戦争を始めるのは誰か 歴史修正主義の真実 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2017年1月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784166611133

作品紹介・あらすじ

二つの世界大戦は必要のない戦争だった。とくに第二次大戦は、チャーチルとルーズベルトがいなければ起らなかった――。

本来の「歴史修正主義」とは、戦前の日独を全面肯定する歴史観のことではありません。米英の外交に過ちはなかったのか、あったとすれば何が問題だったのか、それを真摯に探る歴史観のことです。

「公式の歴史」では、ベルサイユ体制と国際連盟体制を破壊した枢軸国(日独伊)の他国への侵略が第二次大戦の原因と説明されますが、実は英米参戦の「必要」や「理由」は後からでっち上げられました。「ヒトラーはどん底のドイツ経済を立て直した」「オーストリア国民はドイツへの併合を熱烈に歓迎した」「借金に追われていたチャーチルにとって、ナチス台頭は絶好のチャンスとなった」などと、本当のことを言ってしまうと、連合国が作り上げた戦後体制の正当性が崩れてしまうのです。

戦争を始めるのは誰か?――本書は、二つの世界大戦の真実に迫ります。



キーワード:第一次世界大戦、第二次世界大戦、歴史修正主義、歴史解釈、戦勝国、連合国、ヒトラー、スターリン、チェンバレン、フーバー、東京裁判、ナチス、モンロー主義、孤立主義、真珠湾攻撃、ユダヤ人、ホロコースト、スペイン内戦、満州事変、東西冷戦

感想・レビュー・書評

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  • 歴史の真実に迫る内容で、とても迫力があった。まだまだ知らないことばかり。いや、もしかしたら忘れてしまったこと、聞いてはいたが知識が繋がらずにピンと来なくて流してしまったことなのかも知れない。本書を読むと、真実に触れることができ、その歴史の意味がわかるようなる気がする。

    本書の白眉は偏ったヒトラー観から脱し、アンタッチャブルであったフランクリンルーズベルト観を射抜き国際コミンテルンを再評価すること、それらの背景に戦時借款によるウォール街の思惑が作用したことを掘り起こした事にある。

    ― イギリスにはヨーロッパ大陸に強国を作らせないことという国是があった。一九世紀初頭にナポレオンが台頭したフランスを叩いた外交がその典型であった。ビスマルクに指導されたプロシアが普仏戦争に勝利し、ドイツ帝国に変貌し更なる発展を見せると、世界各地でイギリスの利権と衝突した。イギリスの次なるターゲットはドイツとなった。要するに、イギリスの参戦はパクス・プリタニカを守るための戦いだった。

    ― イギリスのアメリカに対する借款額は巨額であった。戦争が終わって一五年が経った一九三四年時点でも八億六六〇〇万ポンド(二〇〇六年の価値に直すと四〇〇億ポンド)も残っていた。3イギリス以外の国もアメリカからの借款は多かった。・・アメリカは巨額の融資をイギリスを中心とした連合国に与えていた。これが世界の金融センターがロンドンからニューヨークに移るきっかけであった。

    ― 戦争の長期化の大きな原因はアメリカからの無尽蔵とも言える武器や火薬の供給が続いたからだった。ドイツはこの供給を止めようと躍起になった。貨物船への潜水艦攻撃を始めた。アメリカ船籍の船舶への攻撃はアメリカ世論を刺激したが致し方がなかった。アメリカは、貨物船だけでなく客船も使って武器を運んでいた。公にはそのことは隠されていたが、ドイツは警告を発し、そうした客船の利用を止めるように求め、また潜水艦攻撃も辞さずと伝えていた。客船の撃沈は一九一五年五月七日に起きた。ニューヨークからリバプールに向かっていた客船ルシタニア号(英国船籍)がアイルランド南方沖でドイツ潜水艦「U20」によって撃沈されたのである。・・英米政府はドイツの「蛮行」を非難した。しかし、後になってのことだが、ルシタニア号は客船でありながら、ドイツの主張通り英国向けの武器を積んでいたことがわかっている。

    好戦的なチャーチルはこの悲劇を喜んだ。

    ― 「敗北したロシアは、ウクライナ、ポーランドとバルト諸国とフィンランドの領土の割護を要求された。結局全部で一〇〇万平方キロメートルである。国の人口はわずか三分の一に減少した。経済的に見れば、損失はロシア帝国の耕作可能な土地の三ニパーセント、鉄道の二七パーセント、工業の五四パーセント、鉄山の八九パーセントが失われたことになる」これほど屈辱的な条件をロシアが飲まざるを得ないほどにドイツの攻勢が激しかったのである。生き残るための苦渋の決断だった。ドイツはこの条約で東部戦線の戦いを終結させた。東部戦線に展開していた軍を西部戦線に集中できることになった。

    これらは第一次世界大戦の話だ。ロシアをボコボコにしたドイツは、結局、イギリスやアメリカの参戦、特にアメリカによる、英仏への資金と物資での援助により、叩きのめされる。この時のウォール街の巨額貸付が、アメリカを第一次世界大戦後の「最大債権国」へ導く。そして、その後、ウォール街は敗戦したドイツの賠償金への融資にまで乗り出し、ドイツが復活していく。この頃に政治活動を活発化させたのがアドルフ・ヒトラーであった。この経済回復でヒトラーは素晴らしい工業機械とお金を手に入れ、大規模な再軍備へ。ヒトラーを育てたのはアメリカである、とよく言われるがこれがその理由であった。

    一方で第二次世界大戦勃発時も傍観を決め込んでいたアメリカだが、世論は孤立主義を、ウォール街の住人は国際関与を期待するという「股裂き状態」がアメリカに生まれていた。これに絡むコミンテルンの動き、ルーズベルトの動きも面白い。その流れをここに書いてしまうと楽しみがなくなるのでこの辺にしておくが、歴史の核心に迫る良書である。

  • 「歴史修正主義」とは、戦前の日独をことさら評価する史観ではない。米英両国の外交に過ちはなかったのか、あったとすれば何が問題だったのか

  • 馴染みの無い事実に驚かされる一方で、論理性が見えない記述もちらほらあり、いろんな意味で興味深い書。

    ヒトラーをめぐる評価の基本スタンスには共感できる。すなわち「ヒトラーは悪魔だった。しかし1938年までの段階では、彼はドイツを立て直した強力なリーダーとして世界的に評価されていた。われわれはその当時の視点に立脚して彼とドイツを見なければ、正しい歴史評価は行えない。」というもの。当然な話だが難しい。

    ヒトラーが英国と戦争中にソビエトとの戦争(つまり二正面戦争)に突入したのは英国に戦う理由を喪失させるため、との一部歴史家の説明にまったく腹落ちできないでいたが、この書を見るとなんとなく理解できた。

    しかし、当初ヒトラーにポーランド侵略の意図は無かったという主張はどうだろう?確かにヒトラーは、ポーランドに対し当初一貫して対話姿勢をとったという事実は重要だろう。しかし、「我が闘争」でうたっている「共産ソ連とその衛星国の支配」を実行するためにはポーランドを支配下に置かねばならず、矛盾しているように聞こえる。
    またチャーチルがいなければ欧州戦争は独ソの局地戦に終始したはず、という主張と、ダンツィヒ回廊をめぐるポーランドの頑固と英国の(無謀な)対ポーランド安全保障が日本における300万人の犠牲をもたらした、という主張は論理がわからず首肯もできない。

  • 花戦争なるものが実在することを本書で知った。WW1で調印されたベルサイユ条約により領土を喪失したドイツが、回復を求めてオーストリアに侵攻し、軍事力ではなく花で迎えられ、無血で併合を実現したことを指す。ナチス政権において急速に国力を回復させたドイツは恐慌にあえぐ世界の羨望の的で、オーストラリア国民もドイツの支配をむしろ望んでいたという。
    FSSはいつの間にかコーラスが表舞台から去り、ものすごいフィルモア推しになっていた。当初予定になかったことは明らかで、設定が大幅に拡張された印象がある。同時に出現したのは詩女とかオートマチック・フラワーズとかいうものだ。花戦争という事象を知ってみれば、ダイ・グ統治下のフィルモアのナイーブな外交や、付随する設定変更のモデルとなったのではないかと思える。

    さて、本書は歴史修正主義の立場に立つという。
    歴史修正主義とは「従来の史観に異を唱える」というものであるらしい。字面から第一印象は「いいように歴史を解釈してやるぜ」と思えてしまい、意味を知る機会を逃したまま長く過ごしてしまったせいで、今でも混乱している。対義語は公式史観、別称あるいは蔑称は釈明史観である。

    本書が主張するWW1の原因はイギリスのエスカレーションである。ヨーロッパの局地戦に終止するはずだった戦争にイギリスが介入し、ドイツの領土を戦勝国で分配する結果を得た。イギリスの取り分は海外領土だ。ドイツは海外領土を100%喪失している。結果からすると説得力がある。この結果を正当化するためにドイツを悪役にする必要があり、それがベルサイユ条約だという。

    WW2の原因はイギリスがポーランド独立保障をしたことである。ベルサイユ条約の不正義を十分に認識していたチェンバレンは当初ドイツのポーランド外交に不干渉の立場だったが、フランクリン・デラノ・ルーズベルトの工作によって対立する気にさせられたという。これがなければWW2は発生せず、ドイツとソビエトの戦争に終止した可能性があると主張する。ドイツは外交によってポーランドと交渉を重ねており、ポーランドは実力もないのに強硬にそれを突っぱねていた。イギリスの保証を背景にそれは強まり、結果として軍事侵攻を招いた。この一連の流れを誘発したチェンバレンの不見識には当時のイギリスの有識者たちも驚いたという。チェンバレンが決断するに至った情報筋が非常に怪しい。

    別の歴史修正主義の書籍によれば、WW2はチャーチルがエスカレーションを主導し、アメリカの参戦を促したとある。本書の主張と矛盾するものではないが、主従が逆転する印象がある。
    いずれの主張においても、ソビエトが一人勝ちした印象を十分に説明するものではないのが気になるところ。

    暗記力と解釈能力の欠如から、世界史の教科書から歴史を俯瞰することができなかった。学業から離れて改めて第二次次世界大戦とはなんぞと問い、長く答えを求め続けてきたが、なんとなく形は見えてきたような気がする。まだ足りないピースがあるような。
    それはそれとして、本書は本書なりの因果関係を説明しているため、歴史の俯瞰はしやすい。

  • 歴史を綴るのは過去を遡る行為である以上、知識の範囲(地球上全ての事実を知るのは無理)や思想、時代背景その他様々な要因に縛られて記載されているものとの前提で見る。いずれも一方的な見方をするのは危険だと考えて触れるべきだと思う。とは言え本書は最近の私自身の考え方に最も近く、私自身も否定する材料は探せない事から、見事に心を掴まれてしまう。
    先の大戦(第二次世界大戦)は時間をかけてゆっくりと膨らませてきた風船、それは一つでは無く色も大きさも異なる多数の風船が膨張し過ぎてひしめき合い、ある日突然誰かが針で刺す様な行為で破裂した結果だとぼんやり考えてきた。
    世界に破壊的な恐怖をもたらした大戦の要因とは何か。大きくは民主主義と全体主義、資本主義と共産主義のせめぎ合いと捉えるのがごく自然だし、少し狭めて見れば、ポーランドや英仏、米国にソ連、そして定説として語られてきた歴史上の大戦の当事者である独、日の個々の利益のぶつかり合いである事は言うまでもない。
    本書で登場する主要な人物として、ヒトラー、チェンバレン、チャーチル、FDRを中心に各国の外相や外交官のやり取りを詳細に追っていく流れは、推理小説の様にスリリングで一気に頭の中はセピア色の「現場」に自身を置くことになる。まるで会話を傍で聞いてるかの様な感覚だ。
    所々、読み手は地図上の国の形や国力をグラフでイメージしながら辿っていく事になるだろうが、ページをめくると良いタイミングで効果的に当時の地図が掲載されてくるので読みやすさもある。
    全くあり得ない事だが、必然的に自分ならこうするだろうと、あたかも国の元首や外相外にでもなった様な考えが頭の中で生まれてくる。ああ、もう少しあと20年早くこんな気持ちになっていれば(本書に出逢っていれば?)、少しは政治の道を目指したかもしれないなと。
    誰が戦争を起こすのか、タイトル通り最終的に風船に針を刺すのは前述の個人を始めとした政治家たちだ。第一次大戦からの国民の積年の恨みを一挙に晴らした代弁者、個人の利益や後世に残る名声にこだわってしまった人々。背後で暗躍する赤色で染めようとする思想家たち。それに見事に翻弄されていく人々。皆それぞれに抱えた背景を後世の歴史家が自身の歴史観で如何様にでも描ける。時代が彼等を生み出したのか、彼等が時代を利用したのかは分からないが、結局膨らむ風船を掴んで後世に名を残す程に高く昇って行った事は間違いない。途中で重し扱いでポロポロと落とされていく民衆には多くの悲劇と犠牲が強いられるのではあるが、風船を飛ばしたのも民衆だ。
    そう考えると、成る可くして成る、起こる可くして起こる戦争の過程は今のウクライナ戦争を見ていても非常に合致する点が多い。
    今まさに動いている現在をその様な歴史的、大局的、全網羅的に眺めるのは不可能ではあるが、少しでも広く高い視点で世界地図を眺めていないと、身に降りかかる火の粉は払い落とせないだろう。もちろん大半はその様な力を持てないが。
    まずは本書を手に取り流れに身を任せる事で濁流をもがく状態から緩やかな清流を泳ぐ力を自分が持たなければと感じた。

  • 2022.05.18 読了
    ・第一次世界大戦も第二次世界大戦も、イギリスと小国との間の集団的自衛権が原因だった。第一次世界大戦はベルギー、第二次世界大戦がポーランドだった。
    ・チャーチル・ルーズベルトは好戦的だった。
    ・第一次世界大戦後の処理で、ポーランドとチェコスロバキアは強欲過ぎた。ドイツの領土を削り、自らの領土とした。そのことによりドイツの恨みを買うことになる。
    ・ドイツの念願は、ベルサイユ条約で失った領地の失地回復だった。チェコズデーテン地方、ダンツィヒなどである。
    ・イギリスはドイツの失地回復に理解を示していた。
    ・イギリスとドイツは海軍軍事協定を結んでいたが、1939年3月、破棄される。
    ・チェンバレンが親独から反独に転じたのはチャーチルの煽りが影響。
    ・ルーズベルトが好戦的だった理由は明らかではない。ニューディール政策の失敗を
    歴史修正主義の情報源の一つはスタンフォード大学のフーバー研究所。FDRの前の大統領、フーバーは反FDRであり、FDRが日米戦争を煽った張本人だとする。

  • 従前学んできた事とは違った観点からのアプローチで、そのような事情があったとは露知らずに歴史を学んできた事に反省した。
    教科書等の説明も、ある観点からの説明であり、違った見方をする事の大切さを学んだ。

  • 『#戦争を始めるのは誰か 歴史修正主義の真実』

    ほぼ日書評 Day514

    「民間人への空爆、潜水艦による攻撃」、「女や子供を含む民間人が空からの爆撃で無慈悲にも殺された」、これは東京大空襲や広島・長崎の原爆に関する記述ではない。FDR(フランクリン・ルーズベルト)が(ピカソのゲルニカでも知られる)ドイツ軍によるスペイン内戦時の空爆を指して、極悪非道と評した際のものだ。

    本書は、歴史修正主義と題しつつも、ナチの賛美やホロコーストの事実を否定するものでは全くない。その結論を一言で表せば、FDR(フランクリン・ルーズベルト)とチャーチルがいなければ、第二次世界大戦は起きなかったということにつきる。

    ベルサイユ条約で大幅に国力を削がれたドイツ再興の過程で、ポーランド侵攻やスペイン内戦への介入等、欧州域内での局地戦は起きえるものの、英国、さらには米国や、ましてや日本をも巻き込んだ「世界」大戦まで発展することはなかったのだ。

    それを「世界大戦」にまで拡大せしめたのは、冒頭紹介したドイツへの非難を口にしたFDRやチャーチルの好戦性、さらに具体的にはドイツや日本をけしかけ、なんとか戦争に持ち込もうとする各種画策によろところが大きい。

    「釈明史観」、すなわち今日の我々が知っている「歴史」から逆算して、第二次大戦の負の要因をヒトラーという独裁者に全て押し付け、大戦をこの狂気の悪魔を封じ込めるための正義の戦いというように、過度に単純化する考え方に対し、歴史を動かした各局面に立ち戻り、そこでのリアルタイムでのキーステークホルダーの発言を丹念に拾うことで、その綻びを顕にする記述姿勢は好感が持てる。

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  • この帯はかなりミスリードですね。東條英機なんて出て来ないし。
    この本の内容を表すには、正確にはルーズベルトとチャーチルだけでなく、チェンバレンの後先考えない不用意な演説と、ポーランドの外交の頑なさ、を加えるべきですね。
    それにしても、スペイン内戦のゲルニカ空爆の脈略…意味を恥ずかしながら初めて知りました…なるほど、そういう背景だった訳ですか…

  • 要するにナチスドイツの脅威より共産主義の拡大を警戒すべきであった、という観点から歴史を見直し、チャーチルやF.D.ルーズベルト(やチェンバレンら実際の政治家等)の誤った判断がなければ第2次世界大戦はなかったはずなのに、と過去の現実を修正するのが歴史修正主義なのか? と思わせる。
    第2次大戦は共産主義者(ある部分ではユダヤ(借金を補填してもらうなど、チャーチルはユダヤ系富豪たちと親密だったということを記した節が「チャーチルの策謀」と題されていたりする。))の謀略だと言いたいのか? と途中思ったが、そんなことまでは言わず、英独開戦までの事象を割と淡々と記述して終わった。
    ただ、第1次も第2次も、ドイツのせいではない、とは言いたいのはわかった。実際、第1次大戦はドイツが主導して始めた、という刷り込みって、別にないような? 第2次大戦の大元はベルサイユ体制の不公正さというのも、教科書でもそう習ったような。
    しかし、ベルサイユ体制への固執を満洲問題にまで適用するのは違和感ありあり。たらればで言えば、日本が介入しなければ国共合作も起きなかった、つまり中国の共産化は防げたかも、と言えてしまうのでは。
    たらればだったら、ヨーロッパ戦線についても、ドイツの東進を英をはじめとする第三国が許容したら、確かに独ソ戦争でおさまった(両国の間にある小国は壊滅…)かもしれないが、ヒトラーとスターリンという両キャラを考えると、19世紀までのように適度(?)なところで終戦にならなかったのでは。ソ連のほうが勝つ可能性だってあったと思うのだが、そしたら、反共陣営からしたら実際よりもっと悲惨な事態だったのでは? ヒトラーが勝ったとして、超強国となったドイツに(ドイツが西には一切進まなかったとしても)仏英が耐えられるだろうか? 結局泥沼化していたのでは(それでもアメリカさえ参戦しなければ「世界大戦」にはならないようだが)。日本についても、アメリカを参戦させないことが肝要なら、挑発に耐え、真珠湾など起こさなければよかったのに、欧米の権益を侵さないのは言うまでもなく…という話になりそう。
    ポーランドやチェコスロバキアの状況の記述は新鮮だった。しかし、ダンツィヒ(グダニスク)をドイツに渡したほうが、つまりみんなのために自国が犠牲を払えばよかったんじゃん、と後知恵で言われても、今の日本に置き換えて考えれば、きわめて難しいのは自明だと思うが。
    引かれているのが2次文献(もしかして修正主義の著作ばかり?)ばかりで、孫引きも多いのが気になった。著者はなく編集方針かもしれないが、参考文献一覧がないのも不便だと思う。

  • 目から鱗の記述ばかり。

    歴史から主観を完全に排除することはできない。
    ドイツや日本を擁護するというわけではなく、
    あくまでも勝者に都合の悪い出来事も丹念に洗うということ。

  • 史実も見方を変えると大いに見え方が違ってくる。FDRはアメリカ史上異例の大統領であることは間違いないが、意外と評価が高くない。その理由の一端が本書を読むとわかる。

  • 「釈明主義史観」と「歴史修正主義」。後者の立場(戦前の日本が正しかった、とかいう立場ではなくて)から、第二次世界大戦に至る過程を事実に即して追うもの。

  • It is same that the West is not relatively highly evaluated.
    It is impossible to justify their acts.

  • 第二次大戦は極悪国である日本やドイツ、イタリアなど軍国主義、全体主義の国が引き起こし、自由と民主主義の国であるアメリカやイギリスなど正義の連合国が、悪である枢軸国を倒した戦いである・・・
    これに異議を唱えたり、疑問を持ったりする人々は歴史修正主義者とされる・・・
    歴史修正主義で歴史を語る学者は、歴史学界で主流から排斥されるそうな・・・
    歴史修正主義・・・
    南京大虐殺はなかったとかホロコーストはなかったとか、そういうのも含まれてしまうのでややこしいけれども、本書によると・・・
    英米両国の外交に過ちはなかったのか?あったとすれば何が問題だったのか?と探究しようとする歴史観に過ぎない、ということだそうな・・・
    そして、別に戦前の日本やドイツは素晴らしいとか、そういった主張をするものではない、と・・・
    歴史は勝者によって作られる・・・
    と言うけれど、勝者のプロパガンダに依らず、実態はどうであったのか、を探究するのが本来の歴史修正主義であるっちゅーことですね・・・
    で、その歴史修正主義からすると、世界大戦は必要のない戦争だったという・・・
    中にはチャーチルやローズベルト(FDR)がいない方が世界は平和だったろう、とする方もいるそう・・・
    防共という点ではドイツと日本が壊滅した結果、第二次戦後の世界に共産主義が拡散したことを考えると、隠れた勝者はソ連や中共といった共産主義陣営と考えられる・・・
    チャーチルとFDRの外交は間違っていたのではないか?と疑問を持たざるをえないっちゅーわけです・・・
    チャーチルもFDRもソ連に対して親和的で共産主義に対する警戒も薄かった・・・
    第二次大戦勃発前ってのはヒトラーの犠牲者はまだ数百人程度だった一方で、既にスターリンによる100万単位の犠牲者数が伝わっていたにも関わらず、ですよ・・・
    うーむ・・・
    結果的に第二次大戦後すぐに東西冷戦の緊張をもたらしたし、世界史上でとんでもない犠牲者を出すのは2つの共産主義国でしたし、ってことを考えると・・・
    間違っていたと言えなくもないですね・・・
    結果論ちゃあ結果論ですが・・・

    で、ドイツと英仏がもし、ポーランドを巡る問題で対立せずにそのままドイツの東進を許容していれば・・・
    欧州はドイツ対ソ連の壮絶な死闘となっていただろう、と著者は言います・・・
    で、そうならずに、欧州で世界大戦が勃発してしまったのは・・・
    戦渦が拡大してしまったのは・・・
    1つには、まず根本的にベルサイユ体制があまりにも不正義で不条理だったのであり・・・
    1つには、チェンバレン英首相がポーランドの独立保障という愚策を採ったからであり・・・
    1つには、ポーランドの外交が当時の情勢からするとあまりに頑なだったからである・・・
    と・・・

    で、恥ずかしながら知らなかったんですが、ドイツは最初から英米と対決姿勢だったわけではなかったんですね・・・
    第一次大戦で敗戦したドイツは戦後の非道なベルサイユ条約で英仏を中心に徹底的に追い詰められた・・・
    海外領土や利権を全て失い、ヨーロッパ大陸の領土も容赦なく切り刻まれ、無茶な賠償金額支払わされ・・・
    英仏の強欲っぷりやそれを容認したアメリカの裏切りでドイツは身ぐるみ剥がされボロボロになった・・・
    けれども・・・
    アメリカは自らの利益のためにドイツの再建を助けたし(その結果ウォール街も産業界もボロ儲け)、イギリスも自らの利益のために次第にドイツに宥和政策をとっていった、と・・・
    ドイツが弱体化したままでは、共産主義の餌食になるし、イギリス経済にとってもマイナスであると考えたと・・・
    英米ともにドイツを利用していたわけですね・・・
    また一方でヒトラーもイギリスを恨まなかったみたいです・・・
    というかむしろ、イギリスの後ろ盾を得て、ベルサイユ条約でバラバラになったドイツを再統一し、東方に領土を拡げて、ドイツ民族の生存圏を拡大しようとしたんだそうな・・・
    イギリスの保守派にさすがにベルサイユ体制が非道過ぎると見る向きがあったし、防共という観点からも、ドイツのある程度の東方への進出(ベルサイユ体制の解消)は許容していた・・・
    オーストリア、チェコスロバキア(ズデーテンラント)、ポーランド(ダンツィヒ)の線引きの変更は、平和的手段で行うならOKということだったよう・・・
    で、オーストリア、ズデーテンラントと容認してきたところで・・・
    ポーランドで揉めてしまった・・・
    これまた知らなかったけど、当初はヒトラーはチェンバレンとの約束があったのでポーランドに好条件(イギリスの歴史家も驚くほどの)を提示して、外交による決着を強く望んでいた・・・
    でもポーランドが強硬だった・・・
    でも外交で結構粘り強く決着させようとしていたところチェンバレンが突然、ポーランドに対して独立保障を宣言してしまった・・・
    ヒトラーはこれにかなり動揺してショックを受けたそうな・・・
    チェンバレンとしてはチェコスロバキアの解体を受けてヒトラーに裏切られた!!!となり・・・
    ヒトラーからすれば、チェンバレンに裏切られた!!!このイギリスめ!!!ということになってしまった・・・
    そしてこれが大きな転換点になった、と・・・
    一般的に言われているミュンヘン協定(対独宥和外交)ではなく、こっちが大問題だった、と・・・
    ちなみにポーランドの独立保障宣言はイギリス国内の政治家やアメリカのフーバー元大統領なんかも驚き、ありえないわ!チェンバレン何やってんの?!と批判している・・・

    チャーチルに関しては、第一次大戦の頃から好戦的だったし・・・
    第一次大戦後、政治家としては不遇で・・・
    しかも大恐慌で大損して、借金で追い詰められていたところ、ユダヤ人のお金持ちに肩代わりしてもらい・・・
    その代わりに&自身が政治家として再度日の目を見るべくヒトラーそしてチェンバレン批判を強めていった・・・

    FDRに関しては、親ソ連であり、親中国であったし・・・
    火種が燻る欧州やアジアで仲介できる巨大な国力を持ちながら仲介せず、というよりむしろ火種を煽ったフシがあった・・・
    若者を海外の戦場に送らないとして大統領に異例の3選を果たしたのに、特に欧州戦線へ参戦したがった・・・
    ニューディール政策の失敗(統計で見るとよく分かる)を隠すためという説が有力とのこと・・・

    第一次大戦からドイツのポーランド侵攻までの経緯を追ってみたのが本書ですが・・・
    第二次大戦は一次大戦後の国際秩序を乱した、全体主義で軍国主義の悪の枢軸国による他国への侵略が原因である・・・
    とは・・・
    一概には言えないもんですね・・・
    原因にも原因がありますし、戦争って相手があってのものだから、一方的なものではないことの方がほとんどでしょう・・・
    本書で言う歴史修正主義ってのは語られてない歴史というものに目を向けるオハラみたいなもんですね・・・
    ワンピースの世界なんかもそうですが、勝者は当然自分たちの正当性を主張するもんなんだから、語られている歴史ってのは注意しないといけませんね・・・
    参考文献も興味深いものが多く、フーバー大統領の本とかちょっと読んでみたい・・・
    とても参考になり面白かった!オススメ!

  • 【世界的スタンダードとしての「歴史修正主義」】二つの世界大戦は必要も理由もない戦争だった。戦後の「公式」の歴史観は、その「必要」や「理由」をいかにでっち上げたか。

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著者プロフィール

日米近現代史研究家。北米在住。1954年静岡県下田市出身。77年東京大学経済学部卒業。30年にわたり米国・カナダでビジネスに従事。米英史料を広く渉猟し、日本開国以来の日米関係を新たな視点でとらえた著作が高く評価される。著書に『日本開国』『日米衝突の萌芽1898-1918』(第22回山本七平賞奨励賞受賞)(以上、草思社)、『アメリカ民主党の欺瞞2020-2024』(PHP研究所)、『英国の闇チャーチル』『ネオコンの残党との最終戦争』『教科書に書けないグローバリストの近現代史(茂木誠氏との共著)』(以上、ビジネス社)など。訳書にハーバート・フーバー『裏切られた自由(上・下)』(草思社)など。

「2023年 『オトナのこだわり歴史旅 伊豆半島編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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