大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)
- 文藝春秋 (2015年10月20日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166610457
作品紹介・あらすじ
『新・戦争論――僕らのインテリジェンスの磨き方』に続く、最強コンビによる第2弾! 今、世界は激動の時代を迎え、各地で衝突が起きています。 ウクライナ問題をめぐっては、欧州とロシアは実質的に戦争状態にあります。 中東では、破綻国家が続出し、「イスラム国」が勢力を伸ばしています。そして、これまで中心にいたアラブ諸国に代わり、イラン(ペルシャ)やトルコといったかつての地域大国が勢力拡大を目論むことでさらに緊張が増しています。 アジアでは、中国がかつての明代の鄭和大遠征の歴史を持ち出して、南シナ海での岩礁の埋め立てを正当化し、地域の緊張を高めています。 長らく安定していた第二次大戦後の世界は、もはや過去のものとなり、まるで新たな世界大戦の前夜のようです。わずかなきっかけで、日本が「戦争」に巻き込まれうるような状況です。 こうした時代を生きていくためには、まず「世界の今」を確かな眼で捉えなければなりません。しかし直近の動きばかりに目を奪われてしまうと、膨大な情報に翻弄され、かえって「分析不能」としかいいようのない状態に陥ってしまいます。ここで必要なのが「歴史」です。世界各地の動きをそれぞれ着実に捉えるには、もっと長いスパンの歴史を参照しながら、中長期でどう動いてきたか、その動因は何かを見極める必要があります。 激動の世界を歴史から読み解く方法、ビジネスにも役立つ世界史の活用術を、インテリジェンスのプロである二人が惜しみなく伝授します。■目次なぜ、いま、大世界史か中東こそ大転換の震源地オスマン帝国の逆襲習近平の中国は明王朝ドイツ帝国の復活が問題だ「アメリカvs.ロシア」の地政学「右」も「左」も沖縄を知らない「イスラム国」が核をもつ日ウェストファリア条約から始まるビリギャルの世界史的意義最強の世界史勉強法
感想・レビュー・書評
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①なぜ、いま、大世界史か
歴史は現代と関連づけて理解することで、初めて生きた知になる。読書や歴史を学ぶことで得た代理経験は、いわば世の中の理不尽さを経験すること。だからこそ社会や他人を理解し、共に生きるための感覚を養ってくれる。例えば「今は新帝国主義の時代である」というキーワードによって世界の動きがかなりはっきり見えてくる。それだけで説明できないものも残る。
②中東こそ大転換の震源地
これまでアラブ人といえばスンニ派だった。しかし、イラクの現政権を実効支配しているのは「シーア派アラブ人」であり、新しい民族が生まれつつある。こういう混乱した状況になると、最終的には思想が人を動かす。だから過去にどういう思想の鋳型があったのかを調べることが重要だ。「イスラム国」の狙いは、アッラーが唯一であることに対応して、地上においてもシャリーア(イスラム法)のみが適応される単一のカリフ帝国を建設すること。暴力やテロに訴えることを辞さない。既存の国際秩序、人権など普遍的価値を一切認めていない。
③オスマン帝国の逆襲
イランは「ペルシャ帝国」、トルコのエルドアン大統領は「オスマン帝国」よ再びという動きを見せている。かつてのオスマン帝国の境界地帯で現在さまざまな紛争が生じているが、オスマン帝国の統治下では平和的に共存していた。エルドアンは専制君主ではあるが、帝国的な寛容は望むべくもない。
④習近平の中国は明王朝
国には、膨張志向の国と収縮志向の国がある。アラブも日本もアメリカ、ロシアも収縮の国。今の中国は膨張する国。それを象徴するものは「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」と「南シナ海への海洋進出」である。明は漢民族中心の帝国主義の国で、習近平は「かつて鄭和の時代に南シナ海を開拓し、平和の海にした。それ以来、中国の領地なのだ」と言う。かつて、「海はみんなのもの」としたほうが海洋帝国であるだいえいていこくに有利であった。だから、領海の拡大は、本来、反帝国的な動きである。中国は、とにかく資源が欲しくて場当たり的に動いている。韓国の歴史教科書は「テロリスト史観」で日本にとって脅威。
⑤ドイツ帝国の復活が問題だ
ギリシャ問題に関しては、そもそもギリシャをヨーロッパと考えるのが間違い。現在のギリシャは、ロシア帝国と大英帝国のグレートゲームになかで恣意的につくられた仇花である。オスマン帝国を解体するために西側の出店としてつくった国家だから、いわばそこに存在すること自体がギリシャ人の仕事になっている。ギリシャ人の働き方は、ロシアと一緒で生産性は低い。それに対して、ドイツ人は勤勉で生産性が高く、これがドイツの強さの根源である。ドイツ人のライフスタイルは質素で内需の拡大は期待できないので、産業は輸出に頼るしかない。新たなパートナーは誰か。パートナーたちは、経済と国家の安全保障を結び付けて考える。さあ、EUの行き詰まりをどうしていけばよいのか。
⑥「アメリカvs.ロシア」の地政学
ロシアは、自国国境の周辺に自由に動ける緩衝地帯や衛星国がないと安心できない。だから、ウクライナ問題に対しては強硬姿勢である。ウクライナは、フィンランド化していくだろう。
オバマの弱いアメリカは、世界から軽んじられている。ネオコン的なヒラリーが大統領になれば、オバマ民主党路線との違いを見せた外交になって、戦争が起きやすくなるだろう。大統領選で鍵を握るのは、非白人人口の中の特にラティーノ、南部諸州、リバタリアン(自由至上主義者)たちである。
⑦「右」も「左」も沖縄を知らない
沖縄では、日本からの分離の動きの下地ができている。安保賛成というと辺野古への新基地建設を強要されるのはおかしい。自分の頭で日米同盟はどうすれば維持できるか考えなければならない。
⑧「イスラム国」が核を持つ日
冷戦下で相互抑止体制を築き、なんとか核戦争は先送りされた。それがここにきて、相当の数の国が核を保有しながら併存する時代にとつにゅうしつつある。しかし、本当に併存が可能か誰も分からない。
⑨ウェストファリア条約から始まる
宗教戦争を終結させる、宗教のために戦うのをやめるというのは、神よりも重要な価値を認めるということであり、その意味で、ウェストファリア条約とコペルニクス革命は、同じパラダイムにある。これをきっかけとして、「人権」という概念が出てきた。それに対して、「イスラム国」などのイスラム過激派は、今日においても「神の主権」を主張している。間違いを起こす人間が法律をつくるなどとんでもない。民主主義はだめだ、神なら間違えない、ということでシャリーア(イスラム法)を絶対視する。イスラムは、キリスト教と違って、現在意識にない楽観的人間観であり、神が命じれば、聖戦の名の下にいかなる暴力も許されてしまう。
⑩ビリギャルの世界史的意義
イスラム、アフリカの人口増加、これが歴史を動かしていくのかもしれない。豊かな経済基盤によって移民を呼び寄せられる国が、「帝国」になりうる。
そして、教育も重要である。しかし、日本のエリート教育は、ビリギャルが話題になるぐらいの受験刑務所で酷いものである。今こそ真の教養教育が行わなければならない。今日において教養となにか。「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」の7つのリベラルアーツを学ぶことによって、偏見や束縛から逃れて、自由な発想や思考を展開できるのだ。実証性や客観性を軽視して自分が欲するように世界を理解する反知性主義は、極めて危険だ。
⑪最強の世界史勉強法
自分を知るために歴史を学ぶ!
1~11章まで、自分自身がひっかかった言葉を中心にまとめてみた。このまとめ方に、私自身の考えが出ている。私のような歳になっても教養を付けようとするのは、まだまだ遅くないように思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とてもわかりやすく説明してくださる人気のお二方の対談。
どんなところがわかりやすいかというと、わからない語句の意味を「それはつまりこういうことです」と説明してくれたり、「では〇〇についておさらいしておきましょう」と解説をいれてくれる。
それに知識が豊富なので、いろいろなことがわかって、本当に、とても面白いのです。
「へー、そうだったんだ」と思うことが満載!
ひとつ嬉しかったことを書いておきます。
池上「日本人にとっては意外なのですが、実は韓国の人たちには、北朝鮮の核開発はそんなに無理やりやめさせなくてもいい、という意識がありますね。
韓国が独自に核開発をしようとすると、アメリカからいろいろうるさく言われるけれど、いずれ南北が統一されれば、北朝鮮の核が我々のものになる、と。」
私は北朝鮮と韓国が統一してくれたらいいなあと、ずっと思っていました。
そうしたら横田めぐみさんがお父さんお母さんと再会できるのではないでしょうか。
韓国の人たちにそういう希望があるなら、がんばってほしいです。
それと、もうひとつ大事なことを書かなければ。
佐藤「(トランプのことを)しかし、民主党候補に勝ち、大統領になれるかと言えば、その可能性はほぼゼロでしょう」
この本は一年前に発行されたものです。
佐藤さんのその後の御意見をぜひ伺いたいものです。 -
さすが池上さん、歴史を学ぶ重要さがわかる本だ。しかも本書には現在の世界政治の源流が楽しく理解できるというポイントまで付いている。
対談の相手は「外務省のラスプーチン」佐藤優氏。東京拘置所では勉学に没頭していたという知性の塊り、この二人は意外とケミストリーが合うのではないか。いつも冷静な池上さんが本書では普段よりも政治的にやや突っ込んでいる。
また、オスマン帝国やペルシャ帝国の歴史を聞くと、自分がいかに無知だったのかがよくわかる。現在の国際政治は過去の経過の上に成立していることが思い知らされた。本書をまさに「最強の教科書」と高く評価したい。
2017年7月読了。 -
本書でイスラム世界の動きで注目すべきはトルコと記載されているなか、軍部によるクーデタ未遂。まさに慧眼としかいいようがない。それにしても、プロの分析者の目というものは一般人とここまで違うのか、と思い知らされた。まさに歴史を学んでいないことを思い知らされる一冊だと思う。
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純粋に勉強になる。
「いま起きているニュースはどのような理由から来ているのか」人や「世界史勉強しなおしたいけど、忙しくてなかなかできない」人、「今世界情勢はどんななってるのか気になる」人は、とても勉強になる本。ざっくりだけども、世界全体を概観できるつくりになっている。ただ、世界の動きと日本の動きを連動させてみるには、やはり自分の頭でしっかりと考えなければならないので、この本はその助けになるだけと思っていたほうが良い。
読後感は、「そっかー」で終わりがちなのが、こういった教養本であるが、そう終わらせないためにも自分の頭で考える必要がある。以下、自分なりに整理。
①中東の動き(イスラム国だけではなく、トルコ、サウジも含めて)は、宗教、民族の視点でみないと読み解くことができない。例えば、シーア派とスンニ派、イスラム穏健派、イスラム過激派、クルド人、などなど。こういった知識は前提として持っていないと中東の動きは何がなんだかわからない。
②アメリカ、中国、EU(ドイツ)、ロシアという帝国の動きは世界史を見る上で、欠かせない。とくに、アメリカの動きはすべての国際情勢に影響を与えるだけに、ホワイトハウスは何をしているのかをしっかりとみるべきである。また、中国に関しても、ロシアと中国、アメリカと中国、EUと中国の関係性は押さえておかないといけない。
③①と②の動きの連立方程式で物事をみていく必要性がある。
現在帝国が、今後国際社会でどのような役割になっていくのか、どのような思惑、世界戦略があるのか、をしっかりと見据えたうえで、現在を動きを注視していかないといけないだろう。そのことを考える上で、重要になるのが「世界史」なのだと両者は言っている。たしかにそのとおりだろう。
これに加えて、国際情勢を経済面から分析している論考も合わせて読むと世界を立体的に見れると思う。 -
いま世界で起きている事の理解が深まります。
SNSなどの世界で徹底的に他人を叩く様な出来事があるのは、反知性主義の現出の一種なんでしょう。この本を読んで、ストンと落ちました。こう言う事は、品質劣化の激しい今時のテレビでは放送され無いので、広く知る機会が無かったですね。こう言う本が出て本当に良かったと思います。
歴史や世界を学ばなければ、日本の将来に暗雲が立ち込めて来る気がします。(既に時遅しかもしれませんが) -
面白かった。でもちょっと難しかった。
地図を見ながら読んだら、ほんとに面白かった。
中身は対談形式。
うろ覚えでいいので、高校の世界史の知識がないと、ついていけない本。
世界史を紹介した普通の本ではなく、歴史を踏まえて今起きていることをどのように捉えるか、大局的な一つの見方を述べている。
あーこんなことあったなー、なるぼどこういう風に繋がると解釈できるんだ、と発見が多かった。
だから、歴史は面白い!
こういう本は楽しい。
本の中で、反知性主義という言葉が出てくる。
反知性主義とは「客観性、実証性を軽視もしくは無視せて、自らが欲するように世界を理解する態度」(抜粋)をいう。
今、私の周りにも、反知性主義がはびこっている。本人たちが意識的か無意識か、また程度のレベルは別として、そういう人たちは多い。
都合が良いところだけ切りとり、都合が悪いことは無視するので、見ていてなんとも気持ち悪い。たまに人間性を疑いそうになる。
この本が多くの人に読まれ、そうした変な状況が少しでも減るといいな、と祈りたい気分になった。
追記: 著者の池上さん、佐藤さん、本書は知識層にはいいけど、そもそも反知性主義的な人には難しいのでは?と感じます。もうちょっと易しい本を出すと良いのでは、と思ったりしました。
…易しいのを出しても、読まないか、読んでも無視するから意味ないかも^_^; -
現在の世界の動きを、歴史の流れから紐解く。特に中東の捉え方は学びになった。
大きな捉え方として、膨張志向と収縮志向というものがある。
オスマン帝国(トルコ)とペルシャ帝国(イラン)は膨張志向。スンニ派とシーア派の宗教の問題、また民族の問題が絡まり、中東のパワーバランスを形成している。
アメリカは収縮志向。中国は膨張志向。膨張志向と膨張志向が衝突するところで紛争が起きる。今後は中央アジアも危険な状態になることが想定される。その他、ドイツ・ギリシャ・ロシアの地政学的立ち位置。世界の人口バランスは大きく変化することは明らかで、そうなるとパワーバランスも変わる。いかに世界の中でプレゼンスをとることができるのか?そういう観点で日本の外交を見ていくと面白いのかも、というかこれは自分にとっては死活問題でもある。 -
世界史と日本史を広く鳥瞰し、さらに、歴史にとどまらず、政治、文化、軍事、宗教等を含む体系的な「知」の重要性を説く。
現代日本に蔓延る「反知性主義」(実証性や客観性を軽視して、自分が欲するように世界を理解する態度のこと)への警鐘を鳴らしている。
昨今のニュースを理解し、今の世界情勢を把握するのに有益。
例えば「よく分からない」中東情勢(日本では、マスコミすらよく分かっていない)も、ポイントを把握して、過去の歴史に遡って学べば、全体像が見えてきて、理解が進む。
イスラムではシャリーア(イスラム法)が絶対視されており、これが、頻発するテロの1つのバックボーンとなっていること、トルコとイランという「帝国」の復活を目指す2国の対立軸、ギリシャ=人造国家、過去の帝国の存在が世界各地で現代にも大きな影響を与えていることなどは、目から鱗であった。
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