巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610792

作品紹介・あらすじ

巨大化し、グローバル化し続けるアート市場。現代アートに熱い視線が注がれる中、中国、ロシア、中近東など新興国が台頭する一方で、日本は大きな遅れをとっている。アートは生き馬の目を抜く「肉食系ビジネス」だ。マドンナも、ディカプリオも、ビル・ゲイツも……セレブやビジネス界の大物コレクターがしのぎを削る舞台裏に、華やかなオークションの裏の裏まで知りぬいたサザビーズジャパンの前社長が招待する。 世界の二大オークション会社、サザビーズとクリスティーズ。サザビーズには50億~100億円の絵画を購入できる富裕層のリストがある。プライベートジェットで大富豪に営業をかける一方で、出品作を探す。オークション会社のビジネスチャンスは「3D」。death(死)、divorce(離婚)、debt(負債)だ。贋作やナチスの略奪品ではないか名画を「身体検査」し入念な準備を経て、名画はオークションにかけられる。2012年、ムンクの「叫び」が当時の史上最高落札価格を更新した。息詰まる一騎打ちの心理戦。明かされなかった買い手の正体は誰だったのか? 駄作買いの日本人が嘲笑された時代もあったが、高騰する作品はどこが違うのだろう。 絵画の世界にも「売れる色」と「売れない色」があり、作家の死後30年たった時に「時の試練」に耐えて古典になれるかどうかが決め手である。アンディ・ウォーホルはほぼ10万ドルで買える作家だったが、2002年頃から評価が急騰、100億円もの値段で落札されるようになった。100億円もの高値を生む作家や作品には恐るべき「共感力」があると著者は指摘する。 「資産の20%はアート」とも言われ、国難やインフレにも強く、富裕層やセレブを虜にしているアート。「アートは人間そのもの」と語る著者が知られざるアートの世界の裏側を明かす。

感想・レビュー・書評

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  • アート市場やオークションに至る流れを紹介してくれる。アート市場は物好きの道楽ではなく、立派な産業であり、ビジネスとなっていることを知らされる。

  • サザビーズ・ジャパン前社長の著者が、アート市場の裏側について語る本。
    ・金で取引される対象としてのアートという視点では[ https://booklog.jp/item/1/4760139966 ]にもつながる。また文化的に価値のあるものの流通に関わる人の視点という意味では[ https://booklog.jp/item/1/4582762441 ]にも。ちなみにササビーズは元々は稀覯本のオークション会社。
    ・オークション会社のビジネスチャンスは「3D」(p47)。death(死去)、divorce(離婚)、debt(負債)。要は資産の処分されるタイミング。
    ・来歴調査では、盗難品の可能性がないかも調べられる。1934~1945年の来歴に空白があるとナチス略奪品の可能性があり、元の所有者と話をつけなければならない。ロックフェラー等、元の所有者によってはプレミアがつく。ちなみに日本人コレクターの所蔵歴はプレミアにならないらしい。美術の知識以外に、法務、財務、コンプライアンス部門との協力が必要。
    ・美術品に訪れる3回の「時の試練」について(p89)。買って帰った一週間ほど後。その作家の世代が第一線から退く時。最初の所有者が亡くなる時。3つめについては「その時点で、コレクター、美術館が欲しがる作品であれば、それは普遍的な価値を持った証である。それが数世代続けば、作品は古典になる。」
    ・第4章「資産としてのアート」では企業のアートアーカイブが紹介されている。景気の良かった時代に日本企業が名作を買い漁って話題になったりしたが、現在は「売らない、貸さない、買わない」になっているという。
    ・中国の経済的台頭にあわせ、中国美術品の価格高騰が起きている。しかし当の中国では文化大革命により美術品が残っていないため、陶磁器・書画の市場への供給源は日本であるという。一方日本の古い美術は、サザビーズ、クリスティーズでの存在感はほとんどなく「サザビーズにいたっては二〇〇七年に日本美術部門さえ廃止した。(p240)」。

  • 2018年5月12日紹介されました!

  • サザビーズやクリスティーズなどの「オークション」についてから始まり、資産としてのアートについてまでまさに「アートの裏側」を垣間見ることのできる一冊。

    自分もここまでのアートコレクションをすることはできないけど、自分の手の届く範囲で「自分の直感」を信じたコレクションをすることが一番良いのだということは改めて実感できたかな。

  • 世界全体で7兆円とも言われる巨大なアート市場では、サザビーズやクリスティーズに代表されるオークションが大きな役割を果たしている。有名な絵画やあるいは一見意味不明な現代アート作品が高額で落札されるとニュースにも取り上げられるので、オークションについてのイメージは誰でも何かしら持っているだろう。でも、そんな華やかさはオークションのほんのひとつの要素でしかない。オークションに至るまでにはさまざまなドラマがある。

    本書では、サザビーズジャパンの前社長が、オークションの舞台裏やアート産業について紹介している。本書に書かれたエピソードはどれも面白くて、どんどん先を読みたくなる。アート産業にかんする読み物はたくさんあるけれど、まずは本書を読んでみると良いだろう。

  • 面白かった。

  • オークショニアの仕事はいろんな仕事の混ぜ物のような感じだということ。

    売り手としての美術品コレクターに対しては長い年月をかけて関係性を築いて売り物を入手する。相続などのタイミングで売り物が出る ⇒不動産の営業マン

    VIPの買い手は入口で顔パスができるようにマネージャークラスが会場の入り口に交代で立つ ⇒高級車ディーラーの販売店と同じやり方

    美術品のオーソライズを行う。 ⇒美術員としての知識

  • 石坂泰三のお孫さんである元サザビーズ日本支店長の美術本。
    こんな貧富の差を前提とした世界は滅ぶが良い。、

  • ・オークションは3Dビジネス
    death(死去),divorce(離婚),debt(負債)のタイミングで遺産や資産が処分されるから

    ・オークションの付加価値は
    ①匿名性
     出品者は身元を隠したい(持っていることがばれると自分たちが資産家であることがばれるから)
    ②信頼性
     本物かどうか、ナチスの盗品じゃないかを徹底的にオークション会社がリサーチする
    この2つがC2Cのオークション(ヤフオクやメルカリなど)と違うところ


    ・評価される作家の条件:その作家抜きには後世の美術を語れないか

    ・爵位のないアメリカでは美術館館長が最高の名誉
    →そのために、最初に10億ドルの小切手を用意し、在任中に最低100億円くらいを寄付する

    ・日本は文化の中間層がない。独創性よりも効率重視になる(だからせっかく一流の建築家がたてた建物にも、張り紙などをばんばんする)
    →中間層を増やすにはアートに接する機会を増やすしかない。
    ex. MITでは、大学所蔵の3000ドル以下の作品を1年間学生に無償貸し出ししている

  • 美術品競売会社サザビーズジャパン代表取締役による、競売の実態を紹介した一冊。なぜ競売額が高騰するのか、美術作品の資産としての意味、競売会社はどんな仕事をしているのか、まったく知らない世界が広がっていた。非常に面白かった。

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