食の戦争 米国の罠に落ちる日本 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2013年8月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784166609277

作品紹介・あらすじ

TPP参加が現実味を増すなか、食戦略なき日本の食の未来はどうなるのか。日本が農業鎖国であるという言説は本当なのか。作物の遺伝子組み換えが進み、モンサント社をはじめ食産業の寡占化・食のグローバル化がますます進むなか、近未来の食をめぐる世界戦略地図はどう描きかえられるのか――。
「閉鎖的な農業戦略にショック療法を」というかけ声の裏側にある各国の食戦略のウソを読み解き、時代じだいの食戦略とその結末を歴史的に振り返り、アメリカンスタンダードにノーをつきつけるヨーロッパスタンダードを紹介。安全基準をも含めた食戦略の日本の、そしてアジアのあるべき姿を徹底して考える。

みんなの感想まとめ

食の安全と戦略が問われる現代において、食料は国家の存立に欠かせない重要な資源であることを再認識させられる一冊です。著者は、遺伝子組み換え作物や食産業の寡占化が進む中で、日本が直面する食の未来を深く掘り...

感想・レビュー・書評

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  • 欧米各国の食料自給率が高いことや輸出力があるのは、政府による戦略であり、日本の食料自給率が低いことはアメリカの支配を受けた結果であることがよくわかる。

    日本では、スーパーなど大型小売店同士の競争が激しいため、小売価格の引き上げが難しい。パンや麺類では、メーカーの取引交渉力が強いので、原材料の価格上昇時に小売価格に反映させることができる。牛乳では、スーパーがメーカーに対して圧倒的に優位な立場にあり、酪農家はメーカーに対して比較的優位なため、原料価格が高騰しても牛乳価格の値上げは起こりにくく、しわ寄せは酪農家にのしかかる構造がある。

    牛乳は、日本では120~150℃、1~3秒の超高温殺菌が大半を占めるが、アメリカやイギリスでは、72℃で15秒から65℃で30分が大半。超高温殺菌では、ビタミン類が最大20%失われ、有用な微生物が死滅し、タンパク質の変性によりカルシウムが吸収されにくくなる。

    日本の窒素収支(1997年)
    国内生産食・飼料 51万トン
    輸入食・飼料 121万トン
    化学肥料 49万トン
    作物残渣 21万トン
    家畜糞尿 80万トン
    加工業 15万トン
    食生活(屎尿・生ごみ) 64万トン

    アメリカにおける作付け面積でGM作物が占める割合は、トウモロコシ88%、大豆93%、綿花94%。モンサントはGM作物の商品開発では他社を圧倒している。世界全体で栽培されているGM作物品種のうち、モンサントが開発したものは、大豆で93%、トウモロコシで92%、綿かで71%、菜種で44%。日本国内のGM作物の割合は、大豆75%、トウモロコシ80%、菜種77%。アメリカ人の主食である小麦はGMにしない方針を頑なに守っており、世界で小麦の遺伝子組み換えが認可された例はない。

    ISD条項の判断を下す投資紛争解決国際センターは、歴代総裁はアメリカが占める世界銀行の傘下にあり、訴訟ではアメリカに有利な判決が出される。

    韓国は韓米FTAの交渉開始するために、GM食品の受け入れ、アメリカの病院の参入を認める医療特区、輸入牛肉条件の緩和を認めた。韓米FTAには、TPPで問題になった事項がすべて入っている。

    欧米諸国の食料自給率や輸出力の高さは、手厚い戦略的支援によるもの。農業生産額に占める農業予算額は、欧州では4~8割、アメリカ6割に対して、日本は3割弱。農業所得に占める政府からの直接支払いの割合は、欧州では9割以上、アメリカは5割前後だが、日本は15%。農産物の平均関税は、EU19.5%に対して、日本は11.7%。EU各国では農業所得の95%が補助金だが、日本の農業所得に占める補助金の割合は20%に満たない。

  • 食の安全が脅かされる今、自衛の方法を考えてみた。乳製品は一切とらない(飼料が遺伝子組み換え作物の可能性大)肉類は一切食べない(餌が怪しい)。魚介類は天然ものを少しいただく。米と野菜は高くても国産。どっちみち食べ過ぎは万病の元だからいいもの少し。さて、これは自分や家族にはいいけど、自分たちだけよければそれでいいのか?というジレンマに悩ませられる。日本で食肉や漁業酪農は従事されている人たちや、長いデフレが続き所得も上がらず、自由化だか規制緩和か知らんけど定職に就くのが難しい今、安心をお金持ちしか手に入れられない国のありかたって。主権国家に必要なものは国防とエネルギーと食。今、食も外国に委ねてしまうということはもう日本がなくなってしまうのと同じじゃないの?読み進めるとなんだかどんどん腹が立ってくるし、もうなんか最後は泣けてきますね。

  • タイトルの通り「食」という戦略物資をめぐる戦いについて書かれている。各国の思惑と日本の取るべき道について常識にとらわれず、データを読み解きながら考えていく。

    そもそも日本は、おおよそ食料関係の関税が高くなく(一部の農作物を除く)、農家への保護も手厚くないという。それは、我々の常識とは全く異なる現実であった。そして、欧米諸国の食に対する戦略的政策を知るにつれて、日本の無策を嘆きたくなってくる。

    国家存立の三本柱である軍事、エネルギー、食料の自立なくして、日本の真の独立はないという気持ちを強くした。エネルギーの自立に関しては、藻谷浩介氏の「里山資本主義」にヒントが提示されている。また、本書で書かれていたアメリカの食料戦略、モンサント社などのバイオメジャーの動向に関しては、堤未果氏の「(株)貧困大国アメリカ」を参照いただきたい。

  • 東京大学農学生命科学図書館の所蔵情報 https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003196139

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000075443

  • 【参政党が聞く!】日本はすでに食糧危機の真っ只中にいる!元農水官僚で東大大学院の鈴木宣弘教授が闇の暴露と自然農法・有機農法の重要性を説く!

    https://www.youtube.com/watch?v=rbyEanCaNbM

    参政党の神谷宗幣さんが元農水官僚で東大大学院教授の鈴木宣弘教授に「食」をテーマに話を聞いた

    鈴木宣弘教授は「食の戦争」という本を書かれています。

    食糧危機がくるとよく言われていますが、すでに食糧危機の真っ只中だという

    食の安全や紛争や流行り病の影響で化学肥料や農薬が、好むと好まざるとによらず使えなくなってくる

    有機農業や自然農法というものを見直さなきゃいけない時がきている

  • 食料の自給率が200%を超える豊かな国は世界でカナダとオーストラリアだけ。100%以上で見てもアメリカとフランスぐらいで、その他の国は全て100%未満。日本に至っては40%、即ち大半が輸入に頼っている状況なのだが、そんな中でアメリカの「食料戦略」が日本の脅威となっている。大豆・小麦・トウモロコシなど、官民一体で輸出先の日本に攻勢を仕掛け、日本向け穀物の残留農薬の規制緩和や、モンサント社に代表されるバイオメジャーによる遺伝子組み換え品種の開発など、攻撃的な戦略によって「食の覇権」を狙っている....? 農林水産省OBで、農業経済学を専門とする著者が、食のグローバル化が進む中、お得意の金融工学の論理で「食」の支配を企むアメリカの陰謀を暴き、「強い農業」を目指す日本の進むべき道について提言する。

  • 発売された当初2013年にこれだけの事を知っていたかったと思った。日本人全員が考えなければいけない問題。

    アメリカに食でコントロールされて健康を売り渡している。それは今後もっとひどくなっていく事は明らかである。

    国が守ってくれないなら自衛するしかない。

  • 反TPPの立場からの本。

  • 種子による米国のコントロール

  • 必読書

  • 工業vs農業で語られることの多いTPP参加の賛否。実は
    関税撤廃の話だけではないのだが、本書では食の安全
    保障の観点からTPPをはじめ、アメリカが仕掛ける戦略
    を解説している。

    怖いよ~。今でさえ食料自給率が39%の日本なのに、
    TPPに参加してアメリカから大量に安い食料品が入って
    来たら、自給率は益々低下する。

    「安くなるんだからいいじゃない」。価格面だけを考えたら
    そうかもしれない。でも、ちょっと立ち止まってみよう。

    数年前、バイオ燃料ブームがあった。その時、何が起こった
    か?トウモロコシ価格の高騰ではなかったか。

    「いや、日本の主食は米だから大丈夫」。うん、トウモロコシ
    ではないからね。でも、その主食のほとんどをアメリカに
    頼るようになったらどうなる?

    アメリカが干ばつに襲われたとしよう。日本にそれまで通り
    アメリカ産の米が入って来るはずもなく、日本は兵糧攻め
    に遭うことだろう。

    そればかりではない。本書で一番怖かったのが、モンサント
    社に代表される遺伝子組み換え種子を販売する会社の
    戦略だ。

    現在、日本国内では食品パッケージに遺伝子組み換えの
    有無を表記しているが、TPP参加後にアメリカから「不公平
    だ」とねじ込まれたら、この表記さえ取り止めになる。

    BSE対策でアメリカ産牛肉の輸入月齢制限は、なし崩し的に
    引き上げられている。日本の監督官庁は「TPPとは関係ない」
    と言っているが、アメリカの意向を受けていることは間違い
    ないだろう。

    武力とエネルギー、そして食料と、アメリカはあらゆる手段を
    使って世界をコントロールしようとしている。

    日本政府はいくつかの品目を聖域として関税維持を言って
    いるが、そんなものは絵に描いた餅だ。このまま交渉が
    進み、日本が参加すことになれば私たちの食卓は完全に
    アメリカのコントロール下に置かれる。

    成長ホルモン漬けの豚肉や牛肉なんか食べたくないぞ~。

    本書ではEUの取り組み等も紹介されていて、分かりやすい。
    自国民の食の安全を脅かし、アメリカに追随すような政府
    なんかいらんだろう。

  • 『今だけ、金だけ、自分だけ』に警報を鳴らす、特に食の分野に特化した本。
    内容はほぼ知っていることだったけれど、改めて知ると、日々、自分が甘くなっていることに気づく。

    「売り手よし、買い手よし、三方よし」はとてもいいと思うし、自分も実践できていることもあるが、そうでないこともある。
    知識と知っている自分でさえそうなのだから、全体の流れを変えるのは難しいだろうなと思う。
    ただ、そうやって生きている人達もいるので、自分もできることをやっていくしかない、といつもそういう結論になる。

  • 危機意識に貫かれた真摯な書籍。著者の言うことはもっともだと思う。食成り立たずんば、人の生活はなし。

  • S611.3-ブン-927 300364452

  • 【食戦略なき日本の未来は、いかに!?】食のグローバル化で、食の世界地図はどう書き換えられるのか。戦略なき日本の危機を見つめ、あるべき未来の食戦略を考える警告の書。

  • 日本には地域各地に独自の農林水産業がある。であるからこそ、地域の食、日本の食が守られ、地域の関連産業や地域コミュニティが成立するのである。様々な面で日本を支えている農林水産業だが、全く蔑ろにされているのが現実。欧米では、国内の余剰製品は政府が買い入れ、過剰在庫が生じれば輸出補助金により輸出する。世界の農林水産業は手厚い保護で守られているのだ。加えて農作物輸出大国といわれるアメリカやオーストラリアは、食糧生産に戦略的な位置づけを行い国全体で支援を施している。国内供給以上の増産は、世界をコントロールするための武器として利用するため。競争力があるから輸出をしているわけでは決してない。根拠をしっかり積み上げ予算化し国民の理解を得ているからバラマキ批判も起きない。生産者は誇りをもって農業をやっていける。価格に反映されない食糧生産の価値を国民全体が認識しているのだ。他方,日本は戦略物資としての食料の認識が極めて薄い。2008年の食糧危機の教訓も活かされていない。認識の薄さは大きな危険性を孕んでいる。まず消費者である私たち自身がしかと認識しなければならない。

  • 基本的に日本の農業はオーストラリアなどよりも圧倒的に小規模なのだから、少々値段が高いのは当たり前で、高いけれどもモノが違う、品質がよいということが、本当に強い農業の源になる。このことを生産者と消費者が双方に納得する「つながり」が重要である。(p.180)

    被災地の復旧・復興も基本は「コミュニティの再生」である。「大規模化して、企業が経営すれば、強い農業になる」という議論は短絡的である。被災した地域に人々が住んでいて、暮らしがあり、生業があり、コミュニティがあるという視点が欠落している。(p.186)

  • チェック項目3箇所。「食料は軍事的武器と同じ『武器』であり、直接食べる食料だけでなく、畜産物のエサが重要である。まず日本に対して、日本で畜産が行われているように見えても、エサをすべてアメリカから供給すれば、完全にコントロールできる。これを世界に広げていくのがアメリカの食料戦略だ」。スイス国民経済省農業局からは、スイスの消費者は「スイスの農産物は決して高いわけではない。安全安心、環境に優しい農業は当たり前であって、我々は多少高いお金を払っても、こういう農産物を支えるのだ」と納得しているとの説明があった。食料自給率のさらなる大幅な低下を招き、食の安全基準のさらなる緩和をも求めるTPP協定が、日本の食の量的かつ質的な安全保障の崩壊にとどめをさしかねない。

  • 客観的なデータから日本の農業のみならず、世界市場がアメリカの戦略通りに動いている様子がわかります。軍事、情報と並んで食糧は外交手段になりますし、日本の食料自給率の低さをかんがみて対策を練る必要があります。

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著者プロフィール

1958年三重県生まれ。1982年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学教授
を経て、2006年より東京大学教授。98~2010年(夏季)コーネル大学客員教授。
2006~2014年学術会議連携会員。一般財団法人「食料安全保障推進財団」理
事長。『食の戦争』(文藝春秋、2013年)、『貧困緩和の処方箋:開発経済学の再考』

「2025年 『環境経済学講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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