僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう (文春新書)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611188

作品紹介・あらすじ

どんな失敗をしてもいい。学生時代にやった失敗は絶対に無駄にならない。――第一章・山中伸弥ある種の小さな挑戦とか、冒険、あるいは身近で未知なるものに出会うという機会を求めていくことは、非常に大切なのではないかと思います。――第二章・羽生善治僕はこの仕事を始めたころ、なぜ撮るんだろうという、すごく根本的なことで悩んだことがありました。――第三章・是枝裕和自分にしかできないことは何だろうと、思っていたほうがいい。あなたというのは、この世にひとりしかいないんだから。――第四章・山極壽一あんな偉い人でも、なんだ自分と同じじゃないかということを感じ取ってほしい――永田和弘

感想・レビュー・書評

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  • 京大名誉教授でありかつ詩人の永田和宏氏と山中伸弥氏、羽生善治氏、是枝裕和氏、山極壽一氏という超一流の人たちの講演とその後の永田さんとの対談を収録したのが本書である。

    山中さんとの対談では、大学はそれまでと違い答えがある問題の正解を探すのではなく、誰も答えを知らない、もしくは答えがあるかどうかもわからないが、大切な「問い」を自分で見つけるという態度を学んでほしい、というところが心に残る。大学に入ったときにまず第一に欲しい言葉だ。自分はこれがわかっていなかった。

    羽生さんとの対談では、ミスをした直後には後悔して過去に引きずられることなく「自分の将棋は次の一手からはじまる」とその場に集中する、というところが心に残る。それはすでにもう起こったことなのだ。

    是枝監督が、名作『そして父になる』でのリリー・フランキーの深い演技に触れるところは印象的。ぜひ読んでほしい。

    山極教授が、他の霊長類と比べて人間の一番重要な能力は「諦めない」というところという視点は面白い。

    それだけの人からは、やはりとても素敵な話を聞くことができるのだと思う。
    本として、軽く読める分量。対談本としては、コンセプトも理解できるし、よくできている方だと思う。

  • 山中伸弥さん、羽生善治さん、是枝裕和さん、山極寿一さんそれぞれと永田和宏さんとの対談。

  • みなさん本当によくものを考えていらっしゃる。永田さんが聞き上手。iPSのiが小文字なのって…

  • 先に読んだ続編もそうそうたる人たちだったけど、本書はそれを上回るような山中伸弥、羽生善治、是枝裕和、山極壽一というすごい面々。ま、男性ばかりという点では、女性と男性が2人ずつだった続編のほうがバランス的にいいけどね。
    もともとは永田和宏さんが教鞭をとる京都産業大学で学生向けに開いた講演会を本にしたもの。ホストの永田さんはすごい面々に、失敗を語ってほしいと依頼したとか。失敗を語ってもらうことで、学生たちに身近に感じてもらい、そうすることで「この人のようになりたい」というあこがれやロールモデルを見出してもらうようにしたいとの思いから。
    そういえば書中で、たしか永田さんが、最近の若い人たちは目指したり尊敬する対象がいないんじゃないかみたいなことを述べていて、ふと思ったことがあった。最近……でなくてもここ20年くらい、「尊敬するのは親」なんてのたまう若者が増えてきた気がする。これが以前だったら、歴史上の偉人とか身近でも恩師のような立場の人が挙がっていた気がするんだけど……。こういう傾向も永田さんの懸念とシンクロしていると思う。
    4人ともすごいんだけど、確かに身近に思えてくる。すごく頑張るのではなく、目の前の状況を受け入れ、その場その場でちゃんとやってきたということなのかなあ。
    講演の後に永田さんとの対談があるんだけど、これがすごくいい。ゴリラの研究をしてきた山極さんのところで、コミュニケーションの何たるかに触れているんだけど、まさに一人でしゃべるのと会話のやり取りをするのとの違い……というか、意味ある会話の魅力が詰まっている。

  • どの人もさすが第一線で活躍されている方。こんな風に歳をとりたい。

    山中伸弥…20代はなんでもいいから失敗してでも打ち込めるものを見つけて貰いたい。それと体力は裏切らない。

    羽生善治…失敗を挽回できないほど重ねないこと。ミスを重ねないためには「その時点から見る」という視点が大事。「次の一手から始まる」とその場に集中していく。様々な物差しを持つと何かに挑戦する時に必要以上に不安にならないし考えすぎない。結果だけを求めると上手くいかず苦しくなることもあるが、プロセスの中で「面白い!やって良かった」という感動を見つけられることが挑戦を続けることの支えになる。挑戦をスムーズに続けるにはどこまでアクセルを踏んでどこでブレーキを踏むか適切な判断ができるかにかかってる。相手の立場で考える難しさ。相手の立場に立って自分の価値観で考えてしまう。

    是枝裕和…読者は目に見えない存在。うなづいているかどうか殆ど自信が持てない。だがみんなに分かってもらおうとすると最大公約数になってしまい、何も面白くない。もっともらしい言葉がないのがいい。
    世界はいつも自分の文脈の中で認識される。文脈を外れてそれ以外の見方で接することは中々難しい。悪を排除して解決できることなんて、実は大した問題ではない。真っ白と真っ黒を放棄したグレーゾーンの中で物語を作り続けたい。

    山極壽一…勝つ論理と負けない論理。どちらも共存するためのルール。勝とうと思ったら相手を屈服させなければならないから、恨みを買ったり、相手が自分を避けたりする。しかし負けない論理のゴールは相手を押しのけることではなく友好的に共存することだから相手を失わない。自分にしかできないことは何だろう、自分だからこそできることを探す。それが自分の知識をまとめることにも繋がるし、他人が考えたのではないことを自分が考えることにも繋がる。動物は諦めが早いが、人間はしつこい。

  • 図書館で借りた本。iPS細胞の山中伸弥さん、将棋の羽生善治さん、映画監督の是枝裕和さん、ゴリラなどの研究者でも有名な京都大学総長の山極寿一さん。京都大学名誉教授でもあり京都産業大学タンパク質動態研究所所長の永田和宏さんが上記の方々との対談を集めた対談集でもあり、講演内容も掲載されている。偉大な肩書きを持つ人達がどのように育ち、人生の分岐点でどう決断したか?挫折にぶつかった時、何を思い乗り越えてきたか?など為になる話が多く読めた。

  • 素晴らしい、著名な方々、偉人を一定人たちが何を考えているかを語ってくれている。
    どういう姿勢で物事を捉えているかを話してくれている。
    特に初めの二人が良い。
    山中先生の苦手なことで挫折したけど、新しくチャレンジして得意なものを突き詰めていって成功するあたりの話は非常に重要。
    羽生さんの感性・理論としての将棋の向き合い方も素晴らしい。
    自分の好奇心に従ってトコトン突き詰める。この姿勢を大事にしたい。

    大事な一歩は自分で決断して移動すると決めたこと
    アメリカに行くことで、「こんなにすごい人がいるんだ」「なんだ、自分と同じじゃないか」という2つの現実を知ることができる。
    良い研究と同じくらい、どう講演で発表するかが重要。
    何をしたら正解というのはないが、何もしないというのだけはやめてほしい。なにか打ち込めることを見つけて欲しい。

    誰でもミスはする。その後にミスを重ねて傷を深くしないことが大事。「今、初めてその局面に出会ったのだとしたら」というその時点から見る姿勢が必要。
    挑戦には「様々な種類のものさしを持つ」事が大事。これを持てば不安にならずに進める。
    挑戦に結果を求めると上手くいかない時に苦しさが出る。そのプロセスの中に「面白い、価値がある」という感動を見つけられることが原動力になる。
    新しいアイデアは実はあまりなく、今までにあるアイデアとアイデアを過去に例がない組み合わせで用いている、事が多い
    情報化社会により、スタートラインに立つための情報量のハードルが高くなっている。
    手堅い手法を続けることは、短期的にはリスクは低いが、長期的にはリスクが高い。挑戦することが安全策の場合もある。
    冒険や小さな挑戦、身近で未知なるものに出会う機械を求めることが大事。

    レンズ、カメラを通すことで、普段そこにあるけど見ていないものに気づくことができる。

    自分にしかできないことを探す、他人にできることはその人に任せる。
    諦めなけれはいつか何らかの方法で叶う、だけどいい塩梅で見極めることも大事。「いい加減にしよう」と言ってくれる友だちがいれば良い

  • 歌人の永田和宏氏がホストで私の好きな是枝監督、ipsの山中教授、(他将棋の羽生氏、山極氏)との対談集。
    ここまで一角の人物になるにはいろいろな苦労や下積みがあったからこそ。そこであきらめたり腐ったりしてたらそこで終わりだものね。
    あきらめない才能ってあるんだね。

  • 「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」 山中伸弥 羽生善治、是枝裕和、山極壽一、永田和宏
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    京都産業大学での講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」。どんな偉大な人にも、悩み、失敗を重ねた挫折の時があった。彼らの背中を押してチャレンジさせたものは何だったのか。
    「BOOK」データベースより
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    すごい人たちの講演と対談をまとめたものです。
    山中伸弥さんと羽生善治さんが何となく好きなので買ってみました。

    この講演・対談は大学で行われたものだそうです。
    講演・対談の趣旨としては、
    『最近の大学生たちは「あの人と自分は最初から違う人種」とか「あの人は特別だから」というある種の線引きを最初にしている。
    なので「あの人のようになりたい」とか憧れをもつこと自体少なくなっているように感じられるけど、実は一流の人たちも自分たちと同じような人間で自分らとそんなに違わないんだよということを、若者にも知ってもらいたい』
    みたいな感じです。

    最近の若者が、っていうわけでもないと思うけどね。。
    最近の若者をうみ出してきた最近の中高年がこういうおまじないを唱えて生きてきた結果、最近の若者がそれを受け継いでるだけで。。。
    年齢問わず、今を生きる多くの人がある程度は当たり前に持ってる考え方なんじゃないかしら。

    「あの人と自分は最初から違う」っていうのは真実でもあるのだが、都合よく線引きするにとても便利な言葉だと思う。
    「あの人と自分は最初から違うから、自分には無理」という思考をいろんな場面で使うようになっちゃうと、あんまりよろしくはなさそう。

    あと、相手が芸能人だと「芸能人なんだからこれくらい言われるの当然」みたいに、芸能人特別枠でバッシングすることもよくある気がする。
    けど、私はこれも個人的にあんまり好きじゃない。
    なんか、自分と違う枠で都合よく扱って、大事なことが色々見えなくなったり気づけなくなってく気がして。。
    こないだワイドなショーで髭男爵の人が、一般人から浴びせられる辛口評価にたいして
    「その厳しい目、自分自身の人生に向ける勇気ある? あるんやったらいいんですけど」 
    って言ってたんだけど、それよね。
    なんか、他人を別枠扱いにして、自分自身のいたらなさや努力不足から逃げてんのはあんまりかっこよくないなぁと思うのよね。
    まぁかといってストイックに生きるのはしんどいし、適度に活用するくらいならアリだと思うけどさ~。私だって時々「あの人は最初から違うわ」とか言うし。
    ただ、使いすぎには気を付けたい。


    話は戻りますが、本の内容について。
    講演や対談を本におこしたものなので読みやすいです。
    すぐ読めます。
    そんで、グッとくる一言も多いです。
    経験値をたくさん積んでる人は、経験値を集約して、極めてシンプルな理論を確立させてるなぁ、というのを全体を通して感じました。
    またこのシンプル理論がなんともいい具合に響くのだ。
    こういうシンプル理論は、40年近く生きてきた普通レベルの私でも多少あるんだけど、バラバラしてたいろんな経験とか知識の集合の中から共通項を発見するってなかなか面白いのよね。
    世の理を発見した気になる、みたいな?
    学者さんに将棋の名人、映画監督などジャンルは違うけど、その道を極めた人の話は面白い。
    世界に名を成すような人だけでなく、近所のママ友とか、別の職種の友達とか、普通の人たちでも、話してみるとその人なりの仕事論とか、その人が見つけた真理とか垣間見えるときがあってすごく面白いなぁと思う。
    偉人じゃなくてもさ、人の生きざまを知るってのはそれだけで面白いもんですよね。
    家族も同じで、親の生きざまも意外と知らないから、年取ってから若い頃の話を聞いて新発見することもあるし。
    うちのじいさんに至っては、亡くなってから実はバツイチだったって聞いて家族一同びっくりだもんね(笑)
    この本のなかではそこまで各自の人生を掘り下げてるわけでもないので、「こんなすごい人も実は若い頃は普通だったんだ」と思うにはちょっと物足りない感はあるんだけど、でもやっばその人の人となりを知れるので面白いです。

  • 久しぶりに良い新書に出会えた。
    様々な分野の先生方、誰でも名前を知っているような方々がどうやってそうなっていったか、「何者でもなかった頃」が見えるようだった。
    確かに元々持っていたセンスはあるのかもしれないけど、そういった方でも道を迷いながら、それでも興味を追求して今があるのだと思った。
    私も人生に一本の線がひけるような人になりたいと思う。

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著者プロフィール

山中伸弥 1962年、大阪市生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了(博士)。米国グラッドストーン研究所博士研究員、京都大学再生医科学研究所教授などを経て、2010年4月から京都大学iPS細胞研究所所長。2012年、ノーベル生理学・医学賞を受賞。2020年4月から公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団の理事長を兼務。

「2021年 『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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