日本破滅論 (文春新書)

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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608713

作品紹介・あらすじ

この国の政治、経済、社会に危機をもたらしたものは何か。構造改革、デフレ下の大増税、自由貿易至上主義、ポピュリズム…その根本にある日本の病理を気鋭の論客二人がえぐりだす。

感想・レビュー・書評

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  • 何年か前に手に入れて半分ほど読んでいたものの、諸般の事情で中断していたので最初から読み直した。対談本なので気楽に読めそうとおもってチョイスしたけど、出版は5年前なので出てくる話題がどうしても古さを感じさせる。これはまあしかたがない。5年前というと第2次安倍政権発足前で、当時は民主党野田政権だった。そのような事情から本書では民主党政権に対する批判がいろいろ出てくる。さすがに5年前となるとわたしの記憶もかなりあいまいで、「ああ、そういえばそんなこともあったな」と前政権時代を回想するのにはいい機会だった。
    とはいえ当時は民主党政権末期で政権交代の熱はすっかり冷め、それどころか政府の震災対応をめぐってかなり批判的な世論もずいぶん見られた。そんな時期に注目を集めていたのが橋下氏であり、これを反映してか本書はひとつの章をまるまる使って「橋下現象」批判を展開している。まあ「橋下現象」批判を彼らが展開するのはとくにおどろくことでもないのだけど、しかし批判のボリュームがわたしの想像以上だったので、さすがに食傷気味だった。さらにいえばその主役が政界引退を表明した現在となっては、敵のいないところに弾を撃っているような空しささえ感じる。もちろん「橋下現象にはそれだけの勢いがあった」ということはできるし、実際このことはたとえば去年から今年にかけて東京で巻きおこった「小池現象」からもある程度の類推が可能だろう。とはいえ「小池現象」は先日執り行われた総選挙でひとつの区切りを見せたことは記憶に新しいわけだけど。
    ただ橋下氏本人に対する評価はともかく、「橋下現象」に対する本書の分析は的を外しているようにわたしは感じる。「橋下現象」というのは、平たく言ってしまえば【本来の意味における】「反知性主義」(つまりは反権威主義)であって、最近の事例でいえば「トランプ現象」がそれに近いのではないか。つまりは「反知性主義」といってもそれは知性そのものの否定ではなくて、知性とはなんであるか、どうあるべきかの判断が権威主義的に決定されていると感じる人がそれだけいて、その人たちのフラストレーションが爆発して政治的ムーヴメントを発生させたと解釈する方が説得力があるとわたしは考える。だから「橋下現象」をイデオロギーで解釈することにはそもそも無理があるだろう。この文脈で保守とは本来なんであるかというような話を展開したり、「橋下現象は冷戦構造を引きずっている」と言っているご本人が、むしろ冷戦構造というイデオロギー的な枠組みにとらわれているような感さえある。さらにつけくわえるなら「橋下現象」の背景には大阪特有の事情というものも多分にあるわけで、そういう事情に特段ふれずに「今や勝ちに乗じているだけです。なぜ今、組合叩きが流行っているかと言うと、組合の力が落ちているからです」と言われても説得力がないだろう。
    だから「橋下現象」を理解するのにウェーバーだのトクヴィルだのオルテガだのノエル・ノイマンだの、そんなむずかしい話は持ち出さなくていい。というか、その種の議論こそがまさに権威主義的に見られるわけで、自分からわざわざ相手の射程に入っていって何がしたいのか、とはおもうところ。とはいえ「反知性主義」ということばが本邦で広く流通したのはここ2,3年の現象だと記憶しているので(そしてこの概念に対する理解が本邦で深まった背景には、森本あんり氏の著書の影響が小さくないだろう)、5年前の時点でここを見据えた議論を展開するのはたしかに困難ではあるだろう。
    対談本なので議論がラフなのはしかたないし、つまらないということはなかったけれど、結論をいうとやはり食い足りなかった。とくに著者たちが自分たちから提言をするという場面では観念論的でどうも輪郭のぼやけた感じになって、わたしが期待していたのとは議論の方向性がちがった。「正直、このくらいの議論ならたとえばツイッターでだれかが書いてる話を見ているだけでも、タダでかなりの部分勉強できちゃうよなあ、いまの時代」とおもってしまったあたり、わたしの感性も本書を入手した数年前とくらべてかなり変わったのだとおもう。
    あと、最後の章でやたらマクドナルドが槍玉に挙げられるのはさすがに気の毒だとおもった。しかもマクドナルドはある種の経済学をたとえるのに持ち出されるだけで、マクドナルド自体はさほど関係ないけど、まあ「プリウス」みたいな役回りなんだろう。このあたりのレトリックにも時代を感じた。

  • 震災を食うという考え方を重要視すべきだと感じた。社会的な危機に陥ったとき、それを克服しようと大きな発展が生まれる可能性がある。

  • 読了。

  • 非大衆人でありつづけたい。多数決の怖さを意識することが、基本かな。

  • 痛快!

    破滅論に秘められた、物事を達観し、本質を見抜くという思考回路。

    この国の政治、経済、社会に危機をもたらす、構造改革、デフレ下の、大増税、自由貿易至上主義、ポピュリズム・・・

    その根本にある日本の病理が透けてみせる。

    ヨーロッパの大学で学んだお二人の痛快な対談でした。

  • 対談本にしては綺麗にまとめられた良書!!

    誰もが社会に対して薄々感じている違和感の正体がわかりやすく解き明かされる内容である。
    多方面の知識、視野をいかした話題のようだが、述べていることは実は当たり前で尤もなことばかりである。

    また対談を通して、著者陣の志や姿勢、そして人としての魂を感じ取れるのも読みどころ^^

  • 無思考、無教養はいただけない。ムードに流れず、自分の頭と心で判断したい。

  • 金融政策頼りから財政への転換。まっとうな意見だと思う。データの見せ方が大事でもあり、それを個人も理解しようとするべきかとも思う。

  • 自分がいかに無知であるかを痛感させられた
    政治、経済、パラダイム、柔軟性と時代を見据える視野の広さを養うことで一個人として恥じぬ生き方をしていきたい

  • 閉塞感の打破といって、橋下維新に期待している。彼のいう「船中八策」は、この20年間、机上空論しか知らない学者がつくってきた安っぽい物語。80年代から世界をおかしくしてきた新自由主義の、30年も流行遅れの物語を「維新」と名づけて持ち出したにすぎない、との著者(中野)の指摘に耳を傾けるべきだ。

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著者プロフィール

1968年奈良県生まれ。京都大学土木工学科卒業、京都大学大学院土木工学専攻修了後、同大学助手・助教授、東京工業大学助教授・教授を経て、2009年より京都大学大学院教授。ならびに、16年より京都大学レジリエンス実践ユニット長。2012年12月から安倍内閣内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)。専門は土木計画、経済政策などの公共政策のための実践的人文社会科学研究。生活・交通行動分析(アクティビティ分析)にて1998年土木学会論文奨励賞、認知的意思決定研究で05年行動計量学会林知己夫賞、社会的ジレンマ研究で03年土木学会論文賞、07年文部科学大臣表彰・若手科学者賞、06年に『村上春樹に見る近代日本のクロニクル』にて表現者奨励賞を、18年に公民的資質のためのシティズンシップ教育研究で土木学会研究業績賞を受賞。著書に『国土学』『経済レジリエンス宣言』『プラグマティズムの作法』『列島強靭化論』『コンプライアンスが日本を潰す』『社会的ジレンマの処方箋-都市・交通・環境問題のための心理学-』『合意形成論』(編著)『モビリティ・マネジメント入門』(共著)『社会心理学の新しいかたち』(共著)等。

「2018年 『改訂版 土木計画学 公共選択の社会科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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