「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 281
感想 : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611041

作品紹介・あらすじ

四半期決算を廃止せよ! 長期保有株主を優遇せよ! 日本が新しい経済ルールをつくる! 日本が率先して、「21世紀の新しい資本主義=公益資本主義」を世界に示すべきだ――確信をもってこう断言するのは、「理論や理想ばかりを説く経済学者」でも、「資本主義に反対する社会主義者」でも、「海外を知らない国粋主義者」でもありません。最も競争の激しいビジネスの本場、米国シリコンバレーで、数々の成功を収めてきた「最強のベンチャー事業投資家」です。 著者の原丈人さんは、考古学研究を志していたところ、発掘の資金稼ぎのため、米国のビジネススクールに通うことになり、さらに先端工学も学び、米国で自ら事業を起こし、大成功を収めました。その後、その資金を元に、独自の判断で、情報技術を中心に新技術を創出する数々の企業の起業・経営に参画し、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストとして活躍しました。しかし、そんな経験から、米国流ビジネスの限界と問題点を身をもって知っているのです。 株主優先、四半期決算、時価会計、社外取締役制度など、「会社は株主のもの」とみなす「米国流の株主資本主義」の導入が「改革」と称されていますが、むしろ弊害を生んでいます。「企業ガバナンスの優等生」と称された東芝の惨状がその証しです。「会社は株主のもの」という考えでは、投資や経営が、短期利益重視となり、新技術開発に回わすべき中長期資金、真にリスクをとる投資が不足しています。税制や金融のルールを改めることで、マネーゲームに回っている資金を中長期投資へと導くことこそ、「公益資本主義」が目指す「成長戦略」です。 実は、中長期経営を重視する日本型経営こそ、「公益資本主義」の雛形です。米国を反面教師にし、今こそ日本が新しい資本主義のルールを示すべきなのです。

感想・レビュー・書評

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  • twitterで「岸田首相のブレーンはコイツだ」「新しい資本主義の影の立案者だ」などと言われてるのを見て著者を知り、どんな内容なのか知りたく購入した本。

    最初の30ページほどは、とにかく資本主義の悪い面を語っているので、「なんだ、ただの社会主義者じゃん」と思った。
    もし「新しい資本主義って結局何なの?」を知りたければ4章から読むのがお勧め。
    読み終えて、少なくとも著者が目指したい資本主義を理解はできたと感じた。

    界隈で強く批判されるほど、悪い考えとは思わなかったし、むしろ賛同したいと思った。
    同時に、「新しい資本主義」というワードだけが独り歩きしているのは、これも政治なんだなぁ、と感じる。

    今後、岸田政権がこの本の考えに沿ったかたちを目指すのか、注視していきたい。

  • 原丈人(1952年~)氏は、慶大法学部卒、スタンフォード大学大学院工学修士の実業家、ベンチャーキャピタリスト、考古学者。当初は考古学を志して、その資金づくりのために渡米し、大学院在学中に起業した後、1984年にベンチャーキャピタルのデフタ・パートナーズを設立、その後シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストとして活動し、米、英、イスラエルの世界的企業の会長を歴任。2013~20年に内閣府参与。米NGOのアライアンス・フォーラム財団代表理事、デフタ・パートナーズ・グループ会長。
    本書のテーマである「公益資本主義」とは、著者が2007年の著書『21世紀の国富論』で提唱し、2014年の世界経済フォーラムのアジェンダ決定会議の場で示し、2017年には同フォーラム年次総会であるダボス会議で、山本幸三内閣府特命大臣が日本政府を代表して言及したもので、2020年のダボス会議で発表された「ステークホルダー資本主義」の元となっている考え方(ほとんどパクリ)である。
    私は以前より、世界に広がる格差の元凶である資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、広井良典、水野和夫、トマ・ピケティ、斎藤幸平ほか多数の著書を読んできた。それらはどちらかというと長期的かつ概念的なものであったが、もう少し短期的・技術的な対処方法も考えたいと思い、本書を手に取った。
    一読すると、現在の資本主義(これを著者は「株主資本主義」と呼んでいる)の実像と問題点、株主資本主義と公益資本主義の違い、公益資本主義を実現するためのポイントと具体的なルールなどが明確に理解できる。
    因みに、株主資本主義と公益資本主義の違いは以下。
    <株主資本主義> ●短期の勝負、●新たな富を生まない(単なるマネーゲーム、ゼロサムゲーム)、●一部の超富裕層と大多数の貧困層を生む、●英米の金融界、メガファンド、投機家、ウォールストリートが望む資本主義
    <公益資本主義> ●中長期の勝負、●新たな富を生む(プラスサムゲーム)、●層の厚い中間層を生む、●大多数の日本人と、世界の大多数の国民が望む資本主義
    また、公益資本主義を実現するための3つのポイントは以下である。
    ●中長期投資・・・持続的成長を支えるために、中長期的な投資を行う。経営陣は、短期の利益を求めつつも、中長期的な課題にバランスよく取り組む。●社中分配・・・会社があげた利益を、株主だけでなく、会社を支える社中(経営者、従業員、仕入先、顧客、株主、地域社会、環境)各員に公平に分配する。こうすることで社会の格差を是正し、貧困層を減らし、層の厚い中間層をつくる。●起業家精神による改良改善・・・リスクをとって果敢に新しい事業に挑戦し、常に改良改善に努める。

    著者はあとがきで、「今後、世界の人口は、途上国を中心にさらに30億人程度増加すると予想されているが、地球上のすべての人々が、平和で豊かに暮らせる世界を望んでいるはずである。こうした世界を実現するには、経済の新しい仕組みが必要となる。資本主義自体も、いずれ新しい仕組みにとって代わられるだろう。しかし当面の間は、資本主義が続くことも間違いない。ならば理想論にとどまらず、まず現実的に世の中を変えることが重要だ。その原動力となり得るのが、本書で論じてきた「公益資本主義」だ。」と書いているが、著者の思いに100%同意する。
    岸田新首相は「新しい資本主義」を掲げるが、公益資本主義こそそれなのではあるまいか。税制や金融制度や法令を変えればできることであり(資本主義のシステム自体を変えるのとはレベルが違う)、何より、公益資本主義とは、日本がかつて行ってきたことそのものなのだ。
    (2021年12月了)

  • 今年読んだ本の中で1番衝撃的な内容だった。

    以前読んだ「資本主義の終焉と歴史の危機」では、資本主義が膨張できる余地がもはや無くなりつつあり、新しい仕組みが必要と述べられていたが、本書ではその具体的な方法について書いてある。

    本書の特徴は、単なる株主型資本主義の批判のみに留まらず、日本独自の「三方よし」を特徴とする企業のあり方を再評価し、日本から新しい資本主義の形を世界に広めていこうとしている所である。とてもアツい。

    (ただ、筆者の口ぶりは調子が良すぎていて、そのまま信じていいのかは分からない。実際に、原氏の公益資本主義に反対するものは多いようだ。)

  • 横浜にある原鉄道模型博物館が出てくるとは思わず。
    保守政治家が好きそうな内容。

  • 株主重視の資本主義の世界の方向転換を狙った話。
    現首相のブレーンとも言われ、政界にも浸透してそうな考え。
    短期的には株主は大損するから株主有利の市場を好きな人は批判的に見るだろう。
    ただ、言っていること自体はまともな疑問からくるマネーゲームな市場への警笛。
    株や会社や内部留保にROEってそもそもなんだっけ?なルールに対して、
    そのルール根底から疑って足で現地で体感した著者がもう少しまともな資本主義でいこうよと説く。
    これが今の政界なら現実としてチャレンジするんだろうなと思えた。
    批判が多い方が夢物語なほうがチャレンジのしがいはあるだろうし
    実際に首相の発言はここに向いている。
    グローバリズムに疑問が投げかけられた時代だからこそ
    日本型となる経済ルールが作られるのか長期政権になればこの公益資本主義に沿って
    いろいろ変わるのかもしれない。

  • この前に読んだ「会社はだれのものか」で登場していた原丈人さんで検索して見つけた本。1,2,4,5章を読んだが、非常に意欲的な作品。学生のようなエネルギーを感じた。そして実績も十分のようだ。三方良しの日本型経営から発展しうる公益資本主義と主にアメリカを念頭に置いた株主資本主義を比較、そして株主資本主義の欠点を指摘。公益資本主義においても、まずは大いに稼ぐことが大前提、この点は激しく同意。利益さえあれば大抵の問題はなんとかなると思うので。利益を上げれていない法人企業は頑張っていただくとして、この著書の偉大と思うところは、利益の出ている会社が公益資本主義を実践するための手段が用意されているところ。株主資本主義の影響を薄めるというアプローチで、保有期間に応じたキャピタルゲイン課税や市場作り、法人企業のストックオプション廃止などを提案。成長と分配を掲げる岸田政権にも考慮していただきたい。中長期投資家としての私の希望でもある。5-10年保有したら税率0%、デイトレーダー(1年未満)は30-40%など大賛成です。格差の拡大こそが諸悪の根源であると、ここの理由づけも時間がある時に考えてみたい。

  • まず、公益資本主義を説かれている、原さんの原点・・・鉄道少年から考古学、研究資金稼ぎのビジネスからベンチャー事業投資家へ・・・が興味深かった(凄い人はやっぱり少年時代から凄い)

    そして、世の中を変えるためには「ルール」を変える必要があるのだということを改めて感じる。まぁ、いきなりはなれないので、自分のできるところから、声あげれるところから、なんでしょうか。今まで「ルール」の中でよりよく生きる事を考えてましたが、読みの中を変えるためには「ルールを変える側」に立たないといけないのだ。

    公益資本主義の概念を大切に、自分の小さな行動も(どういう会社を応援するのか、影響を与えていくのか・・・体現できるようにしなければ!と大きな事を思ったのでした。

  • 英米主導のグローバリズムは、英米の基準や価値観、考え方を諸国に押し付け、英米が利する世界になることを理想とする主義だといっていいものです。そこには、グローバリゼーションの名のもとに、各国・各地域の多様性をおしのけて一律化をすすめていく作用が生じている。その波は確実に日本をも飲みこんでいて、90年前後にバブルがはじけてから敬遠されるようになった「日本型経営」を、より排斥していく方向に力が働いてきた。グローバリゼーションを進めたアメリカの資本主義は、いまや「株主資本主義」と言われます。株主の利益を最優先事項とし、会社は株主のものであり、株主の利益を出すために隷属したものだと当り前のように考えられている。利益を得るため、それもできるだけ短期間に株主が大きな利益を得るために、研究開発などの中長期のビジョンを会社に捨てさせて、短期の利益ばかりを考える戦略をとらせ、ことによっては従業員をリストラしてまで株主や役員が大きな収入を得る行為をします。もはや、我利我利亡者といった体です。こういったスタンスの帰結するところが、貧富の拡大、格差の拡大なのでした。会社が利益を得ても従業員の給与は上がらず、株主や経営陣に還元されます。
    くわえて、ヘッジファンドやアクティビストの存在があります。
    ヘッジファンドとは、株価や商品の相場、通貨相場などにおいて、「将来の理論値と実態との乖離」に着目して資金を注ぎ込み、利ザヤを稼ぐことを目的としたファンドのこと。(P87)
    アクティビストは、かつてのサッポロビールやブルドッグソースにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けたスティール・パートナーズや、ニッポン放送や阪神電気鉄道の株を買い占めて話題になった村上ファンドのような、いわゆる「モノ言う株主」です。しかし、彼らはなんのために「モノを言う」のか。「健全な企業経営」のためではなく、その企業が持っている資産の売却や現金の配分こそ彼らの狙いなのです。(P87)
    これらが合法的に行われる現行の資本主義、つまり、ただ金さえ増えればよいという価値観で動いている「株主資本主義」や「金融資本主義」と呼ばれるもの。このかたちでの資本主義によって、グローバリズムが広がった日本などの先進国、それはグローバリズムの旗手である英米も含むのですが、それらでは中間層がなくなり、スーパー富裕層と貧困層の二極化を生みました。
    本書は、こうした現行の資本主義のおかしさをはっきり指摘したうえで、「株主資本主義」に代わり、なおかつより豊かな世界をもたらす「公益資本主義」を提唱するものです。「公益資本主義」は先述の「日本型経営」に立ち帰るような要素のある考え方です。「会社は株主のものである」ではなく、「会社は社会の公器である」とします。株主だけを優遇するのではなく、従業員、顧客、地域、地球環境などに、公平かつポジティブに働くような主義です。著者は、この「公益資本主義」をアメリカ人に説いたときに、「共産主義じゃないか!」と言われたことがあるそうですが、そこは違うと否定しています。「公益資本主義」は利益あってのものですし、「株主資本主義」よりもたぶんに持続性もあり、そのうえで収益もそれ以上にあげられるようです。詳しくは本書をあたってほしいのですが、格差の進行する「株主資本主義」というものが、歪んだ資本主義であることを意識できるようになるだけでも違うと思います。

  • 株主資本主義から公益資本主義
    論語と算盤は実践が可能。
    会社は社中の利益を最大化する。会社の基盤である社会を利することで会社を利する。
    短期的な株価のつり上げによる儲けを企む株主のために資本主義は社会を崩壊させる。一部の富裕層と圧倒的多数の貧困層を作る。豊かな中間層(正規分布)を作ることが継続的な社会の発展や維持に有効。
    そのための考え方に。中核産業は移り変わる。それを前提に中長期的にものを開発していく産業を持つことの強み。そんとための資金準備としての内部留保。研究開発は必ず成功する者ではないが,その過程で経験と人材育成が可能。そのリターンが次の開発に繋がる。
    会社を維持するための短期的な収支,会社を発展させるための中長期的な収支。
    これは人格の発展や教育においても同様か。

  • 新 書 S||332.06||Har

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著者プロフィール

原丈人(はら・じょうじ)
日本語版監修者略歴●アライアンス・フォーラム財団創設者。中央アメリカ考古学研究の研究資金を作るためにシリコンバレーで光ファイバー事業を起業。その後いくつもの中小ベンチャーを米国有数の大企業へと育て90年代に米国有数のベンチャーキャピタリストとなる。しかし英米を中心に多くの国々で富の二極分化が進むことに気づき、アライアンス・フォーラム財団を率いて、アフリカなど途上国で厚い中産階級層をつくるための行動を興す。この理念の実現のために公益資本主義を提唱し、財務省参与、国連政府機関特命全権大使、ザンビア大統領顧問、米国共和党ビジネスアドバイザリーボード名誉共同会長として広く世界に浸透させる活動を行っている。


「2017年 『夢を追いかける起業家たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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