新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610006

作品紹介・あらすじ

新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方は池上彰さんと佐藤優さんによって書かれた政治入門の一冊です。池上彰さんと佐藤優さんという最強コンビが語る戦略や情報術。領土問題、資源紛争、金融危機、テロなどこれから確実にやってくるであろうサバイバルの時代を生き抜くためのインテリジェンスを伝授してくれる一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 2014年の出版だが、ウクライナや尖閣諸島、北朝鮮など現在もホットなトピックを扱っており、今こそ読み直したい本。現代の新帝国主義(池上さんの言葉を借りれば「過去の栄光よ、もう一度」)の行き着く先は...

    ムスリムの話で出て来た「複合アイデンティティ」という言葉は、覚えておきたい概念。「どのアイデンティティがどの位相で出るか」という点に着目すると、それまで矛盾に思えていた事象を理解できるようになる気がした。

    他に面白かったのは、
    ・オバマは教養が邪魔して対応が遅くなりがち
    ・軍事エリートと政治エリートのトップから馬鹿を排除せよ

  • 当代きってのインテリジェンス・プロの、池上彰と佐藤優の対談。面白くないわけがないと、本屋で即買い。期待を裏切らない面白さであった。
    特に佐藤優のロシアとイスラエルとキリスト教という特殊な切り口を持った凄い分析力に魅力を感じる。全然違うタイプのこの二人の波長が何故合うのかも不思議の一つ。

    【中国の民族問題】
    ・国内に56もの民族を抱えている中国は、今の共産党政府に従い、宗族のネットワークさえあれば近代化は可能なのか? いわば中国はプレモダンの国が、近代的な民族形成を迂回してポストモダンに辿り着けるのか、という巨大な実験をやっている。

    【中東】
    ・5月の安倍内閣のイスラエルとの共同声明を日本の中東政策の大きな転換点と見る。
    ・イスラム国の特殊なのは、シリアやイラクといった国家を支配することを目標としていない。
    ・結局「アラブの春」で露呈したのは、不安定で脆弱な中東国家の実体だった。
    ・アラブの春によって、中東における共和制型の政権を倒すことに関心を持った国があった。それがサウジアラビア。アラブの春による混乱に乗じて、中東に覇権を確保することを狙っていたのではないか。
    ・金融政策や財政政策といっても、世界の富は国家を迂回して動いている。アメリカは膨大な情報を集めているが、それがテロの防止に役立った事はない。冷戦後20年も経って、政府が情報とマネーを統制できなくなっている。
    ・世の中には旧来型の戦争観を持っている国がある。ロシアであり、中国であり、イランだ。民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって回避しようとする。ところが戦利品を獲れるという発想をもつ国は本気で戦争をやろうとする。短期的には、戦争をやる覚悟を持っている国の方が、実力以上の分配を得る。これが困るところだ。
    ・イスラエルが全力を挙げて、シリアのアサド政権を支持している。これはイスラエルにとってアサド政権は予測可能な敵だが、政権が倒れてシリアが混乱したら何が起こるか予測不可能になる。

    【欧州】
    ・カイザーのドイツ帝国は、軍事力によってウクライナを穀倉地帯として支配しようとした。その後、ナチス・ドイツは人種神話によって、同じ事をやろうとした。そして現在のドイツはユーロの力によって、それに成功した。
    ・永世中立国は大失敗だったというのが、二度の大戦からベルギー人が学んだ教訓です。周りの国が約束を守ってくれて初めて、永世中立国はなりたつ。約束を守らないという国が一つでも出てくれば、成立しなくなる。

    【北朝鮮】
    ・北朝鮮は「帰国希望者が2万人いるから受け入れてくれ」などと恐ろしい事を言ってくるかも知れない。

    【韓国】
    ・朝鮮民族が中国のすぐ傍にいながら同化されずにやってこれたのは、決定的な喧嘩をしなかったから。そう考えると中国といかにうまくやるかということが、韓国の生き残りにとっては死活問題になります。朴槿惠はそう気づいているのでしょう。

    【アメリカ】
    ・ミズーリの問題が軟着陸できるかどうかを含めて、アメリカの内政がかなりの混乱に陥るのでは。もはやオバマは外交ではなく、内政問題に縛られてくる。(早くも9月時点で指摘)
    ・オバマは頭が良く教養も高く、いわば「名誉白人」にすぎない。人種差別に関する悪を教えられていない。
    ・アメリカでは、実質的な権力を持っているのは、数としては少数派のウォールストリートであり、WASPであるという構造は変わらない。これに2050年問題(白人の少数派転落)があり、民主主義というツールは実行力を失っていく。

    【新帝国主義】
    ・フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」のような考え方は間違っており、「新帝国主義」の時代になった。ここでは外交面では古典的な力学モデルの「力の均衡」の世界になる。
    ・「自由」というのは恐らく「資本の自由」で、それがとんでもない格差を生み出す。
    ・「平等」とは力が背景にないと実現できない。これが最終的に独裁制に繋がっていく。あるいは皇帝がいて、そのもとでフラットになる。イスラム国は恐らく平等の考え方から出て来ている。
    ・マルクスは言う「ヘーゲルは歴史は繰り返すと言ったが、そのとき一言付け加えるのを忘れていた。一回目は悲劇として、二回目は喜劇として」

    等々と話題がつきない。本当に面白かった。

  • 殺し足りないから戦争は終わらない。お互いが嫌になるまで犠牲が出ないと終わらない。

    イスラームの価値観が理解出来ないとイスラームと分り合うことは出来ない。

    毎日の情報収集について。偏らないために。


    2014年クリミア半島併合時の本だが、2022年現在のウクライナ戦争を理解するためにとても役立ちました。

  • ・イスラエルの顔認証機能搭載の超小型無人暗殺兵器、世界最先端のサイバーセキュリティ技術。日本とは危機感が全く違うこともあり、これらの突出した技術力でグローバルなビジネスを展開している。
    ・北朝鮮が拉致被害者問題に関係して、「帰国希望の旧日本国籍所有者が2万人いるから受け入れてくれ」というカードを切ってきたら日本政府はどう対応するのか?

  • 〇学んだこと
    1.柔軟なナショナリズムを身につけること
    2.拝金教としての貨幣価値
    3.「悪」に関する教育は重要

  • まだまだ安心できない今日だと気付いた。今起きている事実に向き合っていく必要があると思う。

  • テレビニュースなど、なんとなくわかったふりしながら見ているが、実は知らない事、根本的な事すら知らずにわかった気分になっていた自分が恥ずかしく感じるし、さも難しそうな顔して偉そうなコメントしている大人がけっこう適当に発言しているんだなとか気づかされる本でした。

  • この内容で、戦争論、は無いよなぁ。副題のインテリジェンスの磨き方の方がしっくりくる。

    驚きは少ない本でしたが、北朝鮮が日本に返す人数を2万人とかすると、日本が困るからそれはそれでカードになる、と言うのは斬新で驚いたな。

  • 出版されて数年経っているけど、なぜ世界でこういうことが起こっているのか、がとても分かりやすい。現在の世界の動向を理解するのにも役に立つ良書。

  • 各国のパワーポリティクスにより国際情勢が変化する。他国が抱える問題を分析し、したたかな外交戦略が必要だ。冷戦後、民族紛争や宗教紛争が表面化し、決して世界から戦争がなくなったわけではない。問題の根本を知る機会となった。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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