グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書)

  • 文藝春秋
3.75
  • (13)
  • (22)
  • (16)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 259
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609741

作品紹介・あらすじ

国内外の気鋭の論者が徹底討論世界的なデフレ不況下での自由貿易と規制緩和は、解決策となるどころか、経済危機をさらに悪化させるだけであることを明らかにする!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 各国が新自由主義を推し進めたのと同時期に格差拡大、成長の鈍化が起きたので、リベラル、グローバリズムはダメなのです、というような論が何度も繰り返されており、まともに双方の因果関係を論証しようとしているのがトッドのみ。学術書ではなく、タイトルの主張がすでに既成概念として存在していて、そこに対する批判を交えずに議論をまとめたような印象を覚える書。エビデンスに乏しい話と、あまり意味を成さない例え話(経済には統治が必要なのだ、という話を、交通ルールを撤廃したら道路はぐちゃぐちゃになりますよね?という話で語るのはギャグで言ってるのか不安になるレベル)ばかりであり、よろしいものではない。

    本書が2014年に発売され、その2年後にBrexitとトランプ大統領の誕生があったのは偶然ではない、だからこそ手を取ったのだが、肝心の中身がこれではちょっと。

  • 現在の行き過ぎた(と個人的には思っている)グローバリズム、自由主義経済については懸念を感じている。という意味では自分は保守なんだと思う。一方で、本書にも書かれている通り、本来反対すべきグローバリズムを今の保守派が進めているのは、やっぱり謎。
    言葉の響きで単純に「よいもの」と思い込んでいるわけではないだろうし、必ずしも個人(および企業)が自己の利益のためのみに利用しているだけだもなさそうな。そんな謎に対する1つの考えも述べられています。
    個人主義、民主主義の行き過ぎ、識字率、劣化(本書ではエリート・指導層の劣化とあったが、国民全体の劣化ともいえるのではないか?)といったいろんな要素を絡めて考えていく必要があるようで。個人的にもちょっと今後も考えていきたいテーマ。

  • 2014年刊行。
    著者(対談者含む)エマニュエル・トッドはフランス歴史人口学者・家族人類学者。同ハジュン・チャンはケンブリッジ大学経済学部准教授(開発経済学)。同柴山桂太滋賀大学経済学部准教授(経済思想・現代社会論)。同中野剛志は元京都大学大学院准教授。同藤井聡は京都大学大学院教授(公共政策関連の実践的人文社会科学)。同堀茂樹は慶應義塾大学総合政策学部教授(仏文学・哲学)。


     タイトルどおり、反グローバリズムの論客が対談、あるいは小論形式で当該テーマについて叙述。納得する部分もあるものの、正直新味はない。またあまり紹介すべきところもない。
     また、対談と小論だけなので、緻密とは言いがたいし、情報の漏れ落ちの危惧もないではない。

     他方で、グローバリズムのカウンターがナショナリズムというところで、(理解は出来るが)ややげんなり。他には無いのかなあ…と思いつつ、いわゆる新自由主義経済学的手法を採用している国の多くの場合、経済成長率がさほど高くないことは記憶に止めておくべかも。
     なお、非グローバリズムの中国は良いのだが、ここで気になるのはアメリカ。一定程度経済成長をしている彼の国については、どう見たらいいのかな?。

  • 表紙の写真で分かるように、エマニュエル・トッドが表看板の本だが、彼が語る場面は、他の著者よりそう多いわけではない。

    グローバリズムが経済的繁栄をもたらすという理論は、じつは根拠がなく、逆に世界に不公平と混乱をもたらす元凶であることを、座談会およびそれぞれの論文でわかりやすく説いた本。

  • エマニュエル・トッド氏の新書を何冊か買い、その一冊目として読んだ。
    読み始めてすぐに、対談ではなく本人の単著を読めば良かったと後悔した。
    「エリートの大劣化」「あいつらは何もわかってない」「金持ちが儲けるために規制を操っている」など、ヘイトスピーチや陰謀論に近いような、質の低い議論が展開されているように感じたからである。(特にそうした物言いが顕著なのが中野氏)

    そうしたなかでも、やはりトッド氏単独の部分では、新たな視点を得ることができた。
    それは、教育の高度化が格差の存在を当然視することに繋がるという指摘である。
    著しい教育上の格差を誰もが(特に子をもつ親が)強く認識しており、そこに不平等の潜在意識が表れている、という指摘は実感を伴って理解できた。

    私はこれまで、エリート教育を強化することは社会の発展に必要であると考えていたが、世界でも特に極端なエリート教育の国、フランスのエリートであるトッド氏の指摘は、そうした考えを見直すきっかけになりそうだ。
    そうした視点からも、さらに同氏の著作を読みながら、考えを深めていきたい。

  • 第Ⅰ部 グローバリズムが世界を滅ぼす
    第Ⅱ部 グローバル資本主義を超えて
    トータリズム(全体主義)としてのグローバリズム 藤井聡
    新自由主義の失敗と資本主義の未来 H-J・チャン
    歴史は繰り返す? 第二次グローバル化の未来 柴山桂太
    国家の多様性とグローバリゼーションの危機 社会人類学的視点から E・トッド
    新自由主義と保守主義 中野剛志
    第Ⅲ部 自由貿易とエリートの劣化

  • グローバリズムにより貧富の差は広がり格差社会がひずみをもたらす。保護主義を推奨する。
    必ず毎年利益を出し、年々GDPが上がっていくこと前提の経済の考え方に息苦しさを感じる点で、納得できるところが多い。

    が、グローバル化を止めてしまって、代わりに経済を発展することができるのか?というところに答えは見つからない。その思考自体が間違っているということなのだろうが。

  • エマニュエル・ドット氏と日韓の論客がグローバル資本主義のの行方を語ります。バブルとその崩壊を繰り返し、大企業によるの寡占化、短期利益を求めての目先のパイの奪い合い、株主はクリックひとつでやめられるが従業員はそうはいかない、国家という枠内でのガバナンスの欠如などの問題を洗い出し、それでもネオリベラリズムを支持するのはエリートが内向きな小さなグループに閉じこもって統治を放棄していると糾弾。
    一般人もそれで良しとしてしまうのは、子供の頃貧しかった高齢者が今を豊かだと感じていることに加えて、ハンナ・アーレントの「全体主義の起源」を挙げて論じている。
    2014年6月発売の本書ですが、ドット氏の「新自由主義と結びついたことで保守は死んだ。米国人は自由貿易や市場を信用してない。」との発言は本来の保守復権のトランプ大統領を予言しているようです。もっとも、トランプ氏の側近は氏の発言とは裏腹に生粋のリバタリアンばかりとの話もあるようですが。。。

  • グローバリズム=善という固定観念に疑問を投げかけている入門書として最適。また、ブレグジットやトランプの当選など、最近の政治の流れの背景も分かる。
    日本のエリートや企業のトップは、これからの日本のあるべき姿、会社の存在意義について、今一度考え直した方がいいと思った。そういう哲学的な考察無しに、突き進むのは危険である。

  • 「グローバル資本主義によって経済は成長する」と信じられてきましたが、実際のデータを客観的に眺めてみれば、真実はまったく逆であって、「グローバリズムは成長を鈍化させる」
    グローバル資本主義を推し進める人々は、ビジネスに自由さえ与えれば富も雇用も創出され、最大限の成長があると信じてきた
    アメリカにしても日本にしても「国による産業保護」という規制が成長を生ん
    アメリカが、実は世界で最も強力な産業政策を行っているのです。インターネットにせよ、半導体にせよ、航空機にせよ、研究開発を支援したのは国防総省や軍などの政府機関
    グローバリズムは国境を前提にしないものであって、国境が存在することを前提とした上で、異なる国家同士の交流を図ろうとするインターナショナリズム(国際主義)とは真逆の概念です。両者は、一見似ているように思われることがありますが、まったく異なる概念
    今日の先進国は、自国経済を発展させるにあたって、未成熟産業を育成する、さまざまな手段を使ってきました。関税、補助金、国営企業といった方法です。これによって若い産業の生産者を外部との激しい競争から守ったのです。ここ数十年、こういった政策を途上国は採用しにくくなっています。
    今は一株当たり一票ですが、たとえば三年以上にわたって株式を保有している安定株主には、三倍の議決権
    グローバル化は人類の歴史で何度も繰り返されてきた
    一八七〇年代から、一九一四年の第一次世界大戦までの期間を「第一次グローバリゼーション
    第一次グローバル化の時代は、人の移動については現在よりも盛んでした。特に、ヨーロッパ大陸から大西洋を越えて南北アメリカ大陸に向かう移民の波が大きかった。オーストラリアやニュージーランドも、この時期に人口を急速に増やしています。
    一九五〇年代から七〇年代までのブレトンウッズ期には、どの国でも格差が縮小
    自由貿易はよく賞賛されます。しかし、その「自由」とは誰にとっての自由なのでしょうか。端的にいえば、国境を越えて活動する投資家や企業にとっての自由
    なぜグローバル化への批判が「一〇〇%貿易をしない国」の主張を意味するのでしょうか。要は程度の問題
    だんだんと賃金を純粋なコストと見なすようになります。賃金は内需に貢献する要素であることをやめてしまいます。それは純粋なコストになり、すると企業は、賃金コストの削減の論理に入っていきます。
    歴史において非常にはっきりとしていることがありまして、それは、住民が読み書きできるようになると経済が発展し始めるということです。
    世界のすべての人が読み書きできるようになっていくという人類史上、極めて特別な時期に到達したのです。  
    労働者も消費者なのだから、という前提です。労働者も皆と同じように国民の一部分を成していたわけです。
    「自由貿易」という強迫観念
    しかし、(日本を含めて)私が最前列国と呼ぶ国々は、現代の姿を定め、新しい資本主義や経済組織の新しい形を発明していますが、成長率は一%、二%で、最大でも二・五%
    米国とイギリスは共に、グローバリゼーションの主な担い手であり、規制緩和の担い手
    自由貿易のイデオロギーは、普遍主義的であろうとするイデオロギーであり、地球全体に同じものを求めます。
    保守と新自由主義では人間観が違う。主流派の経済学が想定するのは、原子論的な孤立した個人です。それに対し保守は、自分の生まれた国や共同体がもつ固有の生活様式や文化、国土や環境といったものに制約された社会的存在(Social Being)として人間を

全23件中 1 - 10件を表示

プロフィール

1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。76年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして旧ソ連の崩壊を予見し、フランス・アカデミズム界に衝撃を与える。その後、歴史人口学の手法で「家族構造」と「社会構造」の連関を示し、全く新しい歴史観と世界像を提唱してきた。主要な著作として『世界の多様性――家族構造と近代性』(99年)『新ヨーロッパ大全』(90年)『移民の運命』(94年)『経済幻想』(98年)『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』(02年)『文明の接近――「イスラームvs西洋」の虚構』(07年)『デモクラシー以後』(08年)(以上、邦訳藤原書店)などがあり、近年は大著『家族システムの起源』を出版。

「2014年 『不均衡という病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書)のその他の作品

グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書) Kindle版 グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書) エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッドの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
トマ・ピケティ
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印

グローバリズムが世界を滅ぼす (文春新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする