日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか (文春新書 1060)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610600

作品紹介・あらすじ

昭和初期の北樺太石油、満洲国建国時の油兆地調査、そして南方油田。そこには確かに石油があったはずなのに、日本はモノにできなかった。石油技術者の手記を読み込んで明かされる71年目の真実、今に活かすべき教訓とは。第一章 海軍こそが主役第二章 北樺太石油と外交交渉第三章 満洲に石油はあるか第四章 動き出すのが遅かった陸軍第五章 対米開戦、葬られたシナリオ第六章 南方油田を奪取したものの第七章 持たざる者は持たざるなりに

感想・レビュー・書評

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  • 【技術とは,ハードだけで成り立つものではない。何のための技術かというソフト面を追求することも重要なのだ】(文中より引用)

    戦前の日本のエネルギー政策、特に石油との関係に光を当てながら、意思決定や思考法にまつわる様々な問題点を指摘した作品。著者は、三井物産で一貫してエネルギー関連業務に携わった岩瀬昇。

    石油というフィルターを通して見た『失敗の本質』といった趣きの一冊。嘘が数字を作り願望が現実に優先する様子などからは、過去の出来事だからと済ませてはいけない教訓が満載かと。

    少し硬い文章ですが☆5つ

  • 油断国断

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 海軍こそが主役/第2章 北樺太石油と外交交渉/第3章 満洲に石油はあるか/第4章 動き出すのが遅かった陸軍/第5章 対米開戦、葬られたシナリオ/第6章 南方油田を奪取したものの/第7章 持たざる者は持たざるなりに

  • 東2法経図・6F開架:568A/I96n//K

  • 数字は嘘をつかないが、嘘は数字を作ると言う言葉がでてきたが、嘘で積み上げられた石油の産出量や需要量でWWIIの開戦が決定された。事業計画でも根拠ないが、事業規模ありきで数値目標を積むこともあるとは思うが、責任をもって遂行できる数値目標を立てるべきだと思った。

  • 歴史

  • そもそも陸軍は石油をあまり使わなかったので関心が薄かったというのが原因。
    軍隊というのは保守的なので新しい流れについていけないのでしょう。

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/51949217.html【書評】『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』〜エネルギー戦略がなければ国を危うくする
    http://naokis.doorblog.jp/archives/reading_salon_20161222.html【朝活読書サロン】2016年総決算(12月22日) : なおきのブログ

    <目次>
    はじめに
    第一章 海軍こそが主役
    第二章 北樺太石油と外交交渉
    第三章 満洲に石油はあるか
    第四章 動き出すのが遅かった陸軍
    第五章 対米開戦、葬られたシナリオ
    第六章 南方油田を奪取したものの
    第七章 持たざる者は持たざるなりに
    主な引用・参考文献

    2016.02.16 HONZより
    2016.04.01 読了
    2016.12.22 朝活読書サロンで紹介する。

  • あの戦争の要因の大きな要因のひとつとして、ABCD包囲網による石油枯渇ということが言われているが、実は満州からは戦後大油田が発見されているわけで、確かにこれが見つかっていたら歴史は大きく変わったものになっていたかもしれない。でも、仮にそうだったら世界と日本はどうなっているのだろう、という方向にも想像力を働かせてしまった。

  • ◆日本軍の組織としての問題点は、彼らが喉から手が出るほど欲しがった石油を定点に見ると、違った色彩で見える。自省心と虚心坦懐さのない組織は自壊していくのだと…◆

    2016年刊行。
    著者は物産子会社の三井石油開発の元常務執行役員。


     まず本書はタイトルのことだけを書くに止まらない。つまり、対米英開戦の直接要因になったとされる石油枯渇が、軍・政の様々な失政の帰結である点を、石油を定点に露わする書だ。
    つまり、
    ① 戦後1950年代当時の中国の技術ですら存在が確認できた満州地区の油田を、日本が発見・掘削し得なかった技術的・政治的理由
    に加え、
    ② 北樺太の油田の開発・利用機会を外交的悪手で喪失。
    ③ インドネシアの石油施設の占領と、その利用・活用とは違うことを、海軍は失念(輸送護衛戦略の欠落)。
     さらには、
    ④ 戦前、特に1930年代の油田発見や掘削技術に関する世界的潮流に言及し、日本がキャッチアップできていなかった内情
    とともに、
    ⑤ その理由としての軍・官僚の無謬性の悪癖、
    あるいは、
    ⑥ その帰結としての対米戦争の帰趨=必敗に関する軍の調査レポート(つまり猪瀬直樹が発掘した「総力戦研究所」以外にも、対米開戦必敗を報告したグループが存在した)と、
    ⑦ 米独はおろかソ連にすら「化学」「石油化学」の面で大きく見劣りしていた事実
    が開陳される。

     正直、③や⑤はこれまで散々語られてきたことで意外性はないが、石油という観点で見ると違う印象が生まれる面もある。石油不足=戦わずして負けるというほど石油に固執していたのだが、それを支える技術や思考が全く追いついていなかったこと、軍人らが組織体としてその事実を虚心坦懐に踏まえて対応策を練っていなかったことが透けて見える。

     さらにいえば、奇形的に一部の技術面では優れていたものの、日本は総合技術力、技術を支える人的基盤の層が薄弱である。これは抽象的には意外ではないが、これも②⑦のように、石油という切り口で見るのは新鮮だ。

     が、ここで一番印象的なのは⑥である。個人的に新規ネタということもあるが、正しい情報を上げても、受領側に虚心坦懐さがなければ、そして結論ありきの議論の不毛さに無自覚であれば全く価値を持たない。こんな様を見るにつけ、どうしようもないなぁと。

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著者プロフィール

エネルギーアナリスト。1948年、埼玉県生まれ。埼玉県立浦和高等学校、東京大学法学部卒業。1971年、三井物産に入社後、2002年より三井石油開発に出向、2010年より常務執行役員、2012年より顧問、2014年6月に退任。三井物産に入社以来、香港、台湾、二度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクでの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。現在は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」の代表世話人として後進の育成、講演・執筆活動を続ける。
著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』『原油暴落の謎を解く』(以上、文春新書)など。

「2022年 『武器としてのエネルギー地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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