税金常識のウソ (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608973

作品紹介・あらすじ

「納めるもの」というよりも、「とられるもの」という日本人の特異な税意識。消費税増税で一段と身近になりながら、複雑でわかりづらい税制度。税金の本質を理解し、未来を決断するための入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 国民国家の発展と租税の必要性、租税原則など、本質的な点から歴史を踏まえて丁寧に解き起こす。イメージで語られがちな租税について、民主主義国家の国民として意思決定する上で必要な基礎知識が記述されている、と思う。タイトルは扇情的だが、ごく真っ当な本。
    個人的に気になるのは、国境を超えた財やサービス、人の交流が激しくなっている今日、どのような租税政策が可能なのか、という点。消費税に関しては若干触れられているが、その点については他の本でカバーする必要があるだろう、と感じた。

  • なんだかまとまりなくダラダラと書かれている。結局何が書いてあったと聞かれるとうまく答えることができない。

    グラフの説明は短絡的。

  • ☆すっきりわかる。目からウロコ。

  • 【社会をデザインするために知りたい租税の常識】租税とは何か。財政学者として長年政策に携わってきた著者が、来たるべき社会をデザインするための租税の本質を、わかりやすく説く。

  • 税の世界にズブズブと浸かり始める第一歩として。数理経済学を駆使する財政学ではなく、実務、制度としての財政学。失明してなお著作をものする神野先生と編集者の方との素晴らしい成果。

  • 税金って、簡素化したいけど、複雑になってしまう。難しいもんだな~と思いました。
    相続税の引き上げはしなくてはならないと思っていましたが、『同世帯での相続なら所得の増減はなく、移転しただけだから、課税対象にするのはおかしい』と言われれば納得するし、じゃあ課税単位を世帯ではなく個人にしたら解決と言われても、生前に少しずつ贈与することで法の隙を突くこともできるし……、でも、今の租税のコンセプトが揺らいでいることは確かです。少しずつでも良いので、改善してほしいです。
    もう一度、政府は租税による日本の在り方を議論してほしいです。金持ち優遇にするのか、格差是正を目指すのか。単に社会保障費が必要だからと言って、拙速な議論で租税方法を考えないでほしいです。
    だからこそ、著者の言う『政府と国民の信頼』に溝ができているのです。租税自体に悪印象があるわけではなく、その使われ方、使途、管理が杜撰なために、そして杜撰な管理体制の責任を政治家が誰も取らない状態がずっと続いているんだから、信頼もへったくれもない!というのが国民の意思でしょう。
    所得税を基幹税にした方が良いのかどうかは僕には分かりませんが、歴史的に見てもまぁ妥当な税収ということで、支持したいです。
    あれ、でも1990年代以降は法人税も減税したんなら、企業は出費が減って人件費を削らずに済むはず……。それなのに非正規雇用が増加しているのは何故?税収以上に社会保障費の増加が原因?それとも財政運営の怠慢?ぅーん、気になります。
    終章にいくにつれて、著者の恣意的な理論が目立ちます。
    特に、重工業社会から知識産業への転換ということは、他の人も言っていることですが、なればこそ所得税にこだわる必要はないのではないでしょうか?ますます格差が拡大するだろう社会において、富裕層がそれを良しとするのかは疑問です。新たな税源を創造することも必要かと思います(今までの租税にプラスして追徴するのではなく、今の税収の一つを削除する替わりに、新たな○○税を創設する、等)。
    租税の問題を述べていますが、如何せん読みづらい。「しかし」「ところが」「しかしながら」等、文章が延々と続き、文章自体が長いため、もう少しすっきりまとめた方が読みやすいと感じました。それこそ「メリット」と「デメリット」を表にまとめてほしかったです。
    僕の評価はA-にします。

  • ◆ちょっぴり「釣り」の香りがするタイトルとは大違い、「政府が国民から租税を巻き上げるのはなぜ正当化されるのか?(租税の根拠)」といった素朴な疑問から、人税や物税といったおおまかな租税の話、所得税や消費税の仕組み、日本の租税政策、幅広い話題をあつかうこの本は教科書といってもよいくらいだと思います。ちょっと範囲が膨大すぎてまとめきれないので気になったところだけ。

    ◆まず、引用したのは個人的に面白いと思った部分です。著者は、所得税と消費税が互いに欠点を補い合う新しい税制によって、十分な租税を国民から受け取り、そして政府が十分なセーフティ・ネット、著者のいう社会的トランポリンをつくることが大切だといいます。◆裏を返せば、所得税の累進性が確保されていないまま(それどころか、148ページのグラフでは逆進的になっている)消費増税を図るのでは、それこそ「租税負担を、豊かな階層から貧しい階層へと、シフトすること」になってしまいます。これを具体的に説明したのが引用した部分です。これではゴールのないトンネルのようなもの、なんのための増税なのかということが問題になってしまいます。

    ◆もう一つ面白いと思ったのは、「官と公」というお話でした。日本では租税という言葉とその歴史が示す通り、租税は「とられるもの」として考えられがちで、租税への不信感が強いそうです。さらに著者は、その理由を、日本では「公(おおやけ、パブリック)」という場所の思想がないからだといいます。◆「公」とは”わたしたち”がつくる場所であり、ほんらい租税は「公」のためにみんなが負担すべきものなのですが、日本では「官」から巻き上げられるものと考えられてしまうのです。これは、租税国家と民主主義の問題にたどり着きます。たとえば、公債赤字の大きな問題点の一つは、公債を引き受ける金融界に有利な政策がとられやすくなるということですが、これに抵抗できるのが民主主義なのです。

    ◆……おもえば、スウェーデン・モデルがいいという話をよく聞きます。増税がなされるといっても、それだけ見返り(社会的トランポリンがあるという安心感など)が得られるならよいということでしょうか。それとも、それがいざ現実になるとなったら……?

    ◆最後に、とってつけたようなメモになりますが、「常識のウソ」としては、公債が将来世代にツケを回すとか、消費税が「公平・中立・簡素」な課税を可能にする(消費税賛美論)とか、「量出制入」の逆転などが挙げられます。門外漢(そもそも入れる門さえないのだった!)でもたいへん面白く読み進めることができました。

  • 入門書という位置づけのわりに、小難しい印象を受けました。税金というもの自体がそもそも難しいものなのかもしれませんが、もう少し簡易に説明できそうかなと思います。税金を一から勉強しようと考えている人にはちょっとオススメできないかな。

    また、内容的にも偏っている印象です。入門書というならば、もう少し中立性を保つべきかと。著者の考え方がちょっと出過ぎな感はあります。

  • タイトル釣りがよろしくない。噛み砕いてて高度な内容なわりにわかりやすいとはいえ、十分難しいしこのタイトルで買った人には理解できなさそう。租税分野だし著者が著者だしで買いだったが、期待以上だった。あとがきの異様な謙遜も見所。

  • 現在の日本が抱える租税制度に係る問題点について鋭く指摘している。直間比率の改善、所得税から消費税への転換が現在の日本における租税収入の急速な落ち込みという悲劇を巻き起こしているのだと。「小さな政府」を目指すのであれば、高所得者に対して累進的な課税であるべきだ、逆に「大きな政府」を目指すのであれば、低所得者にも比例的に租税の負担を求めるべきだという。現在の日本は「小さな政府」を標榜する一方で、消費税を増税し、低所得者にも租税負担を求める政策を推進しようとしている。これではますます低所得者層が疲弊してします。そうであれば、「大きな政府」を標榜すべきであり、これにより低所得者層に対して租税の負担にみあった公共サービスの提供を行うべきだ。いろいろと考えさせられる名著に出会った感がある。

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著者プロフィール

神野直彦(じんの・なおひこ)
日本社会事業大学学長、東京大学名誉教授(財政学・地方財政論)
『システム改革の政治経済学』(岩波書店、1998年、1999年度エコノミスト賞受賞)、『地域再生の経済学』(中央公論新社、2002年、2003年度石橋湛山賞受賞)、『「分かち合い」の経済学』(岩波書店、2010年)、『「人間国家」への改革 参加保障型の福祉社会をつくる』(NHK出版、2015年)、『経済学は悲しみを分かち合うために―私の原点』(岩波書店、2018年)
1946年、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学



「2019年 『貧困プログラム 行財政計画の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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