ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 181
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608874

作品紹介・あらすじ

違法な労働条件で若者を働かせ、人格が崩壊するまで使いつぶす「ブラック企業」。もはや正社員めざしてシューカツを勝ち抜いても油断はできない。若者の鬱病、医療費や生活保護の増大、少子化、消費者の安全崩壊、教育・介護サービスの低下-。「日本劣化」の原因はここにある。

感想・レビュー・書評

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  • この本で紹介されている事例を見ると、ブラック企業は本当に恐ろしいと思う。

    人を人として扱わない。

    印象に残った章

    第3章 ブラック企業のパターンと見分け方
    パターン1 月収を誇張する裏ワザ
    パターン2 「正社員」という偽装
    パターン3 入社後も続くシューカツ
    パターン4 戦略的パワハラ
    パターン5 残業代を払わない
    パターン6 異常な36協定と長時間労働
    パターン7 辞めさせない
    パターン8 職場崩壊

    第5章 ブラック企業から身を守る
    ・「戦略的思考」をせよ!
    ・鬱病になるまえに、五つの思考・行動を
     1自分が悪いと思わない
     2会社のいうことは疑ってかかれ
     3簡単に諦めない
     4「労働法」を活用せよ
     5専門家を活用せよ
    ・争う方法
    ・「選別」への対応
    ・「使い捨て」への対応
    ・逃げ続けてもブラック企業はなくならない

  • ブラック企業が持つ本当の怖さを知りました。
    本書の中にはブラック企業で起こった実例がいくつか挙げられていますが、どれもフィクションではないかと思うほど恐ろしいものでした。

    人格を壊されかねないブラック企業という存在は身近な殺人鬼であると私は考えました。


    この殺人鬼から逃れる方法は企業選びを慎重に行うことが最もベターなため、
    ぜひ就職活動や転職をしている(しようと思っている)方々に読んでもらいたいです。

  • ブラック企業が恐ろしいということは分かった。ブラック企業との対峙の方法も分かった。ブラック企業が生まれた背景も、ブラック企業を支える弁護士・社労士の存在も、彼らが生まれた背景も分かった。だけどそれらの多くを多分本書の読者は既に知っているのではないか。
    以下、読書感想文ではなく、ブラック企業に関する個人的な意見を。
    僕には、ブラック企業に関して、一つだけ分からないことがある。
    ブラック企業が、法的なリスクや世間の批判に晒されることのリスクをとってまで、なぜブラック企業でい続けるのかということだ。
    そこには、本書的な批判が批判として機能しない、つまり、「そこはブラック企業でダメだ!」という指摘が意味をなさない文法が存在するはずであり、それをこそ、我々は掘り下げて分析する必要があるのではないか、と僕は思うのだ。
    つまり、我々が本書の視点から見たときに「リスク」とすることであっても、彼らにとってはリスクでない可能性がある。我々がネガティブに捉える事象が、彼らにとってポジティブな事象である可能性がある。我々の合理性と彼らの合理性が異なる可能性がある。
    レヴィ=ストロースが『悲しき熱帯』で、ブラジルの原住民の生活に寄り添うことで、「白人中心主義」の構造を逆説的に導き出したように、我々も、あえてブラック企業に寄り添い、ブラック企業の中の文法・ブラック企業がブラック企業であることから脱け出せない構造を分析することで、新たに見えてくることがあるのではないか。そして、それこそが今後のよりよい社会のための視点なのではないか、というようなことを、僕は思ったりするのだ。
    まあ、お前がやれよ、って話ですよね。

  • いまや社会にすっかり定着した言葉「ブラック企業」。問題の代表的な論客である今野晴貴が執筆し、「第13回大佛次郎論壇賞」を受賞するなど高い評価を受けたのが本書。わたし自身も「ブラック企業」ではないかと疑われる会社に勤務していたことがあり(15日間で休みが1日しかないときがあった、むろんすぐに辞めた)、かねてからこの問題については関心があったので読んでみた。本書を開くと、報道などである程度事例については知っていたが、のっけから目を覆いたくなるような酷い事例のオン・パレード。そこで働いていた従業員の心情たるや、と暗澹とした気持にさせられてしまう。誰もが名を知るような有名企業ですら法令違反のブラック労働が横行し、「ブラック士業」と呼ばれる専門家までグルになっていることがある、と聞かされた日には、いったいどうしたら良いのかわからない。この世に救いはないのではないかとの想いすら浮かんでくる。「働き方改革」が叫ばれるようになった昨今では、執筆当時よりは多少状況が改善していると信じたいが、それでもいまだに大企業でも労働問題が報じられており(今年の「ブラック企業大賞」は三菱電機が受賞)、もはや問題解決は不可能であるような気もするが、だからこそ著者のような人たちの活動は貴重であり、ブラック企業の実態を明らかにした本書にも意義深いものがある。

  • もはや市民権を得ている「ブラック企業」という言葉。その企業の実態を事例とともに紹介したうえで、原因や対策にも言及している良書。新書にありがちな事例紹介や著者の思いだけにとどまらず、客観的な分析と俯瞰的な対策についても述べられている。
    フリーターやニートは若者の問題とされがちだが、本書を読めば、決して若者だけの責任だけではなく、企業や社会にも原因があることがうかがえる。特に私が共感したのは、今の若者の就職活動の問題点である。就職活動はネットによるエントリー方式であるため、若者の多くは(大学生の大半は)気軽に企業に応募できる。そのため、若者は多くの企業にエントリーし、そして面接を受ける。その活動を通じて、どうしたら企業に受け入れられていくのか、「自己分析」という名の「自己変革」がもたらされる。その結果、企業に献身的に働くことを誓う、企業にとって都合の良い人材へと変革する。こうした人材は、たとえ就職先の企業から無理難題を押し付けられても、それを疑問に感じない。もはや感覚が麻痺しており、気が付けばうつ病を発病するなど、心身ともに深刻な打撃を受けている。さらに、「そう簡単に他の就職先が見つからない」という思い込みが、若者を視野狭窄に陥らせ、ひたすら今の職場で耐えるという選択に結び付いてしまう。
    私は、こうした要因分析について非常によく共感できた。実際、本書においても、就職活動の経過とともに学生のワークライフバランスや離職率へのこだわりが低下傾向にあることがデータでもって示されている。
    本書にも触れられているように、若者の離職率や失業率の増加はわが国の社会保障問題にも直結する。企業への厳罰化や若者の職業意識の改革など、早急に手を打つ必要があるだろう。

  • 大佛次郎論壇賞を獲ったことで本書を見直した。湯浅誠が2008年「反貧困」で同賞を獲った時と、2013年に同賞を獲った今日ではギアが数段上がっていると著者は考えているのかもしれない。もはや徐々に社会から排除される「すべり台社会」ではない、一度ブラック企業に入ってしまったらその時点でアウト「落とし穴社会」になってしまったと著者は云う。

    いろんなブラック企業が出てくる。ワタミやSHOP99、ウェザーニュース。しかしもっとも印象的なのは、訴訟に持ち込まれていないためにX社という言い方でしか紹介されていない(私はあえて言う)ユニクロの実態である。

    私は小さな建設会社でブラック企業的な扱いを受けたことがある。そこでは労基法違反が十数例平気で罷り通っている最低の職場だった。これは親方的な感覚の社長が、自らの小さな財産を守るために行う無知我儘な振舞いだった。よく考えると、売り手市場の労働環境を背景に、入ってからも選抜を繰り返すやり方は、まさに現代のブラック企業の小型版とでも言うべきものだった。私はさっさと辞めたけど、数社を渡り歩いてここを辞めたら将来が無いと悲観していた青年はどうなったのだろうか。鬱を発症したら、それこそ落とし穴に嵌ってしまうだろうに。

    ユニクロはなかなかずる賢く対処している。本人が心の病気で優しくも(訴えらるのではなく)退職しようとすると、いったん休職させて治ってから辞めさせているのである。これで「労働災害」としてのリスクはなくなる。その他よほど優秀な社労士がいるのか、ユニクロは未だ裁判に持ち込まれていない。

    この本には様々な対抗方法が記されているが、最も大切なのは、ブラック企業がいかに国益を害するのかを指摘している処だろうと思う。「ブラック企業の成長それ自体が、日本の医療費等の直接的な、あるいは労使関係の信頼という間接的な財産を食いつぶして成立しており、実質的な意味では「一時的な成長」だということも出来ない。」(177p)

    著者は根本的な社会的対策を提言する。労働時間規制、過労死防止基本法、非正規雇用規制、失業対策。しかし実情は反対方向に向かっているのは、ご存じの通り。残業ゼロ法案、非正規雇用拡大、職業訓練の縮小等々である。対策としては、労組やNPOに相談、加入して労使関係の再生に取り組もうと呼びかけている。また、中学・高校での労働法教育の充実をあげている。大賛成である。というか、「ブラック企業」という言葉のみが一人歩きするのだはなく、多くの労働者がそこに気がついて欲しいと思う。
    2014年6月19日読了

  • 学生や20代の社会人には、自分には関係ないことだと思っても、一度読んでみてほしい。読むと気持ちのよくなる本ではないが、このままではいけない、という危機感を感じると思う。
    私もブラックな環境で働き、一度心身を壊した身なので、この本を読み、当時を思い出して苦しくて仕方がなかった。今そのような環境にいる人には、自分が悪いのだなどと思ってもらいたくない。潰れてしまう前に、辞めるか戦うかの選択をしてほしいと思う。
    ブラック企業は、入ってしまった個人の問題ではなく、「社会問題」として捉えるべき問題ということ。ブラック企業に必要な人材は、今の就職活動によって作られていること。たくさんの新しい視野を頂いた。
    簡単に解決する問題ではないと思いますが、著者の今野さんを、本当に応援します!

  • 2021.27

    ・専門家にも使用者側、労働者側といった立場に立つ人がいる。
    労働者側:労働弁護団所属の弁護士、個人加盟ユニオン、労基等
    ・固定残業代と呼ばれる残業代を基本給に含めて月収を誇張する裏技がある
    ・ブラック企業と戦うには簡単に諦めない、労働法を活用する
    ・戦う方法は、個人的に交渉する、行政を交えて交渉、労働組合に加入して交渉、裁判



  • 賛否両論、実に物議を醸し出す一冊だな。

    ブラック企業。
    本書では、ブラック企業について論じられる時、若者の甘えと断じられるが、それは間違いだと述べられている。
    否定できない側面があることは確かだが、果たしてどうだろう。甘えとしか思えない側面が半々という印象だ。
    某アパレル会社での研修で、使い終わった洗面所を拭かされたり、歩く時に背筋を伸ばすことを強要されたり、まるで軍隊だと離職の理由を語る若者の経験談があったが、こいつ阿呆かとしか思えない。
    面談と称して何時間も軟禁され罵倒を受けたり、睡眠時間数時間の日々が何日も続き時給数百円という労務環境はブラックと言えるだろう。
    ただ、権利という大義名分を掲げているだけではという印象は拭えない。
    業界によっては、徹夜連勤が当たり前のところもあるのは事実で、客商売なら連勤休日出社、サービス残業、身銭を切っての営業なんて当たり前だ。
    決して、上記を是認するわけではないが、休みは欲しい、自分の時間は欲しい、意味が分からないとしたくない、休みの日まで勉強したくない、そんな風にしか聞こえない。
    地方から出てきて、最初の契約と違うなど分からなかったなど。昭和初期の移民ならまだしも、これだけ情報化社会でネットでいくらでも調べられるのに、自らの情報収集の欠落をこんなはずじゃなかったと言い訳にしか聞こえない。
    常時大量募集をかけていれば、それだけ常時人不足と離職率が高いのは容易に想像がつきそうなものだが。
    グローバル人材募集の理念に惹かれて?そう書かれていたのに?うーん...
    新卒を大量に仕入れ、不良在庫は切り捨て、使い潰すということが書かれていたが、年功序列の終身雇用神話が崩壊した現代日本では至極当然な気もする。
    そうならないためには?という発想が垣間見れない。外資なんかじゃ、利益を生み出さないものは当然のように捨てられるが。
    介護医療の世界でも、安く、一生懸命な労働力として東南アジアから続々入ってきているし、新卒は何も分からないから手取り足取り教えてね、でも権利だから休みも給料も保証してねなんてのは如何なものか。

    と、ここまでが前半の印象。
    後半からはブラック企業は駆逐されるべきだと断言できよう。
    前半ではやや批判的なことを言ってしまったが、決してブラック企業を擁護するつもりもないし、被害者を十把一からげに断罪する気も毛頭ない。
    ブラック企業の成立つ背景には、日本特有の文化、社会構造にある。果たして、駆逐することは可能なのだろうか。
    就職活動から洗脳の連続だ。

    行政や法整備にも問題は大有りだ。
    法整備も遅々として進まず、時代の流れからあまりにも乖離し過ぎている感は否めない。
    ブラック企業も新卒たちを病へ追込みむことで、その際に発生する各種保険などが、自分達の税金や社会保険で賄われていることをなんとも思わないのだろうか。

    未来は政治家たちの老後ではない。
    どこかで聞いた台詞が頭を過る。
    この国を支え担ってゆくのは、年寄りではなく若者だ。
    より良き未来になることを切に願う。

    最近起きた電通社員の過労による自殺の結果、命の値段に50万円という金額が付いたことに遣る瀬無さを覚えた。

  • この本のことは齋藤孝の本に載っていて知っていた。ちょうど『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ) 』を読み終わった直後に、ブックオフで見かけて購入。

    いくつかの事例を挙げた上で、個人としてどのように対処すべきか、さらには社会問題としてどのように捉えどうすべきか、と展開される。単なるルポとか告発でなく、こうした職場が増えてしまった理屈や背景まで理解した上で戦略的な思考ができる。

    電通のことがあってから特にブラック企業とか働き方改革とか大きく問題になったけど、5年前に刊行されてたんだ…。こういう良い本があってもなかなか社会はすぐには変わらないのか。でも、一人一人の市民、労働者がこうした問題に対する意識を養うことはとても大事だと思う。

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著者プロフィール

POSSE代表

「2021年 『POSSE vol.49』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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