臆病者のための裁判入門 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2012年10月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784166608836

作品紹介・あらすじ

著者はひょんなことから知人の外国人男性の保険金受け取りをめぐるトラブルの解決を手助けすることになりました。非は完全に保険会社にあることがわかり、すぐに解決するかに見えましたが、事態は思わぬ方向に進展し、ついに「少額訴訟制度」を利用して、裁判に訴えることに。「少額訴訟制度」とは、請求額が60万円以下なら、簡易裁判所で審理から判決までを原則1日で行ってくれる制度です。市民が身近な紛争を裁判で安価で簡便に解決できるように1998年に作られました。日本を「法の支配」が行き届いた「法化社会」にしよう、という思いが、この「少額訴訟制度」には込められています。

しかし、著者と知人の外国人男性は、摩訶不思議なニッポンの裁判制度の闇に迷い込んでしまいます。どこに行っても、悪い人には会わず、善意の人ばかりなのに、簡易裁判所と地方裁判所をたらいまわしにされ、少額の保険金と賠償が得たいだけなのに、多大な時間と労力を費やすことになってしまいました。一日で終わるはずが、決着を見るまでに何と二年半の歳月が流れていました。

その体験を元に日本のニッポンの「使えない」司法制度の問題点を解明したのがこの新書です。問題の一端は、「少額訴訟制度」で扱える紛争の種類が家賃未納や交通事故の損害賠償など定型的なものに限られていること。著者が関わったようなちょっとこみいった訴訟になると簡易裁判所では扱ってくれないのです。

公正中立な「法化社会」を建設する過渡期にあるニッポンで、素人が少しでもややこしい訴訟を始めるとどんな目に遭うのか?

その一部始終がわかる貴重なルポであり、身近にはなったけれど、まだまだ使い勝手が悪いニッポンの裁判を使いこなすための画期的な入門書でもあります。

面白くてためになる一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 12万円の保険金支払という、低額ながら外国人の本人訴訟という変わったケースに、紆余曲折しながらの裁判の話。ケースとしては変わっているのだろうけれど、その分いろいろなステップを踏んでいくため、ぼんやりした日常でも巻き込まれそうなレベルの訴訟から、もう少し先の世界までかいま見える。この本では裁判所・裁判官は比較的よいところに恵まれた感があって好意的に書かれているけれど、これから多く出てくるであろう東日本大震災の民事訴訟がみんなそんな風に進むとは限らない。
    ともあれ、未経験者としては、読んでおいて損はない本。

  • コンプライアンスがすすむほど、社会に遊びがなくなって(グレーゾーンがなくなって)裁判が増えるってのは、なるほどそうかもね。と。

  • 著者が外国人の知人の代理人として少額民事訴訟に関わった体験や、日本での本人訴訟の問題、福島原発の損害賠償の問題を扱っている。裁判官の人数の少なさ、弁護士費用の高さ、長期に渡る煩雑な手続きや賠償金の効力の薄さなどが、一般人が司法制度を利用する障壁になっているという。本書を読むと、司法制度は被害者にとって負担が重すぎる割に利がないように感じる。なんとかならないものなのか。

  • 全部覚えたり理解するのは難しいので困ったら見返すくらいでいいのではないか。

  • 臆病者のためシリーズの第二段。

    橘さんの本は,もう卒業だと言いながらも,
    新刊コーナーにあったのを目にして, 衝動的に借りてしまった。
    前著『臆病者のための株入門』は結構,面白かった。

    大きく分けると二部構成になっている。

    第一部は,外国人の知人から損害保険の支払いをめぐる
    トラブルを相談されて,知人の代理人として,
    弁護士なしで保険会社を訴えることになった体験談。

    第二部は,簡裁関係(調停・仲裁,少額訴訟等)や
    ADRの概観が分かる総論的な感じ。

    第一部は,読み物として面白かった。
    第二部も,読んでおけば,訴訟に巻き込まれても,
    少しは動揺しなくても済むのではないでしょうか?
    取り合えず,ADRと法テラスは結構,使えるよっと。

    裁判ってのは,時間はお金ばかりかかってしまって,
    あまり現実的ではなく,
    これからはADR(裁判外紛争解決手続)が
    主流となってくるのでしょう。
    ADRの説明も,本書に簡潔に記述されていている。

  • もう一度、購入して読みたい。誰もが一度は読むべし。わたしの知らなかった民事訴訟に興味がでました。

  • 裁判について、巷の一般解説書より、読み込めて、面白い。

  • 民事裁判沙汰にならないことを祈る

  • これぞ裁判入門!
    これはいい。

  • 末端のところから、全体の仕組みを眺めるような入門書。おもしろかった。

  • 裁判っていうのは、訴える側にも、訴えられる側にも、裁く側にも、弁護する側にもなっちゃいけない、ということがわかりました。

  • 実際の民事裁判の体験を本にしたもの。
    少額訴訟、簡易裁判、地方裁判の違いもわかる。

    以外と無料で使える法律相談があるということもわかった。(私も大学時代に友人から金銭の貸し借りの相談を受けて、役所の法律の無料を利用したことがある)

  • これを読んで自分が裁判を起こした時の事を思い出した。あの時お願いした弁護士さんにも言われたけど、良い裁判官に恵まれたから勝てたんだな~とあらためて思った。あと、当然ながら、良い弁護士さん達がついてくれたのも大きな理由。

  • 【論理的であり論理的でない世界】
    いつわれわれも裁判沙汰に巻き込まれるかわからない時代になりました。しかし、法の世界は複雑で専門性が必要となります。そのため、われわれが勉強して専門性を養うより、リーズナブルで良心的な専門機関を知っておく必要性があります。この本はそういう意味で非常に役に立ちます。

    「法にかかわる世界は何を生み出しているのでしょう」このような疑問がわいてきます。
    非常にお金と時間がかかるわりに実は何も生み出してはないのではないか。生産性という観点からは何もないのではないかと思えます。結局は高い人件費を払っているだけと理解することもできます。

    素人から見ると、ないといけないが複雑怪奇にしすぎて、お金と時間がかかりすぎているように感じます。

  • 実際に裁判官や弁護士と関係してみると自分の主張や考えをどれだけしっかり持ってるかがポイントなんだなとしみじみ感じます。

    裁判に巻き込まれるとめんどくさいね。

  •  少額だけど非定型的な紛争という、一番厄介なケースの実体験を元に、日本の司法制度の現状を描き出した本。法律・司法は専門外の著者であるが、非常によく書けていて、一連の著者の作品に劣らぬクオリティである。

     交通事故の保険金請求をめぐっての、実損害にして12万円という事件。しかし、当事者(原告)はオーストラリア人のトムで、損保会社の担当者のあり得ない対応など、なかなかに特殊なケースであり、トムを通じて外国人が日本の司法制度から疎外されている状況(ただし、本書の中でも言及されているが、制度としてはそうでも、司法実務に携わる人々は誠実に対応しており、言葉や文化が通じない外国人と言うだけで門前払いしてしまう諸外国の司法制度よりはよっぽど親切だ、と肯定的な評価を下している)なども知ることが出来た。他にも簡易裁判所と地方裁判所をたらい回しにされるなど、原告が外国人ということで興味深い(といったら当事者に失礼か)事態も紹介されている。

     本件を通して、少額だが定型的でないという「ややこしい割に実入りのない事件」がなかなか処理されない実情が説明されている。それは決して弁護士報酬が高すぎるなどという単純な理由に帰結されることなく、司法制度全体を見渡した上での指摘がなされており、非常に示唆に富んでいる。

     本書の前半は、著者とトムが遭遇したケースについてのレポートと考察だったのに対し、後半は日本の司法制度を概観したものである。これがまた非常にわかりやすく、かつ面白い。
     ADR(代替的紛争解決制度)についての説明もコンパクトながらツボを押さえているし、各制度の中で本人訴訟についても分量を割かれて説明が加えられている。この辺が、一般市民が少額だが非定型的というややこしい問題に遭遇した、ということを前提にして書かれている本書らしい、と言えるであろう。というのも、本人訴訟については非常に件数が多いものの、その実態については意外とよくわからない。大学の法社会学の講義などでは本人訴訟が多いことが指摘されるだけで流されることが多いし、書籍では「本人訴訟マニュアル」的なノウハウ本ばかりで、司法制度の中における本人訴訟の具体像が今イチハッキリ説明されていないからだ。

     本書は、大学の法学部や法科大学院の「法社会学」の講義の副読本としても十分読むに耐える、というよりもそういう人たちこそ一読しておくべき本だと言える。もちろん、法律を専門に勉強したことの無い人にもオススメの一冊である。法律や司法についての知識がないと少し難しいかも知れないが、下手な民事訴訟の解説本を読むよりも、よほど身近な紛争の実態がわかるだろう。

  • 読み物として面白い。
    誰しもが巻き込まれる可能性がある民事訴訟、少額訴訟、その入門として。

  • はからずも上訴していくことになる著者たちの、具体的な動きがわかる。

  • 橘さんが、知人のオーストラリア人から交通事故に関する保険金トラブルの相談を受けたことから物語は始まる。
    A損保とは、あいおいのこと、T海上とは、東京海上のことだと推察される。
    Aの担当者が保険金を支払いたくないがために、巧妙な嘘をついて、保険金請求を諦めさせようとしたことが事の発端。
    コンプライアンスがこれだけ重視されている現代において、こんなことが起きたなんて信じられない。
    この担当者はきちんと処分されたのだろうか気になるところ。いずれにしても社内では相当な問題になっただろうから、出世街道からは外れたことだろう。
    まだ若いみたいだから、これから心を入れ替えてやり直して欲しいと願う。

    たかが、12万円の保険金で、どこまで費用と労力をかけて争うか、悩ましいところだったと思う。
    でも、橘さんが主張するように、担当者が明らかな不正をしたのに、本来の12万円を払えばそれで終わりというのでは不正が横行してしまう。
    やはり、保険会社は、早期に精一杯の誠意を見せるべきであった。
    そうしていれば、こんなに事件がこじれることもなかったし、このような本が書かれることもなかった?

    本書でとても心に響いたのは、「三方一両損」の話。
    日本の司法が、壮大な大岡越前であるというのは言い過ぎだが、確かに、訴訟上の和解は、三方一両損に近いものがある。
    橘さんが指摘するように、日本の司法は市民が想像するより公正であると私も感じる。

  • 勝間さんのオススメでAudibleを拝聴した。

    裁判は、私の大好きな刑事物でよく出てくるシーンであるが、プライベートで裁判所に行ったことなど1度もなく、訴訟などに関わったことも1度もないため非常に興味深い内容だった。

    一度何かに巻き込まれてしまうと非常に身近な内容でもあるし、方法界は情報格差が最も大きい分野でもあるため素人が太刀打ちする事は難しいと感じる。

    巻き込まれないことをが一番ではあるが、事故など否応なく巻き込まれてしまう事もある。
    その時のための1つの知識としてこのような書籍があると非常にありがたいと感じた。

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著者プロフィール

橘 玲(たちばな・あきら):作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』(幻冬舎)が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮社新書)で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン--世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチャルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論――「解決できない問題」には理由がある』(集英社)等多数。

「2024年 『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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