イタリア人と日本人、どっちがバカ? (文春新書)

  • 文藝春秋 (2012年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784166608768

作品紹介・あらすじ

「アメリカ型経済を真似て、私の国はメチャクチャです」。在日歴20年以上のイタリア人建築家ファブリツィオ・グラッセッリさんは、こう語ります。

敗戦後の奇跡的な復興から、近年の政治・経済・社会の劣化、教育制度の危機、そしてアメリカ主導のグローバリゼーションまで。長い歴史を誇りながらも、今では「立派な」借金大国である日伊両国には多くの共通点が存在します。だとしたら、国家破産に向かう今日のイタリアは、明日の日本の姿なのでしょうか。

ミラノの工場で働き、賃金カットの危機にあるビアンキ氏と憧れの国日本にやって来るニートでオタクの息子。彼らを主人公にストーリーが展開し、かの国で今、何が起きているかを描くとともに、日本を少しでも良い国にするための、ウィットに富んだ提言を行っているのが『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』です。目からウロコの比較文化論となりました。

感想・レビュー・書評

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  • 題名だけ見るとおふざけ比較論のような感じですが、
    中身は至極まっとうで、様々な警句が散りばめられています。

    著者は日本にほれ込んでる在日イタリア人、滞在は20年を越えるとのこと。

    アメリカ発の「新自由主義」の名のもとに、ズタズタにされたイタリア経済と、
    そしてなにより、イタリアらしさという「国体」をも見失っていると、述べています。

     “(イタリアが)今の経済危機に至った責任の多くを負っているのは、
      労働者の「既得権」を守るということばかり考えて、
      若い人の雇用の問題を無視し、
      経済の活性化を促す政策の実現を怠ってきた、
      既存の左翼政党や、そのバックについている労働組合だった”

    少し前の民主党政権下の日本ともリンクしそうな、そんな状況が見て取れます。
    こちら2012年の9月出版ですから、相当に危機感があったのかな、とも。

     “現代社会では「マネー」にばかり人々の関心が集まって、
      モラルや倫理といったものが、あまりに軽視され過ぎている”

    元来、イタリア人は勤勉で、朝から晩まで普通に働いていると、、

    今は、一部のシェスタなどが誇張されて伝わっているものの、
    労働時間から見るとヨーロッパでも高い方とは、失礼ながらに意外でした。

     “マスメディアによる「思想誘導」は今でも、
      世界中のほとんどの国で(独裁政権でない、
      民主主義国家を標榜している国でも)行われているのです。”

    これまたなるほどと、どこも状況に大差は無いのかな、と。
    個人的には、現地におられる塩野さんの感覚とクロスさせてみたいとも。

    また、政治思想的に「右派」「左派」とは分かれていても、
    やっていることの実体に大差は無いとも話されていて、

    この辺りは、フィクションの部分を上手く融合させながら、
    今のイタリア社会の実情を描きだしているのではないかな、とも。

    翻って今の日本を見た時に、、首の皮一枚でつながっているなと、
    あと半年、民主党政権が続いていたら同じ穴にはまっていたとも思います。

    もちろん、今の状況を楽観視していていいわけでもないですが。
    自身の立ち位置も含めて、今後どうしていくべきかを考えさせられた一冊でした。

  • 在日イタリア人による比較論。というか日本人はあまり知らない現代イタリアの政治状況。政治の腐敗、グローバリゼーションによる富の偏在、若者の失業など、状況は日本と同様である。右派、左派、どこが政権を取っても関係なくそのバックには財界や官僚、マスコミがのさばっている。再生の方法は、われわれがいかに情報の真贋を見抜き、操作されない賢い大衆になれるかにかかっている。そして少しでも声を上げ、変革を信じること。それしかないのだろう。

  • 笑える話かと思ったらマジだった。
    で、笑える話より面白かった。遊んでばかり、いいかげん、おしゃれで女好き、陽気で楽天的・・・ぼくらがイタリア人について持っているステレオタイプは、かなりの部分が作られたものらしい。どこの国もそうだけれど、実情はずっと複雑で、時として深刻だ。南北格差やマフィアによる侵食、汚職とコネ、イタリアも大変なんだなあ、と人ごとではないと思わせる返す刀。
    イタリア旅行の前に読んでおきたかった。

  • 購入: 2012年10月3日
    廃棄: 2022年4月22日

  • イタリアの歴史背景から現在の経済事情を分析するところが面白く為になりました。イタリアの普通の家庭の日常生活からイタリア国内の政治経済を分かりやすく書かれていて面白いです。

  • 近頃、一生懸命に旗色の悪い国の本を読んでいる。次はギリシャかな。
    読んで分かるのは、イタリアにタフな時代があり、かつよき時代があったということ。そしてどこかで歯車が狂い始め。。。歴史家から見れば、奢った瞬間があったということになると思うか、かと言って奢らなかった国なとあるのだろうか。で

  • ギリシア、スペインに次いで EU のお荷物(?)のイタリアですが、この本では、現在のイタリアの政治や経済の状況が、北イタリアの普通の労働者「ビアンキ氏」家族の生活とからめて語られます。イタリアは歴史の長い国だけあって、ここに根付いた病根は深いようですね。
    しかし現在のイタリアの窮状を日本が笑えるのか? なんだか、日本もイタリアもまったく同じに見えてきました。日本に根付いた病根も同様に深いのです。。。そのことがよくわかります。

  • 取って付けたようなタイトルに無理やり内容を合わせたような感があるが、内容は良い。

  • シーザーは偉大なり

  • どっちがバカという話ではなくて、イタリアがどういう状況でどうしてこうなったか、がある家族の生活を通じて理解できる話。

    下手な説明をダラダラするより、エピソードで概要をつかんだあと、詳細の説明がある形式なのでわかりやすい。

    特に南イタリア好きで、北イタリアの人が南をひどく言うのが気になっていたのでなんとなくではあるが気持ちが理解できた。
    あの国は、国であって国じゃない。

    日本への嘆きもごもっとも。でも、どうにもならないかな。日和見だしな。

  • 302.37||Gr

  • こんな題名がついていますが、内容は大マジです。
    日本に住んで20年以上になるというイタリア人が著した本。

    国の借金が膨大で、新自由主義に基づく政策が推し進められ、社会保障制度は先細りになり、若者が定職に就けず、格差が拡大し、政財官が癒着している。日本とイタリアはものすごく似ているようです。

    この状況をどうにかするためには、テレビや新聞などのマスメディアからの情報を鵜呑みにするなと著者は言います。広告主であるスポンサーの意向に沿った情報しか流れてこないのだから。日本人は「報道の中立性」などという幻想を早く捨てるべきだと。

    そのうえで、自ら情報を集め、自分の頭で考え、必要以上に「空気を読む」ことはせずに敢えて声を上げるときは声を上げよ、と。無関心、諦観、「見ざる・言わざる・聞かざる」では、独裁者のやりたい放題となり、自らの首を絞めることになるんですよ、と教えてくれています。

    日本人は、必要以上に「同調圧力」をお互いにかけ合って、自縄自縛になっていると私も思います。これでは私たちは、自公政権にいいようにされるだけの羊の群れです。飼われている羊の行く末は、肉か毛皮です。食べて使うのは1%の権力者・富裕層だけで、私たちは屠殺される側になります。

    思っていること、おかしいことにはおかしいじゃないかと、家族や友人や同僚に話すこと。身の回りの小さな風通しを良くするところから、世界は少しずつ変えることができます。その輪が、市民集会などにつながり、世論を動かし、デモなどの世論の可視化につながり、社会に変化をもたらします。面倒くさがらずに国民がみんなでそうすることが、生き残るための自衛策なのだと思いました。

  • 日本に永住しているイタリア人による本。自分の親戚を登場人物として、彼らの物語と解説を交互に挟む構造。こういう本って想像以上に頭が疲れることが判明しました。泣

    途中でつまらなくなって最終章だけ読んだら、衝撃。ハンマーで頭を殴られた感覚。自分に当てはまることが多すぎる。就職や教育やライフプラン。もう一度きちんと再読して感想書きます!

    2013.8.13(火)

  • ユーロ問題を考えた場合、ユーロ圏の中でも経済規模の大きなイタリアがなぜこうなってしまったのか?
    これを深く理解する必要がありました。
    南北格差の根の深さ。これはなかなか日本では普通には情報としては入って来ませんからね。
    日本の将来の姿を読み解く上でも学びが多い一冊でした。

  • イタリア人が日本語で語る今の真のイタリアの姿。
    イタリア通の人にも、イタリアのことをよく知らない人にも。

  • イタリアと日本の経済構造を照らし合わせて
    日本に迫るリスクを解説してくれてる。
    イタリア人は暢気そうに見えて大変です・・

  • 著者はグラッセッリ・ファブリツィオ。
    在日歴20年以上のイタリア人建築家である。
    慶應義塾大学で教鞭も執っている。

    友達の友達がイタリアに嫁いだみたいで,
    友達からイタリアのことをちょくちょく耳にしていた。

    イタリアと日本はよく似ているらしい。
    イタリアに興味を持ち,本書を借りてみた。

    出版社が奇をてらってか,はたまたイタリア人のユーモアなのか,
    タイトルで損をしている感じはする。
    内容の本旨は至って真面目。

    現在のイタリアの政治・経済・社会状況を,
    架空のイタリア人一家の挿話を交えながら,解説している。

    最後の章で,イタリアの現在を踏まえ,
    日本の現状を憂い,提言をしている。

    その提言自体は,私の思うところと同じです。

    本書に通底しているのは,(アメリカ的)資本主義批判,
    グローバリゼーション批判等です。

    日本が,(アメリカ的)資本主義,
    グローバリゼーションに乗るのか,乗らないのか。

    結局は,乗ることになるのだと思うけど,
    どちらに進むにしても茨の道が待っていることは必至。

  • 著者は日本に長く住んでらっしゃるイタリアの方、なので非常に中立的かつリアルな内容だったと思います。
    日本人による自虐的な表現を聞き飽きたら、読んでみると新鮮かも。

    途中ちょっと物語っぽくなったりもしてイメージしやすい。
    私の知り合うイタリア人は案外(というと失礼)真面目な働き者で時間にも正確な人が多かったので、南北格差などイタリアに興味が湧いていました。この本を読んで納得。

  • タイトルだけ見たら、皮肉や自虐だらけのギャグ本、かとも思ったのですが、とあるイタリアの一家を軸にした、イタリアの経済や南北問題、そして明日は明日の風が吹く、と考えるけど、明日はまたどんより、というストーリー。そして日本のネタが最後に登場します。イタリアのバカっぷりに日本がぐんぐん追い上げて、ほぼ互角になったのでは、というのが著者の見方。しかしバカの種類が違うのだと。「空回り型バカ」と「思考停止型バカ」。どっちがどの国かは、いわずもがなですね。
    追い上げた数十年というのは、日本にアメリカ的思考が色濃くなった期間でもあり、そう考えると一番バカはやっぱりアメリカだ!と人のせいにしてみたいけど、それはどういう種類のバカかな。暗いけどなぜか少し元気が出る本。

  • 巷に溢れている、日本在住の外国人から見た日本批判本、もしくは礼賛本とは一線を介している日本批評本。
    祖国イタリアをひとつの物差しとして登場させており、その部分だけ取っても読む価値のある本だと思う。
    イタリアの生い立ち、その過程で産まれた歪、現代イタリアが抱える社会・政治問題を一般市民の視点から非常にリアルに描写している。そしてその描写された内容と著者が思う現代日本社会の問題を対比させている。

    日本人の私から見ても客観的に書かれており、また日本に対する警句についても決して穿った内容にはなっていない。
    警句の中にも著者の日本への愛情がひしひしと感じられる。

    日本人からすると耳の痛い話も含まれるが、是非ご一読を。

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