かすにはカリスマが必要なことも出てくる。橋下徹大阪府知事の政策はメカニズム的な了解の下でしか出てこない。
    橋本府知事の政策は小泉元首相の「聖域なき構造改革」の単なる反復に過ぎない。その小泉元首相の政策も何の思想もなしに、何もしなくていいという政策だから新自由主義を取り入れたに過ぎない。(P.176)

    ・私(著者)の考えでは、結局、人間はナショナリズムとか、啓蒙の思想、人権の思想、そういうもので動くのだと思うのです。但し、それらの思想は全部まやかし。まやかしだとわかっている人たちが承知の上でそれらを使っていかにイメージ操作をしていくかというのが課題。
    換言すれば、物語を作る能力、アナロジーとかアイロニーとかストーリーテリングの力が必要とされる。(P.190)

    ・読書人口は私(著者)の皮膚感覚ではどの国でも総人口の5%程度(日本でいうと5,600万人程度)。その人たちは学歴、職業、社会的地位に関係なく、共通の言語を持っている。そしてその人たちによって、世の中は変わっていくと思うのです。
    それが出来なければ、資本主義の論理にやられてしまう。(P.206)

    ・品性の堕落とは、実は、知性の堕落。人間を合理的なことだけで捉えられると思っていると、だんだんそういう実利的、刹那的快楽の方向に行ってしまう。(P.213)

    ・何らかの物語を作らないと、おそらく人間は「死」に対応できないでしょう。
    自分が生きてきたことの物語、あるいは自分の親しい人の物語はどうしても必要なのです。(P.221)

    <blockquote>・日本が元気に立ち直るためには、日本人一人ひとりが言葉の使い方を変えて、国民の統合する物語をつくりだすしかないのです。そして目に見えないものに想いをはせる。それが叡智に近づく唯一の道だと思うのです。(P.229)</blockquote>

  • 元外務官僚 佐藤優による、現在の社会「新・帝国主義」について書かれた本。国際関係論、哲学、歴史、情報管理に詳しい著者だけあって、説得力ある内容となっている。著者のものの見方は鋭い。
    「旧来の帝国主義も、(現在の)新・帝国主義も「食うか、食われるか」の弱肉強食を原理とする」p7
    「新・帝国主義という国際環境の中で、困難な国内状況に直面しているにもかかわらず、日本人も日本国家も生き残らなければならない」p8
    「神学の世界には「総合知に対立する博識」という格言がある。断片的な知識をいくらたくさん持っていても、それは叡智にはならないということだ。断片的な知識をいかにつなげて「物語」にするかが、有識者の課題と私は考える。ここでもストーリーテラーとしての能力が必要となる」p9
    「日本で工場が閉鎖され失業者が出ることは、中国やタイやベトナムなどで何倍かの労働者が雇われることを意味します」p14
    「いまの不況や雇用の問題は、日本人の賃金が中国人の賃金と同じまでに下がらないと解決しないことになります」p14
    「国家というのは、国家自身の生き残りを考え、そのためには何でもするものです」p21
    「(帝国主義とは)国内の市場が狭くなって投資の可能性に限界がきたときに外国へ出て行き、富を確保することによって生き残るという重商主義の延長」p23
    「世界が、弱肉強食の帝国主義的傾向を強めていることを冷静に認識しましょう。帝国主義国はまず相手のことなど考えずに、自国の利益を拡大していきます。相手国が激しく反発し、国際社会からも「いくらなんでもやり過ぎだ」と顰蹙を買う場合には、帝国主義国は協調に転じます。こうした食うか食われるかの帝国主義的外交ゲームの中で、日本が少なくとも食われないようにすることが、政治家の責務なのです。そこにしか、日本とあなたが生き延びる道はありません」p40
    「(核保有について)世界の核不拡散体制を崩す最初の旗を振る必要はないという感覚が私にはあります」p122
    「各国が自国の利益むきだしに帝国主義の論理で行動し、そこにゲームのルールがわかっていない中華帝国や、ハルマゲドンを信じているペルシャ帝国が加わっているのが、今、私たちが生きている世界です」p124
    「(戦後の考え方(3つの主義))合理主義:非合理な精神主義が日本をおかしくした、生命至上主義:命よりも国家が大事というイデオロギーが無謀な戦いに導いた、個人主義:国家や組織が個人を押さえつけないといけないという発想が無謀な戦争を起こした。この3つの主義が絡まり合って戦後日本のあり方が基本的に決まっていった」p126
    「(城内実衆院議員)天皇は国の象徴であった方が、元首であるより超越的でいい」p135
    「衆愚政治になるというのは、言い換えればエリートの否定です。ポピュリズムはエリートを認めない。だから専門知識の欠如した民衆が直接に専門的領域に入ることができると思われてしまう」p137
    「新自由主義の弱肉強食の原理は、最強国に有利」p177
    「現代でも日常的に読書する人間は特殊な階級に属しているという自己意識を持つ必要があると思います。その人たちは学歴とか職業とか社会的地位に関係なく共通の言語を持っている。そしてその人たちによって、世の中は変わっていくと思うのです」p206
    「東大の学生は真面目で優秀です。しかし、言われたことをそつなくこなすばかりで、授業をさぼって好きな小説を読んだり映画を観たり、自分のやりたい勉強をやる学生が少なくなった」p220
    「ゼロ成長を前提に成熟社会をなどという議論がありますが、ゼロ成長で安定した社会を求めるのは無理です」p223

  • 【由来】
    ・amazonで鈴木宗男関連の書籍から

    【期待したもの】
    ・TPPを含んだ今の日本を取り巻く状況についての視点が獲得できれば。ただし出版は2012年なので、それであればより最近の佐藤優本が読みたい。

    【ノート】
    ・古典は2つ以上持つとよい。それはやはり長い時間、支持され続けてきたものには、それだけの含蓄があるということ。例えばファウスト。ちなみに、「ファウスト」と言えば、20年以上も前にたまたま読んだ「世界」の読書特集のようなところで、誰かが挙げてたのを、なぜか覚えている。

  • "佐藤優さんがわれわれのレベルに合わせて現在の社会を語ってくれているもの。
    相互に理解をするには、互いの知識レベルが近くないと中々理解し合えない。優しく書いているとはいえ、手ごわい本である。
    佐藤さんと同じレベルに近づける気分になれる本といったほうがよいかも。
    他国、他民族を理解するには、歴史、宗教、文化など多面的にとらえたうえで、相手がどんなふうに考えて行動するかを捕まえる必要がある。
    今回とても勉強になったのが、イランという国がどんな思想を持っているかを学べた点。
    世界を理解するには、宗教、哲学、歴史を肌感覚として理解していないといけないこと。"

  • タイトルがあれだけど、期待を裏切らない。

  • オーディオブックで聞き流してしまったため、深く、面白そうな内容をキャッチできずに聞き終わってしまいました。
    もう一度紙の本で読み直す必要があるなぁ、と感じています。
    帝国主義、ポピュリズム、マルクス、イデオロギー、リベラル・・・用語として知ってはいても、しっかり理解し自分で使いこなせるレベルになっていない言葉や概念が多く出てきて、片手間に聞き流せる内容ではありませんでした。
    もっともっと勉強が必要。勉強して、また読み直そう、と思った一冊。
    これでも、この著者の著作の中では、わかりやすく書かれた本だということ。頭の良さが、次元が違う感じです。

  • 古典、物語のよる軸

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、専門職員として外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。
帰国後、外務省国際情報局で主任分析官として活躍。
2013年、『国家の罠』で毎日出版文化賞を受賞。

「2019年 『世界宗教の条件とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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