伊勢神宮と天皇の謎 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609086

作品紹介・あらすじ

二〇一三年はお伊勢さまで六十二回目の「式年遷宮」が挙行される。六九〇年に始まる歴史をつぶさに見ると、女帝の執念や百二十余年の中断期、社殿の変化、神仏習合の波、近代国家建設の影響、万世一系の思惑など、様々な変転が見てとれる。歴史に通暁した建築家が描き出す、真の伊勢神宮の姿とは?-。

感想・レビュー・書評

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  • 伊勢神宮は、式年遷宮という制度が綿々と継がれてきて、古代の姿をそのまま留めている。
    そんな通説は全く事実に基づいていない、ということを歴史をひも解いて解説される。

    そもそも式年遷宮の起こりから説き起こし、伊勢神宮の歴史、建築の詳細、政治的位置づけなど、広い視点から徹底的に「伊勢神宮は変化し続けてきた」ことを説きつける。

    何が著者をここまでの情熱に駆り立てているかは不明だが、文章は平易で分かりやすいし、伊勢神宮にまつわる薀蓄が幅広く収集できることは間違いない。

    観光に行くための事前知識としては過剰な情報量だけど、単純に読み物として個人的には楽しめた。

  • 天皇と伊勢神宮の関係が知りたくて読み始めた。建築家なので、伊勢神宮の建築に関する話が長くて、一言「伊勢神宮は古代のままではない」で済むと思うが、伊勢神宮の変遷が詳しく書かれている。式年遷宮についてもよく知らなくて,二十年ほど前にTVでやっていて、なんだ?これは?変なの?でわたしは全く関心がなかったが、建て替えること自体に意味があること、なにが式年遷宮を生み出したのかなどいろいろ知った。そもそも内宮だの外宮などと2つあることも知らなかった。ほんとにど素人のわたしがこの1冊でなんだか神道に詳しくなったような気がする。しかしやはり知りたかったのは、天皇との関係。しかしなかなか出てこない。社殿の配置すらいろいろと変化していること、建物そのものも相当時代とともに替わってきているようだ。がだんだん政権との関係がわかってきた。持統天皇の執念か・・・皇祖アマテラスになったのか・・このあたりからほんとうにおもしろくなってきた。これ以上書くと読む人に悪いね。

  • タイトルにある天皇の謎的なことはあまり語られていない。式年遷宮に焦点を当て、現実的な事実を歴史を紐解きながら記述されている。この式年遷宮は神宮建築時から絶え間なく20年毎に行われてはいなかった。初めて知った事実で驚いた。しかし62回もされているから長い歴史で見るとほぼ20年起きで良いのではとも思う。今では精神的な拠り所としての神宮、アマテラス大御神だけではなくビジネス的な側面として利用され、式年遷宮もお祭りイベントと思われがちだが、何か畏怖を感じる行事である。

  • 持統天皇はすごいね。あと明治憲法発布は式年遷宮に合わせてたんダァ。。なんでも意味あるね。

  • 2015年5月30日読了。

  • 【伊勢神宮には謎がいっぱい】伊勢神宮は二十年に一度建て直す??常識のごとく語られる式年遷宮の「神話」。だが史実を紐解くとそこは秘史・秘話にあふれていた。

  •  伊勢神宮を建築史の視点から解説した学術エッセイ。
     神宮について書かれた本は多々あるが、本書の特徴にして最大の強みは、歴史に通暁した建築家によって論述されている点。
     思想や信仰といった『目に見えないもの』を軸に据えるのではなく、社殿という『目に見えるもの』、すなわち客観的な事実の変遷を丹念に辿ることで、それが建てられた時代の背景や人々の意図や意思、神宮の位置づけを探り当ててゆく。
     ハードを切り口にソフトを解明する論法と言えようか。
     そうして、史料や図面から浮かび上がるのは、伊勢神宮が永遠不変の存在ではなかったということ。
     今ある神宮は決して古代そのままを伝えるものではなく、かつては立派な宮でもなく、遷宮の中断期も長かった。
     しかし、近代に入ってから古代の要素は大きく顕現し、新たな神話となって復古を遂げ、現代のフィクションとして我々の目の前にある。
     『形』は変わり、変えられ、その『内』に秘められた思惑も複雑に絡み合いながら、時代と連動する。
     伊勢神宮を知ることは日本そのものを知ることであり、神宮の謎は日本という国の成り立ちの謎でもあるのだと思う。
     余所で目にして以来気になっていた[外宮=男神=地主神]説が、この書でもさりげなく記述されており、外宮先祭の作法と併せて、自分たちは真実、誰を祀り、何を拝んでいるのかを学ばなければならないと、改めて考えている。

  • 一級建築士でもある著者が、伊勢神宮が古代からそのままの姿を今に伝えているとの伝承が近年に作られた「神話」であることを明らかにし、歴史の真実に迫ろうとする興味深い本です。大変面白く読めました。

  • 伊勢神宮の歴史と、時の朝廷や政府との関係を丁寧に整理した本。伊勢神宮は、昨年、20年ぶりの「式年遷宮」を挙行した。この式年遷宮、古代より1度も欠かすことなく、きっちり20年に1回、寸分違わない社殿を作り直してきたと考えられがちだが、もちろんそんなことはない。資金難や、内宮と外宮の抗争などが原因で、150年近く遷宮が行われなかった時期があるし、正殿の寸法・装飾や社殿配置に関しても、古代、中世、近世、近現代と、いずれの時代においても、それなりのデザイン変更が施されている。社殿のデザインが変わってきた理由とは、純粋に技術的な要因もあれば、内宮と外宮の力関係が建物の大きさやデザインに微妙に影響したり、仏教の影響が取り込まれたり、時の権力者の政治的な思惑が入り込んだり、いろいろである。
    また、本書では、式年遷宮の仕掛けを、時の政治勢力が自身の権力の正当化のために利用してきたことを、状況証拠から明らかにしようとしている。持統天皇は、式年遷宮の「永続性」に着目し、天皇家に対する「万世一系」の印象付けを行うことにより、天照大御神(内宮の祭神)を始祖とする神話の世界と、現実の天皇家を結びつけるという離れ業をやってのけた(本書では、持統天皇が自分の息子や孫に天皇を継がせるために、そこまでの策を練ったのだとしている)。明治時代においては、憲法発布、国会開設などの近代国家化に向けた手続きを、式年遷宮に合わせて行うことで、国威発揚を図るとともに、欧米諸国に対して日本国の国体の正当性をアピールした(本書では、この筋書きを練ったのは伊藤博文であり、これにより政敵である大隈重信を失脚させたとしている)。
    これらは、日本ではとてもデリケートなテーマであり、表だって研究・発表する歴史学者はほとんどいないことは容易に想像できる。著者がその点に果敢に切り込んだことを評価したい。著者の専門は建築学であり、歴史研究が本職でないことには注意すべきであるが、本書を読めば、史実を丹念に調べ上げ、当時の状況を推測しながら丁寧に仮説を構築していることが汲み取れる。

  • はすに構えてお伊勢参り。

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著者プロフィール

建築家・著述家

「2021年 『持統天皇と男系継承の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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