国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
3.87
  • (48)
  • (82)
  • (47)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 631
感想 : 74
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610693

作品紹介・あらすじ

これは愛国心か、それとも危険思想か――。 自衛隊初の特殊部隊、海上自衛隊「特別警備隊」の創設者が語る「国のために死ぬ」ことの意味。 新安保法制が施行され、自衛官の「戦死」が現実味を帯びてきた。とくに特殊部隊員は明日にでも国のために死ななくてはならない。 だから、「他国とのお付き合い」で戦争するなんてまっぴら御免。 この国には命を捧げる価値があってほしい。 死と背中合わせで生きてきた男の誓いと祈りがここにある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1993年日本海で北朝鮮の不審船と自衛隊イージス艦「みょうこう」とが遭遇した時、艦橋に航海長として任務に就いていた著者が自衛隊や、軍事行動の本質について述べる本。タイトルからはちょっと過激な思想の本かという印象を受けますが、それはいい意味で完全に裏切られます。
    自衛隊は軍隊ではないとか、スーダンは戦地ではないとか、建前論に終始する政治家の言葉とは異なり、自衛隊や軍事行動の本質を単刀直入に切り込みます。著者が自衛隊は戦闘行動を目的とした組織である事を認めた上で述べる次の一文は建前論ではなく、すっと腑に落ちました。「軍事行動とはあらゆる解決策を模索し、懸命に和解を企図したにも関わらず、万策尽きてなお、国家としてどうしても譲れないと判断した事柄についてのみ発動されるもの。どんなに美しい言葉で飾ったところで、国家がその権力を発動し国民たる自衛官に殺害を命じ、同時に殺害されることをも許容させる行為。ゆえに権力発動の理由が『他国とのおつきあい』や『〇〇大統領に言われたから』などというものであってはならず、日本の国家理念に基づくものでなければならない」
    部下の隊員の命を預かる幹部自衛官の心得を垣間見ることができる本でした。
    冒頭に触れた北朝鮮不審船事件の際の艦橋内における緊迫のやり取りを収録した本書前半部も読み応え十分です。

  • 先日読んだ著者の小説『邦人奪還』がリアル過ぎてある種衝撃を受けたため、本書を手にした次第。
    海上自衛隊に特殊部隊を創設した張本人の体験談、自衛隊退職した後のお話、何れも凄すぎるエピソード。センセーショナルなタイトルだけど、帯にあるように右でもなければ左でもない、危険な政治思想とも関係ない。
    著者のストイックな思想とそれを実現した生き方が抑えられた文体で語られる。
    だからなのか心の奥深くを抉られるような衝撃を今回も受けてしまった。

  • 北朝鮮による能登半島沖不審船事件を契機として、海上自衛隊に設立された「特別警備隊」。この設立に一自衛官として関わった著者が、不審船事件の生々しい模様や、「特別警備隊」の激しい訓練の様子を題材としながら、「論理を超えた世界で、生命を賭す」ということが、どのようなことかを伝える。

    もちろん、本書の冒頭に描かれる不審船事件のドキュメントや、自衛官の職を辞した後にミンダナオ島で20歳そこそこの女性海洋民族と常軌を逸したようにも見える激しいトレーニングを繰り広げるさまなどは、読み物として息を付かせぬ勢いでこちらに迫ってきて、大変面白い。

    その面白さとは別に、「特別警備隊」の隊員たちが自らの生命を賭して任務にあたる様子からは、我々の日常的な生活には存在しないような論理を超えた深淵が見える。自衛隊という存在に対して、政治的な評価はカッコに入れた上で、この深淵の一端に書籍を通して触れられるのは貴重な体験のように思える。

  •  とても熱い人が真剣に考えを吐露した本で、生ぬるい自分の気持ちが引き締まる思いと、もっと広い視野或いは別の視点があってもいいのではないか、との両方の感想を持った。
     作者は、陸軍中野学校出身の父親の影響をいつのまにか受けて海自に入り、やがて北朝鮮不審船事件に現場で遭遇することで本物の戦闘を知り、特殊部隊創設、自衛隊退職後のフィリピンでの訓練などを通し、自分の生命を賭して国を守ることを考えてきた。
     頭で考えた理屈ではなく、生死の境を見るような訓練や現場を通しての思想なので、実に厳しい。しかし、そこには本当に国や国民を想う心があるので、説得力が増す。学者や評論家の意見ばかりではなく、時には本書のような現場を知る人の考えも聞くべきであると思う。

  • 海上自衛隊創設者の日本への強烈なメッセージ。「なぜ先祖が子孫のために残した掟を捨てて、他人が作った掟を大切にしているのか?」この問いに答えられる奴はいるのか?

  • 特殊部隊創設者によるエッセイ。なぜ特殊部隊が必要だったか、どのような考えをもって立ち上げたのかがよくわかる。筆者の自衛隊の評価も問題点も、率直に語っており、強烈な軍国主義者ではなさそうである。そして、ミンダナオでの修行が強烈だ。常に実戦を意識している海洋民族の弟子と死ぬ寸前まで訓練をする。軍人とは何か、を考えるうえで非常に参考になる一冊だ。

  • タイトルや帯の内容からは国粋主義的な偏った内容の展開かと思ったが、そういう単純な思想の左右の話ではなく、一般人向けに書かれた軍務に携わる人間の世界のリアリティから読者に考えさせるテーマを投げかけてくる、そういう凄みのあるものであった。あまりなじみのない自衛隊について、様々な見方ができ、勉強になった。最近のニュースもまた違った視点で見ることができるかもしれない。

  • 永野修身
     戦うも亡国、戦わざるも亡国。戦わずしての亡国は、魂までも喪失する民族永遠の亡国なり。たとえ一旦、亡国となろうとも、最後の一兵まで戦い抜けば、我らの子孫は祖国護持の精神を受け継いで、必ずや再起三起するであろう

    日本という国は、何に関してもトップのレベルに特出したものがない。ところが、どういうわけか、ボトムのレベルが他国に比べると非常に高い。優秀な人が多いのではなく、優秀じゃない人が極端に少ないのだ。日本人はモラルが高いと言われるが、それは、モラルの高い人が多いのではなくて、モラルのない人がほとんどいないということである

    軍隊にはその国の底辺に近いものが多く集まっている。要するに軍隊はその国の底辺と底辺が勝負するものなのである

    現に、自衛隊が他国と共同訓練すると、「なんて優秀な兵隊なんだ。こんな国と戦争したら絶対に負ける」と、毎回必ずいわれる

    ミンダナオ島 フィリピン南部 フィリピンの1/3
    ミンダナオ島だけは、島民の激しい抵抗により植民地化が進まず、古くから定着していたイスラム教が勢力を保ち続けた

    自分が大切だと決めたもののために何かを諦める

    殺し、殺されながら共存している
    そのためのルールがある
    全部を生き残させようとしたら全滅する
    必要以上に殺してしまえば、自分が飢える

    ドイツの名将ロンメルは、「訓練死のない訓練は、戦死のない戦闘と同じで、芝居と同様である」

  • 【海自特殊部隊創設者が語る「国ために死ぬ」ことの意味的組織論】数々の実戦を経験した海上自衛隊特殊部隊創設者が語る「国のために死ぬ」ことの意味と、「兵士を死なせる」国家への願い。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    新安保法制が施行され、「自衛隊員の戦死」が現実味を帯びてきた。しかし、今の日本という国家に、「死ね」と命じる資格はあるのだろうか。自衛隊でも、もっとも死ぬ確率が高い特殊部隊の創設者が、自分の経験をもとに「国のために死ぬ」ことを、とことん突き詰めて考えた衝撃の手記!

全74件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

伊藤祐靖(いとう・すけやす)
元海上自衛隊特別警備隊先任小隊長。昭和39(1964)年、東京都生まれ。日本体育大学卒業後、海上自衛隊入隊。防大指導官、「たちかぜ」砲術長等を歴任。イージス艦「みょうこう」航海長時に遭遇した能登沖不審船事件を契機に、自衛隊初の特殊部隊である特別警備隊の創隊に関わり、創隊以降7年間先任小隊長を務める。平成19(2007)年、退官。拠点を海外に移し、各国の警察、軍隊などで訓練指導を行う。著書に『国のために死ねるか』(文春新書)、『自衛隊失格』(新潮文庫)、『邦人奪還』(新潮社)などがある。

「2023年 『日本の特殊部隊をつくったふたりの“異端”自衛官 - 人は何のために戦うのか! -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊藤祐靖の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スティーブン・ピ...
塩田 武士
エラ・フランシス...
ピーター ナヴァ...
リンダ グラット...
スティーブン・ピ...
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×