なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議 (文春新書 1204)
- 文藝春秋 (2019年2月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166612048
作品紹介・あらすじ
果たして陸軍の何が間違っていたのか、そもそも陸軍だけが悪いのか――雑誌『偕行』に掲載された、陸軍将校による座談会「大東亜戦争の開戦経緯」が初の書籍化。あの戦争を戦った陸軍軍人たちの本音とは。・日独伊三国同盟の功罪・なぜ仏印進駐は行なわれたのか・海軍との壮絶な駆け引き・予想を超えたアメリカの経済制裁・独ソ開戦の影響・いつ対米開戦を決意したのか ほかこの座談会を昭和史研究の基礎資料として読み込んできた半藤一利氏による約4万字の書き下ろし解説を収録。
感想・レビュー・書評
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陸軍佐官級エリートにより、1976〜1978年の足掛3年全15回にわたって「偕行社」の月刊機関誌に連載された座談会に、半藤さんが解説を加えたもの。
所謂「海軍善玉論、陸軍悪玉論」が粉砕されるような内容。陸軍幹部(多くはその後陸上自衛隊幕僚へ)が、戦後30年を経て話す内容なので、当然、組織擁護、自分擁護、海軍への責任転嫁、の内容も多い。
事後の後出しジャンケン的批判ではなく、「そのときその場所で、他にどういう決断が取り得たか」という観点で読むと、解説中に出てくるような「運命と思うほかはない」(木戸幸一内大臣)とまでは行かずとも、「このままジリ貧となるよりは、一丁暴れてみたい」、という時代の空気は大きかったのだろう。(簡単にいうと、ヤケッパチ、が実態に近そうだ。)
景気のいい記事を書いた方が売れる新聞然り。1940年11月15日に出師準備をはじめた海軍しかり。
海軍の場合、動員を掛けてから、戦争準備完了となるまで、5ヶ月を要し、一旦準備が整うと油を始め莫大なランニングコストがかかるため、そのまま戦争に突入するのか、動員解除するのか、の意思決定を急ぎたくなるものだそう。 ましてや、石油全面禁輸となっては、「戦うなら今しかない」、というマインドセットに流れ易いのは想像できる。
1940年12月12日に、海軍国防政策委員会(略称、政策委員会)が設置され、その中で、国防政策や戦争指導の方針を担当する「第一委員会」が、海軍の急進化の元凶となったことは知らなかった。戦後も一種のタブーだったようで、この実態把握に半藤さんも苦労されたよう。
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必敗の戦争を始めてしまったのはなぜか。
流されたのだと思う。
ドイツに勝手に希望を託し、日本のために動いてくれると根拠なく想定し、それを前提に自分たちの行動を決める…。そりゃ見通しが甘すぎる。希望的観測、過度な楽観、リスクの過小評価。
自分たちしか見えなくなり、「こうあってほしい」という願望が、「こうあるべき」という思い込みに変わっていく。その思い込みは決意と呼ばれ、準備に進み、最悪の場合を想定せずに、勝利は何かを決めずに始めてしまう。空気に流された。
そして日本人の意思決定の方法は現在も変わっていない。必ず同じ過ちを犯す。
軍は解体されたが戦争を始めたプロセスは温存されている。道具はなくなったろうが、なぜ日本人が戦争に突き進んだのか、その原動力はまったく処置されていない。
政治的な右派も左派もまったく同じプロセスで意思決定している。誰も変わっていない。
そうならないためには雰囲気で考えず、ファクトを積み重ねて考え抜くこと。最悪のことを想定して注意深く罠を避けること。相手を知ること、自分を知ること。自分自身に注意深くなること。 -
読み終わり。なかなか読むのが難しいところもありますが。
難しい内容も、解説も含めて何とか理解できた気がします。
ただ。陸軍のエリート将校が反省会として、昔話のように
戦争へ突き進んでいく内容が語られているのだが。
すごく無責任というか、他人事のように、人の責にする
ような言葉の羅列にちょっと、腹が立つような内容もありました。
陸軍が悪いのか、海軍が悪いのかなんか、次元がちょっと
違うかなと。
あまりにもひどい内容がえがかれていて、却って面白い内容
でした。 -
明治維新から続く官軍と賊軍のせめぎ合い。今も。
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テーマからして反省の色なし!
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大東亜戦争・大平洋戦争、呼び名はどちらでもいいんだけど、軍人のみならず民間人に多大な犠牲を強いたことを直視すれば、「大義」だけのために戦争に突入し、しかもその戦争に勝利することが現実的に困難であることを分かっていれば、絶対避けるべきだった。
本書を読むと、どうも他人事のように戦争を進めた感じがして非常に悲しい。 -
「海軍反省会」があったように陸軍にも同じような記録があったわけだ。当然、人の記憶なのでどこまで本当なのかは分からない。
でも陸軍と海軍が協調していなかったことだけは分かる。もっとも事情はアメリカも同じで、陸海の反目は洋の東西を問わないようだ。
となると、日米の差は軍を制御する政府の力の差ってことになる。そして国家は国民に見合った政府しか持ち得ない。やっぱり戦う前から負けてたんだよ。 -
太平洋戦争開戦に至る意思決定がどのようにされたのかに迫るため、当時の日本軍関係者との座談会により事実を掘り起こしていく。日中戦争の泥沼化と米国との経済格差を含む地政学的な不利を把握しながら、陸海軍の対立や外務省のナチスへの傾倒、文民の戦争への無理解が、無謀な対米開戦に導いたとし、単純な陸軍悪玉論を否定する。意思決定において事実を重視せず、個人の思い込みや組織間の関係が大きく影響する様は現代のあらゆる場面においても共通する病理ではないだろうか。
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やるせない。ヒトラーのように信念や狂気で開戦を決意したのならまだ諦めもつくが、単に無能な指導者たちが流れや空気で何となく戦争を始めてしまうのは本当にやるせない。しかしここに出てくる旧参謀たちは、いくら戦後の回想とは言え、どうしてこうも他人事で無責任な言いようなのだろう。おまけに戦略眼が米軍に比べて子供レベル。なんだかもう一度戦争が始まってもおかしくないように思える。
そうならないために半藤氏らが正確な歴史を紐解き、後世にこういうバカ者たちがいたことを残してくれた。半藤氏の反戦、平和への貢献は極めて大きい。心よりご冥福をお祈りいたします。 -
陸海軍の対立、縄張り意識が大きな問題であり、この対立が敗戦まで続いた。戦争を始めたのはもはや誰であったのかわからなくなった。国のトップが対米戦争の危険性を知りながらも戦争を止めることができずに戦争に突き進んでしまった。
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明確に誰が悪いと言いにくい。
あえていうと空気が悪かった。 -
200618半藤一利「なぜ必敗の戦争を始めたのか」「3」
希望的観測に終始
結局、国の行く末を誰も考えていない
→国家の滅亡、されど誰も責任を取らない
①シナ事変の解決
②油の確保
三国同盟
仏領インドシナへの進出(7月)→油の禁輸⇒対米戦覚悟
関特演 バスに乗り遅れるな -
終戦後、旧海軍の幕僚が「海軍反省会」という座談会をやっていたことはNHKの特集で報道されたが、旧陸軍も同じような会合を持っていたという。本書は昭和52-53年頃の対談をまとめたもの。
海軍善玉、いや陸軍だって、ということはさておき、多くの当事者が米国と戦争するなんて考えもしなかったのに突き進んだことが、改めてむなしく、恐ろしく思える。
日本の多くの企業で、そしてコロナ渦の今でも、そこら中で起きていることと大同小異だろう。
「対米戦争回避」と言いながら、それは「ただ回避する。回避するだけで・・なにも考えていないんだから・・・。ただ、希望だけをもって、ずるずるっといくんですからね。」という一説がとりわけ印象に残った。 -
陸軍は陸軍の、海軍は海軍の戦争をそれぞれ戦っていたということ。お互いがお互いの事を知らず、知らせず、知ろうともせずに自分の都合の良いように思い込んで、結局何も決めずに戦争を始めたということか。
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東2法経図・6F開架:396A/H29n//K
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陸軍のスタッフ達による反省会的座談のハイライト。対米戦は海軍の担当という認識だった等々、国家の重大問題への当事者意識の低さが全般的に垣間見られ、日本が当時から敗北必至とされた対米戦に突き進んだ主要因が、無責任の結晶だった事が読み取れる。また、都合の悪い報告が出来ない「空気」があったという類の証言が多々見られ、これも責任感の欠如と表裏一体と感じられた。かなり本音の記録を遺したこと自体は貴重で、それこそ当時の空気を知る為の遺産ではあると思った。
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日本が大戦で負けた理由をその当時の当事者を交えた座談会形式で解き明かしていくもの。
失敗の本質的の様に戦略論ではなく外交や組織という面から見る。
南方侵攻を進める海軍。北への侵攻を進める陸軍。お互いが組織の本質を見極めることなく、お互いをカバーすることなく戦争に突き進む。外交面ではアメリカは戦争に参加することはないだろうと言う考えと、ドイツがソ連を倒してくれるという楽観論と他力本願。そして戦争が泥沼化しても誰も責任を取ろうとしない無責任体質。
戦争は始めるのは容易かもしれないけど、どのように終わらせるかも考えてもらいたい。そもそも戦争はしない方がよいのですが。
戦争をしないためには、戦争を知ることが大切という意見には納得してしまいました。 -
大戦当時の陸軍中堅層による座談会。当時の生々しさが伝わってくる。
通常のことながら、当事者たちは後世の我々のような視点を持つことなく、その中でもがいていた感じが伝わる。
ただし、そこはかとなく蛸壺化した認識が垣間見える。特に海軍との連携不足というより、音信不通状態など。