松下幸之助の憂鬱 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609833

作品紹介・あらすじ

パナソニックは、2012年、2013年の連結業績で7000億円を超える最終損益を出した。 経営トップの責任を問う声が上がり、これまでのビジネスモデルの限界が指摘されたが、最大の原因は、創業者である松下幸之助(1894-1989)の精神を忘れ、経営理念を見失ったからではないだろうか。 「創業者精神を失った企業は滅ぶ」 そうであれば、パナソニックの再生は、松下幸之助の創業者精神を受け継ぐことによってしかなされない。 しかし、松下幸之助がこの世を去って、20年以上が経った今、その薫陶を直接受けた世代はパナソニックから退場し、その精神の真髄は誰にも受け継がれていない。 本書は、松下幸之助の評伝を通して、その創業者精神や経営哲学がどのような時代の下で、どのような格闘を経て、形成されたのかを描き、その核心に迫る。 日本の強さを支えた経営哲学はどのようにして生まれたのか?○「マネ下」「二番手商法」は、「市場の声」をいち早く察知し、そこに自らの持てる力を集中する経営手法から生まれた。○「水道経営」は、物質の豊かさ=幸せという幸之助の哲学から生まれた。○松下幸之助が10代に自転車屋で働いていたときに「顔色を窺う」こと、共存共栄の大切さを身につけた。○「任せる経営」は、幸之助の体力や知力の限界を補うために生まれた。そのため「任せる」といっても、「全面委任」ではない。○販売の松下といわれるほどの強い販売網はなぜ必要だったのか?○現在から見えても先駆的な経理社員の育成と経営経理の目的とは? など幸之助の経営哲学が様々な角度から解き明かされていく。 日本を背負うビジネスパーソン必読の一冊である。

感想・レビュー・書評

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  • 幸之助の幼年時代の話は、とっても時代がかっていてとても想像できない。大勢の家族は数年の間にどんどん病死して、唯一残された母の再婚を家長である幸之助が承認しなければならなかったとか、松下家の再興を父に託されたとか、中世の世界のようだ。嫁の親族や甥っ子を大量に登用して発展しつつも、離反されてしまい、後継者を育てきれなかったのは、経営の神様のイメージからすると意外。やはり創業カリスマ社長の跡取りはどの会社でも大きな課題なんだろう。PHPに込めた宗教がかった思いはそうした苦悩のなせる技か。

  • 松下幸之助の生い立ちを辿るノンフィクション。松下幸之助の生い立ちに関しては様々な本が既に出版されており、もっと詳しい本も他にありますが、この本は新書なので手軽にざっと押さえる事ができます。
    もう少し、現在のパナソニックの経営状況などと絡めた内容かと思いましたが、大部分が生い立ちに関する記述でした。
    「創業者精神を忘れた企業は衰退する」というのが一貫したテーマです。確かにそれは企業存続の必要条件ではあると思いますが、パナソニックの失速の原因をこの一点に帰着させるのはちょっと無理がある気もしました。

  • 松下幸之助さんのバイオグラフィーとしてはいいと思うが、パナソニックの現体制批判的なところは、作為的でいただけなく感じた。

  • チェック項目7箇所。「創業者」は創業者であることだけで求心力を持つ、と言われる、その創業者を失った松下電器の最大の課題は、どのようにして新たな求心力を生みだし、いかにして維持・発展させていくか、にあった、ある意味、それは創業者を超えて進まなければならないというもっともハードルの高い挑戦でもある。松下幸之助の創業者精神と経営理念を堅持した企業としての再建を目指すなら、少なくとも松下電器に与えられた「使命」をいま一度改めて考えるべきである、創業者精神を忘れた企業に復活などあり得ないからだ、そのための手がかりのひとつとして、松下幸之助の評伝を通じて彼の経営哲学の成り立ちを振り返ったのが本書である。たとえ意図しなくても結果として利益を独占することになれば、必ず周囲の反発を買って失敗することを学んだと考えて、松下の経営理念「共存共栄」の原型になったと判断した、しかしその後の取材で、それに加えて幸之助は「生き抜く知恵」を得たのではないかと考えるようになった、それは、「(周囲の)顔色を窺う」ことの大切さを学んだことである。当時は「豊かさ」を感じるには、必要なモノが十二分にある時である、大量生産こそ、産業人、つまり幸之助と松下電器の使命というわけである。しばしば戦後、松下電器は「マネ下電器」と揶揄されてきた、それは、他社が先行して開発・発売した製品が売れ出すと、同じような製品を大量に製造・販売し、瞬く間に高い市場のシェアを奪うからである、しかしここにこそ、廉価な商品を大量に販売することで日本から貧乏をなくすという水道哲学に基づく松下幸之助の経営手法、松下商法の根幹がある。松下幸之助の社長時代、ある家電製品で不具合が生じ全品を回収するという問題が起きた、その製品の開発担当の幹部が、幸之助の呼び出しを受けた時のことである。危機だからと言っては、その都度、退任した幸之助が登場してくるようでは、それこそいつまで経っても後継者は育たない。

  • いろいろ考えるきっかけにはなったが、全体としてはイマイチだった。
    松下幸之助の商売に対する熱心さを彼の生い立ちから読み解いた下りは、面白かった。多分、そういう理由なんだろうなと、納得してしまった。
    その後の、松下幸之助が一旦は会長に退いたものの営業に復活したことを受けて、松下幸之助が後進を育てられなかったという指摘も、まあまあ妥当かなと感じた。
    しかし、丹羽の「任して任さず」に関する発言から、常に松下幸之助の影響が及んでいたように解釈するのは、ちょっと違うのではないかと思った。別のところで最近読んだ丹羽の発言から感じたのは、「任して任さず」は任された部下側が独善ではなく、松下の経営、すなわち本書で強調されている「共存共栄」を実現できているかを自ら謙虚に振り返ることではないかと私は感じている。
    本書のラストで、経営は暗黙知であり、最近 4 代の松下、パナソニックの社長は松下幸之助の直接の薫陶を受けていないからダメという指摘は短絡過ぎて、ガッカリだった。
    ただ経営は暗黙知というのは、そうかもしれない。欧米の CEO は、人が変わると組織もガラッと変えることがよくある。これは、先代の暗黙知が組み込まれた組織では自分の経営スタイルに合わないから、自分に合うように変えているのかもしれない。

  • 松下幸之助関連は初めて。ざっくりと知るにはいいのかな。経営の神様とか言われ、どんな人かなと思ったけど、人間ですね、当たり前だけど。
    後継選びにはなんだかんだと言われているようですが、現在でも会社が存続していますから、それはそれで立派なものです。
    色々と読んでみようかと。

  • 先日「血族の王~松下幸之助とナショナルの世紀」を読み、経営者ではなく、人間「松下幸之助」に興味をもった勢いで手にする。

    20代で親兄弟をすべて亡くし、松下家の後継として期待した長男は生後1年を持たずに病死。天涯孤独の身である幸之助にとって、血を守ることは執念であり、松下家消滅の恐怖を忘れさせてくれるのが仕事であった。

    そんな幸之助の血族と仕事を重視する姿勢は時々、矛盾することもあった。経営幹部に肉親を採用するが、彼らが仕事の結果を出さなければ、その批判は倍増された怒りとなって幸之助に蓄積される。

    その結果が、義弟井植歳男の松下電器からの追放であり、社長職を継がせたはずの松下正治からの社長職取り上げであった。

    ただし、肉親以外の部下に対する態度は見事であり、多くのフォロアーを育てた。松下幸之助とは確かに経営の神様であり、企業社長として見習う点が多い。しかし、肉親への愛憎が強すぎるあまり、松下電器の後継を作れなかったのは大きな失敗だろう。

  • 【創業者精神を見失った企業は滅ぶ】低迷を続けるパナソニックから失われた幸之助の経営哲学はいかなるものだったのか。それがどのように形成されたのかを描く評伝。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家、ジャーナリスト
 1950年、福岡県北九州市生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。経済誌編集者や週刊誌記者を経て、1988年独立。
 92年に『覇者の誤算─日米コンピュータ戦争の40年』(日本経済新聞社)で第15回講談社ノンフィクション賞を、2000年に『魔術師─三原脩を西鉄ライオンズ』(文藝春秋)で99年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞する。
 著書に、『ソニーと松下』(講談社)、『さよなら! 僕らのソニー』(文春新書)など多数。

「2017年 『日本企業が社員に「希望」を与えた時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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