ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

著者 : 今野晴貴
  • 文藝春秋 (2012年11月19日発売)
3.45
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  • レビュー :160
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608874

作品紹介・あらすじ

違法な労働条件で若者を働かせ、人格が崩壊するまで使いつぶす「ブラック企業」。もはや正社員めざしてシューカツを勝ち抜いても油断はできない。若者の鬱病、医療費や生活保護の増大、少子化、消費者の安全崩壊、教育・介護サービスの低下-。「日本劣化」の原因はここにある。

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)の感想・レビュー・書評

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  • ブラック企業が恐ろしいということは分かった。ブラック企業との対峙の方法も分かった。ブラック企業が生まれた背景も、ブラック企業を支える弁護士・社労士の存在も、彼らが生まれた背景も分かった。だけどそれらの多くを多分本書の読者は既に知っているのではないか。
    以下、読書感想文ではなく、ブラック企業に関する個人的な意見を。
    僕には、ブラック企業に関して、一つだけ分からないことがある。
    ブラック企業が、法的なリスクや世間の批判に晒されることのリスクをとってまで、なぜブラック企業でい続けるのかということだ。
    そこには、本書的な批判が批判として機能しない、つまり、「そこはブラック企業でダメだ!」という指摘が意味をなさない文法が存在するはずであり、それをこそ、我々は掘り下げて分析する必要があるのではないか、と僕は思うのだ。
    つまり、我々が本書の視点から見たときに「リスク」とすることであっても、彼らにとってはリスクでない可能性がある。我々がネガティブに捉える事象が、彼らにとってポジティブな事象である可能性がある。我々の合理性と彼らの合理性が異なる可能性がある。
    レヴィ=ストロースが『悲しき熱帯』で、ブラジルの原住民の生活に寄り添うことで、「白人中心主義」の構造を逆説的に導き出したように、我々も、あえてブラック企業に寄り添い、ブラック企業の中の文法・ブラック企業がブラック企業であることから脱け出せない構造を分析することで、新たに見えてくることがあるのではないか。そして、それこそが今後のよりよい社会のための視点なのではないか、というようなことを、僕は思ったりするのだ。
    まあ、お前がやれよ、って話ですよね。

  • 学生や20代の社会人には、自分には関係ないことだと思っても、一度読んでみてほしい。読むと気持ちのよくなる本ではないが、このままではいけない、という危機感を感じると思う。
    私もブラックな環境で働き、一度心身を壊した身なので、この本を読み、当時を思い出して苦しくて仕方がなかった。今そのような環境にいる人には、自分が悪いのだなどと思ってもらいたくない。潰れてしまう前に、辞めるか戦うかの選択をしてほしいと思う。
    ブラック企業は、入ってしまった個人の問題ではなく、「社会問題」として捉えるべき問題ということ。ブラック企業に必要な人材は、今の就職活動によって作られていること。たくさんの新しい視野を頂いた。
    簡単に解決する問題ではないと思いますが、著者の今野さんを、本当に応援します!



  • 賛否両論、実に物議を醸し出す一冊だな。

    ブラック企業。
    本書では、ブラック企業について論じられる時、若者の甘えと断じられるが、それは間違いだと述べられている。
    否定できない側面があることは確かだが、果たしてどうだろう。甘えとしか思えない側面が半々という印象だ。
    某アパレル会社での研修で、使い終わった洗面所を拭かされたり、歩く時に背筋を伸ばすことを強要されたり、まるで軍隊だと離職の理由を語る若者の経験談があったが、こいつ阿呆かとしか思えない。
    面談と称して何時間も軟禁され罵倒を受けたり、睡眠時間数時間の日々が何日も続き時給数百円という労務環境はブラックと言えるだろう。
    ただ、権利という大義名分を掲げているだけではという印象は拭えない。
    業界によっては、徹夜連勤が当たり前のところもあるのは事実で、客商売なら連勤休日出社、サービス残業、身銭を切っての営業なんて当たり前だ。
    決して、上記を是認するわけではないが、休みは欲しい、自分の時間は欲しい、意味が分からないとしたくない、休みの日まで勉強したくない、そんな風にしか聞こえない。
    地方から出てきて、最初の契約と違うなど分からなかったなど。昭和初期の移民ならまだしも、これだけ情報化社会でネットでいくらでも調べられるのに、自らの情報収集の欠落をこんなはずじゃなかったと言い訳にしか聞こえない。
    常時大量募集をかけていれば、それだけ常時人不足と離職率が高いのは容易に想像がつきそうなものだが。
    グローバル人材募集の理念に惹かれて?そう書かれていたのに?うーん...
    新卒を大量に仕入れ、不良在庫は切り捨て、使い潰すということが書かれていたが、年功序列の終身雇用神話が崩壊した現代日本では至極当然な気もする。
    そうならないためには?という発想が垣間見れない。外資なんかじゃ、利益を生み出さないものは当然のように捨てられるが。
    介護医療の世界でも、安く、一生懸命な労働力として東南アジアから続々入ってきているし、新卒は何も分からないから手取り足取り教えてね、でも権利だから休みも給料も保証してねなんてのは如何なものか。

    と、ここまでが前半の印象。
    後半からはブラック企業は駆逐されるべきだと断言できよう。
    前半ではやや批判的なことを言ってしまったが、決してブラック企業を擁護するつもりもないし、被害者を十把一からげに断罪する気も毛頭ない。
    ブラック企業の成立つ背景には、日本特有の文化、社会構造にある。果たして、駆逐することは可能なのだろうか。
    就職活動から洗脳の連続だ。

    行政や法整備にも問題は大有りだ。
    法整備も遅々として進まず、時代の流れからあまりにも乖離し過ぎている感は否めない。
    ブラック企業も新卒たちを病へ追込みむことで、その際に発生する各種保険などが、自分達の税金や社会保険で賄われていることをなんとも思わないのだろうか。

    未来は政治家たちの老後ではない。
    どこかで聞いた台詞が頭を過る。
    この国を支え担ってゆくのは、年寄りではなく若者だ。
    より良き未来になることを切に願う。

    最近起きた電通社員の過労による自殺の結果、命の値段に50万円という金額が付いたことに遣る瀬無さを覚えた。

  • 自分の勤めていた会社がやっと倒産手続きに入ったとのことで振り返って感想と愚痴を(笑)
    もう少し早くこの本に出会えていたらもっといい解決ができたのかな。
    読み終えた時点ではあまり役に立たなかったが参考になった。
    私の勤めていた会社は賃金が○年未払いな上に過労死ラインを超えるサービス残業を平気で強制するところだった。
    労基の是正勧告も悉く無視。
    今冷静になって考えると心筋梗塞などを発症するリスクがぐんと上がるし怖いことしていたと思う。
    私は見なし倒産の申請が通り立替制度を使うことができたけど、退職のタイミングで適用されなかった人もいる。
    社長が頑なに倒産を拒むし、残った社員も従順に仕事をこなしていたようで、長引いてしまった。
    半年という期間は短すぎるのでもう少し長くするか何か対策が欲しいなと思う。
    早い段階で協力者を募り、労働組合に加入するなり弁護士に相談するなりしていれば情況は変わっていたのかなと激しく後悔。
    今後はこんなことがないように何かあれば早めに考え、動けるようにしたい。

  • ブラック起業出現の原因、成長までの過程、対策とブラック企業が日本の市場にもたらす損失などについて分かりやすく書かれていた。
    特に、損失の面については若者の労働人口の減少、治療による医療費の増加、出産率の低下などは個人として特に懸念する内容だった。

    作者のあとがきにも書かれていたが、これは他人事ではなく日本国全体にも関係のある内容であると受け止めることが重要である。

  • 大佛次郎論壇賞を獲ったことで本書を見直した。湯浅誠が2008年「反貧困」で同賞を獲った時と、2013年に同賞を獲った今日ではギアが数段上がっていると著者は考えているのかもしれない。もはや徐々に社会から排除される「すべり台社会」ではない、一度ブラック企業に入ってしまったらその時点でアウト「落とし穴社会」になってしまったと著者は云う。

    いろんなブラック企業が出てくる。ワタミやSHOP99、ウェザーニュース。しかしもっとも印象的なのは、訴訟に持ち込まれていないためにX社という言い方でしか紹介されていない(私はあえて言う)ユニクロの実態である。

    私は小さな建設会社でブラック企業的な扱いを受けたことがある。そこでは労基法違反が十数例平気で罷り通っている最低の職場だった。これは親方的な感覚の社長が、自らの小さな財産を守るために行う無知我儘な振舞いだった。よく考えると、売り手市場の労働環境を背景に、入ってからも選抜を繰り返すやり方は、まさに現代のブラック企業の小型版とでも言うべきものだった。私はさっさと辞めたけど、数社を渡り歩いてここを辞めたら将来が無いと悲観していた青年はどうなったのだろうか。鬱を発症したら、それこそ落とし穴に嵌ってしまうだろうに。

    ユニクロはなかなかずる賢く対処している。本人が心の病気で優しくも(訴えらるのではなく)退職しようとすると、いったん休職させて治ってから辞めさせているのである。これで「労働災害」としてのリスクはなくなる。その他よほど優秀な社労士がいるのか、ユニクロは未だ裁判に持ち込まれていない。

    この本には様々な対抗方法が記されているが、最も大切なのは、ブラック企業がいかに国益を害するのかを指摘している処だろうと思う。「ブラック企業の成長それ自体が、日本の医療費等の直接的な、あるいは労使関係の信頼という間接的な財産を食いつぶして成立しており、実質的な意味では「一時的な成長」だということも出来ない。」(177p)

    著者は根本的な社会的対策を提言する。労働時間規制、過労死防止基本法、非正規雇用規制、失業対策。しかし実情は反対方向に向かっているのは、ご存じの通り。残業ゼロ法案、非正規雇用拡大、職業訓練の縮小等々である。対策としては、労組やNPOに相談、加入して労使関係の再生に取り組もうと呼びかけている。また、中学・高校での労働法教育の充実をあげている。大賛成である。というか、「ブラック企業」という言葉のみが一人歩きするのだはなく、多くの労働者がそこに気がついて欲しいと思う。
    2014年6月19日読了

  • 終身雇用制に伴い,良好な労使関係を築いてきた日本型雇用だが,グローバル化の流れの中で,その形態も崩れつつある。日本型雇用の副産物である「家族型経営・サービス残業」といった言葉も,その実質的な形を変えつつある。企業側も生き残りに必死であり,ブラック企業=悪と一方的に決め付けることは難しい側面もあるのだが,教育現場においては,もしもの時の自分の身の守り方,ワークライフバランスの概念は,しっかりと身につけさせておきたい。「仕事に打ち込める社会人」を育てることと同時に,「たかが仕事,と良い意味で割り切れる社会人」としての良識も育てていくことが必要だ。キャリア教育の真価が問われる時代でもある。

  • 日本人のイヤな部分満載。
    子どものイジメも、根はブラック企業と同じ

  • マスコミは、業績を伸ばしている新興企業の経営者をカリスマ視して持ち上げ、経営も効率的だと好意的に取り上げることが多い。そのような企業の中には、労働者を労働者として存在させ続けるコストも払わず、使い捨てし、精神的に潰している企業もあることもしっかりとりあげるべきだ。。
    こうした企業がある事実がわかれば、いくら業績が良くても効率のみを追求し、人材を大切にしない企業は支持されないはずだ。多数の人々が不幸になっていくことを望んでいるわけではないから・・・。
    このままこうしたブラック企業を放置すると、素直で道徳心が高く協調性があるという日本人の美徳(悪く言えばお人好し)を食い物にし続けて、他者に対して猜疑心ばかり(多くの他国と同様)の荒んだ社会となってしまう。もう徐々にそうなりつつあるのが怖いのだが・・・。
    まずは、こうしたブラック企業の求人に全く応募者が集まらなくなるようにするべきだ。
    著者は単にブラック企業をモグラ叩きするだけでなく、日本社会の未来を変えるべく活動している応援したい。

  •  いわゆる「ブラック企業」の実態と、それに対する対策を記した本。裁判沙汰になっている企業は実名で、そうでない企業もなんとなくわかるように紹介されているので、ああ、あの会社ってそんななんだー、と思う。


     もちろんこの本に紹介されているようなブラック企業ってまったくもってダメなんだけども、それでもちょいちょい「いや、それは企業としてドライでストイックなだけであって、それが無理ならその企業と合わないんだから会社辞めるしかやいやろ」というのもある。毎日嫌がらせを受けてノイローゼになるまで精神的苦痛を受けることと、毎日4時間残業が前提になっていることは並列に並べると議論がぶれるような気がするんだよね。毎日4時間くらい残業してた時期があるものからすると。(最近はゆるいけど)


     筆者は会社に毅然として労働条件の改善を求めることが必要だというけれど、たぶん労働者が求める条件を受け入れるとその企業は企業活動を続けていけないのであろうし、そもそもその違法な労働環境を続ける企業があってよいものではない。で、あればそんな企業に入らないで起業するか、労働市場できちんと選別されるべき。でもそれって労働者が企業を選別する能力と環境が前提なのであって、そう考えると「ブラック企業」問題とは、個人の資質にその解決を求めるしかないじゃないかなあ、と解決にならないことを思った。

     
     

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