- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166611607
作品紹介・あらすじ
なぜ不倫は減らないのか?なぜ不倫バッシングは激烈になるのか?人類進化のミステリーに迫る「愛と背徳の脳科学」 不倫は危険です。ひとたびバレれば、マスコミやネットで容赦なくバッシングされます。有名人でなくても、社会的信用や家庭を失い、慰謝料など経済的なリスクも多大です。 しかし、これほど失うものが大きいとわかっているはずなのに、なぜ不倫カップルがそこら中にいるのでしょう? その謎を解くカギは「脳」にあります。 近年の脳科学の劇的な進歩によって、「人類の脳の仕組みは一夫一婦制に向いているわけではない」ということがわかってきました。人類の祖先を含む哺乳類の多くは一夫多妻や乱婚でした。一夫一婦制が人類社内に根づき、「不倫=悪」という倫理観が出来たのは、長い進化の歴史から見るとごく最近のことです。今でも私たち人類の約5割は、「不倫型」の遺伝子を持っているのです。 また、私たちの生活には直接関係ないのに、有名人の不倫が発覚するやいなや「バッシング祭り」が始まるのはいったいなぜなのでしょう? そこには共同体の「フリーライダー」を検出して社会的制裁を加えたいという人間の本質的な欲望があります。「ズルをしておいしい思いをしている人」に敏感に反応し、そうした人を叩きのめすことが「正義」と信じて、バッシングを繰り広げるのです。また、バッシングには快楽がともなうという仕組みも、脳に備わっているのです。 本書は脳科学における最新の学術論文と科学的エビデンスをもとに、不倫をめぐる謎を解き明かします。興味深い動物実験、今では禁じられた危険な実験、歴史に残る不倫物語なども豊富に盛り込まれ、サイエンスに疎い読者でも飽きさせません。 さらに、「自分は絶対バレない」と信じている人ほど危ない「認知の罠」など、私たちの日常に直結するエピソードもご紹介。美人すぎる脳科学者による刺激的すぎる一冊!
感想・レビュー・書評
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不倫をするのは「不倫遺伝子」があるためらしいです。一夫一婦制というのは、人間の性質上あってないそうです。
やっぱり人間って動物なんですねー。
個人的には、不倫についても、色々な意見があっていいかなーと思います!
ぜひぜひ読んでみて下さい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
非常に興味深い内容で良書。心の問題や人の性格がどのように形成されているのか、深く考えたことはなかったが、脳科学的な観点から少しは理解出来たように思う。
母親が30歳以上で出産した子供は大人になって熟女好きの傾向があるなどのほうれい線実験は特に印象深い。
また、不倫傾向にある人物には
①遺伝子、②後天的な愛着スタイル、③性ホルモン
が影響しているとの説明には唸らずにはいられない。
共感力は眼窩前頭皮質が大きく影響し共感力が強いと裏切られた感覚があると許せない気持ちが強くなるとの説も実体験からうなづける。 -
中野信子さんの本はこれで6冊目です。
『ヒトは「いじめ」をやめられない』とだいぶ重なるところがありました。
浮気のしやすさを左右するものは、個人レベルでは
・先天的な、特定の遺伝子の働き
・後天的にかたちづくられた、その人の愛着スタイル
・周期的、反応的な男女の性ホルモンの働き
この3つに加えて、その個人が所属する集団が、一夫一婦的な結婚生活をしたほうが得なのか、あるいは不倫したほうが得なのかという、社会的な要因が影響すると考えられるそうです。
そのなかで愛着スタイルですが、「安定型」「回避型」「不安型」の3つがあるとされていて、その形成の最も大きな要因は、乳幼児期の特定の人物との愛情形成だそうです。
しかしそれは大人になって変わることもあります。
芸能人の例を出しますー名前は出しませんが、ワイドショーを見ていればわかるー不安型の女性が不倫することで非常に大きな安定感をもたらされていたのではないかとか、若い頃は不倫を繰り返していたのにその後情緒面で支える安定型の男性がその女優を支え中年になってから家庭的なイメージで再ブレークした話とか。
いっぽう「不倫はなぜ叩かれるのか」の要因に「いじめ」のときにも出てきた行き過ぎた「サンクション」そして「脳内物質オキシトシン」があります。
「規律正しい人ほど激しいいじめをする」
「協調性が高いほどいじめに走る」
「オキシトシンは愛着を高めるが、ある個人が愛着を抱く対象(たとえば自分の子ども、恋人など)と競合する存在に対する妬みの感情を高め、ときには攻撃を誘発させてしまう」
この特にサンクションは、自分こころあたりがあって、気をつけなくちゃいけないと決意あらた。
ちょうどこのたび中野さんの本『脳科学からみた「祈り」』のレビューに「嫌いな人の幸せを祈ること」を薦めていたのを発見。
もうやることはやったので(笑)これからはそっちのほうにシフトチェンジしたらいいのではないか、自分。
この本がそのきっかけになったかも。 -
脳科学者である著者による「なぜ人は不倫をしてしまうのか」をテーマにした本。
脳科学だけではなく、認知心理学、社会学、生物進化学といった広範な理論からこれを明らかにしようとする。想像していたよりも深遠なテーマだった。
簡単に要約する。
人類をはじめとする哺乳類のスタンダードは、一夫多妻若しくは乱婚であり、人類も狩猟生活時代は同様だった。
人類が今のように一夫一妻制を取り始めたのは、農耕を始めて集団生活をするようになったからで、一万年前からでしかない。さらにその理由も集団が大規模化したことによる性病の蔓延への対策だとされており、倫理的な変化ではなく生存戦略である。
動物としての進化の時間軸からするとこの変化はかなり直近のものなので、人類はまだ遺伝子レベルでは一夫一妻制に適用できていない。
現実、著者によれば「不倫型」遺伝子を持つ人は男女問わず50%程度いるという。
これがざっくり「人はなぜ不倫をしてしまうのか?」への答えである。
著者はさらにここから「人が不倫をしてしまうのは仕方ないことなのに、なぜここまでバッシングの対象になるか?」に繋げていく。こちらのほうが読み応えがあった。
それは簡単に言うと、不倫している男女に対する「妬み」である。不倫を叩く人は、家庭の形成・維持や子育てという「コスト」を払わずに、恋愛の快楽やスリルを楽しんでいる男女が羨ましくて仕方ないのだ。
こうした共同体の(若しくは個人の)規律やルールを破る人に対する正義ゆえの制裁行為は、社会学では「サンセクション」と呼ばれ、共感性が高い人ほどこれをする傾向にあるという。女性のほうが他人の不倫に対して関心を示すのは、オキシトシン受容が多く共感性が高い故である。
不倫のブレーキとなりえるのはこのさんセクションである。共同体から追放されるという恐怖のみがこの欲望を抑えることができる。
パートナーへの思い遣りとか、責任感は不倫のブレーキとはならない。これらの高次的な脳の機能は後追いで発達してきた部分なので、根源的な欲求をストップさせることはできないのだ。
故に相手の不倫を抑えるためには、明確なデメリットとペナルティを提示しておく必要がある。
遺伝子的な視点から見ても、進化論の視点から見ても、人が不倫を無くすことはできない。
しかし、人間が高度な社会性を持つ動物である以上、不倫をバッシングする行為も止められない。
我々はこの矛盾を無くすために無駄な努力をするのではなくて、この矛盾を抱えて生きていかなければならない。
そもそも、「恋愛・結婚・生殖」はセットではないし、文化的後付けで規定されているに過ぎない。世界では婚外子を社会的に認める方向に進んでおり、婚外子を差別することを禁止する法律も整備されつつある。
実際、フランスでは新生児の5割が婚外子である。日本でも現在、新生児の約2割にあたる人工妊娠中絶が毎年行われている。もっと婚外子、ひいては不倫を許容する方向に社会が向かえば、少子化対策にもなるのではないか。
不倫のメカニズムから始まって、人間の正義という哲学に切り込み、日本社会の最大のイシューである少子化を俎上に載せる。
中々に遠大なテーマで、面白い本だと思えた。 -
社会的によくないとわかっていながらそれでもなくならない、やめられない不倫。そして過剰なほどにバッシングする人たち。本書は、そんな不倫をしたり不倫バッシングをしたりするのはなぜなのか、脳科学の観点から解き明かしている。
人が不倫にはしってしまう理由を脳科学の観点から考えると主に3つ。
・先天的な特定の遺伝子の働き
・後天的に形作られた愛着スタイル
・周期的、反応的な男女の性ホルモンの働き
遺伝子レベルで組み込まれてたら、あらがえないじゃん!って思わず笑ってしまいましたが、科学的知見があるらしいから驚き!なんとなく不倫ってその人の意志の問題だと思ってるところがあったから、やめられないのには本人にはどうそいようもない理由があるのかもって思ったら、不倫に対する見方が変わりました。
あとよく聞くホルモンの働き。セロトニン、オキシトシン、ドーパミンなど脳の様々な部分に影響を与えるホルモンも不倫に関係しているんじゃないかということで、これもまたどうしようもないのかという考えに。
そもそも不倫がよくないっていうのも社会が作り上げた価値観なんじゃないか、生存戦略的にむしろいいこともあるんじゃないかという点にも気づかされました。
まあこれからも不倫はなくならないし、不倫バッシングもやまないだろうけど、なんかスッキリしました。 -
そういう脳の作りやからしゃーないんやと言える人が多かったらみんな楽なのにな。フリーライダーを許すな的な思想が強すぎるのよな多分
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不倫=悪みたいな考え方をもっていたが、それは間違っていると感じた。この本では生物学的観点や文化的観点から不倫ということを書いている。不倫は誰もが経験する可能性のある身近なことなんだろうと思った。だからワイドショーなどでよくある、「不倫した人は極悪人」みたいな叩かれ方に違和感を感じる。必要以上に叩く人は自分の正当性を誇示したいのかなって思う。
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どの本読んでもエビデンスは一緒。それで様々なテーマで本を出しているのが、この人のマジック。不倫を、脳科学を持ち出して、あたかも人間の本質だから仕方ないんだと言わんばかりだが、不倫も、不倫を責める人も、不幸になるよとの結論。じゃあ何のための脳科学だ。理解してあげてよ、てこと?
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不倫、フリーライダーへの制裁。
妬みが不倫パッシングの舞台裏を暴いて
オキシトシン等の脳内物質の話を巡って道具立に終始するのかと思いきや、欧州の状況を事例に中野信子さんの視点披露にへえーってエンディングでした。(中身は読んでみてください)
彼女の脳の話以上に、彼女自身の脳の中身と向き合ってみたいと思わせるのが中野さんの魅力です。