看る力 アガワ流介護入門 (文春新書)

  • 文藝春秋
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感想 : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611720

作品紹介・あらすじ

作家、エッセイスト、キャスター、さらには女優として幅広いジャンルで活躍している阿川佐和子さんですが、父・弘之氏の最晩年に病院に付き添い、いまも認知症のはじまった母の介護を続けるなど、実は介護経験も豊富です。そんな阿川さんが、高齢者医療の第一人者である大塚宣夫よみうりランド慶友病院会長と、理想の介護法、理想の老後を語り合います阿川さんの体験的介護法は、実に説得力があります。主な項目は下記の通りです。・好物はノドにつまらない・赤ちゃん言葉は使わない・バカにしない、怒らない、とがめない・介護は長期戦と心得よ・後ろめたさをもつ・認知症でも愛情は伝わる・孤独死の何が悪い・施設に預けるのは親不孝ではない・定年後の夫は新入社員と思え・夫源病にご用心・恋は長寿の万能薬・老人に過労死なし・そこで働く人を見て施設を選ぶ

感想・レビュー・書評

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  • 阿川佐和子さんとよみうりランド慶友病院の開設者・大塚宣夫先生が対談形式で進める介護のお話。副題には「アガワ流介護入門」とある。

    阿川佐和子さんは、両親の介護経験をお持ちで、お父様は大塚先生のよみうりランド慶友病院で晩年を過ごされ、最後は同病院で看取られたとのこと。またお母様のこともご自宅で介護しておられ、それらの経験談を交えながら、大塚先生との対談を進められている。

    介護される家族を看てもらう側からの阿川さんのお話、介護される人を看る側の大塚先生のお話、それぞれが違う側の視点で、本音からセオリーまで話されているので、介護に関心のある読者にとっては、「まったくそのとおり!」と共感が得られつつも、「なるほどね!」と納得のいくアドバイスに出会える本である。

    大塚先生の開設された病院では、経験を集約され、「医療」よりも「介護」、さらに「介護」よりも「生活」にを重視して運営されている点が、他の介護施設と比して特徴的である。阿川さんのお父様が晩年、居室に電子レンジを持ち込んで、「チン」して晩酌を嗜まれた話や、居室で阿川さんも含めて焼き肉を楽しんだエピソードなども紹介されている。

    「食べることは、人間の最後まで残る楽しみ」という生活の視点を重視しつつ、「食べることが高齢者の生きる力を測る目安として大事」という視点も失わない。

    介護に加えて、「豊かにすごせるような生活環境を整える。すなわち衣食住を整える」というポリシーを重視されている。

    介護の話なので、「認知症」の話にも多数の紙面が割かれているが、次のような点は、医師という専門家からの意見として非常に参考になった。

    ・認知症の本人は、(記憶を失っており)少ない記憶を駆使して、自分なりにベストの判断を下し、行動している。それに対し、とがめたり、諫めたりしても意味が通じず、何の役にもたたない。むしろ安心感を与えよと。

    ・認知症の人に言うのと子どもに言うのとは違う。子どもは言われたことを覚えているが、認知症の人は覚えていない。認知症の人に教育的効果を期待するのは無駄。

    ・認知症の進行を抑えるには、本人が周りから注目されたり、必要とされたりすることが最も効果的であるらしい。

    ・また、認知症者への対応のコツは、男女差があるようで、どちらかというと男のほうが手がかかるらしい(笑)。男はどうやら、役割とか大義名分とかが大事らしく、また数値とかランキングとかに関心があるようで、例えば役割を与えたり、競い合わせたりすることで物事へのモチベーションを引き出すことができるようだ。一方女性の方は、お洒落する仕掛けづくりが大事だと書かれていた。

    介護する側の立場としては、「介護はマラソンのようなもの(長期戦)だが、対応に必要なのは駅伝形式」というのは名言だと思った。介護はいつ終わるかわからないのであり、体力の配分、経済的な計画が必要だし、実際のサポートには、できるだけ多くの人を巻き込むことの重要性が述べられていた。

    一方、将来の自分が介護される立場になることも想定した話もされている。認知症は、75歳を過ぎると急激に増える一方、90歳すぎても30%は認知症にならないとされている。90歳をすぎて認知症と無縁のでありたいものだ。健康な老後を送るためのアドバイスが幾つか。

    ・家事は知的労働であり、男性でも一人でできるようにすること(一人暮らしノススメ)。

    ・人間の体の部品の耐用年数はせいぜい70年。75歳過ぎるとガタがくるのであり、十分メンテナンスが必要。

    ・一日安静で6~7%の筋肉が落ち、一週間だと3~4割の能力ダウンとなる。病気になったり、骨折など、動けなることを避けるべく努力が必要。そのために「75歳すぎたら自分の体のいうことを聞くな」と。75歳過ぎの体は、楽を望むが、それが体の退化の要因となるので、なるべく多く用事を作って動けと言われていた。

    阿川さんは、天性の介護センスをお持ちのようで、時々、後期高齢者となった大塚先生にまでツッコミをいれられているところなど笑えました。

    • りまのさん
      認知症の母の介護をし、2ヶ月程眠れず、精神の病を再発した経験がある。しかし、母が生きていることは、有り難い、と思う。
      認知症の母の介護をし、2ヶ月程眠れず、精神の病を再発した経験がある。しかし、母が生きていることは、有り難い、と思う。
      2021/02/26
    • abba-rainbowさん
      りのまさん、こちらにもコメント頂きました。ありがとうございます。家族の介護は大変ですね。特に大好きなお母様のことであれば、色々と複雑な気持ち...
      りのまさん、こちらにもコメント頂きました。ありがとうございます。家族の介護は大変ですね。特に大好きなお母様のことであれば、色々と複雑な気持ちになりますね。

      この阿川さんの本は、そういう心の持ち方で、とても勉強になりました。
      2021/02/26
    • りまのさん
      abba_rainbowさん
      お返事頂き、ありがとうございます。お返事頂けるとは、思っていませんでした。
      レインボウさんの、レビュー、知的で...
      abba_rainbowさん
      お返事頂き、ありがとうございます。お返事頂けるとは、思っていませんでした。
      レインボウさんの、レビュー、知的で、大好きです。フォローしていただいて、本当に、ラッキーでした!
      りまの
      2021/02/26
  • 介護という重いテーマについて、医師との対話との形で語っていく
    作者の体験と、医師のアドバイスのやりとり、知っていること、そうでないこと読んでいて切なくなりました。

    気になったことは次です。

    ・医療より介護、介護より生活
    ・何を言われても決して否定しないこと
    ・介護は長期戦と心得よ
    ・介護にかぎらず、後ろめたさが対人関係を良くする妙薬では
    ・笑いとズルで乗り切る。途中で力尽きないように手抜き、息抜きしならがら60点主義で。
    ・一人暮らしは老化防止の特効薬、
    ・孤独死でなにがわるい
    ・プロの介護ほう助をばかにするな、素人がやると骨折する場合もある
    ・名医とは、残った家族からあのときああしておけばと考えさせないようにすること
    ・家事ができる人は一人になっても、そこから自立しようとできる、一人暮らしができるように
    ・美人の看護士がいれば、延命できる、恋は長寿の万能薬
    ・老人に過労死なし
    ・老人には3タイプ、
      ①自分の人生を後悔して、後悔して、後悔するタイプ
      ②他人に対する恨みつらみで不機嫌なタイプ
      ③今からだってこんなに楽しみがある、今後を考えて不機嫌じゃないタイプ
    ・不良老人になろう
    ・老後の沙汰こそ金次第。男はドケチになる

    目次は、次のとおり

    Ⅰ 看る力・家族編

    1 好物は喉につまらない
    2 医療より介護、介護より生活
    3 赤ちゃん言葉は使わない
    4 バカにしない、怒らない、とがめない
    5 介護は長期戦と心得よ
    6 後ろめたさをもつ
    7 イライラしたら笑っちゃおう
    8 介護にトラブルはつきもの
    9 認知症でも一人暮らしを
    10 孤独死でも一人ぐらしを
    11 施設に預けるのは親不孝ではない
    12 愛情だけではうまくいかない
    13 必要とされる状況をつくる
    14 必要とされる早期診断は家族のため
    15 介護される立場で考える
    16 名医の条件

    Ⅱ 看る力・夫婦編

    17 認知症の診察は夫婦一緒に
    18 定年後の夫は新入社員と思え
    19 一人暮らしのススメ
    20 夫源病にご注意
    21 恋は長寿の万能薬
    22 名刺をつくる

    Ⅲ 看られる覚悟

    23 七十五歳が節目
    24 老人に過労死なし
    25 なぜ老人はいつも不機嫌なのか
    26 不良老人になろう
    27 老後の沙汰こそ金次第
    28 家族にこそ介護費用を払う
    29 自分が望む最期は手に入るのか
    30 そこで働く人を見て施設を選ぶ

    あとがきにかえて

  • 待ったなしで迫りくる親の介護。。。
    いつか親のおしめを替える日が来るのか・・・と、
    考えるだけで逃げ出したくなってくる。
    でも、阿川さんの口から飛び出す介護の実体験を読んでいると
    「もしかしたら、なんとかなるんじゃね?」と
    明るく前向きになれる気がしてくるのです。

    介護は全力で取り組んではいけない。
    これだけは肝に銘じておこう。

  • 阿川佐和子とよみうり慶友病院の大塚先生の老人介護をテーマにした対談。

    父親の介護を終え、今は痴呆症のある母親の介護をしている阿川さんの、「一人で抱え込まない」「やりすぎない」「(親に後ろめたく思うくらいに)息抜きをする」という明るい介護観にホッとするし、
    大塚先生の病院で取り組んでいる事や、「最後の最後まで自分でできる事は任せてやらせる」という考え方も勉強になったし気が楽になる。

    父はほぼ突然に近い感じで亡くなったけれど、それでもあの当時は何が正解なのか分からなかった。
    今はその経験やこの本の内容を糧に、母の希望に添えるよう決断をしていけるような気がする。

  • 介護の本はたくさんある
    これは現実的でとても興味が持てた
    対談だからかな
    佐和子さんは引き出すのがうまいからかな
    認知症もポジティブに
    孤独死だっていいじゃない
    75歳 これがポイント
    うわもうすぐそこだわ
    体を甘やかさずでもなんでもありでやれるといいな

    ≪ 老人は 過労死もなく がんばれる ≫

  • 40歳を過ぎたら必読の書!
    親4人を看ている私には「そう!そうだよね!!」と
    大きくうなずくことばかり。
    介護を巡って人生を変えられてしまうのは、介護者だけではない。任せるしかない当人も哀れな終末である。
    当人が幸せであれば、介護者も幸せ。
    そのためには、現役の頃に培った能力を活かせる場づくりが必要だと思う。

  • ピンピンコロリは5%以下。
    骨折すると1日安静で筋肉6~7%減。
    75歳過ぎての骨折は絶対元通りにはならない。

    子供が施設を選ぶと費用は親の考えている3分の1。

    女性と化粧、リハビリはイケメン人気。
    美人看護師長について転院した男性だけが長生き。

    男性は収入がなくなるとどケチになる

  • 流石、名インタビュアーの阿川佐和子さん。
    なかなか読ませる対談集に仕上がっている。

    父親、母親、更には伯母まで登場させて読者サービス。

    阿川佐和子さんの視点は、ユーミン的で、
    竹内まりや的ではない。

    それはやむを得ないことで、仕方ない。

  • チョー高い介護施設の話と聞いて読んでみたら、そこの経営者の大塚先生と阿川佐和子の対談だった。阿川佐和子は作家の父を看取り、いま認知症の母の介護をしているそうだ。うちも95歳の父は認知症ではないけど足がこのところ急激に弱ってきた。92歳の母は、まだ本人はちょっと忘れっぽくなったくらいにしか思ってないかもしれないけど、完全に認知症で、1分前のことも忘れるし、全体に理解力が低下したように思う。本書によれば、私と妹の対応は間違ってないみたい。なるべく家でできることはさせる方針もOK。これまで叱ったり怒鳴ったりしたことはないし、母も甘え上手なので、まあうまくいっている。父は母がいろいろ忘れるのを叱っていて、それをやっても無意味だとこちらは言っているのだけど、なかなか理解しない。それも男性の傾向で、普通のことらしい。認知症の人は覚えているかぎりのことから判断してなんらかの行動をおこすけれど、それは人が見ると異様な行動だったりする。でもそれは仕方のないこと。ともかく覚えてないのだから。大塚先生も自分が75歳を過ぎて、2週間前に人に会ったことを忘れていて自分でショックだったというけど、75歳が鬼門のようだ。そこからはどんどん劣化していく。決して元通りにはならないと覚悟したほうがいい。

  • そうそう、介護する人もされる人も、それぞれの事情があるし、それぞれの希望もあるよね。

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著者プロフィール

1953年、東京生れ。エッセイスト、小説家として活躍。著書に『ああ言えばこう食う』(檀ふみとの共著・講談社エッセイ賞)、『ウメ子』(坪田譲治文学賞)、『婚約のあとで』(島清恋愛文学賞)、『聞く力』等。

「2022年 『こぽこぽ、珈琲 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川佐和子の作品

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