日本型リーダーはなぜ失敗するのか (文春新書)

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  • / ISBN・EAN: 9784166608805

作品紹介・あらすじ

決断できない、責任をとらないリーダーはなぜ生まれてしまったのか。エリート参謀の暴走を許したものは何か。ご存知"歴史探偵"が日本のリーダーの源流をたどり、太平洋戦争での実際の指揮ぶりをつぶさに点検。今こそ歴史に学ぶ姿勢が問われているのです。

感想・レビュー・書評

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  • 日本史、特に近現代史が苦手な私にとって、辞書代わりに
    スマホを手に読んだ。
    今もほぼ変わらぬ、いや後退している日本の様子に一社会人として、なんだか嫌になりつつあるが、まぁそれでも、
    先人たちを反面教師に、こんなふうにはならない様に気をつけたい。

  • 『失敗の本質』とそっくり。読む気が失せました・・・。

  • 2024.02.21 品川読書会で紹介を受ける。

  • 戦争の生き証人達に取材してきた半藤一利によるリーダー論の決定版『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』を読みました。
    半藤一利の作品は先週読み終えた『歴史探偵 忘れ残りの記』以来ですね。

    -----story-------------
    決断力に欠け、情報を軽視し、従来のやり方に固執して、責任をとろうともしない。

    これは、太平洋戦争の指揮官たちにみられる共通の悪弊である。
    なぜ、こういうリーダーしか日本陸海軍は戴けなかったのか。
    エリート参謀たちの暴走を許したものは何だったのか。
    日露戦争時には東郷平八郎、大山巖という名将、そして秋山真之という名参謀がいたのに、どこでどう間違えてしまったのか。

    現代にも通じる「日本型リーダー」が生まれたプロセスを、日本陸海軍の組織、人事、教育の面から徹底的に解明。
    絶大な権力を握っていた陸軍の「派遣参謀」、適材適所の人事を阻んだ日本海軍の「軍令承行令」、単なる軍事オタクしか養成できなかった陸大・海大の教育など、実例に沿って失敗の原因をつぶさに検証する。
    ″歴史探偵″を称する筆者が、直接会って聞いた生き残りの将、参謀の生々しい証言も傍証となっている。

    リーダーの不在を嘆く前に、リーダーシップとは何か、どういう人がふさわしいのかと、我々は真剣に考えてきたのだろうか。
    あの戦争の失敗に、果たして真摯に向き合ってきたのだろうか。
    長年、昭和史研究に携わってきた著者の熱いメッセージが込められています。
    -----------------------

    2012年(平成24)に刊行された作品……決断できない、責任をとらないリーダーはなぜ生まれてしまったのか、、、

    エリート参謀の暴走を許したものは何か……″歴史探偵”半藤一利が日本のリーダーの源流をたどり、太平洋戦争での実際の指揮ぶりをつぶさに点検した作品です。

     ■前口上
     ■第一章 「リーダーシップ」の成立したとき
      ・戦国武将のお手本
      ・将には五材十過あり ほか
     ■第二章 「参謀とは何か」を考える
      ①権限発揮せず責任もとらない
      ②権限発揮せず責任だけとる
      ③権限発揮して責任とらず ほか
     ■第三章 日本の参謀のタイプ
      ①書記官型
      ②分身型
      ③独立型
      ④準指揮官型
      ⑤長期構想型
      ⑥戦略参謀型
     ■第四章 太平洋戦争にみるリーダーシップ1
      ・リーダーの条件その一―最大の仕事は決断にあり
      ・リーダーの条件その二―明確な目標を示せ
      ・リーダーの条件その三―焦点に位置せよ
     ■第五章 太平洋戦争にみるリーダーシップ2
      ・リーダーの条件その四―情報は確実に捉えよ
      ・リーダーの条件その五―規格化された理論にすがるな
      ・リーダーの条件その六―部下には最大限の任務の遂行を求めよ
     ■後口上
     ■あとがき

    リーダー不在が叫ばれて久しい日本……しかし、リーダーシップという言葉のもとは軍事用語、、、

    最近まで一般の人には関係ないものだったのです……そこで、ご存知“歴史探偵”が日本のリーダー像の源流をたどり、太平洋戦争での実際の指揮ぶりをつぶさに点検。

    責任をとらない、決断できないリーダーはなぜ生まれてしまったのか、エリート参謀の暴走を許したものは何か……構造的な問題を明らかにします、、、

    歴史から何を学べるかが、今問われています。

    半藤一利が日本陸海軍の指揮官たちのリーダーシップを歴史的に分析した作品……太平洋戦争での決断力に欠ける、情報を軽視する、責任をとらないというリーダーの悪弊を、組織、人事、教育の面から徹底的に解明しており、生き残りの将、参謀の証言も紹介されていました、、、

    優秀な参謀がいれば、リーダーは単なる神輿でいいという日本型リーダーが生まれたプロセスが明確に示されており、現代にも通じる問題点が指摘されていました……意思決定者が誰であるのかを見えにくくし、責任の所在をあいまいにして、成績は優秀だが現場を知らないエリート参謀ばかりを生み出し、結果的に、それがエリート参謀の暴走を許してしまったんでですよねー 現在の日本の至る所で観ることができる現象ですね。

    この本を読んで、日本のリーダー像の源流を知ることができ、リーダーシップとは何か、どういう人がふさわしいのかということを考えるきっかけになりましたね……仕事をするうえでもヒントになることが盛沢山でした、、、

    そんな中で印象に残ったのは、

     いまの日本にリーダーがいないのは、
     日本人そのものが劣化しているからだと思います。
     国民のレベルにふさわしいリーダーしか持てない、
     というのが歴史の原則であるからです。

    という『前口上』でのコメント、

    あとは、プロイセンの軍事思想家クラウゼヴィッツの『戦争論』で語られる、リーダーの資質となる七つの要素ですねー

     ・勇気
     ・理性
     ・沈着
     ・意志
     ・忍耐力
     ・感情
     ・強い性格

    これは仕事にも通じることです。

    そして、『第五章 太平洋戦争にみるリーダーシップ2』の中の『リーダーの条件その六―部下には最大限の任務の遂行を求めよ』で紹介される、

     ・ガダルカナル島における捨て身の撤退作戦(山本五十六)
     ・無謀で悲劇的なインパール作戦でリーダーシップを発揮し孤軍奮闘(宮崎繁三郎)

    は、涙なしには読めない太平洋戦争でのエピソードでしたね……リーダーシップについて新たな視点を得ることができた一冊でした。

  • 戦時中の旧日本軍の内容は他でもよく見た使い回しだが、対して米軍の話は新鮮だった。
    結論、昨今の日本も当時と大して変わっていないのだが。

  • 「失敗の本質」を読む中で出てくるリーダー個人に焦点を当て、その時の判断の背景がよくわかります。リーダー個人の判断より どことなく 周囲も納得できる人選として今もなお、卒業時の成績が参照されるような傾向も身近にあるのではないかと思う人員配置。想定外という言葉が多く語られたように、不都合な案件は直視できない点などは過去の出来事というより いまでも 見直す必要がある時が必ずくる気がしました。

  •  半藤一利さんはこの表題のをテーマにした講演を全国各地で35年以上続けています。その内容を本にしたものです。
     昭和史といえば半藤氏であり、半藤氏が探偵し尽くした日本人の昭和の敗戦ですが、その当時ととても似ている状況にあります。この本が書かれたのは2012年ですから3・11の東日本大震災が起こったばかりの時です。あの当時、総理官邸と原子力安全・保安院と東京電力のトップは誰も責任を取らず、あれから10年経とうとしているのに、未だフクシマの処理の方向性さえつけられずにいる日本。そして「異次元の金融緩和」や「アベノミクス」、「拉致被害者問題」等々が当初言っていたことがズルズルと曖昧になっている。
     これは「中国一撃」で始めた日中戦争はその戦費を半年分しか予算化していなかったのに、泥沼化して日本国を敗亡に導いてしまった。なんだか日本の財政破綻も同じような道筋を辿っている。
     大本営陸軍海軍部は危機に際して「いま起きては困ることは起きるはずがない。いやゼッタイに起きない」と独断的に判断する通弊がありましたが、いま日本の政府は同じことを繰り返そうとしています。

     そんな危機感を感じました。これからの人生を生きる指針を考える上でとても役に立つ一冊だと思います。

  • 2020/06/19半藤一利「日本型リーダーの失敗」「3」
    リーダーの「無答責」 これが日本の風土
    国家を担う「エリート」を定義し、育成しなければならない
    リーダーの目標・戦略の結果を検証・評価する
    これが日本は苦手

    「皆で」という集団主義に曖昧としてしまう
    先の戦争も然り 
    天皇陛下・東條英機・近衛文麿・松岡洋右

    日本の組織運営 
    リーダーと参謀
    責任の所在が曖昧
    参謀の人事権は参謀総長
    参謀重視

    短期決戦主義
    情報と兵站の軽視無視!
    2018.11.10
    今回の著作は秀逸、歴史物ではなく、「失敗の本質の検証」に対する想いが伝わる。
    310万人が亡くなった太平洋戦争
    大きな戦略が明確でないと最終的な勝利は覚束ない
    戦場の指揮官ばかりではなく、陸海軍の枢要な部署にある連中の戦略構想が大事

    太平洋戦争においては不思議なくらい日本の軍人さんは決断ができなかった
    統制好き 上からの命令遵守の指揮官が多かった

    しかし「組織の目的を明確に」することはなかなか難しい
    真の目的を部下と共有すること、プロジェクトリーダーとして最も重要
    それこそがリーダーシップ!


    西南戦争が終わり、山県有朋は「統帥権の独立」を制度化した

  • 日本軍の参謀は現場経験もないのに、企画立案し、その上、現場の責任者に対し指図した。しかも、敗戦の責任は自分でとらない。

    p.17- 明治の参謀本部では、あるべき指導者を引き出そうとした。その一部は「旧参謀本部編集」の「日本の戦史」シリーズ(徳間文庫)として刊行されている。
    p.31 鴎外全集 第34巻で鴎外が翻訳したクラウゼヴィッツの戦争論(大戦学理、草稿では戦論)で読める。
    p.45- 西南戦争での経験が、総大将は疎くても参謀さえしっかりしていれば戦には勝てるという日本型リーダーシップが方向づけられた
    p.50- 日本海戦の正史は「極秘明治三十七八年海戦史」として残されていた。
    p.63-帝国陸海軍の理想のリーダーは威厳と人徳を持つ人というである。
     ☆ なんだか西郷隆盛みたいだな。
    p.86- 陸大では上から言われたことだけをするように教育された。堀栄三氏は、陸大時代、情報参謀の教育は皆無だったとしている(「大本営参謀の情報戦記」文春)
    p.146- 2.26事件で銃殺刑を免れた将校5人の証言(「われらが遺言・50年目の2・26事件」文藝春秋 1986.3月号)警視庁占拠の400人以上の兵力のほんとうの狙いは宮城占拠。

    p.153- リーダーの条件
    最大の仕事は決断にあり
    明確な目標を示せー部下との共有
    焦点に位置せよー居場所を明らかに(?)
    情報は確実に捉えよ
    規格された理論にすがるなー成功体験をなぞったり(?)
    部下には最大限の任務の遂行を求めよー仕事の方向性と明確な目的を示し、全力を傾けねばならぬか理解させ、納得させて指揮をとる。ついつい部下を小手先で使ってしまいがち

    p.255 戦前日本にもあったリーダーたちの独善性と硬直性と不勉強と情報無視が、現在に通じているのではないかと思える。大本営陸海軍部は危機に際して「いま起きては困ることは起きるはずはない。いや、ゼッタイに起きない」と独断的に判断する通弊があった。

  • 2019年8月11日読了。

    ●「孫子」「呉子」「六韜・三略(りくとう)」などの
    武経七書
    →武田信玄、上杉謙信、織田信長

    ●「孫子の兵法」
    智…敵に優る智慧、敵に手を読まれず、敵の手の内を
    読み取る力。
    信…心正しく偽りがなく、部下の信頼を集めること。
    仁…思いやり、労りなど、人を慈しむ心。
    勇…ことに臨んでよく忍耐し、危険を恐れず為すべきこ
    とを行う力。
    厳…けじめをはっきりする厳しさのこと。

    ●江戸時代の最も有名な兵法家・山鹿素行(やまがそか
    う)は、このうち一つでも欠けると武将の資格がない
    と言い切る。

    ●日露戦争の直前、日本陸軍では組織的に「戦争論」を読
    んで研究。著者クラウゼウィッツはプロイセン王国の軍
    人であり軍事学者で、ナポレオン・ボナパルトの時代の
    人物。1〜8巻から成り、1、2巻を訳したのは森鴎外。

    ●↑「興奮してもなお心の均衡を失わない」

    ●森鴎外がクラウゼウィッツのリーダー像「軍事的天才」
    という人物像にインスパイアされて書いたと思える小説
    「護持院原の敵討ち」(1913年)

    ●P55
    日露戦争の日本海海戦でバルチック艦隊がどの経路から
    来るか(対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡)、ずっと議論
    がなされていた。
    時間規定で開封する密封命令書もあったが、それは一般
    に公刊された日本海海戦史には書かれていなかった。

    しかし、密封命令書の内容をどのような経緯で撤回し、
    対馬沖での待機を続けることになったのかは、歴史の闇
    に伏せられた。

    ●太平洋戦争における日本の2人の名将
    陸の牛島満中将と海の田中頼三少将

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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