中国人民解放軍の内幕 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608850

作品紹介・あらすじ

二十年連続で二ケタ成長をつづける中国の国防費。空母建設に乗り出す一方で、サイバー&宇宙空間への進出に野心を隠さない。周辺諸国との領土紛争を抱える中で、秘密のベールに包まれた「危険な隣国」の軍事力の正体を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年刊。

     タイトルの如く、謎めく中国人民解放軍の史的概略、組織、指揮命令系統の実際、特殊部隊や「二砲」(核兵器とミサイル部隊)、党との関係(シビリアンコントロールの実像)、死の商人、サイバー戦争対策等がテーマ。

     情報ソースが不明な点、それに関連し何時の情報か等の問題も孕むが、新書で概観可能な点が買い。

     日本の国土防衛に関し、戦車ってひょっとして時代遅れ?。ロシアの仮想敵国としての比重が低下する今、特に市街地・山岳地帯の多い日本において、予算の限界ある中、特殊部隊化・サイバー防衛部隊への陸自の転換の要否こそ議論されるべきだろう。

     本書指摘のように武器転用可能な民生品(光学機器等)輸出が世界的に跋扈しているのは、最近のドキュメンタリーでも指摘され、そんな邦人メーカーもある。ただ、武器輸出三原則をなくした(民主党の責任は重いが)中、武器をまんま売るよりマシ?といえるのか。武器転用可能だとはいえ、民生目的製品を製造するメーカーであれば、それを悪用するのは購入側であり、少なくとも製造側とこれを販売するメーカの責任ではないだろう。ならば、かようなメーカーであればこそ政府的はバックアップすべきなのではないか。
     非民生品武器輸出は結局、特定の○○重工業への援助でしかなく、国としてのイメージの悪化を招来し、ソフトパワー戦略としても甚だ都合が悪い。

     勿論、民生品転用であろうと、車や衣料品M如く国内中小企業並みの税率の法人税すら納めていない先(合法・非合法問わず)への支援が不要なのは当然だが……。

     更に本書は、中国がサイバー戦争に注力する中、大半が大卒の部隊が中核を担うと指摘する。数理に長けた人材がサイバー防衛には求められる中、高卒(換言すれば、大学進学が学力的に困難な場合)を中核とはしにくい。というより、数理のみならず、語学を含め、大学への積極的に財政支援すべきであろうに…。
     独立行政法人化し、また私学を含め学費を増大させるごとき施策は、タカ派的観点からも亡国の所業である。

     ちなみに、本書からは、毛沢東ですら解放軍との関係性に腐心していた(反乱軍化の回避予防のため)が仄かに感じられるが、特に林彪叛乱(未遂)と逃亡の件に彼の恐怖感を感得できそうだ。

  • [大所帯の本当のところ]中国の台頭とともに、対外関係的にも多くの注目を集めている人民解放軍。機密性が高い存在であるその軍の内幕を、幅広い視点から記述した一冊です。著者は、中国関係のニュースの解説などで見かけた方も多いのではと思われる富坂聰。


    情報が少ない中でどうしても憶測や想像で話が進められてしまいがちになると思うのですが、客観的なデータや歴史的事実を豊富に用い、その沿革や近年の意図を的確に記述している姿勢に好感が持てました。新書という形式ではありますが、中国を考える上で欠かすことのできない人民解放軍に関して有益すぎるほどの情報を与えてくれますので、興味のある方にはぜひオススメしたい作品です。


    個人的に関心が引きつけられたのは、上り調子一辺倒に見える人民解放軍についても、その内部に深刻な問題を多面的に抱えているという点。腐敗や汚職といった、広く語られるテーマに限らず、近年の軍事革命がもたらした軍自体の変革への挑戦などについても言及がなされており、特に考えさせられることが多かった読書体験でした。

    〜解放軍はいま、大国にふさわしい軍を目指し、外に向けては膨張を続ける一方、日々深刻化する内患に悩まされている。〜

    これを新書で出せてしまうのはいろいろな意味でスゴいと思う☆5つ

  • 解放軍と党の関係、軍の組織構造や特徴、「サイバー」「宇宙」への関心とその足元で進む腐敗や弱体化、といった点について、若干総花的ではあるが、概要を把握できる内容。中国の軍事行動について、その意図を把握する際に読んでおくべき本と思う。

  • 自分にはちょっと読みづらかったかな。途中から飛ばし読み。しばらくしてからもう一度読んでみよう。

  • 自分にはちょっと読みづらかったかな。途中から飛ばし読み。しばらくしてからもう一度読んでみよう。

  • 人民解放軍について、新書にしてはかなり詳しく書かれていますが、大きな流れをつかみたい人には、その細かい情報の部分がやや煩雑に感じられるかもしれません。論評にはいちいちうなずける部分が多く、いろいろ考えさせられました。一つ非常に興味深かったのは1989年の天安門事件後の日本政府の振る舞いに関する部分です。富坂氏は、アメリカは表面上は非難しながらもいち早く水面下で接触を図り関係改善に動いていて、まじめに制裁をやっていたのは一部のヨーロッパの国と日本くらいだったという指摘です。少し前に読んだ中西輝政氏の著では、日本は国際社会に先駆けて制裁解除をしてしまった、と否定的に書かれていたのと180度異なる見方でした。どちらが正しいのか?

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著者プロフィール

1964年愛知県生まれ。北京大学中文系に留学した後、
週刊誌記者などを経てフリージャーナリストに。
94年『「龍の伝人」たち』(小学館)で、21世紀国際ノンフィクション大賞
(現・小学館ノンフィクション大賞)優秀賞を受賞。
新聞・雑誌への執筆、テレビコメンテーターとしても活躍。
2014年より拓殖大学海外事情研究所教授。
『反中亡国論』『中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由』
『「米中対立」のはざまで沈む日本の国難』(以上、ビジネス社)、
『感情的になる前に知らないと恥ずかしい中国・韓国・北朝鮮Q&A』(講談社)、
『トランプVS習近平 そして激変を勝ち抜く日本』『風水師が食い尽くす中国共産党』(以上、KADOKAWA)など著書多数。

「2023年 『それでも習近平政権が崩壊しない4つの理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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