発達障害 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 643
レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611232

作品紹介・あらすじ

「人の気持ちがわからない」「同じ失敗を繰り返す」「極端なこだわり」……ASD、ADHD、アスペルガーの謎に迫る!近年、ドラマや小説の主人公に「発達障害」を思わせるキャラをよく見かける。たとえば2016年にヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)の主人公・津崎平匡。彼は高学歴だが対人関係が苦手で応答が画一的、些細なことへのこだわりが強い、という設定。アメリカの人気ドラマ『クリミナル・マインド』の主人公リードは、FBIのエリート捜査官で、IQ187。彼は飛び級を繰り返してカリフォルニア工科大学で数学、化学、工学の博士号を取得し、驚異的な記憶力と分析力で難事件を解決する。しかし、他人の気持ちがわからず、空気が読めないため、周囲からは煙たがられている。こうした発達障害の特性をもつキャラがポピュラーになった影響か、精神医療の現場では「自分は発達障害かもしれない症候群」がみられる。「他人の気持ちがわからない人」「空気が読めない」ことを家族や同僚から指摘され、外来を受診する人が増えているのだ。実際、人口の約5~10%が該当するという研究報告もあり、周囲にこんな人がいる、と思い当たる人も少なくないだろう。その一方で、誤解も蔓延している。動機が不可解な少年犯罪や猟奇的な事件で、根拠もなく「アスペルガー症候群」との関連が不適切に取り沙汰されたこともある。本書は、日本初の「発達障害のためのデイケア」を運営する病院長が、○発達障害とは何か?(正しい知識)○彼らが抱えている問題は何か?(課題)○どのように社会が受け入れていくべきか?(社会の対応) ……を、豊富な症例をもとに、初心者にもわかりやすく解説した作品だ。事件の精神鑑定の裏側、天才(驚異的な記憶力、共感覚など)、歴史上の人物の例など、興味深い症例も盛りだくさん。新年度を控えていろいろな人との出会いが増える中、必読の一冊だ。

感想・レビュー・書評

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  • ASD、ADHD、アスペルガー症候群など、発達障害の症状や症例が豊富。
    事件性のある症例や、いわゆる偉人となった例などが挙げられていたりもしているが、多くは日常的な生活が「送りにくい」とか、周りより「トラブルが多い」人なのではないかと思った。

    私としては、どんな風に対応をしていけばいいのかとか、どんな医療機関やケアがあるのかという方をもっと詳しく知りたかった。
    もちろん、ネットで調べたら情報は出てくるだろうが、こうした書籍で網羅的に扱ってくれると、信憑性という点でやや安心できる。(まあ、新書だからってそう変わらんよ、という意見もあるかもしれないけれど)

    成人してからの発達障害を扱う施設は少ないとある。
    また、医師がそう判断せず、本人の甘えだとしたケースもあった。

    私も、とても苦しくて医療に助けを求めた時、それはあなたの性格だ、とだけ言われたことがある。
    多くの、酷い症状を抱える患者の中では、その程度と思われることだったのかもしれない。
    けれど、救われなかった残念な思いが、今も少しの不信感として残っているのは事実だ。

    知ろうとする人、疑い悩む人への、結果ではなく過程の優しさがあれば、当事者にとっては違うのかもしれない。

  • 名探偵シャーロック・ホームズ。
    映画「風立ちぬ」の堀越二郎。
    ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の津崎平匡。

    「少し変わったところがあるが、特定の分野におちて驚異的な能力を発揮する天才タイプ」として、アスペルガー症候群の人たちが好意的に取り上げられている。

    ここ数年「発達障害」という言葉は、ポピュラーなものになった。

    だがその反面、誤解も多い。

    裁判で採用された精神鑑定ですら、臨床の専門家の著者などから見ても明らかな誤りであるケースが散見されるという。
    少年事件における被告人の刑罰減免のために「発達障害」という病名が濫用されている実態があるのだと。

    毎回同じことをし忘れる、目にしても気づかない。
    話し出すととまらない、話がとぶ。
    ものの置き場所にこだわる。

    著者は、昭和大学烏山病院長として、発達障害の人のためのデイケア、リワークプログラムに取り組んでいる。
    一筋縄ではいかない状況なかで、トライ&エラーを繰り返し、生活の中で感じる「生きづらさ」への対処、どのように本人の個性を生かした生活をしていくかを検討するのが目標だという。

    本人も、家族も、周りの人々も、そして行政、医療関係者が、実態を正しく捉えて対処していくことが肝要なのだと。

  • ADSやADHD、きちんと診断できる医師が少ないことが問題だと分かった。別の精神障害と誤診され不適切な治療を受けて問題を悪化させてしまっていることがある。

  • 岩波明(1959年~)氏は、東大医学部卒、精神生理学を専門とする精神科医。東大医学部精神医学教室助教授、昭和大医学部精神医学教室准教授などを経て、現在同主任教授兼同付属烏山病院長(ADHD外来を担当)。
    本書は、「発達障害」の中で、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」(アスペルガー症候群を内包する)と「注意欠如多動性障害(ADHD)」を取り上げ、それらの典型的症状・診断基準、それぞれの共通点と相違点、アスペルガー症候群に対する誤解、発達障害と犯罪との関係、そして、発達障害を社会でどのように受け入れるべきか等について、ADHD患者の臨床医として解説したものである。
    私にとっては、人間の脳の複雑さは長年の関心事のひとつである。そのきっかけの一つは、サヴァン症候群のキム・ピークをモデルに、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズが主演してアカデミー賞を受賞した、1988年の映画「レインマン」にまで遡るが、その後も、神経学者オリバー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』等の著作、サヴァン症候群といわれるダニエル・タメットの自著『ぼくには数字が風景に見える』、1998年生まれで、アインシュタインよりIQが高く、早くもノーベル賞のホープと言われる、自閉症のジェイコブ・バーネットの成長を母クリスティンが綴った『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』、2004年の佐世保小6殺人事件を扱った『謝るなら、いつでもおいで』などのドキュメント物(本書の中でもそれらの多くが言及されている)のほか、専門家が一般向けに著した書籍も読んできたが、本書もその一部として手に取った。
    そして、読了して感じたのは、これらの障害に対する認識・理解がまだまだ進んでいないということであった。私は、一般人にとっては、そうした人びとに接する機会自体が多くはないと考えていたのだが、本書で取り上げられている、著者が実際に外来で接した数多くの事例や、発症率から推測すれば、学生時代には間違いなく周りにいたであろうし、現在の職場の中にもいる可能性が十分にあり、自分自身、全く認識が足りていなかったというのが正直なところである。また、一方で驚いたのは、専門の医師の間でも、(著者によれば)明らかな誤解・誤診が少なくなく、何と、犯罪者の精神鑑定においてすら(だからこそ、なのかも知れないが)そうであるということであった。(ただ私は、著者が取り上げたいくつかの事例の分析において、「サイコパス」という見解が全く出てこなかったことには少々疑問を感じている。。。)
    著者は後段で、自らの臨床医としての立場から、発達障害を持つ人びとをどのように支援していくべきかに力点を置いて解説をしているのだが、眼に見えない障害を持つ人びとに対し、社会は何ができるのか・何をすべきなのかについて、一人ひとりが考えていく時期に来ていると改めて感じた。
    (2020年8月了)

  • 自分の発達障害について知りたくて書店で購入、読了しました。

    読み応えがありました。学びたいことを学ぶことの出来た一冊です。

    一言で言うと「診断名・概念の歴史的背景」が大部分という感じです。医学史上の概念の変遷だとか、日本ではどのように受容・誤解されてきたのかを考えるのには非常に良いと思いました。また、最後の方では著者が勤務している病院での「デイケア」についても触れられています。

    私も(病院は違いますが)デイケアに通っています。
    まだ7ヶ月と浅いですけれど、最近になってようやっと「自分がデイケアに通う意味について学んで、冷静になってこれからのこととして考えてみよう」という気持ちになりました。ですから、丁度タイムリーだったなと思います。

  • ●発達障害について知りたくて読んだ。どういう病気なのかはもちろん、主にマスコミによる報道の結果、世間での発達障害への誤解について解説している。

  • 事例を交えた内容は、分かりやすく興味深かったです。
    ASDと犯罪の関係が取り沙汰されていますが、生育歴が関係している場合も。
    ASDだから、という考え方は安直過ぎ。マスコミ報道に踊らされたくないです。

  • 発達障害という疾患について、その中心的なASDとADHDを詳しく述べることによって説明されています。一つひとつ丁寧に書かれていて、この症状に対しての出来るだけ正確な理解をすることによって、世の中にはびこる偏見をなんとかしたい著者の趣旨が伝わってきます。症状の例が述べられていますが、それは一つだけ取ったら一般にもあることで、それが様々な誤解に結びついていることが良くわかります。複数に当てはまれば発達障害ではなく、発達障害だから複数の症状が出ているということに気をつける必要があるのだと思います。この症状に苦しんでいる方々や、それを支援する様々な活動と、世の中の関心の薄さからくる偏見や誤解。本書を読むことで、この方々に対する総合的な理解をすることができます。

  • 奇異な言動をしている、理解不能な理由で殺人などを起こしているのは全て発達障害のせい、と決めつけるのは早すぎるということだけは分かりましたが、もう少し分かりやすいものが読みたかったので、求めていたものとはちょっと違うかなと。
    発達障害なのか性格なのか違う病気なのか。精神科医でも判断が難しいらしいというのが、奥深さを感じます。

  • ASDとADHDのちがいなど。
    シネステジア(共感覚)ってどんな感じなんだろう。文字や音に色を感じるって、ひとによってその色は違うのだろか。
    就職して初めて症状に気づくパターンが多いとか。
    凶悪事件と病気の関係など、世界の深さと救いのなさ、リアリティとファンタジーの混沌にもんもんした。

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著者プロフィール

昭和大学医学部精神医学講座主任教授(医学博士)。1959年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積む。東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学准教授などを経て、2012年より現職。2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼任、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能障害、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。著書に『他人を非難してばかりいる人たち』(幻冬舎新書)、『精神鑑定はなぜ間違えるのか?』(光文社新書)等がある。

「2020年 『医者も親も気づかない 女子の発達障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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