新・百人一首 近現代短歌ベスト100 (文春新書)

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 93
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609093

作品紹介・あらすじ

五七五七七で詠まれる短歌は明治以降、大きく表現の幅を広げ、日本語の豊かな財産となってきた。口ずさめば詠みこまれた情緒がたちまち甦る。現代を代表する歌人が近現代百人の歌人の愛誦したい名歌を精選し、「新・百人一首」がここに誕生した。

感想・レビュー・書評

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  • 眠れぬままに一気に読んだ一書。
    選者のお一人永田氏の「近代秀歌」を読んでから
    そのまま雪崩れ込むように読了した。

    プロの歌人が選ぶと、いずれにしろ一致する結果になるが
    1首を選ぶとは難しく、その歌の隣には、候補になった
    捨て難き今一つの秀歌があるというのは、さもあらん。

    他にどんな歌がと自分で次を探し始めることから
    豊かな世界が始まる気がする。
    更にもう1首という風に、追加で2首が紹介されているのは
    そういう意味でとても親切だ。

    直近のとも言うべき、平成に入ってからの作品も多く
    好んで短歌を深く読んでいないと知らないものも多かったが
    作品の率直さや切れ味はどの歌も逸品。

    難を言えば「近代秀歌」と重なる作品が前半多かったこと。
    両方読む読者を考慮に入れて頂きたかった。

    掲出した作品の中で、「近代秀歌」と重なって収録されたものもあり、同書のレビューでは私が迷って、自分の愛誦歌としては取り上げなかったが、やはり心惹かれるものを、面倒がらずに引くことにしたものが少なからずあるとお伝えしておく。

    では早速。
    これからもっと読みたい歌人・印象的だった歌をあげておく。

    あさみどり澄みわたりたる大空の広きをおのが心ともがな
    (明治天皇『明治天皇御製謹解』)

    父君よ今朝はいかにと手をつきて問ふ子を見れば
    死なれざりけり (落合直文『萩之家歌集』)

    いちはつの花咲きいでて我が目には
    今年ばかりの春行かんとす

    瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり
    (正岡子規『竹乃里歌』)

    ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
    (佐佐木信綱『新月』)

    みづうみの氷は解けてなほ寒し三日月の影波にうつろふ
    (島木赤彦『太虚集』)

    木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか
    遠くもあるかな

    君ねむるあはれ女の魂のなげいだされるうつくしきかな
    (前田夕暮『収穫』)

    かたはらに秋草の花かたるらくほろびしものはうつくしきかな
    (若山牧水『路上』)

    やはらかに柳あをめる北上の岸辺目に見ゆ泣けとごとくに

    やや長きキスを交して別れ来し/深夜の街の/遠き火事かな
    (石川啄木『一握の砂』)

    夏はきぬ相模の海の南風にわが瞳燃ゆわがこころ燃ゆ

    君がため瀟湘湖南の少女らはわれと遊ばずなりにけるかな
    (吉井勇『酒ほがひ』)

    桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり

    はてしなきおもひよりほつと起きあがり栗まんじゆうをひとつ
    喰べぬ(岡本かの子『浴身』)

    力など望まで弱く美しく生まれしまゝの男にてあれ
    (岡本かの子『かろきねたみ』)

    真命の極みに堪へてししむらを敢てゆだねしわぎも子あはれ

    太白星の光増すゆふべ富士が嶺の雪は蒼めり永久の寂けさ

    これやこの一期のいのち炎立ちせよと迫りし吾妹よ吾妹

    (吉野秀雄『寒蝉集』)

    春の夜にわが思ふなりわかき日のからくれなゐや
    悲しかリける(前川佐美雄『大和』)

    曼珠沙華のするどき象夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべき
    (坪井哲久『桜』)

    われの一生に殺なく盗なくありしこと憤怒のごとしこの悔恨は
    (坪井哲久『碧巌』)

    他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水
    (葛原妙子『朱霊』)

    バイカルの湖に立つ蒼波のとはに還らじわが弟は
    (窪田章一郎『六月の海』)

    弟の臨終のあはれ伝へ得る一人の兵もつひに還らず
    (窪田章一郎『ちまたの響』)

    戦はそこにあるかとおもふまで悲し曇のはての夕焼
    (佐藤佐太郎『帰潮』)

    薄明のわが意識にてきこえくる青杉を焚く音とおもひき
    (佐藤佐太郎『歩道』)

    たちまちに君の姿を霧とざし或る楽章をわれは思いき
    (近藤芳美『早春歌』)

    乗りこえて君らが理解し行くものを吾は苦しむ民衆の一語
    (近藤芳美『埃吹く街』)

    かきくらし雪ふりしきり降りしづみ我は眞実を生きたかりけり

    桃二つ寄りて泉に打たるるをかすかに夜の闇に見ている
    (高安国世)

    こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり
    (山崎方代『右左口』)

    一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
    (山崎方代『こおろぎ』)

    独り聴く〈北〉てふ言葉としつきの繁みの中に母のごとしも

    死に際を思ひてありし一日のたとへば天体のごとく量感もてり
    (浜田到『架橋』)

    ベッドの上にひとときパラソルを拡げつつ癒ゆる日あれな
    唯一人の為め(河野愛子『木の間の道』)

    梳けばかく光まつはる髪にして厭離の方になづさひにける
    (河野愛子『魚文光』)

    肉叢は死にはんなりとひっそりと水のくちびるを受けや
    しぬらむ(河野愛子『光の中に』)

    灼けつくす口づけさへも目をあけてうけたる我をかなしみ給へ

    硝子屑の上に来て青き夕あかりたれか酷薄のことばきかせよ
    (中城ふみ子『乳房喪失』)

    死はそこに抗いがたく立つゆゑに生きてゐる一日一日は
    いづみ

    ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも
    (上田三四二『涌井』)

    瀧の水は空のくぼみにあらはれて空ひきおろしざまに落下す
    (上田三四二『遊行』)

    イヴ・モンタンの枯葉愛して三十年妻を愛して三十五年
    (岩井正『郷心譜』)

    などなど…まだあるけれどこの辺で。

  • 葛原妙子や安永蕗子、渡辺松男の歌のような空想の世界での事象を表現したようにも感じる不思議な作品 道ならぬ恋や悲劇的な結末を迎えた恋愛を経験したとされる近代歌人の相聞歌 石川啄木や高安国世、山崎方代の作品のような自分の現状、己の行く末への痛切な思いを詠ったもの 心打たれる短歌をたくさん見つけることができた 各歌人の代表歌に惜しくも選ばれなかった歌も載せられているが、そちらにも良いなと思ったものが多くある 恥ずかしながら今まで知らなかった歌人がほとんどであったが、其々の他の作品も読んでみたくなった

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「心打たれる短歌をたくさん見つけることが」
      私も読んでみようっと、、、
      「心打たれる短歌をたくさん見つけることが」
      私も読んでみようっと、、、
      2014/04/16
  • 読みやすく、見やすいつくり。解説を控えめにして、歌を全面に出しているのが好印象。この企画のコンセプトに合っていると思う。
    選者が4人というだけあって、大きな偏りもなく、あくまでバランスの良い印象だった。それだけに、読み応えという点ではイマイチ物足りないものを感じもして、やはりきちんと歌集を自分で手に取ってみないといけないなぁ、とも思った。

  • 歌人が選んだ、近現代の百首。言葉の向こうに見える景色をほんのりと教えてもらえるような気がします。良い悪い、うまい下手の区別は私にはわかりませんが、「ああこれはわかるわかる」、とか、「どういうこと?」とかいろいろ思いながら読める。
    好きな歌を見つけて、暗唱したい。でも短歌の暗唱って、あの歌会始みたいにするのかな。

  • 近現代歌人から100人を選び、代表歌を挙げた。私にとっては、未知の歌人との出会いがあった。「亡き子来て袖ひるがへしこぐとおもふ月白き夜の庭のブランコ」(五島美代子)、「二万発の核弾頭を積む星のゆふかがやきの中のかなかな」(竹山広)、「紫の葡萄を搬ぶ舟にして夜を風説のごとく発ちゆく」(安永蕗子)、「イヴ・モンタンの枯葉愛して三十年妻を愛して三十五年」(岩田正)、「ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり」(永井陽子)など。

  • 現代の著名な歌人四人による近現代の短歌100首を抜き出し、それぞれの歌、歌人等について解説している。
    この本を読んでまず感じたのは、日本語の言葉、語彙の豊富さである。いやこれは現代の日本人全員に当てはまることではなくなっているではあろうが、しかし英語等に比べれば、表現方法の多彩さは別格と感じる。
    短歌の中に表現される自然や風景、出来事は五七四七七という短い言葉の中で、それを読む人が想像して理解できなければ、真に感動や共感は受けにくいだろうが、「日本人である」ということだけで「わかる」という部分がある。また「行間を読む」、そして言葉から想像を膨らませていくということができるのは短歌独特のものであろう。
    私自身がこの本に収められている100年以上前の明治や大正の歌人の歌に、共感や感動を覚えることができるということに驚きさえ感じる。

  • この頃短歌に目覚めた私にとって大変的を射た指南書でございました。初心者にありがちのようにどれもこれもが新鮮で驚きの連続でありました。中でも特に惹かれたのは(齋藤史は既にぞっこんなので置いといて)中城ふみ子と道浦母都子で、ハラワタえぐられるの覚悟でもっともっと読みたいとうずうず渇望しております。あと寺山修司、他の書物は昔から馴染んできたにも拘らずなぜか短歌は手つかずでした。しかし驚きました。彼の本領は短歌にあるではないか、とわなわな震えておる次第です。何を今更とお思いでしょうが、気づけただけでも御の字です。

  • 明治天皇から穂村弘までの100人の歌人を取り上げて、代表歌をそれぞれ1首紹介し選者が解説しているのだけれど、どうしても偏りなく選ぼうとした感じがして、私としては驚きが少なかった。
    特に私は歌人の好き嫌いがはっきりしてるので、物足りない感が残ってしまった。
    それと、明治から平成まではやっぱり長すぎる。
    そろそろ、近代短歌100首、現代短歌100首で分冊した方が良かったのではないかなあ。

  • 【明治天皇から俵万智まで。心に灯がともる名歌百首】現代を代表する四人の歌人が明治以降の歌人百人を選び、後世に遺したい名歌百首を選んだ。心に刻めば人生の友になる歌がここにある。

  • 現代最高の選者によって選ばれた100首。

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著者プロフィール

1928年1月5日、名古屋市生まれ。45年、17歳で短歌をはじめ、翌46年、「アララギ」入会、51年、現在発行人を務める歌誌「未来」創刊に参画。慶應大学医学部卒業後、内科医師として、国立豊橋病院内科医長などを歴任。83年『禁忌と好色』で迢空賞、90年『親和力』で齋藤茂吉短歌文学賞、95年『岡井隆コレクション』(評論集成)全8巻で現代短歌大賞、99年『ウランと白鳥』で詩歌文学館賞、05年『馴鹿時代今か来向かふ』で読売文学賞、07年『岡井隆全歌集』全4巻を始めとする全業績で藤村記念歴程賞、09年『ネフスキイ』で小野市詩歌文学賞、10年『注解する者』(詩集)で高見順賞、11年『X(イクス)―述懐スル私』で短歌新聞社賞受賞。その他、著作は歌集・評論集含め多数。93年から宮中歌会始選者。07年から宮内庁御用掛。

「2018年 『注解するもの、翻訳するもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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