大人のための昭和史入門 (文春新書 1038)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610389

作品紹介・あらすじ

「戦争はいけない」「軍部が悪玉だった」「指導者が愚かだった」――歴史はそんな悪玉、善玉の二元論では語れません。昭和の日本がたどった戦争の時代16のテーマを、社会のダイナミズムを知る大人ならではの歴史観で読み解く、昭和史再入門の決定版!現代最強の知性19人が論じつくします。昭和史 最重要テーマ16【世界史のなかの昭和史】半藤一利、船橋洋一、出口治明、水野和夫による特別座談会【リーダーに見る昭和史】「日本を滅ぼした『二つの顔』の男たち」保阪正康【満州事変】「永田鉄山が仕掛けた下克上の真実」川田稔【張作霖爆破事件】「軍閥中国は「イスラム国」状態だった」広中一成【国際連盟脱退】「松岡洋右も陸相も『残留』を望んでいた」井上寿一【5・15事件】「エリート軍人がテロに走るとき」別宮暖朗【2・26事件】「特高は見た『青年将校』の驕り」佐藤優【日中戦争】「蒋介石が準備した泥沼の戦争」北村稔【三国同盟】「『幻の同盟国』ソ連に頼りつづけた日本」田嶋信雄【日米開戦】「開戦回避 チャンスは二度あった」佐藤元英【原爆投下】「ヒロシマ・ナガサキこそ戦争犯罪だ」宮崎哲弥【ポツダム宣言】「日本は『無条件降伏』ではなかった」五百旗頭真【東京裁判】「戦争裁判の遺産と限界」日暮吉延【GHQ占領】「日米合作だった戦後改革」福永文夫【人間宣言】「天皇・マッカーサー写真の衝撃」眞嶋亜有

感想・レビュー・書評

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  • 座談会形式の分量が予想以上に少なく、その代わりに各分野の識者による様々な角度から昭和史を分析した論考がメインとなる構成。色々な考察を読めるのは興味深かった。個人的に昭和史は戦前戦後含めて余りにも膨大で複雑な事象が入り組んでいてまだまだ理解が追いつかない。幾らでもおかわりできてしまうほど興味が尽きない。

  • こんなに近い歴史なのに、改めて知らないことばかりと認識。勉強必要です。当時の日本国内、中国国内、その他の個々のプレーヤーの考え、動き、そして、その絡まりが大変興味深かったです。「人間宣言」の項の「米英に対する劣等感」「そこから生まれる淋しさの感情」、日本人に通底する心性、なるほど。そうかもしれません。

  • 近代の歴史は、思っていたよりも込み入っている。

  • 全書を通じて一貫したテーマがあるわけではなく、識者からの様々な角度からの昭和史解釈。
    海と陸の話。GHQ。近代史における日本の立ち位置等、断片的に興味深いコンテンツあり。
    尚、予備知識が必要で入門書ではない。

  • 200619大人のための昭和史入門
    半藤一利 舟橋洋一 出口治明 水野和夫 佐藤優 保阪正康

    1.日本の失敗
    1915 対華21カ条要求 袁世凱←田中義一
    1929 世界恐慌
    1931 満州事変
         高橋是清蔵相 積極財政 成長率7%/5年平均
    1936 緊縮財政へ 高橋暗殺


    2.戦争目的がない→グランドデザインが必要
    目的がないから、出口戦略も描けない
    縦割りの部分最適 全体最適へ
    「損切り」ができない
    各部署が大本営発表 無責任

    3.国際連盟の脱退
    1933 国際連盟の脱退
    1940 日独伊三国同盟

  •  歴史を読んでいると、今まさに起きていることについて考えさせられる。そんな気がした。最初の章の半藤一利さんたちの対談。リットン調査団の報告とか、日本史では日本の排除的なイメージで聞いた気がしたけど、実は日本の権益を認めるというものだったとか。そこで喧嘩を打っちゃうなんて、賢明じゃなかったよというのは他でも聞くところ。当時の日本でもそれがわかっていた人はいたのに、その意見が通らなかった。

     合いの手のようにいれられる出口氏のコメントが考えを広げてくれる。

    「わかっていた人がいたのに、それが影響を与えられないという組織構造が問題なんじゃないでしょうか?」

     そういう組織構造は、今まさに現在進行形の問題なんじゃないだろうか。

     本書全体でいうと幅b広く、いろいろな人の文章が集められている。読んだことのある人の文章もあれば、そうではないんだけど専門的には深く研究しているらしい人の文章もある。売れている人の方が、文章に読みやすさとか個性があるなぁ、というのは感じるところ。学者さんというだけの方の文章って、なんか報告書みたいでね(苦笑)。それはそれとして、知らなかったことをあれこれ知れたとはおもぅんだけどね。

  • 昭和の政治経済を全般的に学べる。
    戦後のGHQと当時の国内政治は中学高校で浅くしか学んでいなかったので頭の整理ができてよかった。

  •  「大人のための」と銘打ったのは、学校で習ったような単純化された歴史観では片付かない複雑な問題と向かい合うため、と「はじめに」で書いている。
    ・松岡洋右全権も荒木貞夫陸相も国際連盟脱退を望んでいなかったが熱河作戦の悪影響を抑えるため脱退した
    ・外務省(善玉)対軍部(悪玉)の二項対立図式ほど単純ではない
    ・1930年代末から太平洋戦争下、ソ連は対英米戦のための潜在的提携国であった
    ・日本は「無条件降伏」ではなく、米政府内のグルーやスティムソンの意見により天皇制保持など日本が受け入れやすい形にされた
    ・戦後改革は、項目により濃淡はあるが日本側の開明的官僚のイニシアチブもあった
    ・日韓の歴史問題での対立は戦後一貫したものではなく80~90年代から激化
    といった記述は、確かに素人がイメージする歴史とは異なる。また、冒頭の対談では、第一次世界大戦後に国際政治は伝統的な帝国主義外交から「理念」、経済やルールや持ち込まれるようになってきたのに、日本はその変化についていけなかったと語られている。
     各論はそれぞれ10頁程度なので読みやすい。他方、筆者や対談者の中には、五百旗頭真教授をはじめ十分な実績がある研究者と、どちらかと言えば文化人枠のような人物が混在しており、各論考の評価が難しい。テーマや各筆者の背景はバラバラで、統一されていない印象も受ける。

  • 感想未記入

  • 今日の書評は「大人のための昭和史入門」この本の導入部の座談会が興味深かったので、そこからブログを起こします。目からウロコ的なところが多かったです。

    まずカール・シュミットというドイツの政治哲学者は、世界史を「陸と海の戦い」として捉え、近代は交易や情報を握った「海の時代」としているとのことです。

    例えば、日露戦争は「陸の国」ロシアに対し「海の国」日本とイギリスの同盟が勝った戦争といえる。

    第一次世界大戦もまた、アメリカ、イギリスといった海の国が勝ち、ドイツを中心とした陸の国が敗れた。日本は戦勝国で「海の国」だったのに関わらず、その後「陸の国」を志向した。それで中国に攻め入り、陸の陣営で負けた。

    また日本は石炭から石油への切り替えが遅い。その為石油の為に満州、南方進出となったということです。

    また、アメリカが「門戸開放」即ち経済自由主義という普遍的な理念を展開する中で、日本はアジアのローカル・ルールでやれると考えていた。日米が戦争するまで、日本とアメリカは最後まで共通理解を持つことができなかった。

    話は第一次世界大戦に戻るが、戦争直前の各国の工業生産力、鉄鋼や石炭の産出量を見ると、ドイツ、オーストリア=ハンガリーの同盟国と、ロシア、英国、フランスの連合国はほぼ拮抗している。ところがアメリカは一国で、両グループと同じ生産量を有していたとのことだ。

    戦争により、各国は財政再建に走り、金本位制に戻すのだがそうするとやはり景気が悪くなる。日本もヨーロッパも20年代を通じて2%ぐらいしか成長していないのだが、アメリカはもうすでに21年ころから、反転に転じて完全な独り勝ちになっている。

    近年、高橋財政とアベノミクスの同質性を指摘する声があるが、高橋も短期的には金融リフレ政策を行い、円安を放置して軍拡で需要を生み出した。さらに長期的には皇族改革に取り組もうとした。次に大恐慌からの痛手から立ち上がると、今度は財政再建に着手する。これが軍縮をもたらし、軍部と衝突し2・26事件で高橋が殺された遠因となったことは間違いないという。

    先程も上げた「海の国」と「陸の国」でコストを比較すると、「海の国」は優位である。海の国が抑えるのは基本的に市場と港で、例えば上海とかシンガポールとか拠点を点で抑えればいい。

    一方「陸の国」は鉄道を敷き、その沿線を守るため軍隊を出す必要がある。線と面を抑えるためコストがかかる。

    話は変わるが「リットン報告書」は各新聞社の論説委員がみんな「日本に好意的な評価だ」と感想を漏らしているが、社説では徹底的に批判している。当時のメディアの論調は、満州事変も賛成だし、満洲国も賛成。ひとたび世論を沸騰させてしまうと、今度は世論に縛られてしまう。

    日中戦争で不思議に思うのは、日本は「十八史略」などで中国は首都を取っただけでは、戦争は終わらないということは分かっているのに、ということ。三国志の劉備も逃げては精力を回復してくる。

    最後に山本五十六が対米戦の見通しを聞かれて、「是非やれといわれれば、初めの半年や一年はずいぶん暴れてごらんにいれます。しかし、二年、三年となっては、全く確信は持てません」と答えた有名なエピソードがある。これは日本の国力を見極めた発言である。

    最後に、人類は第二次世界大戦が終わったとき、ともかく戦争に正義はない、「正義の戦争」は存在しない、ということを知った。それがやはり教訓である。しかしそれが21世紀になって変わった。その始まりはNATOが1999年コソボを空爆した。その理由が「人道の為」だった。9・11後もアメリカはテロを防御するため、先制攻撃だとしてイラク戦争を始めた。アフガニスタンに進行した。また人類は教訓を忘れている。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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