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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784166610280
作品紹介・あらすじ
日本一有名な文学賞「芥川賞」。今年、創設80年を迎える芥川賞ですが、1935(昭和10)年に行われた第1回芥川賞にノミネートされたものの、落選した小説家は次のうち、誰でしょう?
a.川端康成 b.芥川龍之介 c.菊池寛 d.太宰治
答えは最後に記しますが、この小説家は自分を落とした選考委員を逆恨み。「刺す!」とまで言い放って大事件に発展した前科を持ってしまいました。
あるいは最近では「都知事閣下のために(芥川賞を)もらっといてやる」発言で話題になった田中慎弥、史上最年少受賞で日本中を熱狂させた綿矢りさ、金原ひとみの受賞劇も記憶に新しいでしょうか。
普段は小説を読まないけれど「芥川賞受賞作が掲載される月刊『文藝春秋』だけは読む」という人も多いのですが、どうして芥川賞は文学の世界にとどまらず、社会的な事件にもなるのか。その秘密は、謎のベールに包まれたままの「選考会」に隠れています。
石原慎太郎『太陽の季節』、大江健三郎『飼育』など日本文学の名作から、文壇の大御所たちの大ヒンシュクを買った問題作まで、歴代の受賞作を生んだ現場ではどんな議論がなされたのか。ヒントは選考委員が書き残した1400以上の「選評」にありました。
「該当作なし!」連発の開高健、三島由紀夫の美しい選評――、半藤一利が語った「司会者の苦しみ」。
全選評を完全読破した記者が、ついに謎を明かします。
注目の芥川賞選考会。本書を片手に、選考会という「密室」で起きる事件に要注目です。(答えはd。事件の詳細は本書で)
感想・レビュー・書評
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芥川賞の舞台裏を選評から明かした内容。
本が売れないニッパチ(2月と8月)に純文学の無名もしくは新人の作家に賞を与えて世に出し、話題を作って本を売ろうという意図のもとに作られた芥川賞。
ひとつの出版社が作った新人賞(芥川賞は新人賞だと理解している人が少ない)が現在までその権威と話題性に事欠かないのは、文藝春秋創設者・菊池寛のプロモーターとしての才能と商魂と、そして選ぶ作家と選ばれる者たちとが織り成すドラマゆえである。
賞を得ても書けなくなり世から忘れられる人と、獲れずとも後に大家として有名になった作家もいる。(村上春樹、吉本ばなな、然り)。
現在の芥川賞選考委員の山田詠美や島田雅彦は芥川賞を獲ってない。賞をもらったからダメになった、いや賞が励みになったと、様々な文脈で語られる芥川賞は、今後も話題を社会に提供するだろう。
芥川賞をめぐるドラマは数多い。
本書で書かれているが、芥川賞が欲しくて選考委員の川端康成に脅迫めいた手紙を書き送った太宰治などは作家のもうひとつの顔を覗かせて笑える。
特に芥川賞選考会は、選ぶ作家たちの文学観を覗かせて興味深い。トリビア的な話も多くおもしろい。
選考委員だった川端康成は、「なんですか、これは。なんでこれが候補作ですか。」と気に入る作品がないと選考会では終始不機嫌で、口を噤んだままだったという。
「該当作なし!」を連発した厳しい選考委員だった開高健。マスコミは芥川賞に騒ぎ過ぎで新人作家が可哀想だ、と賞の取り扱われ方に危惧を抱いた遠藤周作。
村上春樹の芥川賞候補作「風の歌を聞け」を唯一人評価した丸谷才一。
芥川賞受賞時、宮本輝に選評で酷評されて号泣した川上弘美。そんな川上は宮本輝と共にいまでは選考委員。しかし2人は候補作をめぐって選考会でよく対立するという。
現選考委員の小川洋子は、自分が推した作品が賞に通らなかった選考会の夜は、近くの公園を何週も歩き、足裏に血豆ができるほど歩き回り、高ぶった気持ちを鎮めてから帰るという。
芥川賞の選考会は、選考委員の作家たちの文学観が剥き出しになり、ぶつかり合う。そのなかからドラマや悲哀が生まれる。選ぶ者、選ばれる者含めて、菊池寛によって作られた芥川賞のその歴史と権威はこうしたドラマによって育まれ支えられているように思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第152回(2014年下期)までの芥川賞の選評を全て読み、面白いものを紹介
それにしても選考委員がすごすぎる。谷崎潤一郎、菊池寛、川端康成、三島由紀夫、などなどそうそうたる文豪揃い。彼らの容赦のない講評が面白い。 -
本書にもあるように日頃小説読まないのですが、芥川賞は結構読んできたのは、それがやはり文壇を支えてきたからだと思います。その芥川賞の選考委員に注目し、選評、新聞報道、関係者への取材から、選考の裏側を描いています。
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芥川賞受賞作品の選評を読めば、その時代の空気感を掴むことができる。長年、芥川賞の選考会を取材し続けた著者がレポートする、芥川賞の舞台裏。
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910-U
閲覧新書 -
本の本
文学 -
文学賞界隈の論考は、それだけである程度、自分的には楽しめることが約束されている分野。これも例外ではなかった。川端とか三島とか、自殺直前に参加した選考委員会の様子なんて、かなり興味深かったし。トヨザキ社長の調子に慣れた身にとって、本作者の芥川賞に対する絶対的信頼は新鮮に感じられて、石原に対する好意的解釈とかも、かなり面白かった。同賞に対する見方が、自分の中でも少し好意的になりました。
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20180812
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後藤明生「千円札小説論:あらゆる作家は小説を読み、小説を書く、どちらを欠いても文学は成り立たない」
文芸春秋創刊者、菊池寛の発案。昭和10年芥川賞、石川達三の蒼ぼう。直木賞、川口松太郎。太宰と川端康成の確執。芥川賞事件。第一回から運の良し悪しで受賞が決まった。「ナンセンスの情熱みたいなものに取りつかれて書いた。小説のねらいなんて自分でもわからないんだよ。でもそれが小説を書く楽しみなんだよ。安倍公房、芥川賞受賞の談」第三の新人安岡章太郎、吉行淳之介」、小島信夫ら。小さな世界に居場所を探す作風(文壇的小説)そのあと五味、清張現る。坂口安吾は松本清張の作品から推理小説も書ける作家と看破した。
芥川賞とは「顰蹙(ひんしゅく)文学」と看破。顰蹙をかうことを恐れぬ選ばれる側の作家と、選ぶ既存作家の自由闊達な表現の結果生み出される新しい表現の選出だと。 -
日本文学の主流についておおよその印象を持つことが出来る。芥川賞がどのような歩みを経てきたかについて物心ついて以降の印象しかない。昔といえば、村上、石原の作品のセンセーショナルさくらいで、なんにんかの文豪が獲り損ねてるとか。そういう程度で。そういったことも踏まえつつ、評価軸の変化や文学観の変化、選考の感じをざっとなぞらえている。遠い昔にも面白そうな小説を書いている人がいて知られてないだけなのかと思うと新人に一体どれだけの余白があるのかと思うけれど川端康成や石原慎太郎が期待したものが現れるといいなと読んでいて思った。
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「文学賞めった斬り!」シリーズへの文藝春秋からの回答?!
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賞の、うらがわ。知っても知らなくても、よい作品は良い作品。そうでないものだって、ある。
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芥川賞というあまりにも有名なために、本当はそれが何なのか知らなかったことが分かりました。どのように創設されたのか、その歴史がどのようなものだったのか。それに関わった人たちの姿を、主として選評を読むことで知ろうという試みが大成功だったと思います。退屈さなど一切なく、面白く読ませていただきました。著名な方々が一度は選考の対象になっていることから、一度は通る選考ではあるのですが、受賞することは重要ではなく、むしろそこから(選考されてから)始まる登竜門だということ、全編通じてその理念といったものを感じることができました。過去の受賞作や選考風景について書かれていますので、その対象作品を読みたいという気持ちに、芥川賞受賞作を読みたいという気持ちになりました。
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非常に読みやすく、面白過ぎた。
そもそも選評自体面白いってのもあるけど、芥川賞というものが選考委員の文学感の対立のある中で新しい文学を探ってきたことがよくわかった。 -
芥川賞の謎を解くと言うよりも、芥川賞の裏側と言ったほうが良いかな。
なぜ私の世代では現代の受賞作があまり評価出来ない理由がわかったような気がする。時代に合った作品に我々の世代は追い付けないと言うことか。
私が芥川賞の中で好きな作品は、『僕ってなに』だったな。学生運動の終焉の中でほろ苦さを感じさせるものだった。この後に書いた『龍を見たか?』で芥川賞を批判したような内容でビックリ。私達の青春時代の出来事で懐かしいな。 -
芥川賞は人を狂わせる。
その最たる例が、太宰治でしょう。
選考委員の佐藤春夫に芥川賞を懇願する書簡を送ったのは有名な話。
文面は、まさに恥も外聞もないといった体です。
さらには自分を落とした選考委員を逆恨みし、「刺す!」とまで言い放ったのですから、その才能とは異なる意味で「太宰、恐るべし!」です。
結局、芥川賞とは縁のなかった太宰ですが、吹っ切れてからの活躍は目覚ましく、後世に残る傑作を次々とものします。
「太宰が、もし芥川賞をとっていたら、どうなっていたのであろう。天才幻想に憑りつかれ、明るさとユーモアのある中期以降の太宰はなかったかもしれない」
との著者の見立てに、私も同意します。
芥川賞を逸し、その後、大作家としての地位を確立したのは村上春樹もそうでしょう。
その村上春樹は近著「職業としての小説家」で、芥川賞を得られなかったことについて損も得も特段なかった、としたうえで、こう書いています。
「ただひとつ、自分の名前の横に『芥川賞作家』という『肩書き』がつかないことについては、いささかありがたく思っているところがあるかもしれません」
たしかに、「芥川賞作家・村上春樹」というのは大いに違和感があります。
それだけスケールが段違いに大きい作家ということが云えるかもしれません。
本書は、読売新聞文化部記者として長年、芥川賞の選考会を取材した著者が、選評も読み解きながらその舞台裏に迫った労作です。
かく云う私もこの芥川賞(直木賞も)の選評を読むのが趣味で、ネットで読めるものはかなり読みました。
読んでいていつも思うのは、選評は「読み物」だということです。
たとえば、「三島の再来」と評された平野啓一郎の「日蝕」の選評。
「平野啓一郎氏の『日蝕』には、天井の高い建造物に踏み入ったかのような印象を受けた。作品の構えの大きさと思考の奥行きとが生んだ印象であったろう」(黒井千次)
「投げあげた試みがさほどの揺らぎもなく、伸びやかな抛物線を描くのを、唖然として眺めた」(古井由吉)
うまいなぁ、と舌を巻くほかありません。
もっとも、ここでも、あの石原慎太郎は「この現代に、小説を読むのにいちいち漢和辞典を引いて読まなくてはならぬというのは文学の鑑賞と本質隔たった事態といわざるを得まい」と憎まれ口を叩いて顰蹙を買っています(笑)。
芥川賞に興味のある方はどうぞ。 -
色々な書評やエピソードがそれぞれそれなりに面白いんだけど、やっぱりしょっぱなの太宰の話が強烈すぎて大好きだ。
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データ本としては、過去の歴史・なりゆきを知るためにとても面白い1冊。
今年に入って「芥川賞」がとても注目されるまで、新人作家さんの登竜門であること、十分経験を積むともう貰えない賞だということを知り、それを再確認できた1冊でした。
有吉佐和子氏の「いただいておりませんので。。。」の件はとても氏の特徴もあって面白い一文だった。
著者プロフィール
鵜飼哲夫の作品
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