- 文藝春秋 (2017年7月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784166611324
作品紹介・あらすじ
音楽に疎い人でも、ストラディヴァリウスとグァルネリの名前は聞いたことがあるはずです。ともに、17~18世紀に活躍したヴァイオリン製作者です。
その銘器は、1挺数億円で取引され、スター・ヴァイオリニストは、必ずどちらかを使っているといっても過言ではありません。
しかし、この銘器たち、どこが他のヴァイオリンと違うのでしょうか? よくテレビで、1挺ウン千万円の銘器と、数十万円の普及品とを同じ奏者に弾かせて、どちらが本物の銘器かを当てさせる番組を放送していますが、かなり著名な音楽専門家でも、ものの見事に外しています。じつは海外でも、同じような試みは何度も行われています。しかも、本物のストラディヴァリを使い、聴き比べに参加した人たちも、世界一の楽器商であったり、スター・ヴァイオリニストであったりするのですが、これも見事に外しまくっています。そして、結論は、「ストラディヴァリと現代のものとの間に音色の違いはない」!
驚くべきは、その先です。そんな残念な結果が出たにもかかわらず、ストラディヴァリの相場は下がるどころか上がる一方だったのです。 こんなことが、なぜ起きるのでしょうか?
音楽プロデューサーである筆者は、世界に広がるヴァイオリン製作者、ヴァイオリニスト、弦楽器商の人脈を駆使して、この謎に挑みます。とくに、筆者自身がかかわった銘器の取引の実態、または、これまでほとんど知られていなかった贋作の歴史と「作り方」は、驚くべき内容です。
ストラディヴァリとグァルネリの人生、2つの銘器を使った名人たち、ヴァイオリン成立の歴史とその構造、奇人としか言いようのないコレクターたちの人生など、基本事項もしっかり押さえられていますし、貴重な「本物の鑑定書」も図版で紹介しています。
音楽ファンも、そうでない人も、最後まで一気に読みきってしまうこと請け合いです。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
音楽の歴史とその背後にある人々の物語が織り交ぜられたこの書籍は、ストラディヴァリウスとグァルネリという名器の魅力を深く探求しています。著者は音楽プロデューサーとしての豊富な知識を活かし、ヴァイオリンの...
感想・レビュー・書評
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かつてバイオリンをかじったことがあり、少しはこの世界の知識がありましたのでこの本を手に取りました。結果、予想を超える面白さでした。バイオリンという楽器そのもの奥深さ、不思議さ、それを取り巻くいい意味で常軌を逸した人達の存在とそれに纏わるストーリーなど、コンパクトに詳しくわかりやすく、愛情を持って書かれた本という印象です。
名器による演奏をまた聴いてみたいと、感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<楽器の不思議>
音楽家は、楽器を超える演奏をすることが出来ない。
ヴァイオリニストの諏訪内晶子は、ストラディヴァリを手にして、その楽器によって演奏家として成長していったと語っている。
バイオリンの寿命は、実に600年。
中でも長命のストラディヴァリは、2000丁作成され、現在600丁が現存、内100丁が使用されている。
一方、ストラディヴァリのライバルであったグァルネリは、若死にしたため、作成数は200丁に止まる。
20世紀を代表する大ヴァイオリニスト、メニューインは、ストラディヴァリを正妻、グァルネリを愛人に譬えた。
ヴァイオリニストでないから、メニューインの真意は理解できないが、何となく分かるような気がするから面白い。
ナチス•ドイツと軍事同盟を結んでいた頃、ヴァイオリニストの諏訪根自子は、ドイツで演奏会を行い、ナチスの宣伝大臣ゲッベルスから”ストラディヴァリ”を贈呈される。
“ストラディバリ”を持って凱旋した諏訪は、日本で演奏会を開く。
その演奏会を聴いていたのが小林秀雄だった。
諏訪の”ストラディヴァリ”の演奏を聴くや、彼は「偽物」と断定した、という。
実は、それは「偽物」だった。
小林秀雄、恐るべし。
作者は、音楽に造詣の深かった政治学者、丸山眞男の門下。 -
作者の知識が豊富で固有名詞の登場が多く、本筋とは別の話も含まれるため、話の展開に慣れるのに時間がかかりました。
ですが一度慣れるとヴァイオリンの世界に引き込まれます。
134pより、ヨーゼフ・シゲティの演奏に対する作者の表現を読んだだけでもこの本を読んだ価値があったと思っています。
「ヴァイオリンの音色はぴんと張った純銀の糸のような緊張感を持ち、晩秋の霜を想わせるように厳しかった……禁欲の美学とでも評したいような独特の美しさが心に刻まれている」
ストラディヴァリ、そしてグァルネリの生涯について、またアマティやガスパロ・ダ・サロなどのヴァイオリンの生みの親たち。
ヴァイオリンに取り憑かれたコレクターたちなどの歴史を軽くさらうにはいい本だと思います。
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一般論として、対象は何であっても人は自分について書くことになるということ。ストラディヴァリについて2冊の本を続けて読んだせいか、改めてその視点の違いが作者の背景に依っていることを思う。中野氏の音楽に対する造詣、現役の演奏会とのエピソードが随所に挟まれていて、とても興味深く読むことができた。
この作品の嚆矢は、作者の中野氏が丸山眞男の弟子であり、丸山の発言を使ってストラディバリとグァルネリと言う、現代の技術をもってしても凌駕することができないバイオリンが作られた秘密に迫ろうとしているところにある。「ある時代の最先端を行くメディアには時代の才能が集まるんですよ、」
現代のヴァイオリン製作者たちの嘆きが聞こえてきそうだ。
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先人たちによるストラドヴァリウスやガリネルの著書の引用で構成されているのかと思えば、さにあらず。アマチュア演奏家でもある著者が、実際にストラドヴァリウスの楽器を弾いた時の感触や印象、楽器修復家へのインタビュー、名器売買や口利きに関わった経験、何よりビジネス界で培ってこられた経験や恩師丸山眞男氏からの言葉を用いた御自身の産業史観も非常に興味深い。
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2大銘器といわれるストラディヴァリウスとグァルデリ・デル・ジェスの製作者たちの人物と時代(17世紀終わりから18世紀前半)・場所(イタリア・クレモナ)を探り、なぜ彼らの作品が銘器なのかを追究。このように木の材質、ニス、塗料、溶剤、形状、穴の形その他の多くの要素が重なって銘器が生まれているとの分析。銘器にはそれぞれ愛称があり、名演奏家たちの所有者歴が残っているのも面白い。2大銘器の音質の特徴も分かりやすい。2人の巨匠の他の人たちの中でも1550年ころにクレモナの町でヴァイオリンを発明したアマティー以来、ほとんど変化も進化もしていない!凄い大発明だ!紹介されている多くのエピソードも楽しい。ナチスのゲッペルスから諏訪根自子に贈られたストラディヴァリウスは実は偽物だった。1946年10月3日の帰朝演奏会において、それを絶賛する多くの声の中で、小林秀雄が書いていたという文章。「あのヴァイオリンは偽物だと思うね。あんな固い音が出てくるわけがない。18世紀のヴァイオリンの音は少しもでていない、イミテーションをもらったと思う。新しい木の音だ。可哀想な楽器だよ」(「直観を磨くもの」から)流石にすごい人だ!! この他にも諏訪内晶子のストラディヴァリウスとの出会いの話、ヒューブナーのホテルでの演奏音の話など、枚挙にいとまないほどの豊富なエピソードの数々だった。
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銘器にまつわる,絡み合った歴史,価値,そして人が必要十二分に描かれる.御自身アマチュアヴァイオリニストでもあり後年オーディオ機器メーカ経営者でもあり,その道の錚々たる面々と交流があったこともあり,まさに数寄者であるため,さらに丸山眞男氏の弟子であることもあって,言葉の説得力,重みが他の追随を許さないほど異なる.読み応え抜群.
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【その価格、音色、構造の謎を解き明かす!】三百年前に作られたヴァイオリンが、いまだにナンバーワンなのはなぜか? 製作者、演奏者、楽器商のエピソードから、その謎に迫る!
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