自動車会社が消える日 (文春新書)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611478

作品紹介・あらすじ

いま自動車産業では100年に一度のパラダイムシフトが進んでいる!生き残る会社はどこだ?クルマの「スマホ化」が進み、EV(電気自動車)、自動運転車の開発にはIT企業や新興企業が相次いで参入。技術力をつけた巨大部品メーカーも台頭している。トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、VWは、この大変革にどう立ち向かうのか。〈第1章 スマホ化するクルマ〉「鉄の塊」ではなく「ソフトウェアの塊」となったクルマ。海外ではプラットフォームの座をめぐる争いが始まっている。〈第2章 バーチャル・エンジニアリングという脅威〉ユーザーには見えない開発・製造プロセスもデジタル化で変わり、日本の強みである「匠の技」が弱点に?〈第3章 合従連衡 2000万台の攻防〉開発コストの増大にともない中途半端な規模のメーカーは厳しい。スケールメリットと新技術を目当てに世界ではM&Aが加速する。〈第4章 トヨタ自動車 巨人の憂鬱〉環境の変化に合わせて先端事業の強化、系列再編、異業種との提携など矢継ぎ早に手を打つが……。「トヨタの敵はトヨタ」なのか。〈第5章 VW 史上最大の改革〉ディーゼル不正問題を機に改革へ乗り出した日本車の最強ライバル。社内では「我々が車を作る必要性があるのか」という議論が。〈第6章 日産 ゴーンが抱く世界一という野望〉ひと足はやくEV戦略を展開し、三菱自の買収を皮切りにM&Aにも意欲的。その活力を探ると「ダイバーシティ」に行きあたった。〈第7章 ホンダ ソフトバンクに刺激されるDNA〉迫りくる「規模の危機」を前に、自前主義を捨ててオープンイノベーション戦略を打ち出した。創業者が持っていた起業家スピリッツは蘇るか。〈第8章 マツダ 危機こそが革新を生む〉いち早く最先端の手法を導入して経営危機から復活。そのプロセスには日本の製造業が学ぶべきテーマが詰まっている。

感想・レビュー・書評

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  • 昨今、自動車業界は最大の転換期を迎えているといわれています。エンジンからモーターへの駆動系の変化、ネットへの接続、自動運転への移行などの変化が一気に進もうとしています。
    これら一連の技術の簡単なおさらいと、これらの変化によって主なメーカーはどのような問題を抱えているのか等について解説しています。本書で取り上げられているメーカーはトヨタ、VW、日産、ホンダ、マツダです。中でもマツダの部分は非常に興味深い内容でした。
    一時期は経営難に陥ったマツダが最近は非常に好調です。この復活の裏には設計手法の大転換があり、それは他の日本メーカーの追随を許さないレベルで運用されている事実があります。これら設計手法の概要や、なぜトヨタはマツダとの経営統合に踏み切ったのか等の解説は新聞記事だけでは分からない情報でした。
    この転換期に日本の自動車メーカーが先を見誤り、「昔は日本の家電は世界一だった」と言われるように、「エンジン車の時代は日本の車は世界一だった」と過去形で語られる事態とならないことを願うばかりです。

  • ここ数年で自動車業界において再編・連携があり報道もなされていました。報道内容を表面的に見る限りでは、三菱自動車は日産に吸収合併、トヨタとマツダの連携も規模の違いからトヨタによる事実上の合併であろうと私はなんとなく理解していましたが、この本を読むことで、それは大きな誤りであることに気づかされました。

    この本を執筆された井上氏は、自動車業界について長い間調査を続けており、新聞情報では見られないような内容、その考察が書かれています。

    欧州車の偽装問題があったかと思えば、欧州や中国ではハイブリッド車を飛び越して、一気に電気自動車の世界へ移行するかもしれません。今まで何度か電気自動車ブームがあって萎んできましたが、インターネット技術・シェアリングエコノミーが進展するなか、また、若者たちの意識が変わってきた今では、何度かの挫折を乗り越えてインターネットが最終的に普及したように、電気自動車がメインになる時代が迫っているのかもしれません。それも遠くない将来において、私が今の会社に勤務している間にもやってきそうな予感がしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ユダシティ(企業名、オンライン教育のベンチャー企業)の野望、1)技術の標準化、2)車のプラットフォーム獲得、これらは競争のルールを変えようとしている。その中枢にドイツや韓国の企業が入り込む中で、日本の企業が食い込めていない(p21)

    ・ボッシュはFOTAと呼ばれる車載ソフトウェアを無線でアップデートする事業を2018年に開始、日本では2019年から、これによりスマホのアプリの様に新バージョンにアップデートできる(p26)

    ・タイヤメーカからメガサプライヤーに成長したコンチネンタルに限った話ではないが、ドイツでは部品メーカと完成車メーカにおける技術面における力関係で逆転現象が起こりつつある(p30)

    ・自動運転車の分野では、インテル連合と、エヌビディア連合がある、トヨタはGPUの自社開発をあきらめ、エヌビディアの軍門に下ったとも見れる(p36)

    ・自動運転でコアになる技術、1)目となる画像処理、2)データ処理により、エンジン・ブレーキに指示を出す人工知能、3)半導体技術、並行演算、4)三次元地図(p39)

    ・CADは手作業をデジタル化したもので、業務効率化に入るが、バーチャルエンジニアリングは、自動車産業の開発思想を抜本的に変えてしまった、この開発手法「モデルベース開発・MBD」を使って初めて成果を挙げた国内メーカがマツダである、モデルを精査することで、実物のエンジンを使った試験データと、バーチャル試験のデータを同じにできる(p54、56)

    ・ドイツの自動車メーカは、日本勢にかつために、生産技術で勝負するのではなく、開発領域で対抗しようとした。設計者をサポートするために、バーチャルエンジニアリングのツールを開発する会社が台頭してきた(p59)

    ・トヨタの狙いは、自身の規模拡大よりも、運命共同体ともいえるデンソーやアイシン精機など系列部品会社の規模拡大である。トヨタが誇るハイブリッド技術は優れているが、それを採用する自動車メーカは少ない、世界の潮流は電気自動車に傾きつつある。トヨタが特許で固めて他社に使わせなかったことが大きな要因、これによりガラパゴス化する危機を招いている(p70)

    ・価格勝負となる新興国向けの車開発をトヨタからダイハツに移管する方針で、タイにあるトヨタの開発拠点をダイハツが活用する、ディーゼルエンジン事業は豊田自動織機、MTはアイシンエーアイに移管した(p71)

    ・2017.2に、ホンダは日立オートモティブシステムズと合弁会社設立を発表、自前で開発してきたハイブリッド車のモータを日立との合弁会社に委ねた、出資比率も日立が51%で経営主導権を渡した(P74)

    ・車の電脳化によって求められる技術は、機械よりもソフトウェア制御に移っている、正確には機械とソフトウェアを融合させる「機電一体」の技術、過去の強みが弱みに変わる「破壊的イノベーション」の時代には、圧倒的な規模とシェアを持っていた事業が急速にしぼんでいく(P75)

    ・以前は高級車レクサスのみに、先読み情報サービスを付けていたが、それば対応カーナビを装着すれば、レクサス以外でもスマホ経由で音声認識サービスが受けられるようになった(P85)

    ・トヨタコネクティッドの前身、トヨタメディアサービスは、2000年に当時は平取締役だった現トヨタ社長の肝いりで設立された、マイクロソフトとセールスフォースドットコムが出資(p86)

    ・2016年には米テキサス州にマイクロソフトと共同で現地法人を設立、クルマのスマホ化を推進する(p87)

    ・4代目プリウスから、トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャ(TNGA)という設計手法を採用した、車体構造や部品共通化である。開発から製造までの仕事の進め方を見直して、プラットフォームが同じであれば、部品・構造を徹底して共通化する体制に変えた、これにより作業の共通化が進む(p89)

    ・トヨタの米国での販売減は、車の大型化という市場の流れに乗り遅れてしまったことが要因である、日産、スバル、ホンダ、マツダが過去最高益を更新するなかで(p94)

    ・トヨタは、2015年秋には、ケンタッキー州工場内に3.6億ドルを投資して、レクサスESの新工場を建設、米国で初となるレクサス生産を始めた(p97)

    ・トヨタの7つのカンパニー、1)コンパクトカー、2)中大型車、3)商用車(CV)、4)レクサスインターナショナル、5)先進技術開発(燃料電池、自動運転)、6)パワートレイン(エンジン、変速機開発)、7)コネクティッド(車とITの融合)(p103)

    ・2017.4入社式の日に、トヨタ本社地区で火事が起きた、その2週間前も三重県トヨタ車体工場で火災発生、最新鋭工場であった(p107)

    ・EVの基幹技術である、モータ、電池、インバータ(直流を交流へ変更)、回生ブレーキ、統合的制御システムにおいて、電池以外の技術では圧倒的な技術を持っている(p111)

    ・VWは2016.11に、新経営計画の注力分野として、1)コネクティビティ(ネットワークとの接続)、2)自動運転、3)電動化、4)カーシェア、を掲げた(p118)

    ・立派な車ができる仕組みをドイツの自動車業界は持っている、そのひとつがES(エンジニアリングサービス)、オーストリアのAVL、ドイツのFEV、EDAG社など、この3社は日本にも拠点をもつ、ホンダはシビックエンジンの一部をAVL、車体開発の一部をEDAGに委託した(p121)

    ・VWは、2017.5、中国安徽省のJACとEVの合弁生産を決定した、VWは中国にたまっていた資金で、米国環境保護局から課せられた1.5兆円の制裁金、補償金を払った(p134)

    ・ディーゼル不正はVWだけでなく、ドイツメーカがほとんどグルになっていたので、それを覆い隠すために国ぐるみでEVシフトしているとも言われる(p136)

    ・新型リーフの武器は、e-Pedalで、アクセルペダルから足を外すと、エンジンブレーキの4倍の勢いで減速させる仕組み、街中での走行のほとんどはブレーキが要らなくなる。回生ブレーキシステム(電子技術)と、摩擦技術を使った機械式ブレーキを融合させたシステム(p141)

    ・日産は、ハイブリッドという言葉を一切使わない、広報宣伝戦略をしている、e-Powerという名称(p142)

    ・日産の開発手法は、CMF(コモン・モジュール・ファミリー)2013年の新型車「エクストレイル」から導入、車体の構造を4つ(エンジン、コックピット、サスペンション周辺車体前部、車体重量をさせる車体後部)、それに電子制御を加えて「4+1ビックモジュール」となる、この5つを組み合わせて車を作っていくという設計思想(p149)

    ・日産が34%の三菱自動車の株式を出資するのに、下落前の5000億程度から、半値以下の2370億円で経営権を取得できた、また財務リストラを終えたばかりの三菱には、当時4500億円のキャッシュがあった(p154)

    ・三菱には軽自動車の生産技術(独特のノウハウ)があり、新興国市場攻略低価格車にも応用できる、軽を自前で生産していない日産にとって、とても魅力的であった(p125)

    ・日産での会議は、どの会議も、いつまでに結論を出すかが決められている、無駄なメンバーが入って予定外の議題が出うることを嫌う。議事録も決まったことをホワイトボードに書き込んで、それをカメラ撮影して関係者に添付ファイルを送付、議事録作成は付加価値を生まない(p165)

    ・ソフトバンクとホンダはAIで共同研究することが発表(2016)された、ソフトバンク子会社、ココロSBが開発した、感情エンジンをモビリティへ活用する研究、2016.12にはグーグルと燃料電池システムの量産を行う合弁会社を設立(p177、181)

    ・自分たちが敵わない技術や開発ノウハウを持つマツダに対して、巨人トヨタがアプローチしてきたのが取材を通してわかった実情である、MBDをいう、バーチャルシミュレーションを使って、試作品を作らずに製品仕様を決めてしまう手法でマツダが最も進んでいる、これで開発されたのが、圧縮比率14というスカイアクティブエンジン(p199、205)

    ・専用機ではなく汎用工作機を使っているので、13種類のエンジンを1つのラインに流すことが可能となった、専用機時代には45あった工程が、4工程となった(p209)

    ・マツダでは、ともすれば対立しがちな開発部門と製造部門が一体となって改革にとりくみ、共通化と多様性の要素を両立させている(p211)

    ・マツダの環境問題に対する概念は、WtoW(燃料採掘から車両走行)を重視している、EVは発電プロセスで二酸化炭素が出る、ディーゼル車は排出量も少なく、軽油のエネルギー密度は、リチウムイオン電池の40倍もある、マツダは内燃機関の効率化で、二酸化炭素減量に取り組む(P217)

    2018年1月8日作成

  • VWの動きを見ていると、企業は不況の時代に次のチャンスの芽があり、絶頂期に転落への萌芽があることがわかる。…トヨタに対しても同じことが言える。ハイブリッド技術が絶賛されている間に、消費者や投資家が驚き、感心するような、ハイブリッドではない新しい商品を仕込んでいないからだ。

    マツダ開発者「技術者は意味と価値を考えながら開発していく姿勢が重要になっています。そこを徹底すれば、規模が小さい会社でも存在感が出てきます。海外企業の中にはスピードと量で勝負してくるところがありますが、同じ土俵で戦っていては勝ち目がありません。」

    日本企業のルールメイキング力の弱さ。米国の防衛産業や重要インフラ産業では、取引先に対して、米国で標準化されたセキュリティ技術や製品の利用が求められるようになり始めた。

    日本では「政治家も企業も、新しい国際社会のあり方を安全保障と経済政策を絡めてデザインする発想力が欠けている」「競合相手の企業や国が仕掛けてきた場合、それに対抗する『カウンターシナリオ』を作らなければならないが、そこも日本は弱い」

    「技術の進化とルール作りは表裏一体の関係にあるのだ」「世界のルールづくりに参画していくためには、まず「人脈作り」が重要だ。」

  • 「自動車がスマホのようにコンピュータ化する」というのが言われて久しいが、それによって日本の経済界ひいては我々の生活がどのように変わってしまうのか、それを広く知るために著者が取材を重ねて出来上がった本。
    いつから読みたいと思ってたか既に忘れてしまったが、図書館に無く、ついに購入してしまった。

    いわゆる"中の人"的に関わっていた私から見ても、取材先の幅広さに感服する。トヨタ日産に留まらず、外資系の情報はもちろん、それによる世界市場を知ることができた。
    日本経済としては耳の痛い話。今後の大きな変革を注視していきたい。

  • 2017年概要
    完成車メーカー現状
    ルール作り

  • 現在の自動車業界の状況を考察した本。自動車がスマホ化していると言う。果たして日本の自動車会社は生き残れるのかがテーマで、現在の状況をよく分析し考察している。
    車の電子化の広がりで脱落するメーカーもあると思うけれど、いくら電子化が進んでも、車の基本機能「走る曲がる止まる」のノウハウは最低限必要なものであり、本体の製造を担う会社が消えることは無いと思う。会社は時代の要請に応えて、事業を多角化したり提携したり変化させていくので、自動車だけの話で全てを語るのはどうかと思った。

  • 車をもって居ない(持てない)オレは勝ち組・超勝ち組

  • 自動車業界についての論評の多い著者による日本の自動車産業に関する考察本
    日本の自動車産業のうち「トヨタ」「ホンダ」「日産」「マツダ」とドイツの「VW」に着目し、今現在自動車産業に起こっているクルマの「スマホ化」と「ロボット化」にどのように対応していくのかという点を語っている

    簡単にまとめると
    ・自動車産業は自動運転や電気自動車等で今多くの他業種が参入してきている
    ・これまでのものづくりだけではだめかも?
    ・日本のトヨタ・日産・ホンダ・マツダはどのように対応しているのか
    ・経営者に着目して今後どのように改革していくのか
    ということについて書かれている

    結局は、それぞれ他業種と連携し、各社の持ち味を活かしつつ、消えることはなさそうで、ちょっとタイトルは大げさな気もする
    まあ、モノづくりよりも仕組みづくりが必要になるという点では、なかなか興味深い内容でした

  • 少なからず、自動車産業にも大きな波は来るよね。

  • 刺激的なタイトルだが、筆者の日本車メーカーへの期待が込められている。
    ただ、個人的には日本車メーカーの未来は悲観的。
    それほど、CASEは従来の車の概念を変えると思う。
    ついていけるかどうか。

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著者プロフィール

経済ジャーナリスト。
1964年生まれ。1988年九州大卒。NECを経て1992年朝日新聞社に入社。経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。現在は主に企業経営や農業経営を取材し、講談社や文藝春秋、東洋経済新報社などの各種媒体で執筆するほか、講演活動も行っている。
主な著書に『自動車会社が消える日』『日産vs.ゴーン』(以上、文春新書)、『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)、『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『サイバースパイが日本を破壊する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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