サイコパス (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610945

作品紹介・あらすじ

平気でウソをつき、罪悪感ゼロ……そんな「あの人」の脳には秘密があった!外見はクールで魅力的。会話やプレゼンテーションも抜群に面白い。しかし、じつはトンでもないウソつきである。不正や捏造が露見しても、まったく恥じることなく平然としている。時にはあたかも自分が被害者であるかのようにふるまう。残虐な殺人や善良な人を陥れる犯罪を冷静沈着に遂行する。他人を利用することに長け、人の痛みなどこれっぽっちも感じない。……昨今、こうした人物が世間を騒がせています。しかも、この種の人々を擁護する人も少なくありません。もともとサイコパスとは、連続殺人鬼などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念です。しかし、精神医学ではいまだ明確なカテゴリーに分類されておらず、誤ったイメージやぼんやりとした印象が流布していました。ところが近年、脳科学の劇的な進歩により、サイコパスの正体が徐々に明らかになっています。脳内の器質のうち、他者に対する共感性や「痛み」を認識する部分の働きが、一般人とサイコパスとされる人々では大きく違うことがわかってきたのです。しかも、サイコパスとは必ずしも冷酷で残虐な犯罪者ばかりではないことも明らかになってきました。大企業のCEO、政治家、弁護士、外科医など、大胆な決断をしなければならない職業の人にサイコパシー傾向の高い人が多いという研究結果もあります。 また、国や地域で多少の差はあるものの、およそ100人に1人の割合で存在することもわかってきました。そればかりか、人類の進化と繁栄にサイコパスが重要な役割をはたしてきた可能性すら浮上しているのです。最新脳科学が、私たちの脳に隠されたミステリーを解き明かします。

感想・レビュー・書評

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  • 人類が持っている性質。

    それは天が与え給うた、
    という詩的なものでは
    なく、

    種の存続に便利だった
    からそうなっているに
    すぎない。

    たとえば倫理や道徳は
    集団を形成することを
    生存戦略とする人類に、

    後付けで出現したもの。

    つまり、愛情や友情が
    「美しい」のも、

    種の存続に都合がいい
    からにすぎない。

    人格は遺伝や生育環境
    に由来する脳の形成に
    依るもの。

    つまり、前頭前皮質と
    扁桃体の接続の強弱や、

    脳梁の形状や灰白質の
    体積など、

    いたって物理的な性質
    に依るもの。

    たしかに認知症や頭の
    怪我で人格が変わって
    しまうと言いますよね。

    善悪とは?自分とは?
    という根源的な問いに、

    ひとつの明確な回答が
    示されています。

  • 著者、中野信子さんの作品、初読みになります。
    どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    中野 信子(なかの のぶこ、1975年 - )は、日本の評論家。

    東京都出身。東日本国際大学特任教授。京都芸術大学客員教授。株式会社ビッグベン所属。MENSA元会員。旧名は原信子。学位は博士(医学)(東京大学・2008年)。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    とんでもない犯罪を平然と遂行する。ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう…。脳科学の急速な進歩により、そんなサイコパスの脳の謎が徐々に明らかになってきた。私たちの脳と人類の進化に隠されたミステリーに最新科学の目で迫る!

    ---引用終了


    気になった箇所は、

    p6~p7

    100人に1人くらいの割合でサイコパスがいると言えます。

    結構いますねえ。


    p112~p115

    勝ち組サイコパスとして、数名挙げています。

    織田信長(1534~1582)
    毛沢東(1893~1976)
    ピョートル大帝(1672~1725)
    ジョン・F・ケネディ(1917~1963)
    ビル・クリントン(1946~)
    マザー・テレサ(1910~1997)

    この中では、マザー・テレサが、最も意外ですね。
    本書には、次のように書かれています。

    ---引用開始

    マザー・テレサは、援助した子どもや、彼女の側近たちには冷淡だったという報告が複数なされているからです。たとえばイギリスの作家クリストファー・ヒッチェンスが著書『宣教師の立場』でマザー・テレサが救った子どもたちへの不十分な、残酷とも思える扱いを指摘しています。博愛主義者とは、特定少数の人間に対して深い愛着を築けないサイコパスなのかもしれません。

    ---引用終了


  • 世間一般で言う「サイコパス」と脳科学的な側面からの「サイコパス」の意味合いの違いを、実際のデータから見出すプロセスは見ものです。
    また、身近な自分と本書の内容を照らし合わせると、この人とは距離を置くべきなのかと考えることもでき、参考になりました。

  • 弁が立ち、良識ありそうな人が、えっ?と思う様な嘘(前言とは真逆な考え)をしらっと話したり、顰蹙を買う様な行動を取ったりする事がある。指摘されると恥ずかしいとは思わない等と開き直る。利に聡く、さぞかし頭が良いのだろうと思うと実際は単なる受け売りだから突っ込み何処満載。しかし当の本人は自信満々。サイコパスと言うと犯罪絡みと思っていたから思いもしなかったが近くにも存在する人達かも知れない。周りの人達は性格とか、育ち方の違いとかと言い敬遠してしまうが、それは脳が関係しているのだと知ると思いは複雑だ。

  • 読んでみて自分はサイコパスではないとは思いました
    サイコパスについていろいろ研究はされてるみたいですね
    脳の各部の名称は見聞きしたことがありますが
    その機能までは頭に入りませんでした
    100人に1人・・・近くにいるのかな~?

  • メディアでおなじみの面白い教授先生という印象だったので、実際読んでみたら思いのほか真面目な内容だった。それでも私たちにもわかりやすいように説いてくれてる……かな(?)。
    私たちが一般的に聞く「サイコパス」=「凶悪犯罪者」というのは彼らの一部分であって、それが上手い方向に進めば大企業のCEOなどの人物にもいると聞いて少なからず驚いた。脳科学の分野から分析しているので、脳の機能の部分で特徴があることをはっきり言っている。
    ただ、過去の犯罪者などの例を挙げてるのはごくわずかで、どちらかと言うと人間の長い歴史の中で必ず一定数彼らのような者が存在することの意味なども論じていて、否定するだけの内容ではなかった。最終章では「サイコパスかもしれないあなたへ」とあって、精神医学会が作成した診断基準なんかも載っている。サイコパスに多い職業、少ない職業のトップ10まで載ってたのには笑ってしまったけども。

  • 中野信子さんの最新作を頂戴したので読んでみる。往年のBOOWYのアルバムで親しい名称だが、深く理解をしてみると実に興味深い。サイコパスとは先天性が強いかなり特殊な脳の状態のことを指していると理解するが、特徴は自己中心的、怜悧、無慈悲、共感心や恐怖心の欠如といったところであろうか。サイコパスを代表する人物たちは残念ながら大量殺人鬼に多く、かつ確信犯でやるので再犯率も高い。これらの人間を社会的に管理するコストは莫大でアメリカでは全人口の4%がサイコパス的傾向を持っていると推定されているらしい。

    ヒッチコックの「サイコ」でイメージが決定的となってしまったサイコパスな方々だが、著者のユニークな分類によると「勝ち組サイコパス」と「負け組サイコパス」がいるらしく、勝ち組サイコパスは魅力的で社交的で機知に富み、口もうまく、周りでカリスマ的人気になる人も多いそうである。そう思うと、確かに、そんな感じで人気の芸能人や商売人もちらほら散見されるように思える。さらに言えば、このように機知に富み、恐怖心のない人間こそがフロンティアを切り開く冒険家(起業家)となって人類社会の発展を生み出している可能性すら言及している。その証拠として、これだけ社会的害悪が強いサイコパス的傾向をもった人間が淘汰されず今日にも一定%存在していることを作者は挙げている。なるほどそうなのかもしれない。

    脳科学者である作者はサイコパスの生理学的なメカニズムを大量の論文から挙げて解説をおこない、その研究成果の一つとして、歴史的人物のサイコパスの可能性に言及している。曰く、毛沢東、スティーブ・ジョブス、ピョートル大帝、ジョン・F・ケネディ、ビル・クリントン、織田信長、そしてなんとマザー・テレサもサイコパス的傾向の強かった人物としての論考がなされているそうである。そうしてみると、上記の"サイコパスによる社会進化説"もうなずけるような気がしてくる。

    さて、勝ち組、負け組サイコパスの分水嶺は「逮捕歴」にあるそうで、逮捕されないでいたり、逮捕されるまでには至らないレベルで"ルールハック"を繰り返し周りを巻き込み続けるサイコパスの研究はなかなか進みずらいらしい(「あんたサイコパスかもしれないから、研究させてください」と言うのはなかなか難しい)。それでも、「道徳のジレンマ実験」(「殺人鬼が村に侵入してきて、みんなで隠れている。その時に赤子が泣き出した時にあなたならどうする?」と問う思考実験)や「アイオワ・ギャンブリング課題」(ハイ、ローそれぞれのリスクとリターンを学習しながら行う賭けゲーム実験)、「ケビン・ダットソンのセフルチェックリスト」などの心理実験を通じてその傾向の強弱は取れるらしく、これらによって、最終章では自分や自分の身の回りにいるかもしれないサイコパスの見分け方やそれらの付き合い方や抑制方法などについて言及をしている。さらに前向きなことにはサイコパスに向ている職業を提示してその希少な能力を有効活用をお勧めをしている。この考え方はなかなか斬新で、確かにADHD等も最近は天才のふ卵器として見直されてる中では、サイコパス的傾向やそのルールハック力やKY力は、硬直化した社会に風穴を開けるように作用させられるかもしれない。大事なことは周りの十分な理解と良い方向に才能を結び付けられる社会的柔軟さなのではないかと思えた。

  • 「あの人絶対サイコバスだよ」とか、サイコパスっていう言葉がよく出てくるし、自分でも使ったことがあるけれど、正確な定義とか全く知らなかった。
    もともと犯罪者の分析をするために使われ始めた言葉だったそうだ。

    サイコパスは扁桃体の機能が低く、恐怖に対する学習効果が低い。だから、人のネガティブ反応に対する共感性が低いから、残虐な行為が行えるのだそう。
    その一方で、生存競争に勝ち抜いてきていることを考えると、人類の繁栄に必要だったとも考えられており、新大陸を探しに行くなど、死ぬ危険性の高いことに対して勇猛果敢に挑戦できる人たちは実はサイコパスだったのではないか。
    そう思うと、いわゆるファーストペンギンになるような人はサイコパス気質があるのかもしれない。

    また、面白かったのが、恐怖などのネガティブ感情を感じないから、罰では行動変容には至らず、インセンティブを上手に与える方だ大事なのだと考えがとても腑に落ちた。

    人口の数%、多ければ4%近くいるとされているサイコパス。
    会社内にも絶対にいるはずなので、そのことを知っておくだけでも対応が変わるような気がした。

  • サイコパスというのは病的概念ではない。中野氏は、サイコパスという概念にまったく疑念を抱かずに、憶測につぐ憶測で非科学的な記述を次々に重ねていく。一般書として、サイコパスとは何かという概念を知るには面白いが、内容は科学的観点が著しく欠ける。著者が科学者であるというのには、大きな疑問を抱かざるを得ない。

  • 脳科学者の著書ということで、もう少し深掘りした内容を期待したが、参考文献などからの引用を整理し、僅かに個人的な見解を付け加えただけの残念な内容だった。

    100人に1人の割合でサイコパスがいるということが冒頭に記述されており、サイコパスの定義や特徴、分類などと併せて考えれば、あの人物はサイコパスに違いないと思ったりもする。

    しかし、参考文献として紹介されているマーサ・スタウトの『良心をもたない人たち』、ロバート・D・ヘアの『診断名サイコパス』に比べると見劣りがする。黙って、参考文献を読んだ方がずっと良いのかも知れない。

    また、サイコパス=犯罪者ではないこと、サイコパスの特徴についての脳科学的なアプローチは理解出来たが、サイコパスと我々はどう付き合うべきなのかについては殆ど触れられていないのが残念。

    どうして、この程度の作品がベストセラーになるのか摩訶不思議。

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著者プロフィール

脳科学者、医学博士、認知科学者。1975年、東京都に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を活かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。著書に『サイコパス』『不倫』(ともに文藝春秋)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『脳の闇』(新潮社)などがある。

「2023年 『賢くしなやかに生きる脳の使い方100』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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