シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2016年1月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784166610549

作品紹介・あらすじ

『シャルリとは誰か?』で私はフランス社会の危機を分析しましたが、11月13日の出来事〔パリISテロ〕は、私の分析の正しさを悲劇的な形で証明し、結論部の悲観的な将来予測も悲しいことに正しさが立証されてしまいました――「日本の読者へ」でトッド氏はこう述べています。

本書が扱うのは昨年一月にパリで起きた『シャルリ・エブド』襲撃事件自体ではなく、事件後に行なわれた大規模デモの方です。「表現の自由」を掲げた「私はシャルリ」デモは、実は自己欺瞞的で無意識に排外主義的であることを統計や地図を駆使して証明しています。

ここで明らかにされるのはフランス社会の危機。西欧先進国にも共通する危機で、欧州が内側から崩壊しつつあることに警鐘を鳴らしています。ユーロ、自由貿易、緊縮財政による格差拡大と排外主義の結びつきは、ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』にも通じるテーマで、前著の議論がより精緻に展開されています。

みんなの感想まとめ

現代フランス社会の危機を深く掘り下げた本書は、表面的な事件の分析を超え、宗教的危機がもたらすイデオロギーの変化に焦点を当てています。著者は、シャルリ・エブド襲撃事件後のデモが抱える自己欺瞞や排外主義的...

感想・レビュー・書評

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  • 本書を駆け足で読み、エマニュエル・トッド来日講演を聴きに行った。サブタイトルが原題では「宗教的危機の社会学」であり、文庫化に際してこちらがメインタイトルとなったことから分かるように、トッドはシャルリ・エブド事件やそれに続くイスラム系組織によるテロを主題にしているのではない。現在のフランスが置かれた状況から、普遍的な公式を導き出そうとしている。その答えが「宗教の危機がイデオロギーの危機に転移する」ということだという。

    19世紀にパリ盆地においてカトリックのおよそ半分が消滅するという宗教的危機があった時には、フランス革命という人類史に残るイデオロギーの大転換があった。

    20世紀初頭には北部ヨーロッパにおいてプロテスタンティズムが危機に陥ると、ドイツやオランダを中心にナショナリズム、ファシズムが勃興した。

    そして今、20世紀後半から21世紀にかけてヨーロッパの多くの地域で、カトリックもプロテスタントもその生き残りすら消えてゆこうとしている。この宗教的危機に呼応するかのように、共産主義の崩壊が起きている。

    この仮説を、トッドは丁寧な調査と膨大な資料によって裏付けている。

    シャルリ事件後のフランスはイスラムに対するヒステリックな反応が目立つのだが、トッドはそれに異を唱える。

    フランスにおけるイスラム教徒の割合はわずか5パーセントに過ぎないのにもかかわらず、フランス国民の多くが異常なオブセッションを〜無意識のうちに〜感じている事が問題なのだという。

    また社会の不安要因は経済(格差の拡大や貧困)だけではなく、宗教の空白という要素も大きいといい、そのふたつが重なると、特に危険が増すという。

    高い失業率が続き、宗教も消滅しつつあるフランス社会は非常に不安定であり、まさに今、大きなイデオロギーの転換が起きる可能性があるということだろう。

    フランスをはじめ欧州の今後を注視したい。

  • タイトルがキャッチーなので気軽に読み始めたら、中身ががっつりお勉強テイストだったw
    このテイスト、大学卒業以来・・・wがんばるw

  • イスラム諷刺画がISの怒りを招き、テロ事件のターゲットになったフランスの「シャルリ・エブド」。15年1月は「私はシャルリ」とのプラカードを掲げる400万人の大デモが行われた。暴力に対する民主的なアピールとして報道されているが、イスラムを冒涜する自由とは何なのか!?実は排他主義の横行ではないのか。フランスの社会の宗教的な背景から詳細に分析し、デモ参加者はどのような人たちか?を追求する。それは大革命以降の脱キリスト教、反ユダヤとの繋がりの中で、著者が”ゾンビ・カトリシズム”と呼ぶ市民たちが浮かび上がってくる。イスラムとキリスト教の対立ではなく、イスラムと無神論との対立であり、脱キリスト教が最も進む世俗国家ならではの問題なのだということが痛切に感じられる。歴史人類学者・家族人類学者による豊富な各地域別の統計に基づく実証を伴った説得力に富む主張である。

  • 陳腐なシャルリ事件解説書かと思ったらかなり硬派なフランス社会論だった。フランス一般の捉え方に異を唱えるタイプの本なので最初の一冊には向いていない。ただ、読む価値はある。
    そもそもライシテの歴史を踏まえた「俺たちが政教分離を守っているのだからお前らも守れ」という主張が正しいのかを検証し、またデモ参加者の地域が都市部に偏っていることを論証する。(フランスでは都市と地方の格差が深刻である)
    とはいえ、新書の紙幅上仕方ないが、反EUなど従来の主張を繰り返して紙幅を費やし、かつアプリオリにされている部分が多く論証が足りておらず、また主として人口統計に依存した切り口では物足りない部分が多いため、全体としてざっくりとし過ぎている印象が強い。

  • フランスにおけるシャルリについて書いた一冊。

    シャルリとは何か(「表現の自由」を掲げて行われた大規模な連帯デモやそのスローガン)についてよくわかった。

  • 前提知識が少なく読むのが大変だった。その地域に根差す宗教観や歴史までとらえていないと表面的にはわからない現象だった。

  • シャルリ・エブド襲撃事件を受けてフランス各地で行われた「私はシャルリ」デモ。「表現の自由」を掲げたこのデモが、実は排外主義的であることを明らかにし、排外主義がヨーロッパを内側から破壊しつつあると警鐘を鳴らす。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40236770

  • 宗教というものは、一部の特権階級がその他の人々をコントロールするために発明されたもの。神話や信仰は知る価値のあるものだけど、それらはについて考える時に権力者の道具であることは常に意識する必要がある。

    「私はシャルリだ」運動は、社会的、歴史的な平等から出たものではなかった。あれは「表現の自由」の皮をかぶったイスラムフォビア、イスラム排斥運動だった。
    当時、イスラム教徒に対して踏み絵のようなことがフランスで行われていたとは知らなかった。

  • ウクライナ問題に関する著者の見解がユニークなものだったので、こちらも読んでみた。

    これは2015年1月におきた『シャルリー・エブド』事件にともない起きたデモなどフランスの反応についての分析。

    原著の出版は、その数ヶ月後であることから、エッセイとか、インタビューを集めたものかと思って、読み始めたら、一冊を通してなんか堂々した論考となっている。

    まさに社会学的、人類学的な論考で、フランスの地域ごとの価値観の分布とデモへの参加率から、どういう人がデモに参加したのかという推計から始まるところが圧倒的。

    脱宗教の度合い、平等主義、権威主義の度合い、社会階層、年齢による差など、定量分析を踏まえながら、大胆な仮説を提案。

    著者は、『シャルリー・エブド』事件への抗議デモに参加した人は、「言論の自由」という名のもとに、本当は(集団的な無意識レベルでは)、反イスラム的な動機で参加している。この動きは、反ユダヤ、人種主義、全体主義に向かう危険性をもっていると主張。

    そして、それはフランスに限ったことではないというか、ヨーロッパ全体で起きていることの一つの断面でしかないとする。

    この本がフランスででると、非難があつまったようだが、11月には、ISによる同時多発テロがパリでおき、そしてそれへのフランス人の反応をみるかぎり、著者の主張が残念ながら、裏付けられたとする。

    ヨーロッパにおけるポピュリズム的な動きがなかなか理解できずにいたのだが、そこにアプローチするための一つの大きな視点が得られたように思う。

    著者は、フランスより、日本のほうが、自分の言っていることを理解してくれる、とお世辞かどうかわからないが言っている。そこはどうかわからないのだが、私は、著者の意見をそのままに受け止めるわけではないが、一つ一つ、なるほどな議論だと思った。

    それは別に日本的な価値観が著者と近いというより、問題との距離感が違うだけではないかとも思うが、もともとの文化の宗教との関係がヨーロッパとは違うという視点はなるほどと思った。

  • フランス人は面倒くさいと良くわかった

  • おそらく地の文章がそうなのだろうけれど、著者独特の言い回しもあって非常に読みにくく苦労しました。がっつりした専門書ではない容れ物てわ類書もそれほど多くないだけに残念だ。この本でも指摘されているように対抗勢力あるいは、他者に対して寛容であることがこれから本当に大切であると感じました。68

  • 翻訳,しかもフランス語の翻訳であることもあって読みにくいというのが率直な感想.自分の理解力不足ももちろんだけど.
    国内に住んでいる人々と移民の「同化」というのはこの国にいるとわかりにくいのだけど,著者はそこに希望を見出しているように読める.

  • あまりに自分には読みづらいため、読んだことにする。

  • 社会

  • 2016.02.06 朝活読書サロンブログより

  • 実にお恥ずかしい。
    シャルリエヴド紙をもう既に忘れかけておる末端の日本人
    なんですが。
    忘れた頃にしか古書は入手出来ひんのです。

  • フランス国内向けなので、地名とかピンとこない所も多いけど、フランスで起きているライシテを隠れ蓑にしたイスラム排除は、日本の嫌韓嫌中とよく似ている。その理由も、急激な世界との融合により自分たちの失われつつある昔の文化や価値観への郷愁で、高齢化がその一因でもあること、などよく似ている。世界中どこも同じ問題を抱えてるなとつくづく思う。

  • 20180111〜0131 2015年1月の「シャルリ・エブド」襲撃事件を受けてフランス各地で行われた「私はシャルリ」デモ。「表現の自由」を掲げたこのデモは、実は自己欺瞞的で無自覚に排外主義であった-- と、著者は断じる。私も、これら一連の事件とデモは、とても違和感を覚えた。この事件の背景にある事象ーー宗教の衰退と格差拡大による西欧の没落について分析している。
    以下、私の感想;
    訳文がやや硬いせいもあるが、読むのに少し難儀した。この回りくどさはさすがフランス人の文章というべきか。
    崩壊しつつあるカトリシズムを「ゾンビ・カトリシズム」と述べているが、ゾンビという単語が先走ってしまい、色物のように感じてしまった。
    著者はEU統合に懐疑的で、ドイツが大嫌いだということはすごく感じた。

  • 2017/12/19読了
    2015/1に発生したシャルリ社襲撃事件に端を発した「私はシャルリ」デモに対する筆者の違和感を通じて、現在のフランス、ヨーロッパ、EUに潜む差別意識を分析した本。
    ・文章が読み辛い
    他の方も書いているが、文章が理解し辛い。フランス語だからなのか、訳がイマイチなのか、二重否定の多用や、回りくどい文が多く、意図を読み取るのに苦労する
    ・フランスの歴史/政治的背景の知識が必要
    フランス内の地域毎に歴史/政治的背景を絡めて分析を行なっているので日本人には辛い。例としては極端だが、フランス人に戊辰戦争における薩長土肥と会津の確執について理解した上で現代日本の政治的な分析を理解しろ、というレベル。加えてフランス内のカソリックとプロテスタントの関係性や宗教心も絡むので大変。
    ・ドイツ=EUは悪であるの前提
    筆者の前著のドイツ帝国が-は未読だが筆者がドイツ=EUが嫌いなのはよく分かる。今やメルケルはドイツ国内の政治で苦労する有様なのに(この辺出版時期と読んだ時期のズレがある)。
    ・多元的分析
    フランス内の地域/教育レベル/宗教/風土など多元的分析を行なっているので、シャルリ運動の本質がよく分かる。上記のハードルがきついが。

    最近、特に東欧で右翼(ナショナリズムを煽る勢力という意味での)が伸長しているが、EU=汎ヨーロッパに憧れつつも平等主義が抱える差別意識が噴き出していると考えると分析の一部は当たっていると思う。なにより、ファナティックな流れに逆らって上梓した辺り、フランス人の面目躍如と言えるだろう。

  • 力強い一冊。とにかく一行、一言に力がこもっていて読む方も力負けしないようにしないと折れてしまいそうになる。
    自分は「私はシャルリ」に違和感を覚えたが、その違和感がなんだったのかが明確に記されていてわかりやすい。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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