サイコパス (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 214
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610945

作品紹介・あらすじ

平気でウソをつき、罪悪感ゼロ……そんな「あの人」の脳には秘密があった!外見はクールで魅力的。会話やプレゼンテーションも抜群に面白い。しかし、じつはトンでもないウソつきである。不正や捏造が露見しても、まったく恥じることなく平然としている。時にはあたかも自分が被害者であるかのようにふるまう。残虐な殺人や善良な人を陥れる犯罪を冷静沈着に遂行する。他人を利用することに長け、人の痛みなどこれっぽっちも感じない。……昨今、こうした人物が世間を騒がせています。しかも、この種の人々を擁護する人も少なくありません。もともとサイコパスとは、連続殺人鬼などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念です。しかし、精神医学ではいまだ明確なカテゴリーに分類されておらず、誤ったイメージやぼんやりとした印象が流布していました。ところが近年、脳科学の劇的な進歩により、サイコパスの正体が徐々に明らかになっています。脳内の器質のうち、他者に対する共感性や「痛み」を認識する部分の働きが、一般人とサイコパスとされる人々では大きく違うことがわかってきたのです。しかも、サイコパスとは必ずしも冷酷で残虐な犯罪者ばかりではないことも明らかになってきました。大企業のCEO、政治家、弁護士、外科医など、大胆な決断をしなければならない職業の人にサイコパシー傾向の高い人が多いという研究結果もあります。 また、国や地域で多少の差はあるものの、およそ100人に1人の割合で存在することもわかってきました。そればかりか、人類の進化と繁栄にサイコパスが重要な役割をはたしてきた可能性すら浮上しているのです。最新脳科学が、私たちの脳に隠されたミステリーを解き明かします。

感想・レビュー・書評

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  • 中野信子さんの最新作を頂戴したので読んでみる。往年のBOOWYのアルバムで親しい名称だが、深く理解をしてみると実に興味深い。サイコパスとは先天性が強いかなり特殊な脳の状態のことを指していると理解するが、特徴は自己中心的、怜悧、無慈悲、共感心や恐怖心の欠如といったところであろうか。サイコパスを代表する人物たちは残念ながら大量殺人鬼に多く、かつ確信犯でやるので再犯率も高い。これらの人間を社会的に管理するコストは莫大でアメリカでは全人口の4%がサイコパス的傾向を持っていると推定されているらしい。

    ヒッチコックの「サイコ」でイメージが決定的となってしまったサイコパスな方々だが、著者のユニークな分類によると「勝ち組サイコパス」と「負け組サイコパス」がいるらしく、勝ち組サイコパスは魅力的で社交的で機知に富み、口もうまく、周りでカリスマ的人気になる人も多いそうである。そう思うと、確かに、そんな感じで人気の芸能人や商売人もちらほら散見されるように思える。さらに言えば、このように機知に富み、恐怖心のない人間こそがフロンティアを切り開く冒険家(起業家)となって人類社会の発展を生み出している可能性すら言及している。その証拠として、これだけ社会的害悪が強いサイコパス的傾向をもった人間が淘汰されず今日にも一定%存在していることを作者は挙げている。なるほどそうなのかもしれない。

    脳科学者である作者はサイコパスの生理学的なメカニズムを大量の論文から挙げて解説をおこない、その研究成果の一つとして、歴史的人物のサイコパスの可能性に言及している。曰く、毛沢東、スティーブ・ジョブス、ピョートル大帝、ジョン・F・ケネディ、ビル・クリントン、織田信長、そしてなんとマザー・テレサもサイコパス的傾向の強かった人物としての論考がなされているそうである。そうしてみると、上記の"サイコパスによる社会進化説"もうなずけるような気がしてくる。

    さて、勝ち組、負け組サイコパスの分水嶺は「逮捕歴」にあるそうで、逮捕されないでいたり、逮捕されるまでには至らないレベルで"ルールハック"を繰り返し周りを巻き込み続けるサイコパスの研究はなかなか進みずらいらしい(「あんたサイコパスかもしれないから、研究させてください」と言うのはなかなか難しい)。それでも、「道徳のジレンマ実験」(「殺人鬼が村に侵入してきて、みんなで隠れている。その時に赤子が泣き出した時にあなたならどうする?」と問う思考実験)や「アイオワ・ギャンブリング課題」(ハイ、ローそれぞれのリスクとリターンを学習しながら行う賭けゲーム実験)、「ケビン・ダットソンのセフルチェックリスト」などの心理実験を通じてその傾向の強弱は取れるらしく、これらによって、最終章では自分や自分の身の回りにいるかもしれないサイコパスの見分け方やそれらの付き合い方や抑制方法などについて言及をしている。さらに前向きなことにはサイコパスに向ている職業を提示してその希少な能力を有効活用をお勧めをしている。この考え方はなかなか斬新で、確かにADHD等も最近は天才のふ卵器として見直されてる中では、サイコパス的傾向やそのルールハック力やKY力は、硬直化した社会に風穴を開けるように作用させられるかもしれない。大事なことは周りの十分な理解と良い方向に才能を結び付けられる社会的柔軟さなのではないかと思えた。

  • 脳科学者の著書ということで、もう少し深掘りした内容を期待したが、参考文献などからの引用を整理し、僅かに個人的な見解を付け加えただけの残念な内容だった。

    100人に1人の割合でサイコパスがいるということが冒頭に記述されており、サイコパスの定義や特徴、分類などと併せて考えれば、あの人物はサイコパスに違いないと思ったりもする。

    しかし、参考文献として紹介されているマーサ・スタウトの『良心をもたない人たち』、ロバート・D・ヘアの『診断名サイコパス』に比べると見劣りがする。黙って、参考文献を読んだ方がずっと良いのかも知れない。

    また、サイコパス=犯罪者ではないこと、サイコパスの特徴についての脳科学的なアプローチは理解出来たが、サイコパスと我々はどう付き合うべきなのかについては殆ど触れられていないのが残念。

    どうして、この程度の作品がベストセラーになるのか摩訶不思議。

  • サイコパスというのは病的概念ではない。中野氏は、サイコパスという概念にまったく疑念を抱かずに、憶測につぐ憶測で非科学的な記述を次々に重ねていく。一般書として、サイコパスとは何かという概念を知るには面白いが、内容は科学的観点が著しく欠ける。著者が科学者であるというのには、大きな疑問を抱かざるを得ない。

  • 『悪の教典』は小説も映画も漫画も面白かった。サイコパスといえば『悪の教典』の主人公、蓮実聖司が真っ先に浮かぶ。「俺には感情がないらしいんだ」というセリフは忘れられない。

    あれ以来、サイコパスという存在についてずっと気になっていたので、この本を読んでみた。サイコパスを脳科学の視点から分析している。

    この本を読んでびっくりした箇所が3つ。

    びっくりその1、「サイコパスの脳は一般人とは違う。」もっと人格的な特性があるとか、そういうことかと思っていた……。

    びっくりその2、「心拍数と反社会性には相関がある。」心拍数がもともと低く、上がりにくい人の方が、反社会的行動を取りやすいんだとか。かなりちゃんとしたデータがあるらしい。(自分も心拍数低いんですけど……)

    びっくりその3、「サイコパスは遺伝的な要因があるかもしれない。」環境要因によって犯罪者になったとは考えにくい人がたくさんいる、とのこと。つまり生まれながらにしてサイコパスの脳を持っている人がいるみたい。

    他にも、「織田信長や毛沢東、スティーブ・ジョブズもサイコパスであったと考えられる」とか、「炎上ブロガーの中にもサイコパスが紛れ込んでいる」とか、「サイコパスは100人に一人の割合でいる」とか、興味深い深い話がたくさん。

    確かに「これってあの人のことじゃないか?」と思うようなところがあった。怖い。

    筆者の結論は、「サイコパスの資質を生かし、他人に危害を加えずに働ける場所が必ずあるので、サイコパスとは共存してゆく道を模索するべき」というもの。

    サイコパスについてよくわかった。興味深い。

  • 『ヘンゼルとグレーテル』を読んでる気持ちになった。著者の一石の投じ方と、見通しの広さに脱帽。(2018.12)

    追記
    この本は、読者レビューをもってサイコパス気質の高い人への生き方指南、気質の低い人への対応指南になる作品のように感じた。
    内容自体は(著者ご自身で記載されてるが)確度の高さが計れず、教科書でいう例題という印象。それに対する読者の反応は、一票だけど生の声。
    自分が"ヘンゼル"で"親"で"魔女"でもある。
    帯の「あの人の裏の顔」って粋ですね。(2019.1)

  • ■道徳心の5分類(ジョナサン・ハイト)
    ①他人に危害を加えないようにする
    ②フェアな関係を重視する
    ③共同体への帰属,忠誠
    ④権威を尊重する
    ⑤神聖さ清純さを大切に思う
    ・サイコパスは①②のスコアが低く意外にも③④⑤は高い。
    ■サイコパスの一番の悩みは孤独感が強いこと
    ■サイコパスの反社会的な行動の要因についての仮説
    ①欠如仮説(低い恐怖感情仮説)
    ・恐怖や不安に関する感情が欠如しているため特徴的な振舞いが現れる。
    ②注意欠陥仮説(反応調整仮説)
    ・注意の向け方や情報処理の仕方に特有の欠陥がある。
    ・サイコパスは不安を感じないというよりも注意力を目先にあるタスクだけに向けるため関係ないことが視界から外れてしまう。
    ・サイコパスの集中力はある意味「高すぎる」
    ③性急な生活史戦略仮説
    ・短期間に様々な異性と会う戦略をとるようなライフスタイルを「性急な生活史」という
    ④共感性の欠如仮説
    ・偏桃体の領域が機能不全,あるいは偏桃体と眼窩前頭皮質の結びつきが弱いため反社会的に振舞ってしまう
    ■サイコパスは,
    ①偏桃体の活動が低い
    ②眼窩前頭皮質や内側前頭前皮質の活動が低い
    ③偏桃体と眼窩前頭皮質や内側前頭前皮質の結びつきが弱い
    のいずれか,或いは複合することで恐怖や罰から社会的な文脈を学習して痛みや罪,恥の意識を覚えることができない。
    ■人間の脳は「信じる方が気持ちいい」。
    ■人間の脳は自分で判断を行うことが負担でそれを苦痛に感じるという特徴を持っている。これを認知負荷と呼ぶ。
    ■自身の中で矛盾する認知を同時に抱えて不快感(葛藤)を覚えるとその矛盾を解消しようと都合のいい理屈を作り出すことを「認知的不協和」という。

  • タイトルがアイキャッチすぎるのだけど、中野信子ということで購入。

    最初は「何故中野信子ともあろう人が、こんなタイトルの本を書いたんだろう?」 
    と思ったんだけど、よく考えると、
    「サイコパス」という言葉はあまりにも一人歩きをしているので
    (私がアイキャッチすぎると思うくらい)、
    それを権威のある人が正しく説明をする、というのは良い試みなのかもしれないな。

    難易度としては、
    専門外の人もわかるように平易に書いてあるのだけれども、
    必要とあれば専門用語も使い、程よい。
    有名な事例、これまでされてきた研究、それによってわかったこと等淡々と書かれている。
    客観性が求められる内容なので淡々としていて当然なのだが、
    それはまた、ともすれば「サイコパス=犯罪者予備軍」という
    単純な図式に陥りそうな危険性への注意のようにも捉えられる。

    脳の機能の問題が、心理的治療で影響を受ける、というのは興味深い
    (実際はこの治療はうまくいっていなかったが、
    試すということは効く可能性があるということだ)。
    環境等で脳への損傷が可能だということは、逆もまた然りか。

    またサイコパスがこれまで生存競争に勝ち残っていた理由も興味深い。
    ランダムな突然変異みたいな扱われ方が多いけど、ちゃんと理由があるわけだ。

    サイコパスという存在は
    集団生活に於いては異端で問題行動を犯す可能性が高いけれども
    必ずしも犯罪を犯すわけではない、
    という認知の助けになれば良いと思う。

  • ワザとなのか?彼らとどう共存すべきかの視点が一切無い

  • サイコパスについてはこれまでにも読書等で情報収集をしているので、この本を読んで印象に残る情報というのは正直言って無かった。
    脳科学や認知科学の分野については特に、米国において英語で発表されている情報や知識が、日本語のそれよりも新しいのが常であるので(少なくとも今のところは)、英語でそれらの分野の情報収集を行っているような人には目新しい内容というのは本書にはない(もっとも私は専門家でもなんでもないのではあるが……)。

    ただひとつ言えるのは、いろいろなまとめサイト等でサイコパスについて間違った情報を得ている人々にこそ、この本を読んでほしい、ということだ。
    まとめサイト等でのサイコパスに関する誤った認識に基づく投稿や発言は、人権侵害に近く、有害であると私は考えている。

  • 織田信長やスティーブ・ジョブスがサイコパスってのはわかるが、マザー・テレサもサイコパスだったというのは知らなかった。(調べると色々出てくるが)
    自分もサイコパスかな?と思っていたが、セルフチェックでは平均を大幅に下回る結果で、全く該当しない事がわかり、少々イガイだった。
    サイコパスには良心がなく合理的な判断をするとの事だが、恐怖や不安を感じにくくリスク管理が甘い(よく言えば冒険心がある)ようで、その点が自分とは異なるのかなと感じた。だから対サイコパスとしては、徹底的に合理的な恐怖(生命・財産・権利を奪う)を与え、行為を起こさせないように萎縮・抑制させるのが有効なのではないかと感じた。マクロ的にはその辺の法整備や制度設計が今後の課題だろう。
    身近にそういう人間がいて危害がある場合には正義は通用しないので、損得で追い詰めていく必要がある。また予防策としては目立つ人間を信じない事、常に疑う事かな。
    収穫だったのは「愛情・友情・助け合い」は美しいものではなく脳が勝手にそう判断しているだけであり、種として生き延びるのに便利だから重んじられてるだけという事。サイコパスは脳異常により、遺伝的に良心や倫理を重んじる事ができないそうだ。それでも淘汰されずに1%の割合で生き残っているというのが興味深い。人類にとって必要悪という事になるのだろうか。自分に直接の害がなければ存在は構わないが、もうちょっと遺伝子的に淘汰されてもいいような気はするが。
    中野信子はTVのコメントでは冴えてるのに書籍はイマイチという印象があったが、出版重ねて除々によくなっている気がする。

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著者プロフィール

中野 信子(なかの のぶこ)
1975年東京都生まれの認知神経科学者。現在、東日本国際大学特任教授。
2008年、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。博士論文は「高次聴覚認知における知覚的範疇化の神経機構 fMRI・TMSによる複合的検討」。フランス国立研究所ニューロスピン博士研究員、東日本国際大学客員教授・横浜市立大学客員准教授を経て、現職。
多くの一般向け啓蒙作があり、代表作として『サイコパス』『脳内麻薬』。

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